2025/10/22
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【中小企業必見】「自社採用」の限界とリスク──障害者雇用でエージェント活用が不可欠な理由

はじめに|中小企業の障害者採用が直面する「定着の壁」

中小企業、特に製造業では、「人手不足の解消」のために障害者採用を急ぐ一方で、採用のノウハウ不足から短期離職(ミスマッチ)が多発しています。これは、採用コストと教育コストが無駄になるだけでなく、現場の負担増にもつながります。

本稿では、製造業の中小企業に焦点を絞って解説します。

経験不足の中小企業にとって、専門知識と定着支援を持つエージェントの活用は、もはや「選択肢」ではなく「不可欠な戦略」です。エージェントを頼ることで、中小企業は採用の失敗という巨大なコストを防ぎ、生産性を安定させることができます。


中小企業が陥りやすい「自社採用」の3大失敗

中小企業が「ハローワーク頼み」や「自前」で採用を進めた際に陥りやすい構造的な失敗を解説します。

失敗1:採用後の「ミスマッチ」とコスト増の深刻化

中小企業が障害者雇用を進める際、多くはハローワークや自社の求人サイトを利用して募集をかけます。しかし、この方法には「採用コスト」と「教育コスト」の無駄という深刻な問題が潜んでいます。

  • ミスマッチの発生とその影響: 書類選考や短時間の面接だけでは、応募者の具体的な障害特性や体調の波を正確に把握することは極めて困難です。その結果、入社後に「集中力が続かない」「騒音に耐えられない」「特定の作業が困難」といった予期せぬミスマッチが発生し、業務遂行に支障をきたします。このような状況では、社員が早期に離職してしまうケースが多く、結果としてこれまで投じた採用コストと教育コストが丸ごと無駄になってしまいます。これは単なる損失に留まらず、企業の人事担当者や現場の従業員に大きな負担と徒労感を与え、次の採用活動への意欲を削ぐ原因にもなります。
  • コスト増の多角的な要因: 短期離職が発生するたびに、企業は新たな人材を募集するために求人媒体への掲載費用を再度負担しなければなりません。さらに、新入社員の教育にかかった現場従業員の時間や労力もすべて損失となります。これには、業務指導の時間だけでなく、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)担当者の精神的負担や、他の従業員への業務しわ寄せによる生産性低下も含まれます。加えて、再度採用活動を行うための時間や、研修資料の準備、面接対応など、見えないコストも膨大に発生します。これらの費用や労力は、中小企業にとって経営を圧迫する大きな要因となり得ます。

失敗2:配慮の欠如による「短期離職」の連鎖

障害者雇用において、必要な「合理的配慮」が適切に提供されないことは、短期離職に直結する大きな問題です。

  • 現場の経験不足が招く問題: 中小企業の現場では、障害者雇用の経験が乏しいことが多く、障害のある社員に対してどのような配慮が必要か、具体的にどのような支援を行うべきかというノウハウが不足しています。そのため、「静かな席の確保」「業務量の調整」「休憩時間の柔軟な設定」「通院への配慮」といった合理的配慮を適切に提供できず、結果として社員が心身ともに疲弊してしまい、離職に至るケースが後を絶ちません。配慮の欠如は、単に業務の効率を下げるだけでなく、社員の尊厳を傷つけ、職場への信頼感を損なうことにもつながります。
  • 善意と結果の乖離: 企業側は「善意」をもって配慮を試みるものの、その方法が障害のある社員にとって本当に必要なものとズレていたり、逆に負担になってしまうことがあります。例えば、過剰な配慮が本人の自立を妨げたり、周囲との間に壁を作ってしまったりするケースもあります。また、配慮の基準が曖昧であったり、担当者によって対応が異なったりすることも、社員の不安を増大させ、早期離職につながる要因となります。適切な配慮は、単に「何かをする」だけでなく、社員一人ひとりの特性を理解し、きめ細かく対応する姿勢が不可欠です。

失敗3:「ノウハウの属人化」と継続性のリスク増大

障害者雇用は、単に採用して終わりではなく、継続的な支援とノウハウの蓄積が不可欠です。しかし、中小企業ではこの点において大きなリスクを抱えています。

  • 採用ノウハウの個人依存: 中小企業では、障害者採用に関するノウハウが、多くの場合、特定の採用担当者一人の経験や知識に依存しがちです。その担当者が、求職者との面談から入社後のフォローアップまで一貫して担い、個人の努力で良好な関係を築いているケースは少なくありません。これは一見効率的に見えますが、その担当者が異動や退職をした場合、それまで蓄積されてきた貴重なノウハウが社内から一瞬にして消滅してしまうという大きなリスクをはらんでいます。
  • 「ゼロからのやり直し」がもたらす打撃: ノウハウの属人化により、担当者が不在になると、企業は「また一からやり直し」という状況に陥ります。過去の失敗事例や成功体験が共有されていないため、新たな担当者は同じ過ちを繰り返しやすく、採用活動や入社後の定着支援において再び手探りの状態に戻ってしまいます。これにより、新たな採用コストや教育コストが無駄になるだけでなく、障害者雇用に対する企業全体のモチベーションが低下し、最終的には障害者雇用そのものから撤退してしまう可能性も生じます。企業全体でノウハウを共有し、体系化する仕組みを構築することが、障害者雇用の継続性を担保するために不可欠なのです。

