- 身体障害
- 障害者雇用
膀胱機能障害がある方の仕事と就労支援|働きやすい職場環境の整え方と配慮ポイント

この記事の内容
誰もが「自分らしく働きたい」と願う現代社会において、膀胱機能障害という“見えにくい障害”を抱えて生きることは、想像以上の困難を伴います。特に働く場面では、頻繁なトイレの必要性や突然の尿意、自己導尿などのケアに関する不安が大きな壁となることがあります。さらに、外見からはその苦労が分かりにくいため、周囲からの理解を得づらく、孤立感を覚える方も少なくありません。
しかし今、医療技術の進歩や障害者雇用に対する社会の理解が深まる中で、膀胱機能障害を抱えていても安心して働ける環境づくりが着実に進んでいます。職場での合理的配慮や柔軟な働き方の導入、さらには就労支援制度の活用によって、自分のペースでキャリアを築くことが可能です。
本記事では、膀胱機能障害の基礎知識とともに、働きながら生活の質を高めていくための具体的な情報をお届けします。
膀胱機能障害の基礎知識
内部障害の種類と特徴
障害というと、外見からすぐに判断できる身体障害や車椅子利用のイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし、膀胱機能障害は「内部障害」と呼ばれる、外見からは分かりにくい障害に該当します。内部障害には、心臓や腎臓、呼吸器、消化器、肝臓、膀胱・直腸などの内臓器官に障害を持つ状態が含まれます。
このような障害は周囲の理解が得にくく、当事者自身が職場で困りごとを伝えづらい傾向があります。その結果として、我慢や無理を重ね、心身の状態をさらに悪化させてしまうケースも少なくありません。だからこそ、社会全体で「見えない障害」への理解を深めることが必要です。
膀胱機能障害の概要と原因
膀胱機能障害とは、排尿に関連する神経や筋肉の障害により、排尿の感覚・コントロール・タイミングに支障をきたす状態を指します。症状としては、以下のようなものが挙げられます。
- 頻尿(昼夜問わず)
- 急激な尿意と失禁(切迫性尿失禁)
- 尿が出にくい、残尿感
- カテーテルなどを用いた排尿(自己導尿)
これらの症状は、本人にとって非常にストレスフルであり、外出や長時間の会議、決まった勤務時間に縛られることへの強い不安感を引き起こします。
原因は多岐にわたります。代表的なものとして、次のような背景があります。
- 神経因性膀胱(脊髄損傷、脳卒中、多発性硬化症など)
- 二分脊椎などの先天性疾患
- 泌尿器科系の手術による後遺症
- 糖尿病による神経障害
- 加齢やホルモンバランスの変化
重要なのは、こうした原因を明確にし、適切な医療的アプローチを行うことと並行して、働き方の工夫や職場での配慮を受けることです。
一般的な治療方法とケア
膀胱機能障害の治療は、症状の内容や程度、生活環境に応じて個別に調整されます。治療とケアの具体例は以下の通りです。
■ 薬物療法
尿意を抑える抗コリン薬やβ3作動薬などが頻尿や失禁に用いられます。排尿困難には膀胱の収縮を促す薬が使われる場合もあり、服薬管理が重要です。
■ 自己導尿(CIC)
自力排尿が難しい場合、自分でカテーテルを挿入して排尿する「自己導尿」を行うケースがあります。外出先や職場でのトイレ環境が非常に大切になり、清潔な個室トイレや時間的配慮が求められます。
■ 骨盤底筋体操・行動療法
骨盤の筋肉を鍛えることで尿意のコントロールを改善する効果があるとされ、毎日のトレーニングが推奨されることもあります。また、「排尿間隔を意識的に広げる訓練」なども行われます。
■ 生活習慣の改善
水分摂取のタイミングや内容(カフェインを控えるなど)、ストレスの軽減、睡眠の質向上など、生活全体の見直しが症状のコントロールに大きく寄与します。
■ 心理的支援
排泄の悩みは非常にセンシティブな問題であり、人に相談しづらい性質を持ちます。定期的なカウンセリングや、同じ疾患を持つ人との情報交換は、心理的な孤立を防ぐ手段となります。
膀胱機能障害は、決して「働けない障害」ではありません。適切な治療と理解のある職場環境が整えば、多くの人が社会の中で活躍することができます。次回は、実際に職場でどのような配慮が必要か、障害者雇用制度の活用方法、就職支援サービスの利用について詳しく解説します。
「病気があっても、安心して働きたい」——
その願いを叶えるために、必要な情報と制度を一つひとつ整理して、自分らしい働き方を一緒に探していきましょう。
膀胱機能障害を持つ方の就労環境

