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障害者の一人暮らしに必要な準備とは?生活の注意点と利用できる支援制度を解説

この記事の内容
障害を持ちながら一人暮らしを始めることは、自由と自立を手に入れる大きなステップです。
しかし、同時に生活のすべてを自分で管理する必要があるため、事前の準備や情報収集が非常に重要となります。
経済的な基盤作り、住まいの選び方、生活スキルの向上に加え、各種支援制度の活用も欠かせません。
この記事では、
- 障害者が一人暮らしをするために必要な準備
- 生活上の注意点と乗り越える工夫
- 利用できる支援制度・サポート機関
- 収入アップや生活費節約の具体策
について、わかりやすく解説します!
「一人で生活してみたい」「自立を目指したい」と考えている方に向けて、安心して一歩を踏み出すための知識をお届けします。
障害者雇用の現状と課題
一人暮らしを始めるためには、安定した収入源の確保が必要不可欠です。
そのため、障害者雇用の現状と課題について理解しておくことは、自立に向けた大切な第一歩となります。
障害者の働き方
障害者の働き方は、近年多様化が進んでいます。
障害者雇用促進法の改正により、企業には障害者を一定割合以上雇用する義務(法定雇用率)が課せられ、障害者雇用枠の拡大が進んでいます。
2024年時点では、民間企業における法定雇用率は2.5%に設定されています。
障害を持つ方の主な働き方は、次の3パターンに分かれます。
1. 障害者雇用枠で働く
もっとも一般的な働き方であり、障害者手帳を取得している方が対象となります。
企業は障害特性を考慮し、合理的配慮を提供しながら雇用を進めています。
たとえば、通院時間への配慮、業務内容の限定、勤務時間短縮など、個別ニーズに応じた働き方が可能です。
障害者枠で働くメリットは、無理のない就労がしやすく、長期安定就労を目指しやすい点です。
一方で、給与水準が一般枠に比べてやや低い場合があり、昇進・キャリアアップのチャンスが限定されることも課題です。
2. 一般雇用枠(クローズ就労)で働く
障害を企業に開示せず、一般の求職者と同じ条件で働く方法です。
この場合、給与やキャリアアップの機会は一般社員と同等ですが、障害特性への配慮は基本的に受けられません。
無理をして体調を悪化させるリスクもあるため、自己管理能力が求められます。
3. セミオープン就労
一部の上司や人事部門にのみ障害を開示し、職場の同僚には障害を非開示とする働き方です。
必要最低限の配慮を受けながら、一般雇用に近い働き方を目指せるのが特徴です。
障害者雇用の課題
障害者雇用は年々拡大していますが、依然としていくつかの課題が存在します。
・業務内容が限定的になりやすい
単純作業や補助業務に限定されることが多く、スキルアップやキャリア形成に結びつきにくい現実があります。
・賃金水準が低い
特に障害者雇用枠では、一般枠に比べて初任給や昇給ペースが抑えられているケースが少なくありません。
・職場理解のばらつき
障害者雇用を積極的に進めている企業もあれば、制度を満たすためだけに形だけの雇用を行っている企業も存在します。
・定着支援不足
採用後の定着支援が十分でない企業もあり、せっかく就職しても早期離職してしまうケースが後を絶ちません。
これらの課題を踏まえたうえで、一人暮らしを目指す場合は、収入の安定性・働き方の柔軟性・職場の理解度をしっかり見極めることが必要です。
障害者雇用枠で働く条件
障害者手帳を取得している方が安定して働くためには、障害者雇用枠を利用することがひとつの有力な選択肢です。
しかし、障害者雇用枠で働くには一定の条件や、企業ごとの雇用状況に関する理解が必要です。
ここでは、障害者雇用枠で働くための基本的な条件や、企業規模ごとの雇用状況、また障害者雇用で働く際のメリットとデメリットについて詳しく解説していきます。
企業規模別の障害者雇用状況
障害者雇用促進法により、一定規模以上の企業には障害者雇用義務が課されています。
具体的には、従業員数が43.5人以上の民間企業に対し、2024年現在2.5%以上の障害者を雇用する義務があります(2026年4月からは2.7%に引き上げ予定)。
企業規模ごとの状況を整理すると次の通りです。
・大企業(従業員1000人以上)
障害者雇用が比較的進んでおり、専門の支援担当者(障害者雇用担当部署)が置かれている場合も多いです。障害特性に合わせた配慮が整っている企業が多く、働きやすい環境が期待できます。
・中堅企業(従業員100~999人)
障害者雇用の取り組みには差があり、積極的な企業もあれば、法定雇用率達成に苦労している企業もあります。職種のバリエーションも多様化してきています。
・中小企業(従業員44~99人)
障害者雇用の意識が高まってきているものの、制度整備が十分でないケースもあります。ただし、柔軟な働き方に応じてくれる企業も多く、本人の適性や希望に応じた働き方を交渉しやすい環境もあります。
なお、従業員数43.5人未満の小規模企業には法定雇用義務はありませんが、近年では自主的に障害者雇用を進める企業も増えてきています。
