障害者雇用に学歴フィルターはある？実態とデータから見る採用の現状を解説

「障害者雇用を目指す際、『自分の学歴で採用されるのか』と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。」
一般採用でも「学歴フィルター」という言葉が話題になりますが、障害者雇用枠でも同じような現象が起きているのか気になるところです。

・障害者雇用に学歴フィルターは存在するのか
・学歴よりも重視されるポイントとは
・学歴別にどんな仕事が目指せるか
・学歴に自信がない場合の就職対策

就職・転職活動を考えている方にとって、正しい現状把握は大きな武器になります。
ぜひ最後までご覧ください。

学歴フィルターとは何か？

まずはそもそも「学歴フィルター」とは何を指すのか、基本から整理しておきましょう。

学歴フィルターの定義

学歴フィルターとは、企業が採用活動において応募者の出身大学・学歴によって書類選考や面接への進出可否を判断することを指します。

• 「○○大学以上しかエントリーシートを通過させない」
• 「偏差値○○以上の大学のみ説明会に招待する」
• 「Fランク大学は最初から不採用にする」

といった対応が該当します。

本来採用活動は応募者一人ひとりの人物像や能力、適性を総合的に判断すべきですが、企業側の効率化ニーズやブランド志向などにより、学歴でスクリーニングが行われることがあります。

特に大量応募が見込まれる大手企業や人気企業では、学歴フィルターが採用活動の「暗黙のルール」となっているケースも少なくありません。

通常採用の学歴フィルター導入状況

では障害者雇用に限らず一般の新卒採用・中途採用市場では、どれくらい学歴フィルターが存在しているのでしょうか。

複数の調査データをもとに、現状を確認してみましょう。

なぜ学歴フィルターを使うのか？

企業が学歴フィルターを導入する主な理由は次の通りです。

• 応募者数が膨大で、効率的に選考する必要がある
  特に大手企業や人気業界ではエントリー数が膨大な数になり、書類選考にかけるリソースを削減するために、学歴でふるいにかけることがある。
• ある程度の学力・基礎能力を担保したい
  企業によっては一定水準以上の学歴を持つことを「地頭（基礎能力）」の指標と考える傾向がある。
  特に金融業界やコンサルティング業界ではこの傾向が強い。
• 自社ブランドとの相性を重視する
  高学歴人材を多く採用していること自体が、社外へのアピール材料となるケースもある。
  「優秀な人材が集まる会社」としてのブランドイメージ戦略の一環。

以上の理由から明示的であれ暗黙的であれ、学歴フィルターが設けられるケースが存在しています。

どんな企業が学歴フィルターを使うのか？

学歴フィルターを導入している企業の特徴を整理すると以下の傾向が見えてきます。

• 大手企業・有名企業
  応募者数が多く選考を効率化するためにフィルターを使いやすい。
• 人気業界（商社、金融、コンサル、マスコミなど）
  母集団の学力水準を一定以上に保ちたい意図が働きやすい。
• 新卒一括採用を行っている企業
  学校推薦・リクルーター制度などと併用して、学歴による足切りが行われることも。
• 学閥文化が強い企業
  特定大学出身者が多数在籍している企業では、後輩を優先的に採用する傾向が見られる場合もある。
  

一方、中小企業やベンチャー企業、障害者雇用に積極的な企業では、学歴よりも人物重視の選考を行うケースが多くなっています。

障害者雇用の場合、学歴はそこまで重要ではない

一般採用では学歴が大きく影響することがある一方で、障害者雇用枠の場合は学歴が重視されにくいという現実があります。
「自分は高学歴じゃないから不利かもしれない」と不安に思っている方もいるかもしれませんが心配する必要はありません。

障害者雇用では、学歴よりも『安定して働けるか』『職場に適応できるか』が重視されます。
これは障害者雇用促進法に基づき、多様な人材の就労機会を広げる意図があるためです。

学歴不問の障害者雇用求人

特に次のような職種では学歴を重視しない傾向が見られます。

• 一般事務（データ入力、書類整理、電話応対など）
• 軽作業（ピッキング、仕分け、検品など）
• 清掃業務
• 工場での製造補助
• 社内サポート業務（備品管理、郵便物対応など）

これらの職種では実務がしっかりこなせるか、指示を理解して行動できるかが重視され、出身校や最終学歴は選考にほとんど影響しません。

近年では在宅勤務可能な事務職やデータ入力業務など、障害特性に配慮した働き方を提供する企業も増えており、ますます学歴偏重の傾向は薄れつつあります。

学歴が求められる障害者雇用求人

一方でごく一部の求人では、一定の学歴を求められるケースもあります。

• ITエンジニア、システム開発職（理系大卒以上推奨）
• 財務・経理職（商学部・経済学部卒歓迎）
• 法務・知財部門（法学部卒歓迎）

こうした専門職では業務内容に関連する知識や資格が求められるため、学歴が間接的に評価されることがあります。

ただしこれらの職種においても、実際には実務経験や保有資格（簿記、MOS、ITパスポートなど）の方が重視される場合が多いのが現実です。
つまり学歴よりも「何ができるか」「どんなスキルを持っているか」が問われる場面が圧倒的に多いのです。

