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ネフローゼ症候群でも仕事はできる!就労に役立つ注意点と働き方のポイントを解説

この記事の内容
慢性疾患を抱えながら働くことは、たしかに簡単なことではありません。
特に「ネフローゼ症候群」という診断を受けたとき、多くの方が「これからも働き続けられるだろうか」と不安に思うことでしょう。
ですが、適切な治療と自己管理、そして周囲の理解を得ながら、キャリアを諦めずに歩み続ける道は必ずあります。
本記事では、ネフローゼ症候群に関する基礎知識を整理しつつ、就労を目指す上で押さえておきたい重要なポイントについて詳しく解説していきます。
ネフローゼ症候群の基礎知識
ネフローゼ症候群とは
ネフローゼ症候群は、腎臓の中にある「糸球体」という血液をろ過する部分に異常が起こり、血液中のタンパク質が大量に尿へ漏れ出す状態を指します。
その結果、血液中のタンパク質濃度(特にアルブミン)が低下し、体液バランスが崩れてさまざまな症状を引き起こします。
「症候群」と名付けられている通り、単一の病気ではなく、いくつかの異なる病態が共通して引き起こす症状群を指しています。
小児から成人、高齢者に至るまで幅広い年齢層で発症し、症状や経過も多様です。
原因
ネフローゼ症候群の原因は、大きく以下の2つに分類されます。
一次性(原発性)ネフローゼ症候群
腎臓自体に原因があり、他の全身疾患を伴わずに発症するケースです。
代表的な原発性ネフローゼ症候群には以下が含まれます。
- 微小変化型ネフローゼ症候群(小児に多いが成人にも見られる)
- 巣状分節性糸球体硬化症
- 膜性腎症
これらは自己免疫異常が関与していると考えられています。
二次性ネフローゼ症候群
糖尿病性腎症、全身性エリテマトーデス(SLE)、B型肝炎ウイルス感染症、悪性腫瘍、薬剤性(NSAIDsなど)など、他の疾患や条件が引き金となって発症するタイプです。
成人におけるネフローゼ症候群では、二次性の割合が比較的高いとされています。
症状
ネフローゼ症候群の症状は、主に以下のようなものがあります。
- 全身の浮腫(むくみ)
顔、手足、腹部、場合によっては胸水や腹水として体腔に水が溜まることもあります。 - 急激な体重増加
むくみにより短期間で数キログラム以上増える場合もあります。 - 尿量減少
排尿回数・量が減少するのが特徴です。 - 疲労感・倦怠感
浮腫や貧血による体力低下、日常生活動作(ADL)の低下がみられることも。 - 易感染性
血液中の免疫グロブリンが失われるため、風邪や肺炎など感染症にかかりやすくなります。 - 血栓症のリスク増大
血液が濃縮されることで、肺塞栓症や深部静脈血栓症を発症する危険が高まります。 - 高脂血症
肝臓が血中タンパク質不足を補うために脂質合成を促進するため、血中脂質(コレステロール・中性脂肪)が上昇します。
これらの症状は病態や重症度によって個人差があり、軽度なケースから命に関わる重篤なケースまで幅広く存在します。
治療方法
ネフローゼ症候群の治療目標は、タンパク尿を抑え、血液中のアルブミン濃度を正常に戻し、症状を改善することです。
薬物療法
【ステロイド薬】
- プレドニゾロンが主に使用され、糸球体の炎症を抑えます。
- 効果が出るまで数週間~数か月かかる場合があります。
【免疫抑制剤】
- ステロイド抵抗性、依存性の場合に使用。
- シクロスポリン、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチルなどが代表的。
【利尿薬】
- 浮腫を軽減するために使用されますが、慎重な管理が必要です。
【抗凝固療法】
- 血栓症予防のため、ワルファリンやDOAC(直接作用型抗凝固薬)を使用することもあります。
【脂質異常治療】
- スタチン系薬剤などによる脂質管理も並行して行われます。
食事療法
- 塩分制限(1日6g未満):むくみと高血圧予防。
- 水分管理:医師の指示に応じて適切な摂取量を設定。
- タンパク質摂取量調整:急性期は制限、改善後はバランスよく摂取。
- 脂質制限:コレステロール・中性脂肪管理。
生活管理
- 十分な休養:体力温存と感染予防のため無理をしない。
- 感染症対策:手洗い・うがい、必要に応じたワクチン接種(インフルエンザ・肺炎球菌など)。
- 体重・血圧・尿量の自己管理:日々のモニタリングが再発防止に役立ちます。
ネフローゼ症候群と仕事の両立のポイント

