2025/10/14
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人事必見!退職金制度の有無が「定着率」を左右する理由と企業の戦略

はじめに|退職金は「福利厚生」ではなく「将来の安心」

障害者雇用において、「給与水準が低い」「老後の生活に不安がある」という声は少なくありません。
特に、非正規雇用からスタートするケースも多く、「この先ずっと働けるのだろうか」「貯金ができるだろうか」と将来に不安を抱える方もいます。

そんな中で、いま改めて注目されているのが 退職金制度確定拠出年金(DC)制度 です。
これらは単なる“福利厚生”ではなく、働く人が将来の生活設計を描くための「経済的な安全網」といえます。

企業にとっても、退職金制度は 長期就労を促進し、定着率を高める戦略的な仕組み
特に障害者雇用では「安定して働ける環境づくり」が求められており、退職金制度の有無が採用競争力を左右する時代になっています。

本記事では、退職金制度の基礎から、確定拠出年金(DC)の仕組み、求人票の見方、そして企業が導入すべき理由までをわかりやすく解説します。


退職金制度の現状と「ある・なし」がもたらす差

障害者雇用における退職金の実態

厚生労働省の調査によると、正社員に対して退職金制度を設けている企業は約8割に上ります。
一方で、契約社員やパートなどの非正規雇用では、退職金制度を導入している企業は2割前後にとどまっています。

障害者雇用枠であっても、正社員であれば一般社員と同じ条件で退職金制度の対象になるケースが多いですが、
非正規雇用の場合は「対象外」となっていることが少なくありません。

その結果、同じ職場で長く働いても「老後資金が確保できない」という格差が生まれてしまうのです。

しかし最近では、障害者雇用を「短期雇用の枠」から「長期的な人材育成の枠」へと見直す動きが進み、企業が退職金制度を再整備するケースも増えています。

企業が退職金制度を設ける「戦略的理由」

退職金制度は、単なる従業員への“感謝金”ではなく、企業にとっても重要な戦略ツールです。

  • 定着率の向上
    退職金は、長く働くほど受取額が増える仕組みが一般的です。
    そのため、従業員が「もう少し頑張って続けよう」と思えるインセンティブになります。
    結果として、採用・育成コストの削減につながります。
  • 優秀な人材の確保
    求人票に「退職金制度あり」と記載することで、求職者からの信頼度が上がります。
    特に障害者雇用では「長期的に働ける環境かどうか」が重視されるため、福利厚生の充実度が企業ブランドにも直結します。
  • 企業の社会的評価の向上
    障害者雇用を“安価な労働力”としてではなく、“同じ社員として将来を支える”姿勢を示すことは、ESG・SDGsの観点からも高い評価を受けます。

知っておきたい退職金の仕組み:DC(確定拠出年金)とは?

退職金の種類:一時金と年金

退職金には大きく分けて「一時金」と「年金型」があります。

  • 退職一時金制度
    退職時にまとまった金額を一括で支払う仕組み。
    昔ながらの退職金制度で、勤続年数や最終給与を基に算出されます。
  • 確定拠出年金(DC)制度
    企業が毎月一定額の掛金を拠出し、従業員が自ら運用を行う制度です。
    将来の受取額は運用成果によって変動しますが、“退職金”と“年金”の両方の機能を兼ね備えており、近年急速に普及しています。

確定拠出年金(DC)の仕組みとメリット

確定拠出年金には「企業型DC」と「個人型(iDeCo)」の2種類があります。
障害者雇用の職場で導入されるのは主に企業型です。

  • 仕組みの概要
    企業が毎月掛金を拠出 → 従業員が投資信託などの運用商品を選択 →
    運用益を含めた金額が退職時に支給される、という流れです。
  • 主なメリット
    1. 運用益が非課税(通常の投資より有利)
    2. 掛金が所得控除の対象(節税効果)
    3. 転職時にも資産を持ち運べる(ポータビリティ)
    4. 将来に向けた「自分の資産形成」への意識が高まる

つまり、確定拠出年金は企業と従業員が一緒に“将来への安心”を積み立てる仕組みです。


将来の安心を築くための求人チェック術

求人票のチェックポイント

退職金制度があるかどうかは、求人票や企業HPの「福利厚生欄」に記載されています。
ただし、記載がない場合もあるため、以下のように確認しておくことが重要です。

  • 「退職金制度あり」と明記されているか
  • 「確定拠出年金(DC)」または「退職一時金制度」と書かれているか
  • 雇用形態(正社員・契約社員・嘱託)によって制度が異なるか

もし記載が不明確な場合は、ハローワークや人材紹介会社などのエージェントを通じて確認するのが安心です。
「正社員登用後に制度が適用されるのか」「勤続年数による支給条件はあるか」など、具体的に聞くことで、将来の計画を立てやすくなります。

退職金がある企業を選ぶことのメリット

退職金制度が整っている企業を選ぶ最大のメリットは、「将来の安定」です。

  • 老後資金の確保
    年金だけでは不足しがちな生活資金を補う役割を果たします。
    障害を持ちながらも安心して生活を続けるための大きな支えとなります。
  • 精神的な安定
    「将来に備えがある」という安心感は、体調やメンタル面にも良い影響を与えます。
    不安が減ることで仕事への集中力が高まり、長期的な就労意欲の維持にもつながります。
  • キャリア形成の基盤
    退職金制度がある企業では、社員の成長支援や評価制度が体系的に整っている傾向があります。
    結果として、「長く働ける・成長できる」職場づくりが実現します。

企業が取るべき「退職金制度戦略」

障害者雇用の現場で課題となっているのは、「雇用の短期化」です。
体調変化や職場環境への不安などで、1年以内に離職するケースも少なくありません。

企業がこの課題を解決するために有効なのが、退職金制度を活用した“定着支援策”です。

  1. 勤続年数に応じた支給設計
    →「1年、3年、5年」で支給率を段階的に上げることで、長期就労を促進。
  2. 確定拠出年金の導入による“未来の見える化”
    →「毎月○円ずつ積み立てられている」と可視化することで、働くモチベーションが持続。
  3. 障害者社員向けの金融教育・制度説明会の実施
    → 制度を理解できるよう支援することで、本人の安心感と企業への信頼を強化。

これらの仕組みを導入することで、
「雇用したけどすぐ辞めてしまう」という課題を減らし、
“人が育ち、根づく組織” を実現できます。


まとめ|退職金制度は、未来の自分への「投資」

退職金制度は、単なる「福利厚生」ではなく、
社員一人ひとりの将来を支える企業の“信頼の証”です。

障害者雇用の現場では、短期雇用から長期就労へと意識を変える転換期にあります。
その中で、退職金や確定拠出年金は、従業員に“安心して働き続けられる理由”を提供します。

働く人にとっては、「退職金制度の有無」を
給与や休日と同じように“働く条件”として確認すべき重要項目です。

そして企業にとっては、退職金制度こそが「人材の定着」と「社会的信頼」を同時に高める戦略。

今こそ、退職金を“過去の慣習”ではなく、“未来への投資”として見直すときです。

投稿者プロフィール

八木 洋美
自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。
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