2025/10/23
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40歳を過ぎたら要注意!緑内障の原因・症状・治療法と、進行を防ぐための生活習慣

はじめに|緑内障は「国民病」──静かに進む失明リスク

日本人の失明原因の第1位をご存知でしょうか。それは緑内障です。現在、40歳以上の約20人に1人が発症しているという高い罹患率にもかかわらず、その多くが自覚症状なく進行しているという深刻な現状があります。

緑内障は、一度失われた視野は元に戻らない病気ですが、早期発見と生活習慣の改善で進行を遅らせることが可能です。正しい知識を持つことが「見えない未来」を守る鍵となります。

この記事では、緑内障の基礎知識、障害者手帳の基準、予防法、そして視覚障害後の働き方までを徹底解説します。


緑内障とは?|症状と原因の基礎知識

なぜなるのか?原因とメカニズム

緑内障は、主に眼圧(眼球の硬さを示す圧力)の上昇により視神経が圧迫され、視野が欠けていく病気です。

  • 眼圧の影響: 眼圧が高くなると、視神経がダメージを受けます。
  • 正常眼圧緑内障: 日本人特有のタイプとして、眼圧が正常値でも発症する「正常眼圧緑内障」が患者の約7割を占めています。これは、日本人の視神経が圧力に弱い傾向にあるためと考えられています。

発症しやすい人(どんな人がなるのか)

緑内障は、目の奥にある視神経が徐々に障害され、視野が狭くなっていく病気です。一度ダメージを受けた視神経は元に戻らないため、早期発見・早期治療が非常に重要となります。特に以下のリスク要因を持つ方は、40歳を過ぎたら定期的な眼科検診が強く推奨されます。

  • 40歳以上: 年齢は緑内障発症の最も重要なリスクファクターの一つです。加齢とともに視神経がもろくなりやすく、眼圧の影響を受けやすくなるため、発症率が上昇すると考えられています。40歳を過ぎると、自覚症状がなくても定期的な検診を受けることが、早期発見に繋がります。
  • 近視が強い人: 強度近視の方は、眼球の奥行きが長くなることで、視神経の入口である視神経乳頭の形状が変化したり、視神経線維が引き伸ばされたりすることがあります。これにより、視神経が眼圧によるダメージを受けやすい状態にあると考えられており、緑内障のリスクが高まります。
  • 家族に緑内障患者がいる人: 血縁者に緑内障の方がいる場合、遺伝的な要因が関与している可能性が高いとされています。特に近親者(親、兄弟姉妹など)に緑内障の方がいる場合は、ご自身も発症するリスクが高いと考えられます。定期的な検診と、医師への情報提供が重要です。

症状の進行と気づきにくい理由

緑内障は「サイレントキラー」とも呼ばれ、初期には自覚症状がほとんどなく、知らないうちに病気が進行しているケースが少なくありません。

  • 「サイレントキラー」であること: 緑内障による視野の欠けは、中心からではなく周辺からゆっくりと始まることが特徴です。日常生活において、私たちは主に中心の視野を使って物を見ています。周辺視野の欠けは、例えば「道の端にあるものが少し見えにくい」「階段の端が見えにくい」といった漠然とした感覚として現れることがあり、多くの場合、明確な異常として認識されにくい傾向があります。また、両目の視野が重なり合っているため、片方の目に視野の欠損があっても、もう一方の目で補うことができ、脳が無意識のうちに欠けた部分を補完してしまうことも、発見が遅れる大きな原因となります。

これらの理由から、緑内障の自覚症状が出た時には、すでに病気がかなり進行していることが少なくありません。一度失われた視野は回復しないため、症状がなくても定期的な眼科検診を受け、早期に発見し、適切な治療を開始することが、視機能を維持するために最も重要です。


進行するとどうなる?障害者手帳の交付基準

視覚の進行と「視野欠損」の現実

緑内障は、眼圧の上昇などによって視神経が障害され、視野が徐々に狭くなっていく進行性の病気です。初期の段階では自覚症状がほとんどなく、視野の欠損は中心部からではなく、多くの場合、周辺部からゆっくりと進行するため、患者自身がその変化に気づきにくいという特徴があります。しかし、病気が進行するにつれて、視野の欠損は徐々に広がり、日常生活に大きな影響を及ぼすようになります。