慢性的な疾患を抱えながら働くことには、さまざまな不安や壁があります。
特にネフローゼ症候群は、見た目には分かりづらい症状が多いため、職場での理解を得ることに苦労する方も少なくありません。
しかし、適切なタイミングで病気を開示し、必要な配慮を求めることで、無理なく長く働き続けることは十分に可能です。
ここでは、ネフローゼ症候群と仕事を両立するために押さえておきたいポイントを詳しく解説します。
職場への病気の開示
開示のタイミングと伝え方
職場に病気を伝えるかどうかは、非常に悩ましい問題です。
しかし、ネフローゼ症候群の場合、通院や体調管理のために柔軟な対応が必要になることも多いため、適切なタイミングで開示することが望ましいケースが多くなります。
【開示の適切なタイミング】
- 内定後〜就業開始前
新たに就職する場合は、内定通知後、就業条件などが固まった段階で開示するのが理想的です。これにより、勤務時間や業務内容の調整をスムーズに進めやすくなります。 - 在職中の場合
体調が悪化して業務に支障をきたしそうな場合や、通院が頻繁になった場合は、早めに上司や人事部門に相談することが重要です。
【伝え方のポイント】
- 「病名」と「具体的な症状や制約」をセットで伝える。
- 「今できること」と「配慮してほしいこと」を明確に整理して伝える。
- 感情的にならず、冷静かつ前向きな姿勢を見せる。
例:
「私はネフローゼ症候群という腎臓疾患を抱えています。日常生活には大きな支障はありませんが、定期的な通院と、感染症予防のために体調管理が必要です。業務には全力で取り組みますが、必要に応じて配慮いただけると助かります。」
開示のメリットとデメリット
病気を開示することで得られるメリットと、注意しておきたいデメリットも理解しておきましょう。
【メリット】
- 職場の配慮を受けやすくなる
勤務時間調整、休憩時間確保、業務内容の調整など、体調に応じた柔軟な働き方がしやすくなります。 - 周囲の理解を得やすくなる
見た目では分からない疾患であっても、事前に共有することで、無理を強いられにくくなります。 - 急な体調変化にも対応しやすい
発作的な体調悪化が起きた際も、周囲が適切に対応できる体制を作れます。
【デメリット】
- 誤解や偏見を受けるリスク
残念ながら、一部の職場では「病気=働けない」という誤った認識を持たれる可能性もあります。 - 昇進・異動のチャンスに影響する可能性
体調を理由に、負担の少ない部署への配置転換や昇進見送りになるケースもゼロではありません。
そのため、開示にあたっては「誰に」「どの範囲で」「どの程度伝えるか」をよく考えた上で進めることが重要です。
職場での配慮と工夫
必要な配慮の伝え方
病気を開示する際には、単に「配慮してほしい」と漠然と伝えるのではなく、「どのような配慮が必要か」を具体的に伝えることがポイントです。
【伝えるべき配慮事項例】
- 長時間立ちっぱなし・座りっぱなしの回避
- 適宜休憩を取りながら作業できる環境
- 重い荷物を持つ作業の回避
- 空調管理(寒暖差の激しい環境を避ける)
- 感染症流行期のリモートワーク許可
【伝え方のコツ】
- あくまで「できないこと」ではなく、「こうすればできる」を中心に伝える。
- 会社側が対応可能な範囲かを事前に想定し、現実的な要求をする。
例:
「長時間の立ち仕事が続くと体調に負担がかかるため、座り仕事中心にしていただけるとありがたいです。できる範囲でサポート業務などに積極的に取り組みます。」
通院への対応
ネフローゼ症候群では、定期的な通院・検査が不可欠です。
通院をスムーズに行うためにも、事前に勤務時間や勤務日の調整について職場と話し合っておくことが大切です。
【通院対応のポイント】
- 定期通院日はあらかじめ固定して、勤務シフトに組み込んでもらう。
- 半休や時短勤務など、柔軟な働き方を提案する。
- 有給休暇や特別休暇制度を活用する。
特に、治療の段階(ステロイド投与中、免疫抑制剤使用中など)によって体調が大きく変動するため、その都度、体調に応じた勤務調整を申請できる体制を作ることが重要です。
体調管理と仕事の進め方
慢性疾患を抱えながら働き続けるためには、「ただ頑張る」だけではなく、自分の体調と仕事をどう両立させるかを常に意識して行動することが大切です。
特にネフローゼ症候群のような体調に波のある病気では、無理をすればするほど症状が悪化するリスクがあります。
ここでは、体調管理と仕事の進め方において押さえておきたい具体的なポイントを解説します。
