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障害の種類でこんなに違う!就労でぶつかる課題と解決のヒント

この記事の内容
はじめに|障害の種類でこんなに違う!就労でぶつかる課題と解決のヒント

働くことに意欲があっても、「自分の障害だとどんな課題にぶつかるのだろうか?」「他の人はどうやって乗り越えているのだろう?」と不安を感じる方は少なくありません。
同じ「働く」というゴールを目指していても、障害の種類(精神、発達、身体)によって、直面する壁や必要なサポートは大きく異なります。
この記事では、代表的な3つの障害種別ごとに「よくある課題」と「乗り越えるヒント」を詳しく解説します。あなたの障害特性を正しく理解し、それに見合った解決策を見つけることが、長く安定して働くための確かな一歩となります。
うつ病などの精神障害:波のある体調と職場の理解不足
精神障害は、外見からは症状が分かりにくいため、体調の波がある中で「安定して働く」ことに大きな課題があります。
症状の波がある中で「安定して働く」難しさ
精神障害(うつ病、双極性障害など)の特性として、「症状の波」があることが挙げられます。昨日と今日で体調や集中力が劇的に違うことがあるため、健常者と同じペースで「安定して働く」ことが最も難しい課題です。疲れやすさや意欲の低下といった症状が、予期せぬ形で現れることがあります。
よくある職場での課題(急な欠勤・集中力の低下・誤解される)
- 急な欠勤・早退: 体調の急変により、やむを得ず欠勤や早退をすることが、チームや上司に負担をかけているのではないかという心理的プレッシャーとなります。
- 集中力の低下: 強い疲労感や薬の副作用により、長時間の作業や複雑なタスクで集中力が続かないことがあります。
- 「怠け」と誤解される: 症状が外見からは分かりにくいため、「やる気がない」「努力が足りない」といった無理解や偏見を生みやすいです。
工夫のヒント(無理をしない働き方・定期面談・支援機関の活用)
無理をしない働き方:長期就労のための「8割の力」マネジメント
精神障害を持つ方が長期就労を目指す上で最も重要なのは、体調の波が来たときに備える「予備力」を持つことです。
- 「8割の力」で働く意識: 症状が安定している時期でも、決してフルパワーで働くのではなく、「8割の力で働く」という意識を持つことが重要です。残りの2割を体調の悪化や突発的な用事に備える「バッファ」とすることで、体調の波が来たときに深刻な休職に至るリスクを防げます。
- 休息のルール化: 疲労感や集中力の低下は、症状悪化のサインです。あらかじめ「1時間作業したら5分休憩する」といった休息のルールを自分で決め、実践することが、安定したパフォーマンスの維持につながります。
定期面談の活用:体調の「リスク管理」を会社と共有する
体調や業務量を細かく報告・調整することが、長期就労の鍵となります。これは、決して「監視」ではなく、チームで体調のリスクを管理するための重要なプロセスです。
- 体調の可視化: 上司や人事を交えた定期的な面談(週に1回、月に1回など)の場を設けてもらい、業務量と体調を数値やグラフで共有しましょう。
- 具体的な調整: 上司は、そのデータに基づき、業務量の増減を判断できます。「今日は8割しか力が出せない」という正直な報告が、適切な業務調整を導き、長期的な信頼関係の土台となります。
支援機関の活用:復職・転職活動前の「土台作り」
- 復職・転職前の準備: 就労移行支援事業所や地域障害者職業センターなどで、集団でのリハビリや職業訓練を受け、体調管理のリズムを整えてから復職・転職活動に臨むことは非常に有効です。
- 第三者の視点: これらの支援機関のスタッフは、ご本人と企業の間に入り、客観的な視点から業務内容や環境の調整をサポートしてくれるため、ミスマッチの少ない就職・転職につながります。
発達障害(ASD・ADHDなど):コミュニケーションと環境の合わなさ
発達障害を持つ方は、高い集中力や能力を発揮できる一方で、職場環境やコミュニケーションのルールが合わないことで、大きなストレスを感じがちです。
人間関係・マルチタスクが苦手な傾向
- コミュニケーションの苦手さ: ASD(自閉スペクトラム症)の特性として、曖昧な表現や比喩の理解が難しい、雑談が苦手といった傾向があり、職場の人間関係で孤立しやすいです。
- マルチタスクの困難: ADHD(注意欠如・多動症)の特性などにより、複数の仕事を同時に進めることや、優先順位をつけることが難しく、ミスにつながりやすいです。
よくある職場課題(曖昧な指示が理解しづらい・感覚過敏など)
- 抽象的な指示が理解しづらい: 上司の「あれ、よろしく」といった曖昧な指示では、何から手をつけて良いか分からず、作業がストップしてしまうことがあります。
- 感覚過敏: 職場の騒音や蛍光灯の光、人の動きなどが過度な刺激となり、集中力の維持が難しくなることがあります。
工夫のヒント(明確な指示、タスクの見える化、在宅勤務など)
- 明確な指示の要求: 5W1Hを明確にした指示や、口頭指示ではなくチャットやメールで「文字」として残してもらうことを上司に依頼しましょう。
- タスクの見える化: タスク管理アプリやホワイトボードを活用し、業務の優先順位と進捗状況を常に可視化する。
- 在宅勤務・環境調整: リモートワークを活用し、集中できる静かな環境を自分で整えることも有効な手段です。
身体障害:環境整備と「遠慮しない配慮」の必要性