最終的に、視野の大部分が失われると視力も著しく低下し、失明に至る可能性も否定できません。特に視野の欠損は、車の運転、歩行、読書など、日々の生活の質(QOL)を著しく低下させる要因となります。例えば、階段の段差が見えにくくなったり、信号の色を認識しにくくなったりするなど、安全面でのリスクも増大します。早期発見と適切な治療介入が、病気の進行を遅らせ、視機能を維持するために極めて重要となります。

障害者手帳の取得基準

身体障害者手帳は、国が定める一定の基準を満たした身体に障害のある方に対して交付されるもので、様々な福祉サービスを受けるための重要な証明となります。緑内障の診断を受けただけでは、自動的に障害者手帳の交付対象となるわけではありません。

手帳の交付対象となるかどうかは、「視力」と「視野」の広さが、国が定める身体障害者障害等級表の基準を満たすかどうかに基づいて判断されます。具体的には、矯正視力や眼の視野(見える範囲)が、特定の等級に該当するレベルまで低下している必要があります。

ポイント: 障害者手帳の等級は、単に「どれだけ見えないか」だけでなく、「見える部分」がどれだけ残っているか、つまり視野の欠損範囲が重要な判断基準となります。視野検査の結果に基づいて、視野の中心部からどの程度まで視覚が保たれているか、また視野全体でどれだけの範囲が失われているかなどが詳細に評価されます。これにより、個々の患者の視覚障害の程度に応じた適切な等級が決定され、その等級に基づいた福祉サービスが提供されます。定期的な眼科受診と視野検査は、手帳取得の可能性を検討する上で不可欠であり、専門医との相談を通じて申請手続きを進めることが推奨されます。


最前線の治療法と「進行させない」ための予防戦略

治療の基本:点眼薬とレーザー治療

緑内障の治療における最重要課題は、眼圧を効果的に下げ、視神経へのダメージを最小限に抑えることです。視神経は一度損傷を受けると回復が困難であり、失われた視野は元に戻らないという不可逆性を患者さんに理解していただくことが、治療への積極的な参加を促す上で極めて重要です。このため、早期発見と継続的な治療が何よりも求められます。

治療の中心となるのは、眼圧を下げるための点眼薬の継続使用です。現在、さまざまな種類の点眼薬があり、それぞれ作用機序が異なります。プロスタグランジン関連薬は房水の排出を促進し、β遮断薬は房水の産生を抑制します。また、炭酸脱水酵素阻害薬やα2作動薬なども状況に応じて使い分けられます。これらの点眼薬は、医師の指示に基づき、決められた用量を毎日規則正しく使用することが効果を維持するために不可欠です。自己判断での中断や点眼忘れは、眼圧の再上昇を招き、病状の進行リスクを高めることになります。定期的な診察で眼圧の推移を確認し、必要に応じて点眼薬の種類や組み合わせを調整することで、最適な治療効果を目指します。

点眼薬による薬物治療で十分な効果が得られない場合や、アレルギーなどの副作用で使用が困難な場合は、レーザー治療や手術が検討されます。レーザー治療には、房水の排出を促進する選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)や、房水の産生を抑制する毛様体光凝固術などがあります。これらは比較的低侵襲で、外来で実施可能な治療法です。一方、手術は、点眼薬やレーザー治療でも眼圧が十分にコントロールできない進行した緑内障や、特殊なタイプの緑内障に対して行われます。代表的な術式として、房水の排出経路を新しく作る線維柱帯切除術や、房水排出を助けるインプラントを埋め込むチューブシャント術などがあります。手術はより高い眼圧下降効果が期待できる一方で、合併症のリスクも伴うため、患者さんの状態や緑内障のタイプに応じて慎重に選択されます。

自分でできる「生活習慣の改善」

緑内障の治療は医療機関で行うものだけでなく、日々の生活習慣の見直しも非常に重要です。特に、過度なストレスは自律神経のバランスを乱し、眼圧に悪影響を与える可能性があるため、精神的な安定を保つことが推奨されます。リラクゼーションや趣味の時間を持つ、十分な睡眠をとるなど、ストレスを軽減するための工夫が有効です。

