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【インタビュー】「絶望」を「希望」に変える|リハビリ中に見つけた新しい人生観と働き方

この記事の内容
はじめに|リハビリは「心の再構築」の期間

障害を負い、リハビリ中の当事者が抱える「焦り」や「未来への不安」。かつての生活が断ち切られ、先の見えない状況に、心を消耗しているかもしれません。
しかし、リハビリは、単に失われた機能を取り戻す期間ではありません。それは、「新しい自分」を見つけ、キャリアを再構築するための重要な期間であると私たちは考えます。
今回は、後天性の身体障害を負いながらも、リハビリの経験を武器にIT企業で活躍するAさん(仮名)に、その真実を伺います。
絶望からの転機:リハビリで向き合った「心の壁」
診断直後の「喪失感」と「リハビリの苦悩」
インタビュアー: 診断直後、どのような喪失感を抱え、リハビリでどのような苦悩がありましたか?
Aさんの声: 「事故で体が動かなくなったと知ったとき、未来が真っ暗になり、すべてを失ったような喪失感でした。リハビリは、昨日までできていたことができない現実と向き合う日々で、身体的な痛み以上に『過去の自分との比較』という心の壁が一番つらかったです。何度も諦めかけました。」
立ち直りを支えた「小さな成功体験」
インタビュアー: その絶望的な状況から、どうやって前を向くことができたのですか?
Aさんの声: 「立ち直りを支えたのは、『小さな成功体験』の積み重ねです。『昨日できなかったことが、今日少しだけ動くようになった』というリハビリの過程で見つけた達成感が、何よりも自信の回復に繋がりました。それは、健常者の頃に感じていた大きな成功よりも、ずっと確かな希望でした。」
リハビリを「キャリア準備」に変える戦略

「自己管理能力」を証明する期間:リハビリ経験から得たビジネススキル
インタビュアー: リハビリの経験は、どのように具体的な仕事の能力に繋がったのでしょうか?特に、企業に対してどのように説明し、評価を得たのか詳しく教えてください。
Aさんの声: リハビリの経験は、単なる体調回復の期間ではなく、私にとって「自己管理能力」を極限まで高めるトレーニング期間でした。具体的には、「痛みの波を詳細に記録し、その原因と対策を分析する」というプロセスが、日々の業務における課題発見と解決能力の基盤となりました。また、「段階的な目標を立て、それに向けて計画的にリハビリを実行する」という経験は、プロジェクトマネジメントや目標達成に向けた計画策定能力に直結しています。
ブランク期間を企業に説明する際には、この計画的な自己管理能力を最も強調しました。例えば、リハビリの進捗をデータとして示すことで、自身の分析力と継続力をアピールし、「困難な状況下でも目標設定と達成に向けて着実に努力できる人材である」と評価していただきました。この能力こそが、長期的なキャリア形成を支える揺るぎない土台であり、どのような職務においても貢献できると確信しています。
「ブランク」を「戦略的なトレーニング期間」に言い換える:採用面接での説明術
インタビュアー: 採用面接で、休養期間というネガティブな要素をどのようにポジティブに転換し、採用担当者の理解を得ましたか?具体的な説明方法と、その効果について教えてください。
Aさんの声: 採用面接では、リハビリ期間を単に「休んでいた」と伝えるのではなく、「復職に向け、計画的に体調とスキルを整えていた期間」として説明しました。この言い換えは、受け身の期間ではなく、能動的な準備期間であったことを強調するものです。
具体的には、「リハビリによる体力回復という目標と並行して、業務に必要となるExcelのスキル習得にも取り組みました」と伝えました。このように、体調面とスキル面の両方で具体的な目標を設定し、それらに対する取り組みを明確にすることで、ネガティブに捉えられがちなブランクを、未来に向けた「戦略的なトレーニング期間」と捉え直してもらうことができました。
この説明により、採用担当者は私がブランク期間中も向上心を持ち、具体的な行動を起こしていたことを理解し、私の自己成長への意欲と計画性を高く評価してくださいました。結果として、この期間が単なる空白ではなく、私自身のキャリアプランの一部として位置づけられていることを明確に伝えることができ、信頼を得ることに繋がったと考えています。
新しい働き方:リハビリの経験を職場で活かす