障害者雇用で働くメリット・デメリット
障害者雇用枠で働くことには、多くのメリットがありますが、同時に注意すべきポイントも存在します。
【メリット】
・合理的配慮が得られやすい
勤務時間の調整、業務内容の調整、通院配慮など、個別の事情に応じた柔軟な対応が期待できます。
・職場の理解が得やすい
障害者雇用を進める企業では、社内研修や啓発活動が行われており、障害特性への理解がある職場環境が整っています。
・長期的な就労を目指しやすい
定着支援体制が整っている企業も多く、無理せず働き続けられる環境づくりが進められています。
・就労支援機関のサポートが受けられる
ハローワーク、就労移行支援事業所、障害者就業・生活支援センターなど、多様な支援機関と連携しながら就職活動や職場定着がサポートされます。
【デメリット】
・給与水準が一般枠より低い場合がある
障害者雇用枠では、一般枠に比べて給与が低めに設定されているケースもあります。
・業務内容が限定される場合がある
「補助業務中心」「ルーティンワーク中心」など、業務範囲が狭められ、スキルアップやキャリア形成の機会が限定される可能性もあります。
・キャリアアップの機会が少ない場合も
障害者枠では昇進や昇格の機会が限られている企業もあり、長期的なキャリア設計を考えるうえで慎重な判断が必要です。
障害者雇用枠で働くか、一般雇用枠で挑戦するかは、自分の体調・特性・キャリア志向を踏まえて総合的に判断することが重要です。
障害者雇用率制度
障害者雇用率制度とは、企業に一定割合以上の障害者を雇用することを義務付ける制度です。
この制度により、障害のある方が公平に働く機会を得られるよう社会全体で取り組みが進められています。
【制度のポイント】
対象企業:従業員43.5人以上の民間企業
法定雇用率:2.5%(2024年現在)
カウント対象:身体障害者、知的障害者、精神障害者(手帳所持者)
達成できない場合:障害者雇用納付金(罰則的な制度)を納める義務が発生(従業員数100人超の企業対象)
また、法定雇用率を上回る障害者を雇用している企業に対しては、障害者雇用調整金や報奨金が支給されるインセンティブ制度もあります。
この障害者雇用率制度によって、企業側にも障害者雇用を進めるインセンティブが働き、障害者の就労機会が着実に広がっているのが現状です。
障害者雇用枠の給与・待遇

障害者雇用枠で働く際に、気になるのが「給与」や「待遇」の実態です。
障害者雇用枠は、配慮を受けながら安定して働ける点が大きな魅力である一方で、給与水準や雇用形態については、一般雇用枠とは異なる現実が存在します。
将来のライフプランや、一人暮らしを目指す際の生活設計を考えるうえでも、障害者雇用枠の給与・待遇事情をしっかり理解しておくことが大切です。
ここでは、障害者雇用枠で働く場合の給与相場や待遇面の特徴について詳しく解説していきます。
非正規社員の割合が高い
まず押さえておきたいのは、障害者雇用枠での非正規雇用率が非常に高いという点です。
厚生労働省の「障害者雇用状況報告」によれば、障害者雇用枠で働く方の雇用形態は、以下のような傾向があります。
- 正社員(正規雇用):約4割
- 契約社員・嘱託社員:約3割
- パート・アルバイト:2割以上
つまり、6割近くが非正規雇用という状況にあります。
非正規雇用が多い理由
障害者雇用枠では、企業側がまず短時間勤務や軽作業中心のポジションで採用するケースが多く見られます。
これは、本人の体調や障害特性に配慮し、無理のない働き方を提供する意図がある一方で、企業にとっても柔軟な人員配置ができるメリットがあるためです。
また、障害者雇用促進法の目的が「就労機会の確保」であり、雇用形態までは強制していないため、結果的に非正規中心の雇用構成になりやすい側面もあります。
非正規雇用のデメリット
非正規で働く場合、以下のようなデメリットが生じやすくなります。
- 月給・年収が低くなりがち
- 賞与(ボーナス)が支給されない場合が多い
- 昇給・昇進の機会が限られる
- 雇用契約が有期(期間限定)で、更新のたびに不安が伴う
- 退職金制度がないケースが多い
このため、収入の安定性や将来的な生活設計に不安が残ることが、非正規雇用の大きな課題といえるでしょう。
一方で、非正規雇用のメリットとしては、比較的勤務時間が短く、負担が少ない働き方ができる点が挙げられます。
体調と相談しながら働き続けるには、一定のメリットもあるため、自分の生活スタイルや体力に応じた選択が重要です。
平均の給与は12万円程度
障害者雇用枠における給与水準は、一般雇用枠と比べるとどうしても低めに設定されているのが現状です。
特に、非正規雇用の場合は顕著であり、平均給与は全国的に見ても月額12万円程度とされています。
給与水準の実態
厚生労働省の調査によると、障害種別による平均月収は概ね次のような傾向があります。
- 身体障害者:14万円前後
- 知的障害者:11万円前後
- 精神障害者:12万円前後
※雇用形態(正社員・非正規社員)によって大きく異なります。
また、地域によって最低賃金水準が異なるため、都市部と地方では給与に2~3万円程度の差が出ることもあります。
なぜ給与が低いのか?