学歴よりも重視されること

障害者雇用枠で採用選考に進むうえで企業が本当に注目しているのは、学歴以外のポイントです。
どのような点が重視されるのか具体的に見ていきましょう。

長く安定して働けそうか

障害者雇用における最大の関心事は、「長く安定して働き続けてもらえるか」です。
企業側もせっかく採用しても早期離職されてしまうと大きな負担になるため、定着性・勤務継続性を非常に重視します。

選考過程では、

• これまでの生活リズム
• 体調管理の工夫
• 働く意欲
• 勤務可能な日数・時間帯

などについて詳細に確認されます。

不安があったとしても「安定して勤務できそうだ」と感じてもらえれば、採用される確率は高くなります。

障害名と等級

企業は障害者雇用枠での雇用にあたって、障害特性と配慮事項を把握する必要があります。
そのため障害名や障害者手帳の等級も確認されます。

ただしこれは単に「重い障害だから不採用」という意味ではありません。
重要なのは「どのような配慮が必要か」「どの業務に支障が出るか」「安全に働ける環境が整うか」という点です。

たとえば車椅子利用者でもバリアフリー環境が整っていれば全く問題にならないケースもありますし、精神障害の場合も業務の特性に応じた配慮（指示の明確化、休憩のタイミング調整など）ができれば、十分に活躍できる場面は多くあります。

障害名や等級はあくまで参考情報であり、最終的には働く意欲やマッチングの良さが重視されるのです。

転職であれば、学歴よりも職歴を重視される

中途採用・転職の場合、企業がもっとも注目するのは職歴（これまでの実務経験）です。

• どんな仕事をしてきたか
• どんな成果を出したか

この二つは、学歴よりもはるかに重要視されます。

• 事務経験あり
• 接客・販売経験あり
• 軽作業・清掃経験あり

など、具体的な職務経験があると、それが強いアピール材料になります。

たとえ学歴に自信がなくても、これまでの仕事で培った経験や、働くうえで工夫したポイントなどをきちんと整理しておけば、十分に採用されるチャンスはあります。

学歴別の障害者雇用の現状

障害者雇用は一般採用と比べて学歴による制限は緩やかな傾向にありますが、現実として学歴によって選択できる業界や職種に違いが生まれることもあります。
ここでは中卒の方が障害者雇用枠で働く場合に、どのような業界・職種が中心となるのか、また企業側が中卒の応募者に対してどのような視点を持っているのかを詳しく解説します。

一人ひとりの可能性を広げるために、学歴にとらわれすぎず自分に合った働き方を見つけていきましょう。

中卒の障害者雇用枠の業界と職種

中卒の方でもチャレンジしやすい障害者雇用の業界や職種は、比較的実務重視・資格不要の分野が中心になります。

【主な業界・職種例】

• 軽作業系
  倉庫内作業、ピッキング、仕分け、検品、梱包作業。
• 清掃業務
  清掃スタッフとして、日常清掃や定期清掃業務。
• 製造補助業務
  工場でのライン作業、製品組み立て、検査など。
• 農業・福祉作業所など
  自然環境下での作業や、福祉的就労の場での軽作業など。
• サービス業（補助業務）
  ホテルや施設でのベッドメイキング、洗い場業務、配膳補助。

これらの業界・職種では特別な学歴や資格を求められることはほとんどなく、勤務態度や体調管理能力、コミュニケーション力が重視される傾向にあります。

採用担当から見た中卒の障害者雇用

【採用担当者が重視するポイント】

• 基本的な生活リズムが整っているか
  規則正しい生活ができているか、遅刻・欠勤が少ないかは、非常に重要。
• コミュニケーション能力（報告・連絡・相談）ができるか
  障害者雇用枠では、体調変化や業務上の困りごとを適切に伝えられるかが安心して雇用できるかどうかの判断材料に。
• 安定して長く働く意欲があるか
  短期間での離職リスクを避けたい企業側は「継続して働きたい」という本人の強い意思を重視する。
• 業務内容を理解して素直に取り組めるか
  与えられた業務に真摯に向き合う姿勢が求められる。
• 支援機関との連携が取れるか
  就労移行支援事業所や就業・生活支援センターなど外部支援機関と連携できる方は、職場定着の面でも安心感を持たれやすい。