また、全身の血行を良くすることも緑内障の進行抑制に寄与すると考えられています。適度な運動は全身の血流を促進し、視神経への酸素や栄養供給を改善する可能性があります。ウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲で日常的に体を動かす習慣をつけましょう。ただし、眼圧を急激に上昇させる可能性のある激しい運動や、頭に血が上るような体位(逆立ちなど)は避けるべきです。

食生活においては、バランスの取れた食事が基本ですが、特に抗酸化作用のあるビタミンCやE、β-カロテンなどを多く含む野菜や果物、DHAやEPAを多く含む魚などを積極的に摂取することは、目の健康維持に良いとされています。カフェインの過剰摂取については、一時的に眼圧を上昇させる可能性が指摘されていますが、通常の摂取量であれば問題ないとする見解が一般的です。

そして、定期的な検診が最も重要であることを強く訴求します。緑内障は自覚症状がないまま進行することが多く、「サイレントキラー」とも呼ばれています。一度治療が開始された後も、眼圧のコントロール状況、視野の変化、視神経の状態などを定期的に評価する必要があります。医師の指示に従い、半年に一度、あるいは数ヶ月に一度の頻度で眼科を受診し、視野検査、眼底検査、光干渉断層計(OCT)などによる詳細な検査を受けることが、病状の悪化を早期に発見し、適切な治療介入を行うために不可欠です。

喫煙は血管を収縮させ、血流を悪化させるため、視神経への血流を阻害し、緑内障の進行を早めるリスクがあるため、控えるべきです。また、過度の飲酒も眼圧に悪影響を与える可能性があるため、節度ある飲酒を心がけることが大切です。これらの生活習慣の改善は、治療効果を高め、緑内障と共に快適な生活を送るための土台となります。


視覚障害後の生活と就労の現実

進行後の生活と必要な工夫

  • 内容: 視野の狭さを補うための便利グッズ(音声読み上げアプリ、拡大鏡、白杖など)や、周囲のサポートの重要性。
  • テクノロジーの活用: Seeing AIなどのアプリを活用し、文字情報や周囲の状況を音声で得る工夫が、生活の自立を支えます。

どのような仕事に就けるか?キャリアの選択肢

視覚障害をお持ちの方が就ける仕事は多岐にわたり、個々の能力や希望、そして障害の程度に応じて様々なキャリアパスが考えられます。ここでは、具体的な職種例と、それぞれの仕事内容、さらにその仕事に就くためのポイントを詳しく解説します。

具体的な就労の選択肢:

  • 在宅勤務:
    • 内容: データ入力、文字起こし、プログラミング、ウェブサイト制作、カスタマーサポート(チャットやメール対応が中心のもの)、翻訳など。PCスキルとインターネット環境があれば、場所を選ばずに働けるため、視覚障害の有無にかかわらず人気の働き方です。
    • ポイント: PCスキル(タイピング、Word, Excelなどのオフィスソフト、特定の専門ソフトウェア)、情報収集能力、自己管理能力が重要です。在宅での作業となるため、自己モチベーションの維持も求められます。
  • 電話応対の少ない事務職:
    • 内容: 書類作成、データ管理、資料整理、メール対応、郵便物の仕分けなど。電話応対が少ない、または内線対応が中心の部署での業務が考えられます。
    • ポイント: PCスキル(特にデータ入力や文書作成)、正確性、丁寧さ、コミュニケーション能力(同僚との連携)、そして点字や音声ソフトを使いこなす能力が不可欠です。
  • マッサージ業(あん摩マッサージ指圧師):
    • 内容: 身体の不調を抱える患者に対し、あん摩、マッサージ、指圧などの手技を用いて治療を行います。国家資格が必要な専門職であり、視覚に頼らない手先の感覚が非常に重要となるため、視覚障害者が活躍しやすい分野の一つです。
    • ポイント: 専門学校での学習、国家資格の取得が必須です。体力、忍耐力、患者さんとの信頼関係を築くコミュニケーション能力も求められます。独立開業も可能なため、キャリアの幅も広がります。
  • その他:
    • 鍼灸師: マッサージ業と同様に国家資格が必要な専門職で、視覚障害者が多く活躍しています。
    • 理療師: あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の国家資格を持つ医療専門職です。
    • 音楽関連: 演奏家、調律師(ピアノなど)。特にピアノ調律は、聴覚に優れる視覚障害者にとって適性の高い職種とされています。
    • 教育関連: 視覚障害特別支援学校の教員、点字指導員など。
    • 福祉関連: 視覚障害者支援施設の職員、ガイドヘルパーなど。