給与が低めに設定される背景には、以下のような要因が挙げられます。
- 業務内容が限定的(単純作業や補助業務中心)
- フルタイムではなく、短時間勤務の場合が多い
- 昇給制度が整っていない企業が多い
- 初期段階では能力を発揮しきれず、賃金に反映されにくい
企業側もリスクヘッジのため、まずは負担の少ない業務から任せ、徐々に適性を見ながら業務拡大していくスタイルをとることが多いため、初任給が低めに設定されがちなのです。
生活への影響
月収12万円前後の場合、家賃・光熱費・食費などをまかなうと、貯金や娯楽に使える余裕はかなり限られます。
一人暮らしを考える場合は、以下の点をしっかり検討する必要があります。
- 家賃の安い住宅を探す(公営住宅、障害者向け住宅優遇など)
- 家賃補助制度や生活支援給付を検討する
- 日常生活費を極力節約する
- 必要に応じて、福祉サービスや支援金制度を併用する
経済的な負担を軽減するためには、給与だけでなく各種福祉制度を賢く活用することが不可欠です。
障害者雇用枠の給料だけでは生活が難しい理由
障害者雇用枠で働くことは、体調や障害特性に配慮された環境で働けるという大きなメリットがあります。
しかし現実問題として、障害者雇用枠の給料だけで十分な生活を送るのは難しいという声も少なくありません。
なぜ障害者雇用枠での収入だけでは生活が厳しくなるのか、その具体的な理由を詳しく見ていきましょう。
医療費の自己負担
障害を持つ方の多くは、定期的な通院や薬の服用が必要です。
精神科、内科、リハビリテーションなど、複数の診療科にかかることも珍しくありません。
たとえ健康保険によって医療費が3割負担に抑えられていたとしても、毎月数千円〜数万円単位の医療費がかかることは珍しくありません。
さらに、交通費や付随する自己負担も積み重なるため、収入に対して医療費の比率が高くなりやすいのが実情です。
一部自治体では自立支援医療制度(精神通院医療など)により負担軽減が図られますが、すべての医療費が対象となるわけではありません。
短時間勤務や配慮を受けている
障害者雇用枠では、無理のない働き方を実現するため、短時間勤務や業務負荷の軽減措置が取られることが多いです。
たとえば、
- 週20時間勤務
- 1日4~6時間勤務 といった勤務形態が一般的です。
この結果、労働時間が少ない=賃金総額も少ないという構造になってしまいます。
体調を維持しながら働き続けるためには短時間勤務は非常に有効ですが、その一方で、月収10万円前後にとどまるケースも少なくありません。
最低賃金の減額の特例許可制度の対象
障害者雇用においては、業務遂行能力に著しい制限がある場合、最低賃金法に基づく「減額特例許可制度」が適用されることがあります。
この制度により、企業は正規の最低賃金よりも低い賃金を設定する許可を得ることができるため、最低賃金未満の給与で働かざるを得ない場合も出てきます。
もちろん、減額適用には厳格な審査があり、無条件で低賃金が認められるわけではありません。
しかし、実際には障害特性により業務スピードや生産性が制限されることがあり、これが給与水準に反映されるケースも存在します。
大都市圏以外での求人が少ない
障害者雇用の求人は、東京・大阪・名古屋といった大都市圏に集中する傾向があります。
地方都市や過疎地域では、障害者雇用の求人数がそもそも少なく、選択肢が非常に限られてしまうのが現状です。
また、地方では最低賃金自体が都市部に比べて低く設定されているため、同じ労働時間でも地域格差による収入差が発生します。
地方で障害者雇用枠で働く場合、最低賃金ギリギリの収入になるケースも珍しくなく、一人暮らしや自立を目指す際の大きな壁となっています。
仕事の種類が限られる・単純作業が多い
障害者雇用枠で提供される業務内容は、どうしても単純作業や補助業務に集中する傾向があります。
たとえば、
- データ入力
- 郵便物の仕分け
- 書類整理
- 軽作業(ピッキング、清掃など)
などが中心です。
こうした業務は、専門性や高度なスキルを求められないため、賃金水準が上がりにくいという特徴があります。
また、職務範囲が狭いことで、スキルアップやキャリアアップのチャンスを掴みにくく、長期的にも収入が伸びづらい環境に置かれるリスクがあります。
昇進・昇給の難しさ
