2025/04/25
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    言語障害がある方の仕事の悩みと働き方のポイント|職場での配慮や就労支援も解説

    「話す」「聞く」「伝える」。
    これらのコミュニケーション能力は、多くの仕事において不可欠とされがちです。
    しかし、言語障害を抱える方でも、適切な工夫と職場の配慮によって、自分らしく働くことは十分可能です。

    言語障害と一口に言っても、その種類や症状は多様です。本人の努力だけでは、カバーしきれない困難が存在します。
    だからこそ、まずは障害の特徴を正しく理解し、自分に合った働き方を模索することが大切です。

    本記事では、言語障害の種類と特徴を解説しながら、働くうえで押さえるべきポイントを紹介していきます。


    言語障害の種類と特徴

    言語障害にはいくつかの種類があり、それぞれ影響の出方が異なります。
    以下では代表的な障害について順に説明していきます。


    失語症

    失語症は、脳卒中、外傷、脳腫瘍、感染症などにより脳の言語中枢が損傷されることで起こる障害です。
    それまで問題なく話す・聞く・読む・書くことができていた人が、これらの能力に障害を抱えるようになります。

    【特徴】

    • 言葉が出にくい(流暢に話せない)
    • 言葉の意味を理解するのが難しい
    • 文字を読む・書くことに支障が出る

    失語症は単なる「話す力の低下」だけでなく、情報の受け取りや発信そのものに影響を及ぼします。
    そのため、口頭でのやり取りを中心とする職場では工夫が必要となる場合があります。


    構音障害

    構音障害とは、舌や口唇、声帯、咽頭など発音に関わる器官の異常により、正確な発音が困難になる状態を指します。

    【特徴】

    • 特定の音が発音できない、聞き取りにくい
    • ことばが不明瞭になる
    • 早口になると特に言葉が崩れやすい

    身体的な要因が大きいため、発音訓練や話し方の工夫で改善が見込める場合もあります。
    また、発音に負担をかけない文章でのやり取りを中心にすれば、業務への影響を最小限に抑えられるケースも多いです。


    吃音(きつおん)

    吃音とは、話し始める際や会話中に、言葉が詰まったり繰り返したりする障害です。
    小児期に発症するケースが多く、大人になっても続くことがあります。

    【特徴】

    • 言葉の最初の音が出にくい(ブロック)
    • 同じ音を繰り返してしまう(連発)
    • 言葉に引っかかりが出る(伸発)

    吃音の程度は状況によって変動しやすく、緊張やプレッシャーが強い場面で悪化する傾向があります。
    しかし、話す内容を事前に準備したり、対面以外のコミュニケーション手段(メールやチャット)を活用することで、十分に職務を遂行できる場合もあります。


    聴覚障害

    聴覚障害は、「聞こえ」に関する障害ですが、これが間接的に言語機能にも影響を及ぼす場合があります。

    【特徴】

    • 会話の聞き取りが難しい
    • 発音の微細なニュアンスに気づきにくい
    • 対話のテンポに乗りにくい

    聴覚障害者の中には、補聴器や人工内耳を活用する方もいますが、それでも聞き取りに苦労する場面はあります。
    そのため、筆談、チャット、文字起こしアプリなど、視覚的な情報伝達手段を積極的に活用する工夫が重要です。


    音声障害

    音声障害は、声帯や発声に関わる筋肉の異常により、声が出しにくくなる、または声質が変化する障害です。

    【特徴】

    • 声がかすれる、か細くなる
    • 長時間話すと声が出なくなる
    • 音程が不自然になる

    音声障害の場合も、声を使った業務に制限が生じることがあります。
    一方で、メール対応や資料作成など、発声を伴わない業務にシフトすることで十分に働き続けることができます。

    言語障害が日常生活と仕事に及ぼす影響

    言語障害は、日常生活や仕事において想像以上に大きな影響を及ぼします。
    「話す」「聞く」「読む」「書く」といった基本的なコミュニケーション機能が部分的に、あるいは複合的に損なわれることで、本人の社会参加や職業選択に制約が生まれるからです。