エージェント活用が「不可欠な戦略」である理由

エージェントの活用は、中小企業が持つ「リソース不足」という弱点を補い、採用戦略を成功させるために不可欠な機能を提供します。

理由1:非公開求人と「質の高い」人材確保

障害者雇用専門のエージェントは、一般には公開されていない「非公開求人」を通じて、ハローワークなどの公的機関では出会えないような、高いスキルや専門性、そして意欲を持つ潜在層の障害者人材にアクセスすることが可能です。多くの中小企業は、採用活動において広報力やブランド力で大企業に劣るため、優秀な人材の獲得競争において不利になりがちです。しかし、エージェントを介することで、そうした「質の高い人材」を獲得する競争力を飛躍的に向上させることができます。これにより、自社の事業成長に貢献し得る多様な人材プールからの採用が可能となり、企業の潜在能力を最大限に引き出す道が開かれます。

理由2:定着率を上げる「事前調整」機能

エージェントが提供する最も価値ある機能の一つが、入社前の「事前調整」による定着支援です。障害者雇用においてミスマッチは、企業と求職者の双方にとって大きな負担となります。エージェントは、求職者の具体的な障害特性、必要な配慮事項、働き方への希望などを企業に正確かつ詳細に伝え、また企業側の業務内容や職場環境、提供できる配慮などを求職者に明確に伝えることで、入社前に「業務内容と配慮のすり合わせ」を徹底的に行います。この丁寧な調整プロセスにより、入社後の「こんなはずではなかった」というギャップを大幅に減らし、結果として早期離職のリスクを低減し、高い定着率を実現します。これは、企業が安心して障害者雇用を進める上で不可欠なサポートとなります。

理由3:法的な知識と定着支援の提供

障害者雇用を取り巻く法制度や助成金制度は複雑であり、多くの中小企業にとってその全てを正確に理解し、適切に活用することは容易ではありません。障害者雇用専門のエージェントは、こうした複雑な助成金申請のサポートや、入社後のジョブコーチ制度活用など、企業が不得手とする専門知識と定着支援に関するノウハウを外部から提供します。これにより、企業は法的な要件を遵守しつつ、利用可能な支援制度を最大限に活用できるようになります。また、入社後のフォローアップ体制の構築においても、エージェントは専門的なアドバイスとサポートを提供することで、企業が安心して障害者雇用を進め、長期的な人材育成と定着を実現するための強力なパートナーとなります。


採用成功のための具体的なエージェント活用術

業務内容の「ジョブ・カービング」を依頼

障害者雇用を成功させるためには、既存の業務をそのまま割り当てるのではなく、障害のある社員が最大限に能力を発揮できるような業務を創出することが重要です。そのためには、採用エージェントに具体的な「ジョブ・カービング」の依頼を行いましょう。

ノウハウ: 採用したい人物像を伝えるだけでなく、エージェントに「この業務を障害特性に合わせて細分化(ジョブ・カービング)してほしい」と具体的に依頼しましょう。例えば、「データ入力業務を、視覚情報処理に長けた方には優先的に割り当て、電話応対は聴覚特性を持つ方には別のタスクに切り替える」といった具体的な指示を出すことで、エージェントはより的確な提案が可能になります。これにより、社員の能力が最大限に活かせる「あなたにしかできない仕事」を創出できます。結果として、社員は自身の強みを活かして会社に貢献でき、企業側も生産性向上に繋がるという、双方にとってメリットの大きい体制を構築できます。

トライアル雇用・職場実習の積極的な活用

障害者雇用において、入社後のミスマッチは離職に繋がりやすく、企業・社員双方にとって大きな損失となります。このようなリスクを低減するために、トライアル雇用や職場実習を積極的に活用しましょう。

ノウハウ: 採用前にトライアル雇用を実施し、実際の業務適性と職場の雰囲気を本人に体験してもらうことで、入社後のギャップをなくすことが、定着への最大の布石となります。トライアル雇用期間中に、社員は実際の業務を通じて自身の能力や適性を確認でき、企業側も社員の働きぶりや職場への適応度を評価できます。また、職場実習も同様に有効です。短期間の実習であっても、企業文化やチームメンバーとの相性などを確認できる貴重な機会となります。これらの制度を積極的に活用することで、企業は採用後の定着率向上に繋がり、長期的な視点での障がい者雇用を実現できます。


まとめ|「定着支援」を外注する意識改革が、中小企業の未来を拓く

中小企業が障害者雇用においてエージェントを活用することは、「採用の失敗」という計り知れないコストとリスクを回避するための、極めて戦略的な外部委託です。多くの企業が陥りがちな「自前で全てを解決しよう」という考え方は、現代の複雑な雇用環境においては非効率であり、むしろ企業の成長を阻害する要因となりかねません。

特に障害者雇用においては、採用後の「定着支援」が成功の鍵を握ります。しかし、中小企業がこの定着支援を自社のみで完結させようとすると、専門知識の不足、人的リソースの限界、ノウハウの蓄積不足といった課題に直面しがちです。これにより、早期離職のリスクが高まり、結果として採用活動にかかった時間、費用、労力が無駄になってしまうケースが少なくありません。

専門のエージェントは、障害者個々の特性やニーズを理解し、企業文化に合わせた定着支援プログラムを提供します。例えば、職場環境の調整、同僚への啓発、定期的な面談による状況把握、困りごとへの早期対応など、多岐にわたるサポートを通じて、障害を持つ従業員が安心して長く働き続けられる環境を構築します。これにより、企業側は採用後のミスマッチや早期離職といったリスクを大幅に低減できるだけでなく、採用活動に専念できるというメリットも享受できます。

「自前で全てやる」という考え方を捨て、障害者雇用のプロフェッショナルであるエージェントのリソースを賢く活用することは、単にコスト削減やリスク回避に留まりません。企業の生産性向上、従業員のエンゲージメント強化、そして多様性を尊重するダイバーシティ推進という、企業の持続的な成長に不可欠な要素を力強く推進することにつながります。このような意識改革こそが、中小企業が新たな時代を生き抜き、社会貢献を果たしながら成長していくための重要な戦略となるのです。

投稿者プロフィール

八木 洋美
自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。
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