一般雇用枠では、成果に応じて昇進や昇給の機会が設けられている企業が多いですが、障害者雇用枠ではこれが難しい場合もあります。
理由は、
- 業務範囲が限定されているため評価項目が少ない
- 定型業務中心で成果差が見えにくい
- 配慮重視のため成果主義が適用されにくい などが挙げられます。
そのため、何年働いてもほとんど給与が上がらないという現象が起きやすく、モチベーション低下や生活設計の難しさにつながってしまいます。
離職率の高さ
障害者雇用枠では、残念ながら離職率が高いという課題も指摘されています。
厚生労働省の調査では、障害者雇用枠で採用された方のうち、約5割が1年以内に離職しているというデータも存在します。
離職の理由としては、
- 職場環境や人間関係に馴染めなかった
- 業務内容が合わなかった
- 体調悪化により継続困難になった などが挙げられます。
短期間で離職を繰り返すと、安定収入が得られず、貯蓄も難しくなり、さらに生活不安が増していく悪循環に陥るリスクがあります。
一人暮らしをする際に必要なこと

障害を持つ方が一人暮らしを始めることは、自立への大きな一歩です。
自由な生活を手に入れる反面、すべてのことを自分で管理しなければならないため、事前の準備がとても重要になります。
ここでは、一人暮らしをする際に必要な手続きや準備、生活上のポイントについて、具体的に解説していきます。
しっかり準備を整えて、自立した生活をスムーズにスタートさせましょう。
物件探し
まず一人暮らしを始めるにあたって最初に必要なのが、住まい探しです。
物件探しの際に押さえておきたいポイントは次のとおりです。
- バリアフリー対応かどうか
身体障害がある場合は、段差の少ない物件や、エレベーター完備の建物を選ぶことが重要です。 - 通院・通勤に便利な立地か
病院や職場へのアクセスが良いかどうかを確認しましょう。移動時間が短いほど、体力的負担も軽減されます。 - 周辺環境の安全性・利便性
スーパーやコンビニが徒歩圏内にあるか、夜道が明るいかなど、生活しやすい環境かも大切な判断基準です。 - 家賃と生活費のバランス
収入に対して無理のない家賃設定(目安:手取り収入の3割以内)に抑えることが重要です。
また、障害者向けの住宅支援制度(住宅手当、公営住宅優遇制度など)が利用できる場合もあるため、あわせて確認しましょう。
不動産会社に相談する際には、障害特性を伝えたうえで、配慮が必要なポイントを事前に伝えておくと、より適切な物件を紹介してもらいやすくなります。
生活必需品や家具の購入
新生活を始めるにあたっては、家具や家電、生活用品を一通りそろえる必要があります。
最低限、以下のものは準備しておきましょう。
【必須家具・家電】
- ベッド・寝具
- 冷蔵庫
- 洗濯機
- 電子レンジ
- 照明器具
- カーテン
- テーブル・椅子
【生活必需品】
- 調理器具(鍋、フライパン、包丁、まな板など)
- 食器類(皿、コップ、箸、スプーン)
- 掃除道具(掃除機、ほうき、雑巾)
- 洗剤・洗濯用品
- トイレットペーパー・ティッシュ
【医療用品・服薬管理用品】
- お薬カレンダーやピルケース(服薬ミス防止)
- 血圧計や体温計(体調管理用)
すべてを新品で揃えると初期費用がかさむため、リサイクルショップやフリマアプリを活用して節約する方法も検討しましょう。
また、重い荷物を運ぶのが難しい場合には、家具家電付き物件を選ぶ、配送サービスを利用するなどの工夫も有効です。
住所変更などの必要書類を役所に提出する
引越しに伴い、必ず行わなければならないのが各種住所変更手続きです。
【役所で必要な手続き】
- 転出届(引越し前の市区町村役所)
- 転入届(引越し後の市区町村役所)
- 国民健康保険の住所変更(加入者の場合)
- 障害者手帳の住所変更
- 介護サービスや福祉サービス利用に関する変更手続き
- マイナンバーカード、印鑑登録証の住所変更
【その他に必要な手続き】
- 銀行口座・クレジットカードの住所変更
- 携帯電話会社への住所変更
- 郵便局への転送届(1年間郵便物を転送)
これらの手続きを怠ると、重要な郵便物が届かなくなったり、保険証が無効になったりと、生活に支障をきたす恐れがあります。
引越し後はできるだけ早く、忘れずに手続きを済ませましょう。
