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【2025年最新版】障害者雇用における合理的配慮とは?職場で求められる配慮内容と伝え方を徹底解説

この記事の内容
障害者雇用促進法の改正により、企業には障害者の雇用義務だけでなく、合理的配慮を提供する責任も強化されました。
その中で、働く側にとっても「自分に必要な配慮事項を整理し、適切に伝える」ことが、より良い就労環境をつくる第一歩となっています。
本記事では、障害者雇用における配慮事項の重要性と、具体的な考え方・伝え方について詳しく解説します。
障害者雇用と合理的配慮の概要
障害者雇用とは
障害者雇用とは、障害のある方がその能力を発揮しながら社会で働き続けられるように、企業が一定の割合で障害者を雇用することを指します。
日本では障害者雇用促進法に基づき、企業は常時43.5人以上の従業員がいる場合、障害者を2.5%以上雇用する義務があります(2024年時点)。
これは単なる「雇用数の確保」だけでなく、職場で実際に働き続けるための支援体制、働きやすい環境整備も含まれます。
合理的配慮の意義と背景
合理的配慮とは、障害のある方が他の労働者と平等に就労の機会を得られるように、職場環境や業務内容を調整する取り組みのことを指します。
「できないことを無理に求めない」「必要な工夫を施す」ことが、合理的配慮の基本的な考え方です。
合理的配慮が必要な理由
- 機会の平等
障害を理由に就労の機会が制限されることなく、誰もが平等に働ける社会を実現するため。 - 能力発揮の支援
適切な配慮によって本来の能力を最大限に発揮できる環境を整備するため。 - 持続的な雇用の促進
働き続けやすい職場環境をつくることで、障害者の長期就労・定着率向上を図るため。
これらは個々の配慮の積み重ねによって企業全体のダイバーシティ推進にもつながります。
合理的配慮の注意点
- 過度の負担を企業に強いることは求められない
あくまで「合理的」な範囲内での配慮であり、企業側に過大な負担がかかる内容は求めることができない。 - 本人の自己理解と情報提供が不可欠
適切な配慮を受けるためには障害者本人が自分の特性を理解し、どのような配慮が必要かを整理して伝える努力も求められる。 - 企業との対話が重要
配慮を一方的に要求するのではなく、企業と対話しながら現実的な解決策を探る姿勢が大切です。
このように合理的配慮は「権利の主張」と「対話」のバランスによって成り立つものだと理解することが重要です。
合理的配慮の具体例
【勤務形態に関する配慮】
- 通院や体調管理のための勤務時間の調整(時短勤務、フレックス勤務)
- テレワークや在宅勤務の導入
- 休憩時間の増加やタイミングの調整
【業務内容に関する配慮】
- 重量物運搬など身体的負担が大きい業務の免除
- 一度に複数タスクを抱えず、作業を段階的に指示してもらう
- 適性に合ったポジションへの配置転換
【職場環境に関する配慮】
- バリアフリー対応(車椅子利用者向けスロープやエレベーター設置)
- 照明や音環境の調整(発達障害や聴覚障害への配慮)
- 障害特性に応じたコミュニケーションツールの導入(手話通訳、筆談ボード、チャットツールなど
【人間関係・業務指示に関する配慮】
- 定型的な指示方法(口頭指示だけでなく、文書化してもらう)
- 業務目標や評価基準を明確化する
- ハラスメント防止のための職場研修の実施
このように合理的配慮は単なる「特別扱い」ではありません。
一人ひとりの能力を最大限に引き出し、組織全体の生産性向上にも寄与する重要な施策です。
配慮事項の具体的な書き方・伝え方

障害者雇用の現場において自身の配慮事項を正しく伝えることは、働きやすい環境を整える第一歩です。
企業側も「何に対して、どのような配慮が必要なのか」が明確になれば、より適切なサポートを検討しやすくなります。
ここでは配慮事項を記載・伝達する際のコツと、具体的なポイントについて詳しく解説します。
配慮事項を明確に記載するコツ
障害特性を理解する
まず配慮事項を書くうえで最も重要なのは、自身の障害特性を深く理解しておくことです。
障害の名称だけでは具体的な困りごとや必要な配慮は伝わりにくいもの。
日常生活やこれまでの就労経験を振り返り、次のような視点で整理してみましょう。
- どのような場面で困難を感じるか
- 体調や集中力に波があるか
- どのような支援や配慮があれば、能力を発揮しやすいか
例えば「精神障害」と一口に言っても、うつ病、双極性障害、統合失調症など必要な配慮はまったく異なります。
同じ診断名であっても個人差が大きいため、「私にとって必要な配慮」を具体的に把握することが大切です。