    ここでは、言語障害がもたらす具体的な影響について、「話す・聞く」「読む・書く」の両側面から整理して解説していきます。


    話す・聞く能力の障害による影響

    「話す」「聞く」という能力は、対面でのコミュニケーションを成り立たせる上で不可欠です。
    これらに障害がある場合、日常生活や仕事上で次のような支障が生じやすくなります。

    【日常生活への影響】

    • 意思疎通の困難
       買い物や公共機関の利用など、簡単な用件を伝えることにも苦労することがあります。
    • 人間関係の希薄化
       話すことへの不安や負担感から、他者との交流を避けるようになってしまうこともあります。
    • 自己表現の制限
       本来伝えたい感情や意見がうまく表現できず、誤解を招くリスクが高まります。

    【仕事上への影響】

    • 会議や商談への参加が困難
       発言に時間がかかる、あるいは的確に意図を伝えられないことで、発言機会が減少することがあります。
    • 電話対応業務の困難
       聞き取りの困難、あるいは発話の流暢さが求められる業務は、大きな負担となる場合があります。
    • チームワークへの支障
       リアルタイムの口頭コミュニケーションに頼る場面で、周囲との連携が取りにくくなるリスクがあります。

    【対策の一例】

    • 電話対応をメールやチャットに切り替える
    • 会議では事前に発言内容をメモにまとめておく
    • 筆談や音声認識アプリを活用する

    話す・聞く障害があっても、ツールや工夫を取り入れることで、十分に業務を遂行できる環境を整えることは可能です。


    読む・書く能力の障害による影響

    「読む」「書く」能力に支障がある場合、情報の受発信や記録作業に困難をきたします。
    現代の多くの業務では文書作成や情報共有が必須となっているため、影響は小さくありません。

    【日常生活への影響】

    • 重要な情報の取りこぼし
       病院の診療案内や公共施設の掲示物、書類の記載内容を正確に把握できないことがあります。
    • 手続きや申請での困難
       役所での申請書類記入、オンラインサービスの利用登録などで支障をきたす場合があります。

    【仕事上への影響】

    • 書類作成業務のハードル
       報告書、メール、企画書などの文書作成に時間がかかり、ミスが増える可能性があります。
    • 情報共有・伝達の遅れ
       社内連絡や指示書などの文書を読むスピードが遅く、反応が遅れるケースも考えられます。
    • マニュアル理解に時間がかかる
       業務手順書や操作マニュアルの読解に困難を伴うことがあり、実務に支障をきたすリスクがあります。

    【対策の一例】

    • 音声読み上げソフトや支援ツールを活用
    • 重要な書類は口頭での補足説明を依頼
    • 書式テンプレートを用いて文章作成の負担を軽減

    読む・書くことに支障がある場合も、ITツールやサポート体制を整えることで、円滑な業務遂行は十分可能です。

    コミュニケーションの困難さと対応策

    言語障害を抱える方にとって、最も大きな壁となるのが「コミュニケーションの困難さ」です。
    日常会話はもちろん、ビジネスの現場でも「話す」「聞く」「伝える」能力が重要視されるため、そのハードルは一層高くなりがちです。

    【主な困難】

    • 相手に言いたいことがうまく伝わらない
    • 相手の話を聞き取るのに時間がかかる
    • 会話のテンポについていけず疎外感を感じる
    • 電話対応や即時応答が求められる業務に不安がある

    【対応策】

    • 筆談やチャットツールの活用
       リアルタイムでの口頭コミュニケーションが難しい場合、文字情報を中心としたやり取りに切り替える。
    • 事前準備・段取りの徹底
       会議や面談では、あらかじめ言いたいことをメモにまとめておく。
    • コミュニケーションサポートツールの利用
       音声認識アプリ、要約筆記サービス、ビデオ会議での字幕機能などを積極的に取り入れる。