安定した就労への鍵:

視覚障害をお持ちの方が安定した就労を実現するためには、以下のポイントが非常に重要です。

  • 視覚障害者向けの訓練施設や支援機関の活用:
    • ハローワーク: 就職相談、求人情報の提供、職業訓練の案内など、幅広いサポートが受けられます。視覚障害者向けの専門窓口が設置されている場合もあります。
    • 就労移行支援事業所: 視覚障害に特化した訓練や就職支援を行う事業所があります。職業準備訓練、ビジネスマナー、コミュニケーションスキルの向上、職場実習などを通じて、就職に必要な能力を習得できます。
    • 地域活動支援センター: 地域の特性に応じた支援プログラムを提供している場合があります。
    • 盲学校や視覚特別支援学校の成人科: 卒業生だけでなく、社会人向けの再学習や職業訓練を提供している場合もあります。
  • PCスキルや点字・音声ソフトの習得に集中すること:
    • PCスキル: 現代社会においてPCスキルは不可欠です。タイピング、インターネット検索、メールの送受信、WordやExcelなどの基本的なオフィスソフトの操作は、ほとんどの職種で求められます。
    • 点字: 情報を正確に読み書きするための重要なツールです。
    • 音声ソフト(スクリーンリーダー): パソコンの画面情報を音声で読み上げるソフトウェアで、視覚障害者がPCを操作する上で欠かせません。ジョーズ(JAWS)やNVDAなど、様々なソフトがあります。これらのソフトを使いこなすことで、一般のPC作業を効率的に行うことが可能になります。
    • 拡大読書器: 弱視の方にとっては、文字や画像を拡大して表示する拡大読書器が有効な場合があります。
    • 各種支援機器の活用: スマートフォンやタブレットの読み上げ機能、音声認識入力、点字ディスプレイなど、様々な支援機器を積極的に活用することで、仕事の効率を大幅に向上させることができます。

これらの準備と支援を活用することで、視覚障害をお持ちの方も多様な職種で活躍し、充実したキャリアを築くことが可能です。自身の興味や適性を見極め、積極的に情報収集を行い、一歩ずつ前に進んでいきましょう。


まとめ|知識と行動が、あなたの「見える未来」を守る

緑内障は、自覚症状がないまま進行し、一度失われた視野は元に戻らない恐ろしい病気です。だからこそ、予防が何よりも重要であり、早期発見と適切な治療、そして生活習慣の見直しが、あなたの未来の視力を守るための鍵となります。

定期的な眼科検診は、緑内障の早期発見に不可欠です。特に40歳を過ぎると発症リスクが高まるため、自覚症状がなくても年に一度の検診を受けることを強くお勧めします。検診では眼圧測定や眼底検査、視野検査などが行われ、緑内障の兆候を早期に捉えることができます。

また、診断された場合は、点眼薬や内服薬による薬物療法、レーザー治療、手術など、病状に合わせた適切な治療を継続することが非常に重要です。自己判断で治療を中断したりせず、医師の指示に従いましょう。

さらに、日々の生活習慣の見直しも緑内障の進行抑制に役立ちます。バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠を心がけ、ストレスをためない生活を送ることが大切です。喫煙や過度の飲酒は避けるべきです。読者へのメッセージ: 40歳を過ぎたら、自覚症状がなくても年に一度の眼科検診を受けることの重要性を強く促します。知識と行動が、あなたの「見える未来」を守ります。緑内障は決して他人事ではありません。あなたの目の健康を守るために、今日から行動を起こしましょう。

投稿者プロフィール

八木 洋美
自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。
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