身体障害を持つ方が直面する課題は、主に「物理的なバリア」と「体力的な制約」です。
物理的なバリアと移動の制約
- 物理的なバリア: 車いすユーザーにとって、段差や狭い通路、不十分なバリアフリートイレなど、職場や通勤経路の物理的な制約が大きな課題となります。
- 疲労蓄積: 長時間の座位や、杖・装具の使用による疲労の蓄積も無視できない課題です。
よくある職場課題(設備対応・通勤・疲労蓄積など)
- 設備対応の遅れ: 入社前の「合理的配慮」の確認が不十分で、入社後に必要な設備の設置が遅れることがあります。
- 通勤の負担: 満員電車や長時間の通勤が、体力を奪い、仕事への集中力を低下させます。
工夫のヒント(リモート活用・機器導入・本人の要望ヒアリング)
- リモートワーク活用: 在宅勤務やフレックスタイム制を活用し、通勤の負担をゼロにする。
- 機器導入: エルゴノミクスに基づいた椅子や、音声入力ソフトなど、必要な機器の導入を企業に具体的に提案する。
- 本人の要望ヒアリング: 企業側は、「何ができて、何ができないか」を遠慮せずに本人から聞き取り、過剰な配慮を避け、本当に必要な支援に集中しましょう。
どの障害にも共通する“働く上での壁”
職場の理解不足・孤立感
「職場の理解不足からくる『孤立感』は、退職理由のトップです。この壁を壊すには、『雑談を強制しない』という配慮と、『雑談の場を設ける』という努力の両方が必要です。
同僚・上司の皆様へ:雑談は、心理的なバリアを壊し、対等な関係を築くための最も有効なツールです。苦手な方には無理をさせず、共通の話題(趣味や日常)を通じて、一人の人間として関係を築く努力が、真のチームワークにつながります。」
配慮を伝える難しさ
「配慮を求めたら不利になるのではないか」という不安から、症状が悪化するまで一人で困難を抱え込んでしまう。これは、障害を持つ方が直面する最も深刻な課題の一つです。
1. 「配慮」はリスクではない:自己理解と前向きな姿勢
この不安を解消するためには、まず「配慮を求めること=仕事の能力を最大限に引き出すための条件提示」であるという意識を持つことが重要です。
- 心理的な壁の正体: 「障害があることを伝えたら、どう思われるだろう」「仕事ができない人間だと判断されるのではないか」といった不安から、配慮を求めることができず、結果的に体調を崩してしまうケースが少なくありません。
- 求められる意識: 企業に配慮を求めることは、あなたの能力を最大限に発揮し、会社に貢献するための「戦略的な提案」です。
2. 「困りごと」を「貢献」に変える具体的ノウハウ
このステップは、あなたの訴えを単なる「感情論」ではなく、客観的な事実に変えるために不可欠です。
- 「困りごとリスト」の活用:
- 抽象的NG: 「集中力が続きません」「疲れやすいです」
- 具体的OK: 「騒音下では集中力が50%以下になります。静かな席であれば、データ処理の正確性を95%以上に保てます」
- このように、「課題」と「解決策」と「貢献できるリターン」をセットで伝えることで、企業側は配慮を前向きに検討できます。
3. 専門家を巻き込む:客観的な「裏付け」
- 意見書の重要性: 診断名や手帳がない場合でも、産業医や主治医に相談し、「業務遂行上、〇〇の環境調整が望ましい」という専門的な意見書(診断書ではない)を書いてもらうことを検討しましょう。
- 目的: この意見書が、あなたの訴えが医学的・専門的な根拠に基づいているという客観的な裏付けとなり、会社との交渉力を高めます。
これらのステップを踏むことで、あなたは不安を乗り越え、自分らしく働くための環境を自らの力で築くことができます。
まとめ|「孤立」を避ける勇気が、あなたのキャリアを救う

職場の人間関係の悩みは、決して他人事ではありません。退職理由のトップであるこの壁を乗り越える力は、あなた自身の中にあります。
あなたの最大の敵は「孤立」です。 人間関係の壁が原因で「もう辞めたい」と感じた時こそ、立ち止まってください。
- 「記録」を最強の武器にする: ハラスメントやトラブルがあった際は、感情的な訴えではなく、「いつ、どこで、誰が、何を言ったか」という客観的な事実(証拠)を詳細に記録してください。この記録こそが、人事や産業医を動かし、あなた自身を守る最大の武器となります。
- 温かい拒否の技術: 苦手な人との摩擦を避けるため、「その話は業務と関係ないので、控えさせていただきます」といった、角を立てない拒否のフレーズでコミュニケーションのバリアを築きましょう。
- 「逃げ道」を確保する: 「一人で抱え込まないこと」が最大の防御術です。上司や人事に加え、社外の支援機関(ジョブコーチ、転職エージェントなど)に相談先を分散させましょう。
あなたの勇気ある一歩が、自分らしく働く権利を守り、キャリアを救います。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。







