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障害者トライアル雇用とは?企業と本人が“見極めながら働ける”制度を徹底解説

この記事の内容
はじめに:障害者雇用の“ミスマッチ”を減らすには
「採用したけれど、思っていた仕事と違った」「職場環境が合わず、早期退職になってしまった」
――障害者雇用の現場では、こうした“ミスマッチ”が少なくありません。
障害者雇用促進法により、企業には一定の雇用義務がありますが、採用後の定着が課題となっているケースは多いです。
このミスマッチを防ぎ、お互いに“見極めながら安心して働ける仕組み”として注目されているのが、「障害者トライアル雇用制度」です。
この記事では、企業の人事・採用担当者向けに、制度の仕組み・賃金・活用メリット・注意点をわかりやすく解説します。
トライアル雇用とは?制度の概要

障害者トライアル雇用は、障害のある方を一定期間試行的に雇用し、業務適性や職場との相性を確認できる制度です。
厚生労働省が推進し、主にハローワークを通じて実施されますが、
近年は民間の人材紹介会社(エージェント)がサポートに入るケースも増えています。
- 期間: 原則3か月(最長6か月まで延長可)
- 対象者: 障害者雇用を希望する求職者(ハローワークまたは民間エージェント紹介)
- 実施企業: 障害者雇用に前向きな事業主(紹介を受け、一定期間雇用する企業)
エージェント経由の場合も、ハローワークと同様に「相互理解を深める機会」として活用されます。
特に、エージェントでは以下のようなサポートが可能です。
- 企業と本人の間に立ち、事前の配慮事項や業務設計を調整
- トライアル期間中も定期的にフォロー面談や課題共有を実施
- 終了後、本採用への移行判断を客観的に支援
この期間中、企業と本人の双方が「働き方」や「業務の適性」を確かめることができ、
終了後に本採用(継続雇用)するかどうかを判断します。
制度の目的は“お試し採用”ではなく、相互理解の促進にあります。
つまり、「雇う・雇われる」という一方的な関係ではなく、
“一緒に働けるか”を確認する時間としての3か月なのです。
トライアル雇用の仕組みとお金の流れ
◆ 賃金は発生します!
トライアル雇用期間中も、企業は通常どおり雇用契約を結びます。
そのため、賃金は必ず発生します。
(※最低賃金以上の支払いが義務)
給与は企業が本人に支払い、国からは企業に対して助成金が支給される仕組みです。
◆ 障害者トライアル雇用助成金の概要
| 項目 | 内容 |
| 対象 | ハローワーク紹介によりトライアル雇用した事業主 |
| 支給額 | 1人あたり月4万円(最長3か月間) |
| 条件 | 雇用保険適用事業所であること、期間終了後の継続雇用を検討していることなど |
助成金は、賃金の一部を補う目的で支給されます。
また、トライアル終了後に正式雇用(常用雇用)へ移行した場合は、「特定求職者雇用開発助成金」などの追加支援を受けられる場合もあります。
◆ 社会保険や雇用保険の取り扱い
トライアル雇用中も、労働条件によっては社会保険や雇用保険の加入対象になります。
雇用契約を「実習」や「ボランティア」と混同しないよう注意が必要です。
企業側のメリット

障害者トライアル雇用には、企業にとっても大きなメリットがあります。
① 採用リスクを抑えながら“実際の適性”を確認できる
面接だけでは分からない「実務での対応力」「チームとの相性」を確認できます。
業務を切り出しながら、無理のない範囲で配慮を検討できる点が大きな利点です。
② 助成金の活用で費用面の負担を軽減
最大12万円(3か月分)の助成金を受け取ることができ、採用初期コストを抑えられます。
③ 定着率の向上につながる
ミスマッチを防げるため、正式雇用後の早期退職を防ぎ、結果的に定着率アップにつながります。
また、職場の障害者理解を深める機会としても有効です。
④ 社内啓発・ダイバーシティ推進にも貢献
実際に受け入れてみることで、現場の社員が「どう接すればいいか」を体感的に学べます。
障害者雇用を「特別な取り組み」ではなく「組織文化の一部」として定着させやすくなります。
本人(求職者)側のメリット
企業にとってだけでなく、障害のある本人にも多くのメリットがあります。
- 自分に合った職場・仕事内容を体験的に確認できる
- 実際の業務を通して「できること・苦手なこと」を整理できる
- 働いた経験を「経歴」として履歴書に記載できる
- 支援機関やジョブコーチのサポートを受けながら挑戦できる
“失敗できる機会”としてのトライアル雇用は、本人にとって大きな成長の場となります。
企業側もその成長を支える姿勢が求められます。
注意点とトラブルを防ぐポイント
トライアル雇用は有益な制度ですが、誤解やトラブルを防ぐために以下の点に注意が必要です。
① 「安価な労働力」として利用しない
制度の目的は“見極め”であり、“コスト削減”ではありません。
単純作業を任せるだけで終わらせず、本人の特性に合わせた業務設計が重要です。
② 契約条件を明確にする
賃金・勤務日数・期間・業務内容は必ず書面で提示しましょう。
あいまいな条件のまま始めると、終了時にトラブルになりがちです。
③ 終了後の「判断」を曖昧にしない
3か月後にどうするのか――
「採用するのか」「延長するのか」「不採用とするのか」を、本人にしっかり伝えることが信頼関係につながります。
④ 支援機関と連携する
就労移行支援事業所やハローワークの担当者と三者で情報共有を行いましょう。
課題や配慮事項を一緒に確認することで、円滑な受け入れができます。
成功事例と、今後の活用の方向性
実際にトライアル雇用を活用した企業では、次のような成果が報告されています。
- 事務補助業務(中小企業):3か月のトライアルを経て、本人が自信をつけ本採用へ。今では社内文書整理を任される中心メンバーに。
- 清掃業務(製造業):作業手順を可視化したことで、職場全体の効率化にもつながった。
- IT関連(在宅勤務):オンラインでのトライアル雇用を実施し、コミュニケーションの工夫を定着後も継続。
このように、トライアル雇用は単なる“お試し採用”ではなく、企業の理解を深め、現場改善を促す学びの期間として活用できます。
今後は、在宅勤務やテレワーク型のトライアル雇用など、柔軟な形での活用も広がっていくでしょう。
まとめ:トライアル雇用は“見極める制度”ではなく“歩み寄る制度”

障害者トライアル雇用は、
「雇う側」「働く側」どちらかが一方的に判断する制度ではありません。
お互いが理解し、歩み寄るための仕組みです。
- 賃金は必ず発生する(企業が支払い、国から助成金)
- 実際の業務を通して“適性”と“配慮”を確認できる
- 終了後に正式雇用へつながる可能性が高い
トライアル雇用を上手に活用することで、
企業にとっても本人にとっても“無理のない雇用”が実現できます。
そしてその積み重ねが、社会全体の障害者雇用の質を高める第一歩となるでしょう。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。