休憩の取り方と業務調整
仕事中に適切に休憩を挟むことは、体力の温存だけでなく、パフォーマンスの維持にも直結します。
【休憩のコツ】
- 時間を決めてこまめに休む
1〜2時間ごとに5〜10分の小休憩を入れることで、体力消耗を防ぎます。 - 立ちっぱなし・座りっぱなしを避ける
軽く体を動かすことで血流を促進し、むくみや血栓症のリスクを軽減できます。 - 休憩中はリラックスを意識する
スマホを見続けるよりも、目を閉じる・深呼吸する・軽いストレッチを行うなど、脳と体をリセットする休憩を取りましょう。
【業務調整のポイント】
- 重要な作業は体調の良い時間帯に行う
朝が比較的元気な人は午前中に集中作業を、午後に疲れやすい人は軽作業や事務処理を割り振ります。 - タスクを細分化する
「一気に終わらせる」よりも、「小さなタスクに分けてこなす」ことで体調に合わせた進め方ができます。 - 無理を感じたら早めに相談
頑張りすぎて悪化させる前に、上司や同僚に業務量の見直しを相談する勇気も必要です。
上司や同僚との関係性
病気と付き合いながら働くには、周囲との信頼関係が不可欠です。
【良好な関係を築くために】
- 普段から誠実なコミュニケーションを心がける
できること、できないことを素直に伝える習慣を持ちましょう。 - 感謝の気持ちを忘れない
配慮を受けたとき、サポートをしてもらったときには、しっかりと感謝を伝えることが、長期的な信頼関係につながります。 - 病気の話題を必要以上に重くしない
病気のことは必要な範囲で、前向きに、簡潔に伝える。相手に過度な心配をかけず、プロフェッショナルな印象を保つことも大切です。 - 自己管理に努める姿勢を見せる
周囲は「サポートする側」であっても、「依存される」ことに疲れてしまう場合があります。自立した姿勢を持つことで、職場での信頼感を高められます。
やりたい仕事とできる仕事を分けて考える

病気によって体力や集中力に制約が出ると、これまでやりたかった仕事が難しくなる場面も出てきます。
そんなとき大切なのは、やりたい仕事と今できる仕事を冷静に分けて考えることです。
キャリアプランの見直し
これまで描いてきたキャリアプランが、病気によって大きく変わることもあります。
しかし、それは「諦める」ことを意味しません。むしろ、「再設計」するチャンスと捉えることが重要です。
【見直しのステップ】
- 現状を正確に把握する
体力、通院頻度、勤務可能時間など、今できること・できないことを明確にします。 - 価値観を棚卸しする
「何を大切にしたいのか」「どんな働き方が自分に合うのか」を見つめ直します。 - 現実的な目標を立てる
短期・中期・長期に分け、無理なく達成できるステップを設計します。 - 必要ならキャリアチェンジも検討する
職種変更、業務範囲の変更、働き方(正社員→パートタイムなど)の変更も選択肢に入れましょう。
キャリアプランを「過去の延長線上で考える」のではなく、「今の自分に合った未来を新たに描く」という発想に切り替えることが成功のカギです。
新しい可能性の探求
「病気があっても、こんな働き方ができる」
「今まで興味を持たなかった分野に、挑戦できるかもしれない」
そんな前向きな視点で、新たな可能性を探っていきましょう。
【新たな可能性を広げるために】
- スキルアップ・資格取得
パソコンスキル、語学、カウンセリングスキルなど、身体への負担が少ないスキルは、将来の大きな武器になります。 - テレワークやフリーランスへの挑戦
在宅で完結できる仕事(ライター、デザイン、プログラミング、事務代行など)に目を向けるのも一つの手段です。 - ボランティアや副業からスタートする
本格的な転職や独立を目指す前に、小さく始めて経験を積みましょう。
どんな状況にあっても、人生を広げる道は必ず存在します。
病気によって「制限される」のではなく、「新しい自分を発見する」機会ととらえることが、前向きなキャリアづくりにつながるのです。
ネフローゼ症候群のある方が利用できる就労支援

ネフローゼ症候群を抱えながら働くことは、体力や通院の必要性といった課題を伴いますが、決して不可能ではありません。
大切なのは、体調に無理のない働き方を選び、適切な支援を受けながら社会とつながり続けることです。
日本には、慢性疾患を抱える方が安心して就労できるよう、多様な支援制度や機関が整備されています。
ここでは、ネフローゼ症候群の方が利用できる主要な就労支援について詳しくご紹介します。
ハローワーク
まず最初に活用を検討したいのが、全国に展開する**ハローワーク(公共職業安定所)**です。
