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不整脈があっても仕事はできる?治療と両立するための働き方・配慮ポイントを解説

この記事の内容
不整脈と診断されたとき、最初に頭をよぎるのは「今後も仕事を続けられるのだろうか」という不安かもしれません。心臓に関わる疾患であるがゆえに、無理をすれば命に関わるリスクもあると考えると、慎重にならざるを得ません。しかし、現代の医療では不整脈の多くが適切な治療によってコントロール可能であり、生活や仕事を無理なく両立できるケースも増えています。本稿では、不整脈に関する基礎知識と、治療を続けながら仕事と両立するためのポイントについて解説します。
不整脈の基礎知識
不整脈とは
不整脈とは、心臓の拍動リズムが正常ではない状態を指します。通常、心臓は一定のリズムで血液を全身に送り出していますが、不整脈が起こると脈が速くなったり、遅くなったり、不規則に打ったりします。軽度の不整脈は自覚症状がなく問題とならないこともありますが、重度の場合は生活や仕事に大きな影響を与えることもあるため注意が必要です。
3つの種類(期外収縮、頻脈、徐脈)
不整脈には大きく分けて次の3種類があります。
- 期外収縮
通常の拍動の合間に、余計な拍動が入るタイプ。健康な人にも起こることがあり、多くは心配いりませんが、頻度が多い場合は精密検査が必要になります。 - 頻脈
心拍数が異常に速くなる状態です。動悸や息切れ、胸の違和感を伴うことがあり、心房細動や心室頻拍といった重い不整脈も含まれます。 - 徐脈
心拍数が異常に遅くなる状態です。めまい、ふらつき、失神などを引き起こすことがあり、場合によってはペースメーカー治療が必要になります。
注意すべき症状
不整脈のなかでも以下の症状がある場合は、早急に医師の診察を受けるべきです。
- 激しい動悸や胸の痛み
- 強い息切れや呼吸困難
- めまい、ふらつき、失神
- 極度の倦怠感や意識の混濁
これらは、重篤な不整脈による命に関わる可能性を示すサインであり、放置すると危険です。
不整脈の原因と治療法

心臓の病気や服用薬、生活習慣の乱れ
不整脈の原因はさまざまですが、代表的なものは以下です。
- 心筋梗塞、心不全、心筋症などの心臓疾患
- 高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病
- 一部の薬剤による副作用
- ストレス、過労、睡眠不足
- 過度の飲酒やカフェイン摂取
こうした原因が積み重なることで、心臓の電気信号に異常が生じ、不整脈が発生します。特に生活習慣の見直しは、発作リスクを下げるためにも重要です。
治療法
不整脈の治療法は、その種類と重症度によって選択されます。代表的な方法を紹介します。
ペースメーカー
主に徐脈性不整脈に対する治療法です。心拍数が必要以上に遅くなった場合に、体内に埋め込まれた小型の装置が電気刺激を与えて、正常な心拍リズムを維持します。手術は比較的安全で、術後は通常の社会生活に復帰できることが多いです。ただし、定期的な機器チェックや強い磁場を避ける必要があります。
ICD(植込み型除細動器)
ICDは、致命的な心室細動や心室頻拍を防ぐために使用される医療機器です。不整脈を検知すると自動的に電気ショックを与え、命を救う役割を果たします。心筋梗塞後や心機能が低下している方に適応されることが多く、これにより突然死のリスクを大幅に低下させることができます。
カテーテルアブレーション
カテーテルアブレーションは、頻脈性不整脈に対して効果的な治療法です。異常な電気信号を発生させている心筋部位を高周波エネルギーで焼き切り、不整脈の発生源を遮断します。成功率が高く、薬物療法を必要としないケースもあり、生活の質(QOL)を大幅に改善できる可能性があります。
不整脈と仕事の両立のポイント

不整脈と診断されたからといって、すぐに仕事を諦める必要はありません。多くの場合、適切な治療や生活管理を行いながら、無理なく働き続けることが可能です。ただし、不整脈の種類や重症度によっては、働き方に工夫が必要なケースもあります。本稿では、不整脈を抱えながら安心して働き続けるためのポイントを解説します。
不整脈の状態と適した仕事
不整脈にも軽度なものから命に関わる重度なものまで幅広く存在します。まずは、自分の不整脈がどの程度の影響を及ぼすかを正確に把握することが大切です。
- 軽度な期外収縮など、日常生活にほとんど影響がない場合は、通常の業務継続が可能なことが多いです。