軽作業や清掃、製造補助といった分野では、学歴よりも本人のやる気や安定性を重視する企業が圧倒的に多いため、過度に学歴を気にする必要はありません。

【採用成功のポイント】

• 面接で「安定して働ける意欲」をしっかり伝える
• 生活リズムや体調管理に対する自己管理力をアピールする
• 必要に応じて支援機関と連携し、職場定着のサポート体制を整えておく

これらの工夫をすることで、中卒の方でも多くのチャンスを掴むことができるでしょう。

高卒の障害者雇用

高卒資格は、日本の多くの企業において最低限の学力や生活スキルの証明と捉えられるため、より幅広い業界・職種にチャレンジできる可能性が高まります。

高卒の障害者雇用枠の業界と職種

【主な業界・職種例】

• 一般事務・営業事務
  データ入力、資料作成、電話応対、受付業務など。特にワードやエクセルの基本操作ができると有利。
• 製造業・技術職補助
  組み立て作業や機械オペレーション補助など。技術を習得することで、将来的なキャリアアップも。
• 流通・物流業界
  倉庫管理、出荷作業、在庫管理など。チームワークが求められる環境で、安定した働き方が可能。
• 小売・サービス業
  店舗スタッフ、バックヤード業務、商品陳列、接客補助など。人と接する機会が多く、コミュニケーション力を活かせる職場もある。
• IT関連補助業務
  パソコンを使った簡単な入力業務やシステムサポートの仕事も、スキル次第で挑戦可能。

「軽作業・清掃」中心にとどまらず、オフィスワーク系・サービス系など多彩な業界への門戸が開かれているのが特徴です。

採用担当から見た高卒の障害者雇用

【採用担当者が重視するポイント】

• 基本的な学力・ビジネスマナーへの安心感
  高卒資格を持っていることで「ある程度の読み書き・計算スキルは備わっている」「社会生活への適応力がある」と見なされやすくなる。
• 職場でのコミュニケーション能力
  特にオフィスワークやチーム作業では、報告・連絡・相談を適切に行えるかが重視される。
  高卒者はこの点で「社会人基礎力」に期待されることが多い。
• 業務習得へのスピード感
  基本的なPCスキルやマニュアル理解力があると判断されるため、現場での即戦力として期待されることもある。
• 勤続意欲・安定性
  障害者雇用において最重要視される「長く安定して働けるか」という観点は、高卒であっても変わらない。
  面接では「長く働きたい意欲」をきちんと伝えることが求められる。
  

【高卒で不利になりにくい業界・職種】

高卒でも十分にチャンスがある業界・職種としては

• 大手企業の障害者事務職
• 製造ライン管理補助
• 官公庁・自治体関連業務（障害者枠）
• 病院・福祉施設での事務補助

などが挙げられます。

【採用成功のポイント】

• 高卒であることに自信を持ち、「基本的な社会人スキルは身についている」と前向きにアピールする
• パソコンスキル（ワード・エクセル基礎レベル）を身につけておく
• ハローワークや障害者専門転職エージェントを積極的に活用する
• 履歴書・職務経歴書を丁寧に作成し、誠実さを伝える

大卒の障害者雇用

企業側は「大卒」という学歴を一定のスキル・知識・社会性の証明として捉える傾向が強く、オフィスワークや専門職系のポジションにチャレンジできるチャンスが多くなります。

大卒の障害者雇用枠の業界と職種

【主な業界・職種例】

• 一般事務・総務・人事部門
  データ管理、資料作成、庶務業務、採用補助
• 営業サポート・マーケティング補助
  顧客管理、提案資料作成、データ集計
• 経理・財務・法務部門（補助業務）
  簿記知識や法律知識がある場合は、経理補助や契約書管理
• ITエンジニア・システムサポート
  プログラミング、社内ヘルプデスク、テクニカルサポート
• 研究・開発補助
  製薬会社・メーカーなどの研究部門でのサポート業務

このように大卒資格を活かすことで、単なる補助作業だけでなく、企業の中核を支える業務へのキャリアパスを描くことが可能です。

また特例子会社や大手企業本社部門などでは、障害者雇用枠であっても「専門性を活かした活躍を期待する」求人が増えてきており、大卒人材へのニーズは着実に高まっています。

採用担当から見た大卒の障害者雇用

【採用担当者が重視するポイント】

• 基礎能力・論理的思考力への信頼
  「情報を整理して伝える力」「指示を理解し、的確に行動する力」
• ビジネスマナーと社会性
  言葉遣いや身だしなみ、大学生活を通じて培った社会性
• 専門知識やスキルの活用可能性
  経済学部、法学部、理工学部、情報学部などの専門知識
• 将来的な成長への期待
  「長く働くだけでなく、できればスキルアップして会社に貢献してほしい」という中長期的な期待

