2025/10/18
  • お役立ち情報
  • 働き方・職場での工夫
  • 障害者雇用 長期就労

「私にしかできない」を創る|長期活躍を実現した先輩障害者の仕事術

はじめに|成功事例に学ぶキャリアの共通項

「特別な才能があったから成功できたんでしょう?」
障害を持ちながら長く働き続ける人の話を聞くと、ついそう感じてしまうかもしれません。

しかし、実際に長期就労を実現している人たちは、“特別なスキル”を持っているわけではありません。
むしろ彼らに共通するのは、「自分をよく理解し、戦略的に動いている」という姿勢です。

彼らのキャリアには、3つの共通点があります。
それは、
1️⃣ 自分の能力を客観的に“可視化”していること
2️⃣ 主体的に行動し、問題を未然に防ぐこと
3️⃣ 周囲や支援機関を“孤立しないための武器”として使っていること

この記事では、実際に長期活躍している先輩たちの行動から、この3つの戦略を具体的に掘り下げます。
「安定して働きたい」「もっと自分らしい働き方を見つけたい」と考えている方に、明日から実践できるヒントをお届けします。


成功の鍵①:「能力の可視化」と「強み」への転換

弱みを「貢献の条件」に言い換える術

長期就労している人ほど、「できないこと」をそのままネガティブに語ることはありません。
代わりに、”条件付きでの貢献”として言い換えています。

たとえば、

「マルチタスクは苦手ですが、集中できる環境があればミスゼロで業務を完遂できます」

というように、「配慮があれば、成果が出せる」と具体的に伝えるのです。
これは採用面接や人事面談でも効果的で、上司にとっても「どう支援すれば力を発揮できるのか」が明確になります。

実際、ある企業で活躍する発達障害の社員は、入社当初「スピードが遅い」と評価されていました。
しかし、「正確性を評価基準に入れてほしい」と提案し、品質チェック業務を担当するようになった結果、
「データ入力の精度100%」という社内記録を出し、チームに欠かせない存在となりました。

弱みは、環境を整えれば「強みの形」に変わります。
それを可視化し、正しく伝えることがキャリアの第一歩です。

実績を数値で示す「ポートフォリオ」の重要性

もう一つのポイントは、“見える成果”を残すことです。
たとえ日々のルーティンワークであっても、「〇件の処理を完了」「〇%のミス削減」といった数値に置き換えるだけで、自分の仕事の価値が明確になります。

多くの先輩社員が実践しているのが、「社内版ポートフォリオ」。
Excelやスプレッドシートなどで、自分の成果・改善点・学んだスキルをまとめています。

たとえば、

  • 「新しいマニュアル作成で作業時間20%削減」
  • 「在庫管理システムの誤登録を月10件→2件に改善」
    といった具体的なデータがあるだけで、上司も評価しやすく、昇進や職域拡大のきっかけになります。

成功の鍵②:長期就労を支える「主体的行動」

「報連相」を待たない、能動的な情報開示

長く働く人ほど、「悪化する前に伝える」という姿勢を持っています。
「今日は少し体調が悪いかも」「集中が続かない」といった小さな変化を上司に共有することで、
トラブルやミスを未然に防いでいるのです。

たとえば、

「午後になると集中が途切れやすいので、午前中に重要業務を入れてもいいですか?」

という提案を自分から出せると、上司も安心して任せられます。
こうした“能動的な報連相”は、職場での信頼構築に直結します。

逆に、我慢して抱え込むと、周囲が気づいたときにはすでに休職や離職に至ってしまうケースも。
「報告=弱みの開示」ではなく、「信頼関係を築く行動」として捉えることが大切です。

自己成長を諦めない学習習慣

成功している人たちは、学ぶことを止めません。
ただし、「頑張りすぎない学び方」を意識しています。

業務時間外での無理な努力ではなく、

  • 業務時間内の空き時間にe-ラーニングを活用
  • 資格取得支援制度を使って、ペースを守りながら学習
    といった形で、“疲れない成長”を続けています。

特に近年は、企業内で障害者向けのスキル研修(Excel・タイピング・Web制作など)を導入する例も増えています。
「時間内でできる範囲で学ぶ」ことが、長期就労の鍵なのです。


成功の鍵③:「支援」を孤立しないための武器にする

支援機関を「キャリアコーチ」として活用

多くの成功者は、支援機関やエージェントを“就職のため”ではなく、“働き続けるため”に活用しています。

ジョブコーチや就労支援センターのスタッフは、職場での課題を一緒に整理したり、上司とのコミュニケーションを仲介してくれたりします。
つまり、「客観的な第三者」=キャリアコーチのような存在です。

実際、ある企業では、ジョブコーチが定期的に職場面談を行うことで、離職率が半減したという事例もあります。
自分ひとりで抱え込まず、定期的に“外の視点”を入れることで、冷静に次の一手を考えられます。

職場での「信頼できる仲間」のつくり方

長期活躍している人ほど、「職場で孤立しない仕組み」を意識しています。
それは、仕事の相談相手をつくることだけでなく、日常の雑談や共通の話題を通じて関係性を築くことです。

「お昼どこ行きました?」
「この前のドラマ見ました?」
といった何気ない会話が、心理的な安全性を高めます。

こうした“ゆるいつながり”があるだけで、困ったときに相談しやすくなり、結果的に長く働き続けられる職場になります。


成功事例から学ぶ「自分らしいキャリア」の描き方

「スペシャリスト」としての道

データ分析・Web制作・経理補助など、特定分野を極めるタイプのキャリアです。
ある視覚障害の社員は、音声読み上げソフトを活用しながらExcel関数やデータ処理を学び、
今では「社内分析チームのデータ整備担当」として欠かせない存在になりました。

このように、専門性を積み上げることで“替えがきかない人材”になることが、長期就労の安定につながります。

「業務改善」を通じた影響力の拡大

一方、昇進や役職にこだわらず、チーム全体に影響を与えるキャリアを選ぶ人もいます。

例えば、精神障害のある社員が「新人向けマニュアル」を自ら作成し、誰でも仕事を覚えやすい環境を整備した事例。
結果的にチーム全体の作業効率が上がり、「業務改善担当」として正式に任命されました。

つまり、役職ではなく“貢献の質”で影響力を高めることも、一つのキャリアの形です。


まとめ|成功者の共通項は「自己理解」と「戦略」

長期活躍を実現している障害者に共通するのは、才能ではなく「戦略」です。
彼らは自分の特性をよく理解し、可視化・主体性・支援の活用という3つの戦略を組み合わせています。

「誰でもできる仕事」を「自分にしかできない仕事」に変える力は、どんな人にも備わっています。
その第一歩は、“自分を知ること”と“行動を変えること”

今日から少しずつでも、

  • 自分の強みを言語化してみる
  • 上司に小さな報告をしてみる
  • 支援機関に相談してみる

そんな一歩が、5年後・10年後の安定したキャリアにつながります。

「特別じゃなくてもいい。
自分のペースで、長く働ける力を育てよう。」

あなたの中にも、まだ眠っている「私にしかできない」可能性が、きっとあります。

投稿者プロフィール

八木 洋美
自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。
  • バナー