2025/08/26
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障害者雇用と勤務地選び|地元で働くか、都市へ転居するかの判断基準

はじめに

障害のある方が就職を考えるとき、多くの人が「地元で働きたいけれど、求人が少ない」というジレンマに直面します。逆に、「都市に出れば仕事の選択肢は広がるけれど、転居の負担が大きい」と悩む人も少なくありません。
実際、障害者雇用の求人は首都圏・愛知・大阪といった都市部に集中しており、地方では数も職種の幅も限られているのが現状です。

一方で、近年は在宅勤務やテレワークの普及によって、「転居せずに働ける」道も広がりつつあります。とはいえ、すべての企業が在宅勤務に対応しているわけではなく、その活用には注意点もあります。

本記事では、「勤務地選び」の判断基準を整理し、地元で働くか都市へ転居するか迷っている方が、自分に合った道を選べるよう解説します。併せて、企業側に求められる視点についても触れていきます。


障害者雇用の勤務地に関する現実

都市部に求人が集中する理由

都市部に障害者雇用の求人が多いのは、いくつかの構造的な理由があります。

大手企業・本社機能が集まる

東京や大阪、名古屋といった大都市には大手企業や本社機能が集中しています。これらの企業は従業員数も多く、障害者雇用率の法定雇用義務を満たすため、専門的なポジションや事務系の業務を比較的整備しやすい環境があります。

雇用義務を満たすためのポジションが用意されやすい

大手企業は採用計画が明確であり、障害者雇用のポジションを「事務補助」「庶務」「システム関連業務」などとして計画的に確保しています。結果として、都市部には障害者に配慮した職場が集まりやすくなっています。


地方では求人が限られる現状

一方で、地方には求人の少なさという課題があります。

中小企業中心で配慮体制が整っていない場合も多い

地方では中小企業が中心となるため、障害者雇用の体制やノウハウが十分に整っていないケースもあります。「配慮したい気持ちはあるが、実際にどのように取り組めばよいかわからない」と悩む企業も多く、求職者にとっては選択肢が限られてしまうのが現状です。


実例|地方で希望職種がなく、首都圏に転居したケース

ある身体障害のある方は、地方で事務職を希望していましたが、地元では軽作業や単純作業の求人しか見つかりませんでした。そこで、首都圏へ転居し大手企業に応募したところ、専門スキルを活かせるポジションに採用されました。結果としてキャリア形成につながりましたが、その一方で生活基盤の再構築や家族との距離といった負担も大きかったといいます。


勤務地選びで考えるべきポイント

地元で働くメリット

地元で就職することには、次のような安心感があります。

生活環境や支援機関が変わらない安心感

普段利用している病院や福祉サービスをそのまま継続できるため、転居による医療・生活サポートの不安が少なくなります。

家族サポートを受けやすい

実家や親族が近くにいれば、日常生活での困りごとや体調不良のときに助けてもらえる安心感があります。特に、精神的な支えとして大きな意味を持ちます。


都市に転居するメリット

一方で、都市に移り住むことによる可能性も大きいです。

求人の選択肢が広がる

都市部では職種・企業の選択肢が豊富で、自分のスキルや希望条件に合った求人に出会える可能性が高まります。

障害者雇用に理解ある企業が多い

大手企業や障害者雇用に積極的な企業が多く、職場環境や配慮体制が整っていることが期待できます。結果として長期的に働きやすい環境に出会える確率が高まります。


転居のデメリット

もちろん、転居には大きな負担も伴います。

生活コスト(家賃・物価)の上昇

都市部は家賃や物価が高く、障害者雇用の給与水準と比べると生活が厳しくなるケースもあります。

家族や支援者からの距離

地元を離れることで、これまでのサポートネットワークが失われやすくなります。孤独感や不安を強める要因となることもあるため注意が必要です。


在宅勤務という新しい選択肢

近年増えているのが、在宅勤務という働き方です。

通勤不要で身体・精神的な負担軽減

自宅から働けるため、移動や通勤による体力的・精神的負担を減らせます。特に身体障害や体力に不安がある方にとっては大きなメリットです。

ただし「在宅=孤立リスク」「会社による導入格差」もある

一方で、在宅勤務は人との交流が減り、孤立感を強めるリスクがあります。また、すべての企業が導入しているわけではなく、職種や企業文化によっては利用できない場合もある点には注意が必要です。

在宅勤務が増えているのになぜ転居が必要なのか?

