2025/10/08
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【インタビュー】絶望を乗り越え、前を向く|後天性障害を持つ私が語る仕事と人生のリアル

はじめに|人生が180度変わった日

突然の事故や病気で人生が一変した後天性障害者が抱える「絶望感」「過去の自分とのギャップ」。昨日までできていたことが、今日からできなくなる—その喪失感は計り知れません。

しかし、障害は人生を停滞させるものではなく、「新しい価値観」と「キャリア」を築くための転機となり得ます。

この記事では、絶望から立ち直るまでの心のプロセス、障害者手帳の取得がもたらすメリット、新しい働き方と人生観について、当事者のリアルな声を通じて徹底解説します。


絶望から立ち直るまでの心のプロセス

診断直後の「喪失」と「葛藤」

インタビュアー: 事故で脊髄を損傷し、車いす生活になったと診断された瞬間、どのような心境でしたか?

Aさん: 「診断直後は、すべてを失ったような深い絶望感に襲われました。昨日までできていた『歩く』という行為ができなくなり、健常者であった過去の自分とのギャップに、毎日本当に苦しみました。『もう以前の生活には戻れない』という喪失感で、未来が真っ暗に見え、正直、生きる希望を失いかけました」

「立ち直り」を支えたもの

インタビュアー: その絶望から、どのように立ち直ることができたのですか?

Aさん: 「立ち直りの鍵は、周囲のサポートでした。特に、リハビリテーション施設で同じ境遇の仲間に出会えたことが大きかったです。彼らの前向きな姿勢を見て、『自分だけじゃない』と思えるようになりました。家族や友人、そして支援機関のサポートが、『できないこと』を数えるのではなく、『今、できること』に目を向けさせてくれたんです。そこから、『障害があっても、できることを探して生きていこう』と、少しずつ前を向く勇気を持つことができました」


「障害者雇用」という選択がもたらした人生観の変化

障害者手帳の取得と「働き方」の再定義

インタビュアー: 障害者手帳を取得した時、どのような意識の変化がありましたか?

Aさん: 「手帳の取得は、『もう健常者には戻れない』という終わりではなく、『自分らしく働くための、新しい始まり』でした。手帳を持つことで、企業に配慮を求めながら働くという、『新しい働き方』の選択肢が拓けました。これは、『自分の弱さを認めた上で、社会とつながる』ための、前向きなスタートラインでした。以前の私にはなかった、現実的な希望を見つけることができました」

柔軟な勤務形態と「時間の価値」

インタビュアー: フレックスタイムや在宅勤務といった柔軟な働き方が、あなたの人生観にどのような影響を与えましたか?

Aさん: 「以前は『長時間働くこと』、つまり『時間=価値』だと思っていました。しかし、今は違います。『体調と相談して、集中して働くこと』に価値を見出すようになりました。在宅勤務やフレックスタイムなど、配慮を前提とした働き方が、通勤ストレスをなくし、体調管理と仕事の両立を可能にしました。これにより、『与えられた時間の中で、いかに質の高い成果を出すか』という、仕事への責任感と、『自分の時間の使い方』を深く感じさせてくれました」


新しいキャリアの築き方と今後の展望

活かすべきは「新しい自分」の強み

インタビュアー: 障害を負ったからこそ得られた、新しい強みはありますか?

Aさん: 「以前の自分にはなかった『共感力』や『緻密な計画性(自己管理能力)』といった、新しい強みを得られました。健常者の頃は気づかなかった、通勤や日常の小さなバリアに気づく力も強みです。この経験を活かし、同じ立場の人間を支えたいという、より深い貢献意識が生まれました。この新しい強みこそが、私のセカンドキャリアを支えています」

人生観を変える「貢献」という目標

インタビュアー: 今後の人生について、どのように考えていますか?

Aさん: 「障害者雇用という選択を通じて、社会とのつながりや自己肯定感の回復を実感しました。これからは、『自分らしく生きる』という目標を掲げ、同じ悩みを抱える人々を支えるための活動にも挑戦したいです。病気や事故を経験したからこそ、人の心の痛みがわかる自分を、社会に役立てたいと考えています」

家族との向き合い方

インタビュアー: 病気や事故を機に、ご家族との関係に変化はありましたか?

Aさん: 「病気や事故を機に、家族内での役割分担やコミュニケーションが大きく変化し、絆が深まりました。夫や子どもたちが積極的に家事を手伝ってくれるようになり、『一人で頑張らなくてもいい』という安心感が、私の心の支えになっています。病気を隠さずに、家族と『一緒に乗り越えるチーム』になれたことが、今の私にとって一番の宝物です」


まとめ|過去を乗り越え、未来を創る

障害は人生の終わりではありません。新しい価値観とキャリアを築くための転機となり得ます。

後天性障害と向き合う読者の皆様へ

  • 絶望は、新しい強みになる: 診断直後の「喪失感」や「絶望」は、あなたが乗り越えるべき最初の大きな壁です。しかし、Aさんが得たように、その経験は「共感力」や「緻密な自己管理能力」という、誰にも奪えない強みへと変わります。
  • 「一人で頑張らない」という勇気: 障害者手帳の取得は、決して終わりではなく、「自分らしく働くための始まり」です。柔軟な働き方(フレックス、在宅勤務)や、家族との新しい役割分担を通じて、「一人で頑張らなくてもいい」という安心感を土台に、未来を創ってください。
  • 時間の価値を再定義する: 「長時間働くこと」ではなく、「体調と相談して、質の高い成果を出すこと」に価値を見出すこと。この意識こそが、長期的なキャリアと幸福な人生を継続させる鍵となります。

あなたの勇気ある一歩が、新しい生き方を築くための最初の一歩となります。

投稿者プロフィール

八木 洋美
自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。
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