料理、掃除、洗濯、水道光熱費などの支払い、服薬管理などの日常生活をひとりで行う
一人暮らしでは、これまで家族に頼っていた日常生活のすべてを自分で管理する必要があります。
料理
毎日の食事をコンビニや外食に頼ると、健康面・金銭面の両方に悪影響が出ます。
簡単な自炊スキル(ご飯を炊く、野菜を切る、味噌汁を作るなど)を身につけておくと、体調管理と節約の両方に役立ちます。
冷凍食品やミールキット、宅配弁当サービスを上手に活用するのも一つの方法です。
掃除・洗濯
部屋を清潔に保つため、こまめな掃除・洗濯が欠かせません。
汚れをためこむと心身の不調にもつながるため、無理なく続けられる掃除ルーティンを作ることが大切です。
たとえば、「週末に掃除機をかける」「洗濯は2日に1回」など、スケジュールを決めておくと負担が軽減されます。
水道光熱費などの支払い
水道、電気、ガスの利用開始手続きとともに、毎月の支払いも自分で行うことになります。
支払い忘れ防止のために、口座振替やクレジットカード払いを設定しておくと便利です。
生活費の管理が不安な場合は、家計簿アプリを使って収支を見える化する習慣をつけましょう。
服薬管理
持病の治療を続けている方にとって、服薬管理は非常に重要です。
飲み忘れ防止のためには、
- お薬カレンダーの使用
- スマホアラームの活用
- 飲み忘れ防止アプリの利用 など、工夫して自己管理を徹底しましょう。
一人暮らしをする際の注意点

障害を持つ方が一人暮らしを始めるには、しっかりとした準備と慎重な計画が必要です。
自立に向けた大きなステップである一方で、生活上のハードルも存在します。
トラブルを未然に防ぎ、安心して生活をスタートさせるためには、いくつかの重要なポイントを押さえておかなければなりません。
ここでは、障害者が一人暮らしを始める際に特に注意したい点について、詳しく解説します。
障害の程度を考慮する
まず、自分自身の障害の程度を客観的に把握することが一番のスタートです。
「できること」と「できないこと」を整理し、日常生活に必要な動作や判断がどこまで自立してできるかを冷静に見極める必要があります。
例えば、
- 自力で買い物に行けるか
- 服薬管理ができるか
- 緊急時に誰かに助けを求められるか
- 毎日の食事・洗濯・掃除を無理なく続けられるか
など、生活の基本動作をひとつひとつチェックしていきましょう。
もし不安がある場合は、
- 支援者や家族と相談する
- ケアマネジャーや相談支援専門員にアセスメントを受ける
- 地域の自立支援センターに相談する といった方法で、第三者の視点も交えながら一人暮らしの適性を判断することが大切です。
「一人暮らしをするべきかどうか」は、単なる憧れや勢いだけで決めるのではなく、安全・安心に生活できるかを冷静に見極めることが最優先となります。
民間の賃貸住宅への入居は難しい
障害者が民間賃貸住宅に入居しようとする場合、いくつかのハードルに直面することがあります。
現実的には、障害を理由に入居を断られるケースも残念ながら存在します。
主な理由としては、
- オーナー側が「トラブルを避けたい」と考える
- 緊急時対応に不安を持たれる
- 保証人を求められるケースが多い
- 安定収入の証明が難しい場合がある
などが挙げられます。
また、精神障害や発達障害がある場合、偏見や誤解によって入居審査が通りにくくなることもあります。
対応策
こうした現実を踏まえたうえで、次のような対策を講じるとスムーズに進む可能性が高まります。
- 支援団体や福祉施設が提携している物件を紹介してもらう
- 福祉専門の不動産会社(障害者支援に理解のある仲介業者)を利用する
- 公営住宅(市営住宅、県営住宅)への申し込みを検討する
- 家賃補助制度(特定障害者向け支援制度など)を活用する
特に公営住宅は、一定の条件を満たすことで障害者優先枠が設けられている場合もあり、民間賃貸よりも入居しやすい傾向があります。
物件選びの段階から福祉関係者に相談しておくことで、トラブルを未然に防ぎ、安心して住まいを確保することができるでしょう。
自立した生活を送るためにはサポートや工夫が必要なケースもある
一人暮らしを成功させるためには、「完全な自立」にこだわりすぎないことも大切です。
必要に応じて、サポートを受けることは決して失敗ではなく、賢い選択です。