- 頻脈性不整脈や徐脈性不整脈の場合、激しい運動やストレスの強い業務は避けた方が安心です。
オフィスワークや在宅勤務など、体力負担やストレスの少ない仕事が望ましいでしょう。無理のない範囲で働くことが、心臓への負担を軽減し、長期的な就労継続につながります。
職場への情報共有と理解の促進
職場に対して、自分の健康状態を正しく伝えることも重要なポイントです。不整脈は外見からは分かりにくいため、万一のときに備えた配慮を依頼しておくことで、安心して働くことができます。
伝える際のポイントは、
- 現在の健康状態と医師の指示
- 体調悪化時に必要な対応(例:安静、救急要請)
- 通院や休憩が必要なタイミング などを簡潔にまとめることです。
また、産業医や人事担当者に相談しておくと、職場側の理解も得やすく、必要に応じた勤務調整がしやすくなります。
勤務形態や作業内容の調整
不整脈とうまく付き合いながら働くためには、勤務形態や作業内容を柔軟に調整することが重要です。
例えば、
- フレックスタイム制や時短勤務を活用する
- 在宅勤務に切り替える
- 肉体労働から事務作業中心にシフトする
- 長時間の連続作業を避け、こまめな休憩を取る
こうした工夫により、心臓への負担を減らしつつ、仕事のパフォーマンスも維持しやすくなります。復職時や勤務開始後も、体調に応じて柔軟に働き方を見直す姿勢が大切です。
障害者雇用の活用
不整脈が重度である場合や、医師の診断により障害者手帳(内部障害)を取得した場合は、障害者雇用枠の活用も視野に入れるとよいでしょう。
障害者雇用枠では、
- 勤務時間や業務内容の配慮
- 通院や体調管理への理解
- ストレスの少ない業務内容 など、体調を最優先に考えた働き方が可能となります。
また、障害者向けの就労支援サービスを利用することで、求人紹介から就職後の定着支援まで一貫してサポートを受けることができます。無理なく安心して働き続けるためには、こうした制度を積極的に活用することも重要です。
不整脈での休職・復職の際の注意点

不整脈は一見目立たない疾患ですが、症状が重くなると日常生活はもちろん、仕事にも大きな影響を与えることがあります。無理をして働き続けることで症状が悪化し、長期的なキャリア形成にも支障をきたしかねません。ここでは、不整脈による休職・復職の際に押さえておきたい重要なポイントについて解説します。
仕事を休む基準と職場への伝え方
不整脈を抱えながら働く中で、「どのタイミングで休職を決断するか」は非常に重要な判断です。以下のようなケースでは、仕事を休む決断が必要です。
- 激しい動悸や息切れで業務に支障をきたしている
- めまいや意識障害を伴う症状が出現した
- 医師から休養または治療専念を勧められた
休職する場合は、速やかに上司や人事担当者に連絡し、診断内容と現在の体調を簡潔に伝えましょう。ポイントは、感情的にならず、事実を冷静に共有することです。また、休職期間の見込みや、必要に応じた業務の引き継ぎについても相談できるとスムーズです。
入院時の会社への連絡と確認事項
不整脈の治療で入院が必要になった場合、会社への連絡は迅速に行いましょう。伝えるべき内容は以下の通りです。
- 入院日と予想される期間
- 診断内容と治療方針(必要な範囲で)
- 診断書提出の要否
- 社会保険や傷病手当金の手続きについての確認
また、業務引き継ぎについても、可能な範囲で対応策を相談します。長期入院が見込まれる場合は、業務を一時的に他の社員へ振り分けるための協力も必要です。事前に連絡体制を整えておくことで、安心して治療に専念することができます。
復職前の医師との相談と診断書の取得
体調が安定してきたら、復職を検討するタイミングです。ただし自己判断での復帰はリスクを伴うため、必ず主治医と相談しましょう。復職に向けた医師との相談ポイントは次の通りです。
- 現在の心臓の機能レベル
- 業務内容に対する耐久性
- 仕事内容に応じた勤務条件(例:短時間勤務、軽作業中心)
医師から「就労可能」との判断を得た場合、診断書を会社に提出します。診断書には、復職可否とあわせて、必要な配慮事項(過度なストレス回避、定期的な休憩など)が記載されることが一般的です。これにより、職場側も適切な対応を取ることができるようになります。
復職後の注意点と職場の協力体制
復職後も、心身への負担を最小限にする工夫が求められます。特に注意すべきポイントは以下です。
- 無理をしない
復職直後からフル稼働を目指すのではなく、段階的に業務量を増やしていきます。 - 体調変化への敏感な対応