膀胱機能障害という“見えない障害”を抱えながら働くということ。それは日常生活だけでなく、社会の中での立ち位置や自己実現にも大きな影響を与えます。頻繁な排尿、強い尿意、時には自己導尿が必要となるなど、他人には理解されにくい課題に直面する中でも、「自分らしく働きたい」「社会とつながり続けたい」という思いは、すべての人に共通する願いです。
幸いなことに、近年では企業の障害理解が深まり、多様な働き方や環境整備が進められています。本記事では、膀胱機能障害を持つ方が安心して働ける環境の条件と、仕事をする上で押さえておきたいポイントを解説します。働きたい気持ちを、前向きな一歩に変えるために、ぜひご一読ください。
働きやすい職場の条件
膀胱機能障害を抱える方が安心して働き続けるためには、職場環境そのものが配慮されたものである必要があります。ここでは、具体的な4つのポイントを紹介します。
■ 医療設備の充実
まず重要なのは、緊急時や体調不良時の対応が整っている職場であることです。医務室や休養室が社内にある企業では、急な体調の変化や導尿後の体調安定のための休息も取りやすく、心理的にも安心して働くことができます。
また、産業医や保健師が在籍している職場では、医療の専門知識を持った人と相談できる体制があるため、健康管理をしながら働ける環境が整っています。こうした医療体制のある職場は、膀胱機能障害に限らず、慢性疾患を持つ方にも非常に有効です。
■ 勤務時間の柔軟性
膀胱機能障害の症状は体調や時間帯によって変動することがあります。例えば、朝の冷え込みで症状が悪化する方や、疲労によって頻尿が増す方もいます。そうした体調の波に合わせられるよう、フレックスタイム制や時短勤務などの制度がある職場は、非常に働きやすいといえます。
また、頻繁なトイレ休憩や導尿のための時間確保が必要な方にとって、時間単位での休憩取得が認められる環境は大きな安心材料です。職場全体で「働き方に柔軟性があること」は、単なる制度の充実だけでなく、風土としての“理解”も問われる重要なポイントです。
■ バリアフリー設備の導入
トイレへのアクセスのしやすさは、膀胱機能障害を持つ方にとって切実な問題です。オフィスや就労スペースに多目的トイレや個室型トイレがあり、かつ十分な清掃が行き届いていることが重要です。車椅子を使用している方や導尿の必要がある方にとって、十分な広さと手すり、収納スペースのあるトイレは欠かせません。
さらに、通路や出入口に段差がない、エレベーターが設置されているといったバリアフリー設計も、日常の動作をスムーズにし、体力消耗を防ぐことに繋がります。こうした物理的なサポートは、日々の安心と自立した働き方を支える大きな要素です。
■ テレワーク制度の導入
自宅で働くという選択肢は、膀胱機能障害を持つ方にとって非常に心強いものです。特に体調に波がある方、通勤によるストレスが大きい方にとって、在宅勤務はベストな働き方の一つといえるでしょう。
テレワーク環境では、自分のペースで業務を進めながら、トイレの回数やタイミングを気にせずに仕事に集中することができます。また、移動による身体的負担がないため、疲労の蓄積を抑えることができ、長期的な就労にもつながります。
仕事をする上での注意点とポイント
働きやすい職場に出会えたとしても、職場でのコミュニケーションやセルフマネジメントが円滑でなければ、長期的な就労は難しくなります。ここでは、膀胱機能障害を持つ方が仕事をする上で大切にすべきポイントをいくつか紹介します。
■ 自己理解と体調管理
まず重要なのは、「自分の症状をよく理解し、伝えられること」です。どのようなときに症状が悪化するのか、どの程度の配慮が必要なのかを整理し、上司や人事担当者に正しく伝えることが、適切なサポートを受ける第一歩となります。
また、定期的な医療機関の受診を欠かさず、体調の変化を把握することも大切です。服薬管理や生活習慣の見直しなど、自分の健康を守る意識を持つことが、職場での信頼にもつながります。
■ 合理的配慮の申し出
法律上、企業には「合理的配慮」を提供する義務があります。これは「特別扱い」ではなく、「障害による不利益を最小限にするための公平な調整」です。トイレの利用時間を配慮してほしい、個別の休憩時間を設定したい、静かな席で働きたいなど、具体的な希望があれば、遠慮せず申し出ることが必要です。
申し出の際には、医師の診断書や支援機関のアドバイスがあると、よりスムーズに配慮を受けやすくなります。
■ 働き方の柔軟性を意識する
時には「休む勇気」も必要です。無理をして仕事を続けることで症状が悪化し、結果的に長期離脱を余儀なくされることもあります。自分のペースを大切にし、柔軟に働き方を調整していく姿勢が、長く働き続けるためには欠かせません。
