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【知らないと損】同一労働同一賃金は障害者雇用にどう適用される?給与格差をなくす知識

この記事の内容
はじめに|障害者雇用における「賃金格差」の現実

「同じ仕事をしているのに、どうして給与が違うのだろう?」
障害者雇用の現場では、今もなおこうした声が少なくありません。
日本の障害者雇用率は年々上昇し、多くの企業が雇用の機会を広げています。しかし一方で、給与や待遇の格差は依然として根深く、「せっかく就職しても長続きしない」ケースも後を絶ちません。
こうした課題の背景にあるのが、制度の誤解や運用のばらつきです。
「同一労働同一賃金」という言葉を耳にしたことがあっても、「障害者雇用にも関係あるの?」と疑問を抱く人事担当者は少なくありません。
結論から言えば、障害者雇用も例外ではなく、この原則の対象です。
制度を正しく理解し、評価や賃金体系を見直すことで、企業は「公平さ」を担保し、結果的に定着率を高めることができます。
この記事では、同一労働同一賃金の基本から、障害者雇用における実践的なポイントまでを分かりやすく解説します。
同一労働同一賃金とは?制度の基本と障害者雇用への適用
制度の定義と目的
「同一労働同一賃金」とは、雇用形態に関係なく、同じ業務・同じ責任を負う労働者には、同じ賃金を支払うべきという原則です。
この制度は2020年に施行された「パートタイム・有期雇用労働法」などで明確化され、正社員と非正規社員の不合理な待遇差をなくすことを目的としています。
ただし、ここで言う「同じ仕事」とは単純に「同じ部署にいる」「同じ時間働いている」という意味ではありません。
仕事内容・責任範囲・配置転換の有無・成果への期待度などを総合的に見て、実質的に同等であれば同等の賃金が求められるという考え方です。
障害者雇用への適用
障害者雇用も当然このルールの対象です。
一方で、障害の特性に応じて「合理的配慮」を行い、業務範囲や責任を一部限定することがあります。
ここで重要なのは、
「合理的配慮がある=給与を下げてよい」ではない
という点です。
賃金差が認められるのは、業務内容や責任の違いが明確に存在する場合のみ。
たとえば、一般社員が顧客折衝や納期管理を含む仕事を行うのに対し、障害者雇用枠の社員がデータ入力など一部の工程に特化している場合などです。
「業務の違い」はあっても、「障害があるから」という理由だけでの格差は許されません。
制度を理解していないと、知らず知らずのうちに“違法な賃金格差”を生むリスクがあります。
「同じ仕事なのに給与が違う」が生じる構造的な理由

理由1:業務内容の「限定」による賃金差
障害者雇用では、職場定着を重視するあまり、業務を細分化し、負担を軽減するケースが多く見られます。
これは「ジョブ・カービング」と呼ばれ、本人に合った働き方を設計できる一方で、結果的に業務の責任範囲が狭まり、給与が低く設定される構造を生み出します。
重要なのは、「限定業務=単純労働」と捉えないこと。
同じ職場で異なる役割を担っていても、その業務が企業にどのような価値をもたらしているのかを、きちんと評価する仕組みが必要です。
理由2:評価基準の「曖昧さ」
もう一つの原因は、評価制度の軸が「時間」に偏っていることです。
「残業をたくさんしている人」「長く在席している人」が評価されやすい文化の中では、時短勤務や配慮を受けて働く障害者は、成果を出していても低く評価されがちです。
つまり、「働き方が違う=能力が低い」と誤解されてしまう構造です。
評価基準を明確にせず、形式的に「雇用枠」で線引きしてしまうと、本人のモチベーション低下にもつながります。
理由3:昇進・昇格の機会の不平等
「責任あるポジションを任せにくい」「通院などで不在が多い」といった理由で、昇進や昇格の対象外とされるケースも少なくありません。
しかし、これは無意識のバイアスによる判断である場合が多いです。
配慮の範囲を理由に「役職機会を奪う」ことは、制度の趣旨にも反します。
「できない仕事を決める」のではなく、「できる仕事を広げる」視点が求められます。
企業が取るべき評価制度改革の具体策

評価軸の「脱・時間」化戦略
これからの人事制度で重要なのは、「どれだけ働いたか」ではなく、「何を生み出したか」を基準にすることです。
在席時間や残業時間ではなく、業務の質・難易度・成果・チーム貢献度を定量的に評価する仕組みが不可欠です。
たとえば、
- 成果指標(KPI)を業務単位で設定する
- 定期面談で「工夫点」や「改善提案」も評価対象にする
など、定性的・定量的両面から貢献を見える化する方法があります。
業務の「見える化」と役割の明確化
合理的配慮により業務を限定する場合でも、その業務が会社の成果にどのように貢献しているのかを明示することが重要です。
「Aさんの業務があったから、〇〇のミスが減った」「〇〇時間の効率化につながった」など、貢献度を数値化・言語化することで、給与設定の透明性が高まります。
この「見える化」は、本人のモチベーションアップにもつながり、定着率の向上に直結します。
求職者が活用すべき「賃金交渉術」と「自己防衛」
貢献度を武器にする交渉術
障害があるからといって、給与交渉を遠慮する必要はありません。
大切なのは、「配慮があれば、これだけの成果を出せる」という形で、貢献度と配慮をセットで伝えることです。
たとえば、
「通院日を確保できれば、週4日勤務でデータ管理を安定して行えます」
「在宅勤務が認められれば、レポート分析の精度を上げられます」
といった具体的な条件提示は、企業にとっても納得感があります。
転職エージェントの活用
また、障害者専門の転職エージェントを活用することで、求人票では分からない「一般社員との賃金差」や「評価制度の透明性」を把握できます。
信頼できるエージェントは、企業との調整役となり、不当な格差がないかを事前に確認してくれます。
特に「同一労働同一賃金」に敏感な企業ほど、評価制度を整備している傾向があります。
そのような企業を選ぶことが、長期的なキャリア形成につながります。
まとめ|公平な評価が、企業と社員の未来を拓く
障害者雇用における賃金格差は、「制度の理解不足」と「評価の曖昧さ」から生じることが多いです。
同一労働同一賃金の原則を正しく適用すれば、給与の不公平感は減り、企業も社員も安心して働ける関係を築けます。
企業へメッセージ:
公平な評価制度は、離職を防ぎ、優秀な人材を惹きつける最強の戦略です。
「配慮=特別扱い」ではなく、「個性を活かす仕組みづくり」として捉えることが、これからの企業競争力を左右します。求職者へメッセージ:
自分のスキルと貢献度を正当に評価してもらうために、制度を理解し、発信する力を持ちましょう。
“同一労働同一賃金”は、単なる法律ではなく、あなたのキャリアを守る知恵でもあるのです。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。