職場で得られた「合理的配慮」とリハビリの知識の融合
インタビュアー: 職場の配慮において、リハビリテーションの知識は具体的にどのように役立ちましたか?
Aさんの声: 「はい、リハビリで培った知識は、職場で合理的配慮を求める上で非常に強力な武器となりました。単に『辛いので配慮してほしい』と訴えるだけでは、企業側も具体的に何をすれば良いのか分かりにくく、理解を得るのが難しい場合があると感じています。しかし、リハビリを通じて習得した、例えば『正しい姿勢の維持がいかに重要か』、『疲労を溜めないための効果的な休憩方法』といった具体的な知識や、それらを裏付ける医学的な根拠があったことで、より説得力を持って要望を伝えることができました。」
「具体的には、長時間同じ姿勢で作業することによる身体への負担を軽減するため、リハビリで学んだ体幹の安定性や姿勢保持の重要性を説明し、『昇降デスクの導入』を提案しました。これにより、適宜姿勢を変えながら作業できるようになり、身体への負担が大幅に軽減されました。また、一定時間ごとにリフレッシュすることの重要性を踏まえ、リハビリで実践していた短時間の休息方法を参考に、『1時間ごとのリクライニング休憩のルール』を策定してもらうことができました。これらの配慮は、単なる希望ではなく、私自身の健康維持と業務遂行能力の向上に直結する医学的な根拠に基づいていることを明確に提示できたため、企業側も納得し、スムーズに導入してもらえたのだと思います。」
新しい価値観の確立:「貢献」と「時間の質」への深い洞察
インタビュアー: 病気を経験されたことで、人生観、特に仕事に対する価値観で最も大きく変化した点は何ですか?
Aさんの声: 「最も大きく変わったのは、仕事への向き合い方、そして人生全体における価値観です。以前は、長時間労働こそが『頑張っている証拠』であり、『成果を出すための絶対条件』だと信じて疑いませんでした。しかし、体調を崩し、リハビリに取り組む中で、長時間働くことだけが価値ではないということに気づかされました。むしろ、体調を維持しながら、限られた時間の中でいかに質の高い成果を出せるか、その方がはるかに重要だと考えるようになりました。」
「この変化は、『時間の価値』を深く認識するきっかけにもなりました。自分の身体と向き合い、健康を維持するために時間を使うこと、そしてその上で、集中して仕事に取り組み、質の高いアウトプットを出すこと。この一連のプロセスこそが、真の意味での『時間の有効活用』であると考えるようになったのです。そして、この新しい価値観の中で見出したのが、仕事を通じた『貢献』です。単に経済的な報酬を得るためだけでなく、自分の持っている知識やスキル、経験を活かして、誰かの役に立っているという実感、社会に対して価値を提供できているという感覚こそが、私の生きがいだと再認識しました。この『貢献』の実感が、私にとって最も大切な原動力となっています。」
まとめ|リハビリの経験は、あなたの「強み」になる
リハビリテーションは、単に身体機能の回復を目指すだけでなく、あなたの人生観を深く再構築し、プロフェッショナルな環境で必要とされる自己管理能力を養うための強固な土台であることを再確認してください。この期間は、あなたが自身の価値と能力を再発見し、未来のキャリアを形成するための重要なステップとなります。
読者の皆様へ
焦りや不安を感じることもあるかもしれませんが、リハビリの期間を「未来への投資」として捉えることが重要です。この時間を通じて培われる経験は、あなたのキャリアにおいて計り知れない価値をもたらします。
あなたがリハビリで培った『緻密な計画性』は、目標達成に向けた具体的なステップを設定し、それを着実に実行する能力を意味します。これは、プロジェクト管理や業務遂行において極めて重要なスキルです。また、『自己管理能力』は、自身の体調や精神状態を深く理解し、それらをコントロールしながら目標に向かって努力する力を指します。これは、ストレスの多い職場環境においても、冷静かつ効率的に業務を遂行するために不可欠な資質です。
これらのスキルは、どのような企業においても通用する揺るぎない「強み」となります。リハビリを通じて得た困難を乗り越える力、計画を立てて実行する力、そして自身の心身を律する力は、あなたの人間性を深め、プロフェッショナルとしての市場価値を高めます。その経験をあなたのキャリアの揺るぎない「強み」にするよう、私たちは力強く促します。この経験は、単なる過去の出来事ではなく、あなたの未来を切り開くための強力な武器となるでしょう。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。