利用できるサポート例
- 居宅介護サービス
生活援助(掃除、洗濯、買い物代行など)や身体介護(入浴介助、排泄介助など)を受けられます。 - 生活支援センターの相談支援
定期的な生活相談、緊急時のサポート、福祉制度の利用支援などが受けられます。 - 訪問看護
医療的ケアが必要な場合、自宅に看護師が訪問し、体調管理や服薬確認を行います。 - 就労定着支援
就労後の生活リズム安定や職場トラブル防止のため、支援員が定期的にフォローアップしてくれます。
工夫して自立を支える方法
また、日常生活を工夫して負担を減らすことも非常に効果的です。
- 料理は作り置きを活用する(冷凍保存など)
- スマホアプリで服薬・家計・生活スケジュールを管理する
- 自動支払いや定期購入サービスを利用して支払い忘れを防止する
- 緊急連絡先をすぐ分かる場所に掲示しておく
- 週1回は自分の体調や生活リズムを振り返る習慣をつける
一人ですべてを抱え込もうとせず、サポートと工夫を上手に取り入れることが、長く安心して一人暮らしを続けるコツです。
自立した生活をするための解決策

障害を持つ方が一人暮らしを成功させるためには、経済的・生活面での不安をできるだけ減らすことがカギになります。
そのためには、公的な制度や支援サービスを賢く活用することが欠かせません。
支援制度を正しく知り、上手に使うことで、生活の安定と自立に一歩近づくことができます。
ここでは、自立した生活を支える代表的な制度について、わかりやすくご紹介していきます。
制度の利用
障害がある方が利用できる公的制度は、多岐にわたります。
それぞれの制度には対象条件や申請方法があるため、事前にしっかりと情報を確認し、自分に合った支援を受けられるようにしておきましょう。
障害年金
障害年金は、病気やけがによって生活や就労が制限される障害がある人に対して支給される年金です。
働いていても受給できる場合があり、生活費の補填に大いに役立ちます。
【主なポイント】
- 障害基礎年金(国民年金加入者向け)
- 障害厚生年金(厚生年金加入者向け)
等級は1級~3級に分かれ、障害の重さによって支給額が異なります。
たとえば、障害基礎年金2級で年間約80万円以上(月額6〜7万円程度)が支給され、障害厚生年金の場合はさらに上乗せされます。
一人暮らしにおいては、家賃や生活費の一部を補う貴重な収入源となるため、対象になりそうな方は必ず申請を検討しましょう。
障害者控除
障害者控除は、所得税・住民税の負担を軽減するための制度です。
障害者手帳を持っている方、または一定の障害状態にある方は、税金の控除対象となります。
【控除額の例】
- 障害者控除:27万円
- 特別障害者控除:40万円
この控除により、課税所得が減るため、結果的に所得税・住民税が安くなります。
一人暮らしでギリギリの生活費をやりくりしている場合、わずかな税負担の減額でも大きな助けになります。
確定申告や年末調整の際に必ず申請しましょう。
生活保護
障害年金だけでは生活が成り立たない場合や、働くことが困難な場合には、生活保護の利用も選択肢となります。
【生活保護のポイント】
- 最低限度の生活を保障
- 医療費無料(医療扶助)
- 住宅扶助により家賃負担が軽減
- 光熱費・生活費も支援対象
生活保護には収入・資産に関する厳しい条件がありますが、障害を持つ方は受給基準が比較的緩やかに設定されていることもあります。
「働きたいけどすぐには難しい」「生活が安定するまで支援が必要」という場合には、自治体の福祉事務所に早めに相談することをおすすめします。
特別障害者手当
特別障害者手当は、在宅で重度の障害があり、日常生活に著しい制限がある方を対象に支給される手当です。
【支給条件】
- 20歳以上で、重度の身体障害・知的障害・精神障害がある
- 施設入所や病院入院中ではないこと
- 世帯所得制限あり
【支給額】
- 月額約28,000円(2024年4月時点)
特別障害者手当は、年金とは別に支給されるため、重度の障害がある方にとっては生活支援の大きな助けになります。
申請は市区町村役所の障害福祉課などで行います。
地域生活支援事業
地域生活支援事業は、障害者が地域社会の中で自立して生活できるように支援することを目的とした制度です。
【主な支援内容】