膀胱機能障害という課題を抱えながらも、自分らしく働く道は必ずあります。職場選びの視点を持ち、制度や配慮を活用することで、「無理なく、安心して、長く働ける」環境がきっと見つかります。次回は、こうした環境で実際に活躍している方の事例や、転職支援サービスの活用方法についてご紹介していきます。
就労支援サービスの活用

障害を持つ方々が「働きたい」と思ったとき、その思いを具体的な行動へとつなげるためには、適切な支援と情報が不可欠です。特に膀胱機能障害などの“見えにくい障害”を抱える方にとっては、職場選びの基準や就職活動の進め方、働き続けるためのサポート体制など、さまざまな不安が伴います。
そんなときに活用したいのが、国や自治体、福祉事業者などが提供する就労支援サービスです。本記事では、代表的な支援機関の役割や特徴を紹介し、実際にどのように活用すればよいかを具体的に解説します。
ハローワークと地域障害者職業センター
全国各地に設置されているハローワーク(公共職業安定所)は、障害者の就職支援にも力を入れています。特別支援窓口を設けており、専門の職員が常駐し、就職相談から求人紹介、面接のアドバイスまで一貫して対応しています。
さらに、地域障害者職業センターでは、障害者の職業能力評価や職場実習の手配、職場定着支援など、より専門的なサービスが提供されています。医療や福祉、教育機関と連携しており、本人の状態や特性を踏まえた上で、働きやすい環境や職種を一緒に考えてくれる点が特徴です。
たとえば、膀胱機能障害のある方が「トイレの近さが必要」「自己導尿のために清潔な個室トイレが必須」といった要望を持っている場合でも、それを踏まえた職場の提案が可能です。まずは最寄りのハローワークに足を運び、障害者専門の相談窓口を活用してみましょう。
障害者就業・生活支援センター
「働くこと」と「生活すること」は密接に結びついています。障害者就業・生活支援センター(通称:ナカポツ)は、まさにこの2つの領域を同時にサポートする役割を担う機関です。
ナカポツでは、以下のような支援が受けられます:
- 仕事探しの相談や準備支援
- 生活面での悩み(通院・金銭管理・住居など)へのアドバイス
- 地域の福祉サービスや医療機関との連携
たとえば、「通勤に不安がある」「生活リズムを整えたい」「障害者年金や手帳制度について知りたい」といった悩みに対しても、柔軟に対応してくれます。就労だけでなく、生活の安定が同時に支援されることで、より長く安心して働き続けることが可能になります。
就労移行支援事業所の役割
民間や社会福祉法人が運営する「就労移行支援事業所」は、障害を持つ方が一般企業への就職を目指す際に活用できる福祉サービスです。利用期間は原則2年間で、その中で就労に必要な知識・スキルを習得し、就職活動を行い、職場定着までをトータルで支援します。
■ 就労に必要なスキル・知識の習得
事業所では、パソコンの操作やビジネスマナー、電話応対、履歴書作成、面接練習など、実際の就労に直結するスキルを基礎から学べます。また、日常生活の安定や対人関係のトレーニングも並行して行われ、社会的自立を目指すステップとして非常に有効です。
膀胱機能障害がある場合も、体調に合わせた通所スケジュールを組むことができ、無理のないペースでステップアップすることが可能です。
■ 適切な職場とのマッチング
スタッフが企業との橋渡し役となり、本人の障害特性や希望条件に合った職場を一緒に探してくれます。職場実習の機会を通じて、事前に現場の雰囲気や業務内容を確認することもできるため、就職後のミスマッチを防ぐことができます。
また、面接への同行や条件交渉の代行など、本人だけでは難しい場面にも寄り添ったサポートが用意されています。
■ 就職後のフォローアップ体制
就職が決まったあとも、定着支援として事業所スタッフが定期的に面談を実施し、職場での困りごとや不安を共有できます。トラブルの早期発見と対応により、長く働き続けるための環境づくりが可能になります。
職場の上司や同僚との調整役としても機能するため、配慮の伝え方や業務調整の相談もスムーズに進みます。
障害者向け転職エージェントの活用
近年では、障害者専門の転職エージェントも増加しています。代表的なエージェントでは、障害特性に応じたキャリアカウンセリング、求人紹介、書類添削、模擬面接などを無料で提供しています。
エージェントの強みは、企業とのつながりが強く、「配慮のある求人」に特化していることです。トイレ環境や勤務時間の柔軟性、在宅勤務の可否など、求職者が重視するポイントを事前にヒアリングし、それに合致する求人を厳選して紹介してくれます。
さらに、採用担当者との面談時にはエージェントが間に入り、障害への理解を促す役割を果たしてくれるため、「伝えづらいこと」を丁寧に補完してくれる安心感があります。
