2025/10/09
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【リスク徹底分析】障害者雇用で「クローズ就労」を選ぶとどうなる?メリットと代償

はじめに|「オープン or クローズ」の決断がキャリアを左右する

就職活動において、障害をオープン(開示)するかクローズ(非開示)にするかの決断は、あなたの長期就労とキャリアに決定的な影響を与えます。どちらの道を選んでも、メリットとデメリットが存在します。

この記事の結論は、障害の特性、仕事の性質、症状の安定度という3つの軸から、後悔しないための戦略的な判断基準を提示することです。感情論ではなく、メリットとリスクを理解した上で、自分にとって最適な働き方を選びましょう。


「オープン」と「クローズ」がキャリアにもたらす影響

オープン就労のメリット・デメリット

障害者雇用枠を利用してオープンに働くことは、法的な支援を受ける上で最も安全な選択肢です。

  • メリット:
    • 合理的配慮の保証: 企業は法的に合理的配慮(勤務時間、業務内容、通院休暇など)の提供が保証されます。
    • 心理的安全性の確保: 職場の理解がある中で働くため、体調の波を隠す必要がなく、精神的な負担が軽減されます。
  • デメリット:
    • 無意識の偏見: 企業側の無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)にさらされるリスクがあります(例:「定時で帰る人」というレッテル)。
    • 業務の幅の制限: リスクを避けるために、責任の重い業務や、昇進につながる仕事から外される可能性があります。

クローズ就労のメリット・デメリット

クローズで一般枠に挑戦することは、自由度が高い反面、大きなリスクが伴います。

  • メリット:
    • キャリアの自由度と機会の増加: 障害を意識せずに評価されるため、一般枠の求人すべてに応募でき、選考機会が増加します。
    • 評価の公平性: 障害を意識されずに評価されるため、純粋に能力と成果で昇進・昇給のチャンスを得られます。
  • デメリット:
    • 体調悪化時のリスクヘッジが困難: 必要な配慮(通院、休憩、業務調整)がないため、体調を崩しても隠し通す必要があり、症状悪化や早期離職のリスクが非常に高いです。

後悔しないための戦略的判断フレームワーク

どちらの働き方を選ぶべきか、以下の3つの軸から自己分析を行いましょう。

軸1:症状の安定度と体調の波

この軸は、クローズ就労が可能かを判断する上で、最も重要な安全基準となります。

  • 判断基準: 症状が安定しており、配慮なしでも働ける期間がどの程度あるか。症状の波が大きい場合は、無理せずオープン就労を選ぶことが、体調を守る上で必須となります。

軸2:仕事の性質と必要な配慮のレベル

  • 判断基準: 求める配慮が「業務遂行に不可欠か」どうかで判断します。
    • クローズ向き: PCスキルのみで完結する業務や、体調の波が少なく、配慮なしでも成果を出せる場合。
    • オープン向き: 通勤時間の調整、静かな席、業務量の調整など、環境調整が長期就労に必須なら、オープンを選ぶべきです。

軸3:将来の目標と自己肯定感

この軸は、あなたの「心の健康」と「長期的な幸福感」を守るための判断基準です。単なる業務の遂行だけでなく、その働き方があなたの人生にプラスになるかを見極めます。

  • 判断基準: 専門性を追求したいのか、安定を最優先したいのか。
  • 心理的安全性と自己肯定感の維持:
    • クローズ就労の場合: 障害を隠して競争の激しい一般枠で働くことは、高い給与や昇進につながるかもしれませんが、「いつ症状が悪化するか」という不安や、「自分を偽っている」というストレスで自己肯定感が削られるリスクがあります。
    • オープン就労の場合: 障害をオープンにし、特性を理解してくれる職場で働くことは、心理的安全性が確保されます。配慮を受けながらも成果を出す経験が、「自分は能力を活かして貢献できている」という確かな自信につながり、長期的な精神の安定に貢献します。
  • キャリアの目標設定:
    • 安定優先: 体調の波が大きい場合は、安定して長く働くこと自体をキャリアの目標と定義し、オープン就労で無理のない環境を選ぶべきです。
    • 専門性優先: 専門性を追求したい場合でも、まずはオープン就労で足場を固め、スキルアップに集中できる環境を選ぶことが、結果的に目標達成への近道となります。