- 移動支援(通院、買い物、余暇活動の支援)
- コミュニケーション支援(手話通訳、要約筆記)
- 日常生活用具の給付(特殊寝台、入浴補助用具など)
自治体によって実施内容は異なりますが、生活を円滑にするためのきめ細かなサポートが受けられます。
一人暮らしを始める際には、自分が利用できる地域生活支援事業の内容を必ず確認しましょう。
日常生活支援事業
日常生活支援事業は、特に重度の障害者が在宅生活を送るために必要な支援を行う制度です。
【提供されるサービス例】
- 緊急時の対応支援
- 見守り支援
- 夜間や休日の生活支援
- 介護者不在時の代替支援
一人で生活するうえで「もしものときにどうするか」という不安は常に付きまといます。
日常生活支援事業を活用することで、緊急対応や生活維持のためのバックアップ体制を整えることができ、安心感が格段に高まります。
自治体によって対象条件や支援内容が異なるため、引越し前・開始前にしっかり調べておくことが重要です。
収入を増やす
一人暮らしを安定して続けるためには、現在の収入に頼るだけでなく、積極的に収入源を増やす工夫も必要です。
特に、障害者雇用枠の給与だけでは生活費を十分にまかなえないケースもあるため、将来に向けた経済的な備えを作るためにも収入アップを目指しましょう。
副業をする
収入を増やすための有効な手段のひとつが「副業」です。
最近では、企業によって副業を認める動きも広がっており、障害者雇用枠で働いている方も、副業にチャレンジできる環境が整ってきています。
【おすすめの副業例】
- 在宅ワーク(ライティング、データ入力、テープ起こし)
体力的負担が少なく、自分のペースで取り組めるため、無理なく続けやすい副業です。 - ハンドメイド販売(アクセサリー、雑貨など)
手先が器用な方にはぴったり。ネットショップやフリマアプリを活用して販売できます。 - イラスト制作、デザイン業務
クリエイティブスキルがある方は、クラウドソーシングサイトで案件を受注することも可能です。 - オンライン講師・家庭教師
得意な分野(英語、パソコンスキルなど)がある場合には、指導業務も選択肢になります。
副業を選ぶ際は、自分の障害特性や体力、時間の余裕をしっかり考慮することが大切です。
「少しでも収入を増やす」「自分の得意を活かす」という気持ちで、負担にならない範囲から始めましょう。
なお、副業をする場合には、本業の就業規則を確認し、副業届が必要かどうかを事前にチェックしておくことも忘れないでください。
生活費を削減する
収入を増やすと同時に、生活費を上手に削減する工夫も自立生活を安定させるためには重要です。
無理な節約ではなく、賢く「ムダを減らす」意識を持つことがポイントになります。
【生活費削減の具体例】
- 家賃を抑える
市営住宅・県営住宅など、公的な住宅制度を活用して家賃負担を軽減する。
また、築年数が古い物件や駅から少し離れた場所を選ぶことで、賃料を大きく下げられる場合もあります。 - 光熱費を節約する
エアコンの設定温度を適切に調整する、LED照明に変える、電力会社のプランを見直すことで、毎月の電気代を削減できます。 - 通信費を見直す
格安スマホへの乗り換え、不要なオプション契約の解約、Wi-Fiルーターのプラン見直しなどで、月々数千円の節約が可能です。 - 食費を抑える
まとめ買いや自炊の習慣を取り入れることで、外食やコンビニ利用を減らし、食費を大幅にカットできます。
冷凍保存や作り置きも有効な節約術です。 - 保険やサブスクリプションの整理
加入している保険内容を見直し、不要な契約を整理する。
また、使っていないサブスクサービス(動画配信、音楽ストリーミングなど)は解約しましょう。
生活コストを下げる工夫は、今すぐ始められる小さな行動からでも十分効果を発揮します。
支出を管理しやすくするために、家計簿アプリを活用して「何にいくら使っているか」を可視化することもおすすめです。
障害者が一人暮らしをする際に相談できる機関
障害を持つ方が一人暮らしを始めるとき、最大の不安は「本当に自分ひとりで生活できるだろうか?」ということではないでしょうか。
しかし、一人で全てを抱え込む必要はありません。
社会には、障害を持つ方が自立生活を始める際に相談できる専門機関が数多く存在しています。