自己理解を深めるためには、主治医やリワーク支援機関、キャリアカウンセラーとの面談を通じて客観的な視点を得るのも効果的です。
これにより主観だけに頼らず、より正確な自己分析が可能になります。
必要な配慮と工夫を具体的に示す
障害特性を踏まえたうえで、次に「必要な配慮事項」を整理していきます。
できるだけ具体的な行動レベルで記載することがポイントです。
【例】
【抽象的な書き方】「無理な働き方はできません」
【具体的な書き方】「週40時間勤務が負担になるため、週30時間程度の短時間勤務を希望します」
単に「配慮してほしい」と書くだけではなく代替案や提案を添えると、企業側にとって非常に分かりやすくなります。
【例】
「業務に集中するために静かな作業スペースを希望しますが、難しい場合はイヤーマフなどの使用を認めていただけると助かります」
「座位での作業が長時間続くと疲労するため、1時間に1回程度の立ち上がり休憩を取らせてください」
「何が課題か」+「どうすれば対応できるか」をセットで示すことで、企業側も柔軟に対応しやすくなります。
さらに配慮事項を伝える際は「優先順位」を意識することも重要です。
すべての希望を一度にかなえるのは現実的に難しいため、特に譲れない点とできれば対応してほしい点を分けて整理しておきましょう。
【例】
- 優先度高:出退勤時間のフレックス対応
- 優先度中:業務開始時のタスク整理サポート
- 優先度低:休憩時間中の静かなスペース確保
■配慮事項記載のテンプレート(例)
【障害名】精神障害(うつ病)
【困難な状況】
- 午後になると集中力が低下しやすい
- 体調に波があり、急な休養が必要になる場合がある
【希望する配慮事項】
- 午前中中心のシフトを希望
- フレックスタイム制の活用
- 短時間勤務(1日6時間程度)への対応
【代替案・工夫】
- 体調に合わせたリモート勤務の選択肢を持たせる
- 休養明けにタスク整理サポートを希望
このように整理された形で伝えると、採用担当者や現場上司にも配慮内容が伝わりやすくなり働き始めた後のすれ違いも防げます。
配慮事項の伝え方のポイント
障害者雇用において、自身が必要とする配慮を企業に「正しく」伝えることは非常に重要です。
単に伝えるだけでなく、相手にきちんと「伝わる」ことを意識することで、働きやすい環境づくりがスムーズになります。
ここでは配慮事項の伝え方について、押さえるべきポイントを具体的に解説します。
「伝える」から「伝わる」を意識する
配慮事項を伝える際は、単に自分の希望や事情を述べるだけでは不十分です。
大切なのは「相手が理解し、行動に移せるレベルで伝える」こと。
そのためには以下のような工夫が求められます。
- 結論から先に伝える
例えば「私は体調に波があるため、短時間勤務を希望します」と最初に要点を明確に述べる。そのあとに背景や理由を補足していくと、相手も話の筋道をつかみやすくなる。 - 専門用語を避け、具体的に伝える
医学用語や専門的な障害名だけを述べると、相手に伝わらないこともある。例えば「双極性障害だから」とだけ言うのではなく、「気分が高揚しすぎたり落ち込んだりすることがあります」と状況を具体的に伝えると理解が深まる。 - 相手の立場を考える
企業側の採用担当者や上司にとっては、配慮することで職場にどんな影響があるのかが気になるポイント。「配慮をお願いしたいが業務には支障が出ないよう自己管理します」など、相手の不安を払拭する説明も加える。
自分に合ったコミュニケーション方法を示す
- 口頭での説明が得意な場合
面接や打ち合わせの場で、直接自分の言葉で説明する。事前に伝えたい内容をメモして整理しておくと緊張しても話しやすい。 - 文書での伝達が得意な場合
面談前に配慮事項をまとめた文書(配慮希望シートなど)を提出する。特に口頭での表現が苦手な方や、情報を整理して伝えたい方におすすめ。 - 図解や表を使う場合
視覚的に伝えると理解が深まるケースもある。例えばスケジュール表に勤務可能時間帯を示したり、困難を感じる業務内容をリストアップした表を作成したりするのも効果的。
自分が発信しやすい方法を伝える
- 「体調変化があった場合は、チャットやメールで早めに報告します」
- 「急な体調悪化の際は、直属の上司に電話で連絡することを希望します」
- 「定期的な1on1ミーティングで、業務負担について相談できる機会を設けていただけるとありがたいです」
このように発信しやすい方法を事前に企業側とすり合わせておくことで、「不安を抱えたまま働く」状態を避け、安心して業務に集中できる環境をつくることができます。
特に障害のある方は「自分から困りごとを言い出すことが負担になる」ことも多いため、
最初から発信スタイルを明確にしておくことは、精神的な安全確保のうえでも極めて有効です。