動悸や息切れを感じたら、すぐに上司へ報告し、必要に応じて休養を取ることが大切です。 - こまめな休憩とリフレッシュ
長時間集中作業を続けず、適度な休憩を挟むことで心臓への負担を軽減します。
また、復職にあたっては職場全体の理解と協力体制が欠かせません。産業医面談や人事担当者との定期的な面談を活用し、自分の状態を適切に伝えながら、無理のない働き方を模索していきましょう。
不整脈のある方が利用できる就労支援
不整脈を抱えながら社会復帰や転職を目指す方にとって、無理なく働ける環境を見つけることは非常に大切です。幸い、日本には障害や持病を持つ方を支援するさまざまな制度や機関が存在しています。こうした支援を上手に活用することで、不安を和らげ、自分に合った働き方を実現することが可能です。本稿では、不整脈のある方が利用できる主な就労支援についてご紹介します。
ハローワーク
ハローワークは国が運営する公共の職業紹介機関で、障害や持病を抱える方に向けた支援体制も整っています。特に「障害者支援窓口」では、障害の内容や体調に配慮した求人情報の提供、履歴書の添削、面接練習、就労後のフォローまで一貫したサポートを受けることが可能です。
また、障害者トライアル雇用制度を活用すれば、一定期間試用的に勤務しながら、体調や業務適性を見極めることもできます。ハローワークは、まず最初に相談する場所として非常に心強い存在です。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターでは、より専門的な職業リハビリテーション支援を提供しています。ここでは、職業評価(アセスメント)を通じて、自身の心身の状態や業務適性を客観的に把握することができます。
また、ジョブコーチ(職場適応援助者)による職場定着支援も利用でき、実際に働き始めた後も職場での不安や困りごとを一緒に解決していくサポートが受けられます。不整脈を抱える方にとっては、働くことへの不安を和らげ、無理のない就労を実現するために欠かせない支援機関です。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センター(ナカポツセンター)は、就労面だけでなく、生活全体にわたる支援を行っています。不整脈がある場合、生活リズムの安定やストレス管理も重要な課題となりますが、ナカポツセンターではこれらを含めた包括的なサポートを提供しています。
例えば、通院スケジュールに配慮した勤務調整の相談、生活リズム改善のアドバイス、福祉サービスや医療機関との連携支援などが受けられます。就労と生活の両輪を支えてもらえるため、安心して社会復帰を目指すことができるでしょう。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、障害や持病を持つ方が一般就労を目指すための訓練施設です。18歳以上65歳未満で、医師の意見書や障害者手帳があれば利用できます。
ここでは、ビジネスマナーやPCスキルなどの基本的な職業訓練から、自己理解プログラム、ストレスマネジメント講座、模擬面接まで、幅広い支援が用意されています。不整脈で長期間仕事から離れていた方も、徐々に体力と自信を取り戻しながら、段階的に就労へと近づくことができます。
最近では、在宅訓練にも対応している事業所も増えており、体調に応じた柔軟な利用が可能です。
障害者雇用専門の求人サイト
障害者雇用に特化した求人サイトを活用することで、配慮のある企業と効率的に出会うことができます。たとえば、以下のようなメリットがあります。
- 体調に配慮した求人情報を検索できる
- 在宅勤務可、時短勤務可など細かい条件で探せる
- キャリアアドバイザーによる個別サポートが受けられる
- 書類添削や面接対策セミナーも利用可能
代表的なサイトには、「障害者ナビ」があります。https://s-jobnavi.jp/
特に内部障害は外見から分かりづらいため、障害理解のある企業を見極めることが重要です。こうした専門サイトを活用することで、ミスマッチを防ぎ、安心して働き始めることができます。
まとめ
不整脈を抱えながらでも、社会で自分らしく働き続けることは十分に可能です。無理をせず、体調管理を最優先に考えながら、自分に合った職場環境を見つけることが大切です。今回ご紹介したハローワークや地域障害者職業センター、就労移行支援事業所などの支援機関を上手に活用し、一歩ずつ前進していきましょう。
必要なサポートを受けながら、自分のペースでキャリアを築いていく。その選択が、長く安定した社会参加への第一歩となるはずです。