困ったときや不安なときは、早めに支援機関へ相談することが、安心して生活をスタートさせる第一歩です。
ここでは、代表的な相談機関を紹介します。
自治体の福祉担当窓口
一人暮らしを始める際、まず最初に相談すべきなのが、お住まいの自治体の福祉担当窓口です。
市役所や区役所の障害福祉課、福祉総合窓口などでは、次のような支援が受けられます。
- 障害者手帳に関する手続き
- 各種福祉サービスの利用案内
- 住宅支援(公営住宅の優先入居、住宅改修支援など)
- 生活保護や障害年金に関する相談
- 介護サービス・生活支援サービスの紹介
福祉担当窓口は、障害に関する公的支援の総合案内所のような存在です。
困りごとが漠然としている段階でも、まずは窓口に相談することで、自分に合った支援制度や利用可能なサービスを教えてもらえます。
引っ越し前に自治体の福祉窓口に一度訪れておくと、スムーズに手続きを進めることができるでしょう。
基幹相談支援センター
基幹相談支援センターは、地域における障害者支援の中心的な役割を担う相談機関です。
全国の市町村に設置が進められており、障害者やその家族に対する幅広い支援を行っています。
【主なサポート内容】
- 一人暮らしに向けた支援計画の作成
- 必要な福祉サービスの調整・紹介
- 緊急時の支援体制づくり
- 権利擁護(虐待防止や差別解消支援)
基幹相談支援センターの特徴は、支援が必要になったときに長期的に伴走してくれる点にあります。
一人暮らし開始後も、定期的に状況を確認し、困りごとがあればすぐに対応してもらえるため、孤立を防ぐための強い味方となります。
特定相談支援事業所
特定相談支援事業所は、障害福祉サービスを利用するために必要な「サービス等利用計画」を作成する専門機関です。
一人暮らしを始める際には、さまざまな福祉サービス(居宅介護、移動支援、生活介護など)を組み合わせて利用するケースが多いため、特定相談支援事業所のサポートは非常に重要です。
【できること】
- サービス等利用計画の作成
- 利用するサービス事業者との連携
- サービス利用中のモニタリングと調整
- 支援内容の見直し提案
特定相談支援事業所に相談することで、自分に合った支援内容をプロの視点で整理・提案してもらえるため、無理のない一人暮らしの実現に近づけます。
一般相談支援事業所
一般相談支援事業所は、障害者手帳を持っていない方や、障害福祉サービスの利用対象外となっている方でも相談できる機関です。
【主な役割】
- 福祉サービス以外の支援に関する情報提供
- 地域資源の紹介(ボランティア団体、NPO法人など)
- 就労支援や生活支援への橋渡し
- 緊急時支援体制の構築
一人暮らしを希望しているが、「まだ手帳を取得していない」「どのサービスを使えるかわからない」という段階でも、一般相談支援事業所は気軽に相談できます。
手帳の有無や障害の程度にかかわらず、誰もが地域で安心して暮らせるようサポートしてくれる存在です。
転職で収入UPも視野に入れよう!
一人暮らしを実現・維持するためには、収入の安定・向上も非常に重要な要素です。
現在の職場で給与が伸びにくい、将来のキャリアアップが見込めないと感じている場合は、転職も選択肢に入れてみましょう。
最近では、障害者雇用枠でも
- フルタイム勤務
- 高収入が期待できる職種(事務、IT、クリエイティブ職など)
- 正社員登用制度あり の求人が増えてきています。
特に、障害者雇用に特化した転職エージェントを利用すれば、
- 障害特性に合った職場紹介
- 面接サポート
- 職場定着支援 など、安心して転職活動を進めることができます。
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まとめ
障害を持ちながら一人暮らしを始めるには、多くの準備と勇気が必要です。
しかし、社会にはあなたを支える仕組みや制度、そして相談できる場所がたくさん存在しています。
- 自治体の福祉担当窓口
- 基幹相談支援センター
- 特定相談支援事業所
- 一般相談支援事業所
こうした支援機関をうまく活用し、さらに収入アップも視野に入れることで、より安定した自立生活を目指すことができます。
あなたの一人暮らしのスタートが、明るく希望に満ちたものになることを心から応援しています。