配慮事項の事例
書類での配慮事項の伝え方
- 「〇〇障害により、長時間の立ち仕事が困難です。短時間勤務や座位中心の業務をご配慮いただけますと幸いです」
- 「通院のため、月2回程度、勤務時間の調整が必要になる場合があります」
- 「コミュニケーション面に配慮が必要です。口頭説明よりも、チャットやメールを活用したやり取りが円滑です」
このように「どのような状況で、どのような配慮が必要か」を一文で端的に伝えます。
また履歴書とは別に「配慮希望事項シート」を添付する形式を取る企業も増えています。
その場合はフォーマットに沿って記入し、ポイントを押さえた表現を心がけましょう。
勤務形態の配慮事例
- 時短勤務
例)体力に制限がある場合フルタイム勤務ではなく、6時間勤務や週4勤務などの短縮勤務を希望。 - 時差出勤
例)朝の通勤ラッシュを避けるため、始業時刻をずらして10時出社・18時退社とする。 - テレワーク・在宅勤務
例)体調管理や通院のしやすさを考慮し、原則在宅勤務とし必要時のみ出社。 - 通院配慮
例)定期的な診察・リハビリのため、月1~2回、勤務時間の一部を通院に充てられるよう調整。
業務内容の配慮事例
- 業務内容の調整
例)聴覚障害があるため電話応対業務を免除し、チャットやメールを使った社内連絡業務に集中する。 - 役割分担の明確化
例)体力面に制限がある場合、重い荷物の運搬や長時間の立ち作業を別のスタッフに分担しデスクワークに専念できるようにする。 - ツール・設備の配慮
例)視覚障害がある場合、画面読み上げソフトを導入し業務用PCに設定してもらう。 - 指示方法の工夫
例)聴覚障害や発達障害のある方に対しては、口頭指示に加え文書やチェックリストなど視覚情報を使った指示方法を取り入れる。
大切なのは「困っていること」ではなく、「こうすれば働ける」という提案型で伝えること」です。
そうすることで企業側も具体的なイメージを持ちやすくなり、実現可能性が高まります。
また配慮をお願いする際には「一方的に要求する」のではなく、「こうした配慮をいただければ、御社で長く貢献できる自信があります」といった前向きな姿勢を添えると、より好印象につながります。
配慮事項が分からない場合の対処法

障害を抱えながら就職・転職活動を進める際、「どんな配慮が必要なのか、自分でもはっきり分からない」「どこまで企業に伝えたらいいか迷ってしまう」という悩みを抱える方は少なくありません。
配慮事項が分からない場合にどうすればいいのか、具体的な対処法を解説します。
支援機関の利用
一人で悩み続けるのではなく、専門の支援機関に相談することが何よりの近道です。
支援機関では障害特性に応じた働き方のアドバイスや、配慮事項の整理、求人紹介まで幅広くサポートしてくれます。
ハローワークの専門援助窓口
- 自分に合った職種や働き方の提案
- 必要な配慮事項の整理
- 応募書類や面接対策
- 障害者雇用枠の求人紹介
地域障害者職業センター
- 職業評価(適性検査など)
- 配慮事項の具体的整理
- トライアル雇用制度の利用
- 職場実習やジョブコーチ支援
またジョブコーチ(職場適応援助者)による支援を受けることで、就労後も職場定着しやすくなります。
必要に応じて企業側にも直接アドバイスを行ってくれるので、よりスムーズな就労が可能になります。
障害者雇用に特化した求人・転職サイト
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- 専門のキャリアアドバイザーによる面談
- 企業との面接調整や配慮事項の代行交渉
- 就労後の定着サポート
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このような支援機関をフル活用しながら、自分に合った配慮事項を整理していきましょう。
まとめ
配慮事項は自分らしく働くための“環境づくり”の第一歩です。
しかし自分ひとりで配慮事項を明確に言葉にするのは難しい場合もあります。
そんな時こそハローワークや地域障害者職業センター、障害者ナビといった支援機関を活用することが非常に重要です。
支援機関は客観的な視点であなたの特性を整理し、
必要な配慮を一緒に言語化しさらにそれを企業に伝えるためのサポートまでしてくれます。
またこれらの支援機関では応募書類作成から面接同行、就労後のフォローまで一貫して支援が受けられるため、就職・転職活動全体を安心して進めることができます。
もし「何から始めたらいいか分からない」と感じているなら、まずは支援機関の相談窓口に足を運んでみることをおすすめします。
一人で抱え込まず、専門家と一緒にあなたに合った働き方を見つけていきましょう。