【注意すべきポイント】
障害者雇用では、あくまで勤務安定性と障害特性への自己理解・配慮事項の共有が第一に求められます。

• 「どのような配慮があれば安定して働けるか」
• 「体調管理をどう工夫しているか」
• 「自分の障害特性と向き合い、伝えられるか」

また大卒であることに過剰なプライドを持ってしまうと、現場配属や補助業務を避ける姿勢が見えたり、協調性に欠ける印象を持たれてしまうリスクもあります。
「学歴に関係なく、与えられた役割をしっかりこなす」という謙虚な姿勢が大切です。

【採用成功のポイント】

• 大卒で培った「学ぶ力」「考える力」をどのように仕事に活かせるかをアピール
• 基本的なビジネスマナー・PCスキルを確実に身につけておく
• 自己理解を深め、障害特性と配慮事項を整理して伝えられるようにする
• 支援機関やキャリアカウンセラーと連携し、職場定着支援を活用する

学歴に自信がない障害者の就職対策

障害者雇用枠では学歴よりも実際に働けるか、長く続けられるかが重視される傾向にあります。
学歴がないからといって、チャンスが閉ざされるわけでは決してありません。
むしろしっかりとした準備と工夫で、採用の可能性を大きく広げることができます。

障がい者であることを明記する

就職活動を進めるうえでまず大前提として、障害があることを正直に、かつ前向きに伝えることが大切です。

【なぜ障がい者であることを明記すべきか？】

• 企業側が適切な配慮を検討できる
  障害内容や必要なサポートを事前に知ってもらうことで入社後のトラブルを防止
• 無理な業務負担を避けられる
  障害特性に応じた業務内容を調整してもらうことができ、無理なく働ける
• 採用選考で「特性に合ったマッチング」を重視してもらえる
  企業側も採用後に長く働いてもらうことを希望しているため、あらかじめ障害内容を共有することでより適切な配属やサポート体制を整えられる

【具体的な伝え方】

履歴書やエントリーシートには、「障害者手帳あり（○級）」と記載し、面接時には

• 障害名と程度
• 日常生活・業務における配慮事項
• 問題なくできる業務内容
  を整理して伝えましょう。

ネガティブな表現ではなく「こうすれば能力を発揮できます」というポジティブな伝え方を心がけると好印象につながります。

エントリーシートをしっかり書く

【エントリーシートで重視されるポイント】

• 自己紹介・自己PR
  「どんな人なのか」「どんな強みがあるのか」をわかりやすく伝える。
  スキルや経験だけでなく働くうえで大切にしている姿勢をアピール。
• 志望動機
  「なぜこの会社を志望するのか」「なぜこの仕事に興味があるのか」を具体的に述べる。企業理念や仕事内容と自分の考えを結びつけて伝えると説得力が増す。
• 障害についての説明
  面接官が配慮すべきポイントを把握できるよう、簡潔にまとめる。
  「短時間勤務で集中力を発揮できる」など、前向きな表現を。

【エントリーシート作成のコツ】

• 文章は簡潔に、わかりやすくまとめる（長文よりも要点重視）
• 敬語・文法ミスに注意する（丁寧な印象を与えます）
• 支援機関に添削を依頼する
• できれば2〜3回は推敲して、ブラッシュアップする

「学歴がない分エントリーシートで人柄や意欲をしっかり伝える」という意識が、選考通過率を大きく左右します。

職歴・スキルを磨く

【職歴を積み重ねるメリット】

• 実務経験があることで、即戦力として評価されやすい
• 「安定して働ける力」を証明できる
• スキルアップにより、より良い条件の求人にも挑戦できる

特に障害者雇用枠では、「どれだけ安定して働けるか」「どんなスキルを持っているか」が学歴以上に重視される傾向にあります。

【具体的なスキルアップ方法】

• パソコンスキルを磨く
  Word、Excel、PowerPointの基本操作は必須。MOS資格もおすすめ。
• 業界別スキルを習得する
  物流業界ならフォークリフト免許、事務系なら簿記3級、IT系なら基本情報技術者試験など。
• 短期バイト・パートで実務経験を積む
  無理のない範囲で働きながら職歴を積み重ねていくことも有効。

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まとめ

障害者雇用では、学歴やスキルに自信がなくても、働く意欲と安定した勤務姿勢があれば、採用の可能性は十分にあります。自分に合った職場を見つけるために、積極的に情報収集を行いましょう。
重要なのは自分自身を正しく理解し、無理のない働き方を探すこと。
そして自分に合った職場を見つけるために、できるだけ多くの選択肢の中から情報収集することです。

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