    このような工夫により、言語障害があってもスムーズな意思疎通を目指すことが可能です。


    言語障害のある方が就労する上で抑えるべきポイント

    言語障害者に適した仕事と職場

    職種の選択と必要なスキル

    言語障害がある場合でも、適職を選べば力を発揮できます。
    特に以下のような職種は、言語による直接コミュニケーションが求められる場面が少なく、比較的働きやすい傾向にあります。

    【おすすめ職種】

    • データ入力・事務作業
       PCを使った書類作成やデータ整理中心の業務。
    • クリエイティブ職
       デザイナー、ライター、イラストレーターなど、成果物で評価される職種。
    • 技術職・エンジニア
       プログラマー、システム管理者など、対話よりスキル重視の職種。

    【必要なスキル】

    • 基本的なPC操作スキル(Word、Excelなど)
    • 業務に応じた専門知識や資格(例:MOS資格、ITパスポート)

    職種選びの際には、自分の得意分野や興味を大切にしながら、無理のない働き方を探しましょう。


    障害特性に応じた配慮と設備

    働きやすさを左右するのは、職場の環境整備です。

    【必要な配慮例】

    • 筆談やチャット中心のコミュニケーション体制
    • 会議資料の事前共有・議事録作成
    • 電話業務を担当しない配慮
    • フレックスタイムやリモートワーク制度の活用

    【推奨される設備】

    • 音声認識システム
    • 自動字幕生成ツール
    • 会議で使えるリアルタイム文字起こしアプリ

    これらの工夫によって、言語障害のある方でも無理なく、安心して力を発揮できる環境が作られます。


    就職活動での自己アピールと面接対策

    障害の具体的な説明と配慮の要請

    就職活動では、自分の障害について適切に説明することが不可欠です。

    【ポイント】

    • どのような困難があるかを具体的に説明する(例:「電話対応に時間がかかる」「即答が難しい場面がある」など)
    • 業務に必要な範囲で、どのような配慮があれば働きやすいかを提案する
    • 障害に関係なく活かせる自分の強み(スキル、経験、実績)を積極的にアピールする

    「できないこと」ではなく、「できること」「工夫すればできること」にフォーカスすることが重要です。


    書類選考と面接におけるコミュニケーション手段の調整

    応募書類や面接の場面でも、言語障害に配慮した対応を求めることができます。

    【書類選考時】

    • 履歴書や職務経歴書に「障害の概要」と「配慮希望事項」を簡潔に記載
    • 事前にメールやWeb面談希望を伝えておく

    【面接時】

    • 筆談またはテキストチャット併用の許可を依頼
    • 質問事項を事前に送ってもらうよう交渉
    • 通訳者や支援者の同行を許可してもらう場合も

    企業側も、配慮を要望されることで初めて適切な準備ができる場合が多いため、遠慮せずしっかり伝えましょう。


    職場でのコミュニケーションサポート

    手話、口話、筆談の使い分け

    言語障害のある方は、自分に合ったコミュニケーション手段を柔軟に使い分けることが大切です。

    【主な手段】

    • 手話
       聴覚障害者同士、または手話に習熟した同僚とのコミュニケーションに有効。
    • 口話(読唇術)
       相手の口の動きから内容を推測する技術。ただし完全ではないため補助が必要。
    • 筆談
       紙・ホワイトボード・電子メモなどを用いて意思疎通する方法。

    状況に応じて最もストレスが少ない手段を選び、スムーズなやり取りを目指しましょう。


    ICTツールの活用

    近年、コミュニケーション支援のためのICT(情報通信技術)ツールが飛躍的に進化しています。

    【活用できるツール例】

    • 音声認識・文字起こしアプリ(例:Google音声入力)
    • チャットツール(Slack、Teams、LINE WORKSなど)
    • オンライン会議ツールの字幕機能(Zoom、Google Meet)
    • 簡易翻訳・要約ソフト

    これらを積極的に取り入れることで、リアルタイムでの情報共有もぐっとしやすくなります。

    言語障害のある方が利用できる就職支援サービス

    言語障害を抱えている方にとって、就職活動や職場選びは不安を伴うものかもしれません。
    しかし、社会には障害特性を理解し、支援してくれる多様な制度とサポート体制が整っています。
    自分に合った支援機関を活用すれば、安心して就職活動に臨むことができるでしょう。

