2025/10/19
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【採用の鍵】障害者雇用で「勤怠の安定」を証明する3つの戦略― 企業が本当に見ているのは「スキル」より“安定して働ける力” ―

はじめに|企業が求めるのは「スキル」より「安定」

障害者雇用の面接でよく聞かれる質問があります。
「これまでの職場ではどんな業務を担当していましたか?」
「体調が悪い時は、どのように対処されていますか?」

一見、スキルや経験を尋ねているように見えて、実は企業が見ているのは”長く安定して働けるかどうか”という一点です。

企業側が重視するのは、特別な能力や資格よりも「日々の勤務を安定して続けられる力」。
どんなにスキルが高くても、欠勤や早退が続けば組織としては戦力化が難しくなります。
逆に、地道でも継続的に働ける人は「信頼できる人材」として評価されやすいのです。

本記事では、企業が重視する“安定性”の正体をひも解きながら、
面接で「勤怠の安定」を具体的に証明するための3つの戦略を紹介します。


企業が重視する「安定性」の正体

企業が「勤怠の安定」を求める理由

企業にとって採用とは、“投資”です。
人を雇うには、求人広告費・採用面接・教育研修など、多くのコストがかかります。
そのため、採用担当者が最も恐れるのは「短期離職」。

特に障害者雇用枠では、定着率が企業評価に直結します。
安定して勤務できる人を採用できれば、組織の生産性だけでなく、社内の理解や雇用枠の維持にも好影響を与えます。
だからこそ、企業は面接の中で「長く続けられるかどうか」を、慎重に見極めているのです。

ブランクや短期離職が不利になる構造

過去にブランクがあると、「また同じように体調を崩してしまうのでは?」と企業は不安を感じがちです。
これは決して差別ではなく、「再発リスクをどう防ぐか」を判断するための合理的な視点ともいえます。

そのため、面接では「過去の不安定さ」ではなく「今の安定」を明確に伝えることが重要です。
たとえば、次のような説明が効果的です。

「以前は体調管理が難しい時期もありましたが、現在は通院・服薬を継続しながら生活リズムを整え、安定して働けています。」

このように、“改善の経過”を示すことで、過去よりも今の安定状態に焦点を当てることができます。


「セルフケア能力」の磨き方と証明術

セルフケア能力とは?

障害者雇用において最も重視されるスキルの一つが、セルフケア能力(自己管理能力)です。
これは「体調の波やストレスの兆候を早めに察知し、悪化する前に対処する力」を指します。

企業は、本人がどの程度自分の特性を理解し、どんなサイクルで働けるのかを知りたがっています。
つまり、セルフケア能力は“体調をコントロールできる人材かどうか”を判断する基準になるのです。

磨くべき具体的なスキル

スキル1:睡眠・生活リズムのルーティン化

規則正しい生活は、安定就労の土台です。
特に睡眠・食事・通院スケジュールを一定にすることで、体調の波を予防できます。
面接では、次のように具体的に伝えると説得力が増します。

「就寝・起床時間を固定し、週末もリズムを崩さないようにしています。体調管理アプリで毎日の睡眠時間と疲労度を記録しています。」

スキル2:疲労の「客観視」

「今日はなんとなく疲れている」という感覚ではなく、具体的なサインを数値化・可視化することが重要です。
たとえば、集中力が落ちた時に「作業時間」「誤字数」「休憩回数」などを記録しておけば、客観的に自分の状態を把握できます。
これにより、業務のペース配分や上司への相談もスムーズになります。


安定性を証明する面接での「戦略的アピール」

ブランクを「準備期間」に変える会話術

離職や休職の経験は、誰にでもあり得ます。
大切なのは「なぜ休んだか」よりも、「その期間に何を学び、どう回復したか」を語ることです。

たとえば、こう表現してみましょう。

「休職中は、体調を整えると同時に、在宅でWordとExcelの基礎スキルを学びました。
現在は日常的にPCを使い、リモート勤務でも問題なく業務を進められます。」

“休職”を“成長の準備期間”として語ることで、前向きな印象に変えることができます。

配慮の要求を「安定供給の条件」にする

面接で「どんな配慮が必要ですか?」と聞かれたとき、
単に「~が苦手なので配慮してください」と言うと、受け身な印象を与えてしまいます。

しかし、次のように言い換えることで、安定して成果を出すための条件として伝えられます。

「静かな環境であれば集中力を維持でき、正確なデータ入力が可能です。」
「短時間の休憩を挟むことで、安定したパフォーマンスを維持できます。」

このように、配慮を「成果を出すための前提条件」として説明することで、企業にとっての安心材料になります。


まとめ|安定性こそが「最強のスキル」

障害者雇用において、企業が求めているのは「特別なスキル」ではありません。
むしろ、「日々を安定して続ける力」こそが、最も価値のあるビジネススキルです。

セルフケア能力を磨き、日常の中で安定したリズムを築くことは、
長期的にキャリアを積み重ねるための最大の投資になります。

面接では、過去の不安定さではなく「現在の安定」「具体的な管理方法」「支援を活用する姿勢」を見せましょう。
企業が安心して採用できる人材は、“安定を言葉で証明できる人”です。安定は才能ではなく、戦略でつくるもの。
「選ばれる人材」になるために、今日からできる小さなセルフケアを積み重ねていきましょう。

投稿者プロフィール

八木 洋美
自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。
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