結論: 自分の心の健康を守るために、「見栄」や「世間体」ではなく、「配慮を求めることで、あなたは最高のパフォーマンスを発揮できる」という事実を、企業と共有できる働き方を選ぶことが重要です。


リスクを最小化する具体的な行動戦略

クローズで働く際のリスクヘッジ術

クローズで働く(障害を非公開にする)場合は、企業からの合理的配慮は期待できません。そのため、自己管理能力とリスクヘッジの仕組みが生命線となります。

  • 体調悪化時のリスクヘッジ: 万が一の体調悪化や、通院・治療が必要になったときのために、有給休暇を多めに確保しておくことが重要です。体調不良を「風邪」や「私用」で処理できるよう、病状が安定しているときから計画的に有給を温存しておきましょう。
  • 産業医面談の積極的な利用: 手帳を隠していても、企業が設置している産業医面談や健康相談は利用できます。これは、病状を会社に知られずに、第三者の専門家(医師)を通じて健康上のアドバイスや業務負荷の客観的な評価を得るための重要な「逃げ道」となります。面談を通じて「業務調整が必要」という医学的な意見を会社に上げてもらうことで、あくまで「一般社員としての健康配慮」という名目で支援を得られる可能性があります。
  • 情報の管理: 企業に知られたくない医療情報(通院先、病名など)は、スマートフォンやPC上で厳重に管理し、社内の共有スペースには残さないよう徹底しましょう。

オープンで働く際のコミュニケーション術

オープンに働く場合でも、単に「配慮が欲しい」と伝えるのではなく、あなたの能力を最大限に引き出すための「効率化の条件」として企業に提示することが、長期的な信頼関係につながります。

  • 戦略的言い換え術の重要性: 障害特性を「弱み」として開示するのではなく、「効率化の条件」として企業に伝える戦略的言い換え術を身につけましょう。企業は、配慮を「コスト」ではなく「生産性への投資」として捉えるようになります。
  • 具体的な会話例:
    • NG: 「集中力が続かないので、雑談はしないでください。」
    • OK: 「高い集中力が私の強みです。集中力を維持するために、作業中はノイズキャンセリングイヤホンの使用を許可していただけると、生産性が20%向上します。」
    • ポイント: 自分の要望(ノイズキャンセリング)を、会社が得られる明確なリターン(生産性向上)とセットで伝えることで、配慮の獲得が容易になります。

まとめ|あなたのキャリアは、あなたが決める

オープン/クローズの選択は、メリットとリスクを深く理解した上での「戦略的な選択」です。この決断は、誰かの意見や世間体ではなく、「自分の健康と、長期的なキャリア」を最優先に考えることで成功します。

クローズ就労という「リスクを伴う自由」

クローズ就労(障害を非公開にすること)は、キャリアの自由度を高め、選考機会を増やす大きなメリットがありますが、同時に体調悪化時のリスクヘッジが困難という大きな代償が伴います。

  • リスクヘッジの徹底: クローズを選ぶなら、自己管理能力資金的な余裕が必須です。有給を確保し、産業医面談などの「社内の一般健康管理サービス」を戦略的に活用して、限界が来る前にSOSを出せる仕組みを作ることが、長期就労の鍵となります。

究極の判断基準は「心の健康」

最も大切なのは、あなたの自己肯定感心の健康です。

  • 配慮が必要不可欠な場合: 症状の波が大きい、または通勤調整が必須であるなど、配慮が業務遂行に不可欠な場合は、迷わずオープン就労を選び、法的な保護と心理的な安心を確保すべきです。
  • 心理的安心を選ぶ勇気: 競争の激しい一般枠で無理に「普通」を装い、自分を偽るストレスは、必ず体調を悪化させます。理解者の中で安心して働く「オープン就労」も、キャリアを継続するための賢明で最もプロフェッショナルな選択です。

あなたのキャリアは、あなたが決めるものです。誰にも遠慮せず、ご自身の健康と、長期的な安定を最優先に考えて、後悔のない選択をしてください。

投稿者プロフィール

八木 洋美
自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。
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