就労支援サービスは、障害のある方が「無理なく、安心して、長く働く」ための力強い味方です。自分ひとりで悩まず、まずは支援機関の扉を叩いてみること。それが、働く未来の第一歩です。
膀胱機能障害と仕事の両立

膀胱機能障害を抱えながら働くという選択には、多くの壁が存在します。頻繁なトイレの必要性、急な尿意や失禁への不安、自己導尿といった日常のケアが、業務や職場での人間関係に影響を与えることもしばしばです。
しかし一方で、医療の進歩や社会的な理解の広がり、障害者雇用制度や合理的配慮の実践などにより、膀胱機能障害と仕事の両立は現実的なものとなってきました。本記事では、実際の職場での対処法や、前向きなキャリア形成のための視点について解説していきます。
体調管理と業務調整が重要
膀胱機能障害と仕事を両立させる上で、最も大切なのは「無理をしないこと」です。自分の体調としっかり向き合い、必要なサポートを受けながら業務を調整する姿勢が、長く働き続けるカギとなります。
■ 体調の自己管理を習慣化
症状には日によって波があるため、体調管理は仕事のパフォーマンスに直結します。排尿の記録をつけたり、体を冷やさないようにしたり、尿意のコントロールに影響する飲食物を意識することも大切です。
また、導尿が必要な場合は、トイレの清潔さや使用可能時間など、勤務環境の確認も不可欠です。導尿時間が業務中に必要であれば、スケジュールに組み込みやすい業務構成を検討してもらうことが望ましいです。
■ 勤務形態や職務内容の調整
フルタイム勤務が負担となる場合には、時短勤務や週3〜4日勤務などの相談も視野に入れましょう。近年ではテレワークが浸透し、自宅から働ける職種も増えてきています。トイレや休憩が自由に取れる環境での在宅勤務は、膀胱機能障害を持つ方にとって理想的な選択肢の一つです。
企業側も、法的に「合理的配慮」の提供が義務付けられているため、相談すれば対応してくれるケースが多くあります。
コミュニケーションと周囲の理解
「見えない障害」である膀胱機能障害は、周囲の無理解によって孤立してしまうことがあります。だからこそ、適切なタイミングでの説明や配慮のお願いが重要です。
■ 信頼できる相手に伝える
症状や配慮の必要性は、必ずしもすべての人に開示する必要はありません。人事担当者や直属の上司、産業医など、信頼できる相手に限定して伝え、必要なサポートを受けられる体制を整えることがポイントです。
たとえば、「定期的に5分の休憩が必要」「昼休憩の前後にトイレの時間を確保したい」など、具体的に説明することで理解されやすくなります。
■ 組織全体の風土づくり
企業によっては、障害者雇用の経験が少ない場合もあります。そのようなときには、外部の就労支援機関や支援者の同席による面談や職場説明などを活用することで、企業側の理解を深めることができます。
一人ひとりの働き方が違って当たり前という価値観が浸透すれば、膀胱機能障害に限らず、すべての人にとって働きやすい職場環境へとつながっていきます。
キャリア形成と自己実現
症状に制約があるからといって、キャリアをあきらめる必要はありません。むしろ、体調と相談しながら積み上げていくキャリアこそが、自分らしい働き方につながります。
■ 強みを活かせる仕事を選ぶ
膀胱機能障害を抱えていても、集中力や専門スキル、正確性といった強みを持つ方は多くいます。事務系や在宅型のIT職種、ライティング、デザイン、サポート業務など、身体への負担が少なく、個の能力が活かせる職種は少なくありません。
また、通院や自己導尿などのスケジュールに配慮してもらえる企業も増えてきています。障害者雇用専門のエージェントを活用することで、こうした求人に出会える可能性も高まります。
■ 自分らしいペースで働くこと
時には「休む勇気」も大切です。短期的な働きすぎよりも、長期的に安心して続けられる働き方を選ぶことが、最終的なキャリアの成功につながります。
ライフスタイルに応じて働き方を変えたり、キャリアを見直すことも、自立した人生の一部です。焦らず、自分のペースで歩んでいきましょう。
👉 【膀胱機能障害に配慮のある求人を見る】
当社では、膀胱機能障害を持つ方を歓迎する求人情報を多数ご紹介しています。
配慮のある職場を探す
まとめ
膀胱機能障害を抱えながらも、自分らしく働き続けることは、決して夢ではありません。大切なのは、自分の体と向き合い、必要な支援を受けながら、無理のないペースで働くこと。そして、職場との信頼関係を築き、環境を整えていくことです。
「障害があるから無理」ではなく、「障害があっても、こうすれば働ける」と思える社会へ。就労支援制度や理解のある職場を活用して、自分らしい働き方を実現していきましょう。あなたのキャリアは、あなた自身の意思で描いていけます。