    ここでは、言語障害のある方が利用できる代表的な就職支援サービスを紹介します。


    ハローワーク

    ハローワーク(公共職業安定所)は、全国に設置されている国の職業紹介機関です。
    障害のある方専用の窓口を設置している拠点も多く、きめ細やかなサポートを受けることが可能です。

    【ハローワークで受けられる支援】

    • 障害者専任の職業相談員による就職相談
    • 障害者雇用枠の求人紹介
    • トライアル雇用制度や職場体験の斡旋
    • 履歴書作成支援、面接練習
    • 企業とのマッチング支援

    言語障害により配慮が必要な場合は、相談時に詳しく伝えることで、より適した求人の紹介や面接時のサポートを受けることができます。


    地域障害者職業センター

    地域障害者職業センターは、障害者の職業リハビリテーションを専門に行う公的機関です。
    専門的な評価や職業準備支援を通じて、より本人に合った就労を目指します。

    【主な支援内容】

    • 職業評価(アセスメント)による適性診断
    • 社会人マナーやコミュニケーションスキル訓練
    • ジョブコーチによる職場適応支援
    • 医療機関や福祉機関との連携支援

    言語障害のある方に対しては、話す・聞く能力に応じた働き方や、配慮事項の整理、企業へのサポート提案なども行っています。
    「どんな仕事が向いているか分からない」という方にもおすすめです。


    就労移行支援事業所

    就労移行支援事業所は、一般企業への就職を目指す障害のある方を対象に、最長2年間、就職に向けたトレーニングを行う福祉サービスです。

    【提供される支援】

    • ビジネスマナーやパソコンスキルの習得支援
    • 履歴書・職務経歴書作成支援
    • 面接対策(模擬面接、ロールプレイング)
    • 企業実習やインターンシップの機会提供
    • 就職後の職場定着支援

    言語障害に特化した支援を行っている事業所もあり、
    例えば「筆談トレーニング」「チャットコミュニケーション練習」など、個別に配慮したプログラムが組まれる場合もあります。
    無理なくステップアップできる環境が整っています。


    障害者就業・生活支援センター

    障害者就業・生活支援センター(ナカポツセンター)は、地域に密着して、就労支援と生活支援の両面をサポートする機関です。

    【主な支援内容】

    • 就労相談と職場定着支援
    • 金銭管理や生活面の支援
    • 医療・福祉・行政機関との連携調整
    • 必要に応じた日常生活面での支援

    言語障害により、例えば「公共機関での手続きが不安」「病院とのやり取りが難しい」といったケースにも寄り添い、生活全体を支えるサポートが受けられます。


    障害者雇用に特化した求人サイト

    インターネット上には、障害者雇用枠専門の求人サイトが数多く存在します。
    言語障害を抱える方も、自宅から安心して求人探しができるのが大きなメリットです。

    【主な特徴】

    • 障害者向け求人を豊富に掲載
    • 障害種別別の検索フィルターあり
    • フレックスタイム、テレワーク対応求人も多数
    • キャリアアドバイザーによる就職相談・面接対策
    • 面接時の配慮事項を事前に企業に共有可能

    あなたに合った障害者求人を探すならこちら!

    障害者ナビなら、言語によるコミュニケーションに制約がある場合でも、理解ある企業と出会いやすく、安心して応募に進むことができます。


    まとめ

    言語障害があるからといって、働くチャンスを諦める必要はありません。
    社会には、あなたを支えるための仕組みが数多く整っています。

    【今回紹介した主な支援機関】

    • ハローワーク
    • 地域障害者職業センター
    • 就労移行支援事業所
    • 障害者就業・生活支援センター
    • 障害者ナビ

    一人で悩まず、ぜひ支援機関の力を借りてください。
    「できないこと」ではなく、「できること」を見つめ直し、自分らしく働くための一歩を踏み出しましょう。
    あなたの未来を支える手は、きっとすぐそばにあります。