一見すると「在宅勤務が普及しているのだから、転居は必要ないのでは?」と思われるかもしれません。確かにコロナ禍以降、在宅勤務やテレワークは急速に広がりました。しかし障害者雇用においては、まだ現実的に「転居」が選択肢として残る理由があります。

企業の多くは「フル在宅」ではなく「週数日の出社」を前提としている

完全リモートワークを導入している企業は一部に限られ、多くは「週に1~2回は出社」を条件としています。勤務地が都市部であれば、結局はその地域に住まなければ通勤が難しくなります。

セキュリティやマネジメントの問題で在宅導入が限定的

業務上の情報管理や人事評価の公平性の観点から、フルリモートには慎重な企業も多いです。特に大手企業では「システムは整っているが、人材管理上の理由で一部出社を必須にしている」ケースが目立ちます。

障害者雇用における在宅求人はまだ少ない現実

求人サイトで「在宅勤務可」と検索しても、実際には障害者雇用枠での募集は限られています。制度的には可能でも、まだ企業側の理解や準備が進んでいない段階と言えるでしょう。

企業に求めたい視点

勤務地に縛られない「リモート雇用モデル」の普及

テクノロジーの進歩により、バックオフィス業務・システム開発・顧客対応の一部など、多くの業務はオンラインで完結できるようになっています。それにもかかわらず「勤務地=出社可能範囲」という制約を残してしまうのは、企業自身が優秀な人材を取りこぼしていることに等しいといえます。
リモート雇用モデルを積極的に導入すれば、地方に住む障害者人材や、通勤が難しい優秀な人材を取り込むことが可能です。これは「障害者雇用率の達成」にとどまらず、企業にとっても多様なスキルを持つ人材を確保できる大きな競争優位につながります。

地方人材を活かす発想の必要性

これまでの「都市に人材を呼び寄せる」発想から転換し、「地方にいる優秀な人材をどう活かすか」という視点が必要です。特に障害者雇用においては、転居や通勤のハードルが高いため、地元で暮らしながら力を発揮できる環境を整えることが不可欠です。
地方人材の活用は、少子高齢化による労働人口減少という日本全体の課題解決にも直結します。都市部だけでなく全国から人材を採用することは、企業の社会的責任(CSR)を果たすだけでなく、持続可能な経営戦略としても高い価値を持ちます。


転居を検討するときの判断基準

実際に転居を検討する場合は、「勢い」や「なんとなく」で動くのではなく、いくつかの基準を整理しておくことが大切です。

自分の希望職種が地元にあるかどうか

まずは、やりたい仕事・活かしたいスキルに対応する求人が地元に存在するかを確認しましょう。なければ都市部で探す選択肢が出てきます。

配慮が得られる企業が地元にあるかどうか

「障害への理解」「勤務時間の柔軟性」「バリアフリー環境」など、自分に必要な配慮を実際にしてくれる企業が地元にあるかを見極めることが大切です。

生活基盤(住まい・医療・支援機関)を維持できるか

転居すると医療機関や支援機関も変わります。継続的に利用できるサービスがあるかどうかは、生活の安定に直結します。

転職エージェントを活用して「地元」と「都市」の両方で求人比較する

自分一人で探すのではなく、障害者雇用に特化した転職エージェントを活用しましょう。地元・都市部それぞれの求人状況を比較することで、より冷静な判断ができます。


まとめ|勤務地選びは「どこで働くか」ではなく「どう働くか」

障害者雇用における勤務地選びには、地元・都市・在宅、それぞれにメリットとデメリットがあります。重要なのは「どこで働くか」という単純な場所の問題ではなく、「どう働くか」という自分に合った働き方を選ぶことです。

転居は「最後の手段」ではなく、選択肢のひとつです。場合によっては大きなキャリアのチャンスにもつながりますが、生活基盤や支援体制を犠牲にしてまで無理をする必要はありません。

企業へのメッセージ

企業には「勤務地縛り」ではなく、柔軟な雇用形態で人材の力を引き出す姿勢が求められます。リモート雇用の普及は、障害者雇用の可能性を広げるだけでなく、企業自身の多様性と競争力を高めることにもつながるでしょう。

求職者へのメッセージ

あなたの就職・転職は、人生に直結する大きな選択です。無理に転居せずとも、自分の特性に合った環境を探す道はあります。地元での安心、都市での挑戦、在宅での働き方——そのすべてが「正解」です。自分にとって最適な道を選び、安心して働ける未来を築いてください。

投稿者プロフィール

八木 洋美
自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。
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