【ハローワークの支援内容】
- 障害者専門窓口の設置
内部疾患(心臓病・腎臓病など)を持つ方も対象で、病状に応じた相談が可能です。 - 障害者枠求人の紹介
一般求人とは別に、障害に配慮された働き方が可能な求人が多数掲載されています。 - 職業リハビリテーション支援
再就職に向けた相談、職業訓練の斡旋、面接同行など、きめ細かな支援が受けられます。 - トライアル雇用制度
一定期間試用雇用を行い、就職後の定着を目指す制度。働きながら職場との相性を見極めることが可能です。
【ポイント】
ハローワークは、病名や障害種別にかかわらず相談に応じてくれます。
就労支援の出発点として、まずは最寄りのハローワークに相談してみましょう。
地域障害者職業センター
より専門的な支援を求める方には、地域障害者職業センターの利用をおすすめします。
【地域障害者職業センターの支援内容】
- 職業評価(アセスメント)
本人の適性や能力、職業準備性を科学的に評価。体調に負担の少ない仕事選びをサポートします。 - 職業指導・カウンセリング
就職活動中の不安、職場適応へのアドバイス、面接対策などを実施。 - ジョブコーチ支援
職場に出向いて、定着支援を行う専門スタッフがサポート。職場での配慮事項についても助言してくれます。 - 就業後のフォローアップ
就職後も定期的に訪問や面談を行い、長期定着を支援します。
【ポイント】
医師や福祉機関とも連携しながら、トータルサポートを受けられるのが特徴です。
病状や体調に不安がある方ほど、センターの支援を受けるメリットは大きいでしょう。
障害者就業・生活支援センター
体調管理と生活支援の両方が必要な場合は、**障害者就業・生活支援センター(ナカポツセンター)**が強力な味方となります。
【ナカポツセンターの支援内容】
- 就労支援
就労相談、職場体験、実習先紹介、就職後の定着支援など、多岐にわたる支援を提供。 - 生活支援
住居問題、金銭管理、医療受診、福祉サービス利用に関するサポート。 - 関係機関との連携
医療機関、福祉施設、行政窓口との連絡調整も担い、本人を中心とした支援チームを構築。
【ポイント】
生活基盤が安定しないと、いくら就職しても長続きしません。
体調と生活に課題を感じている方には、ぜひ利用を検討してほしい支援機関です。
就労移行支援事業所
「今すぐ働くのは不安」「ブランクが長くて自信がない」という方には、就労移行支援事業所がおすすめです。
【就労移行支援事業所の支援内容】
- 職業訓練プログラム
ビジネスマナー、パソコンスキル、事務作業、軽作業などを実践的に学び、就労に向けた準備を行います。 - 就職活動支援
履歴書・職務経歴書の作成支援、面接練習、求人紹介など。 - 企業実習
実際の職場で短期体験を行い、自分に合った働き方を探ります。 - 定着支援
就職後も、職場訪問や相談対応を通じて、安心して働き続けるためのサポートが続きます。
【ポイント】
一般就労を目指す前段階として、無理のないペースでリハビリ的に就労力を高めることができます。
体調に合わせたカリキュラムが組める点も魅力です。
障害者雇用専門の求人サイト
最近では、障害者雇用に特化した求人サイトも多数登場しており、自宅からでも就職活動を進めやすくなっています。
【障害者専門求人サイトの特徴】
- 内部障害や慢性疾患に理解のある企業が掲載
ネフローゼ症候群など、目に見えない障害に対しても配慮を示す企業が集まっています。 - 在宅勤務求人も充実
テレワーク中心の求人も増えており、通勤の負担が心配な方には大きなメリットです。 - キャリアアドバイザーのサポート
エージェントサービスがあるサイトでは、専任スタッフが履歴書添削、面接対策、企業交渉まで手厚くサポートしてくれます。
▶ 障害者専門求人サイト【障害者ナビ】はこちら
まとめ
ネフローゼ症候群があるからといって、働くことを諦める必要はありません。
体調やライフスタイルに合わせた働き方を選び、無理のないペースでキャリアを築いていくことが何より大切です。
ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、就労移行支援事業所、障害者専門求人サイト。
これらの支援機関やサービスをうまく活用することで、自分に合った職場環境や働き方に出会うチャンスが大きく広がります。
まずは一歩、相談から始めてみましょう。
焦らず、自分のペースで、安心して働き続けられる未来を一緒に築いていきましょう。