- 身体障害
- 障害者雇用
上肢障害のある方の仕事選びとは?おすすめの職種と働きやすい環境を解説

この記事の内容
仕事を探す際、自分に合った職場環境や仕事内容を見つけることは誰にとっても重要です。特に上肢障害をお持ちの方は、日常生活での動作に制限があることから、職場選びにおいても特別な配慮が必要になることがあります。
この記事では、上肢障害とはどのようなものか、仕事をする上での課題や制限、そして働きやすい環境について詳しく解説します。また、上肢障害のある方に適した職種や、就職・転職を成功させるためのアプローチ方法、活用できる支援サービスなどもご紹介します。
自分の強みを活かし、安心して長く働ける職場を見つけるきっかけになってもらえたら嬉しいです。
ぜひ最後まで読んでください。
上肢障害ってどんな障害?

上肢障害とは、腕や手、肩、肘、手首など、体の上部の機能に障害がある状態を指します。生まれつきの場合もあれば、事故や病気によって後天的になる場合もあります。
上肢障害には、次のようなさまざまな種類があります:
- 腕や手の欠損
- 関節の可動域制限
- 筋力低下
- 協調運動障害
- 痛みや感覚障害
- 麻痺
上肢障害の程度や症状は人によって大きく異なり、軽度のものから重度のものまであります。また、同じ診断名でも、実際に困ることや必要な配慮は人それぞれです。
仕事における課題や制限
上肢障害がある方が仕事をする上でよく直面する課題や制限について見ていきましょう。
業務範囲の制限
上肢に障害があると、次のような業務に制限が生じることがあります
- 重いものを持ち上げる作業
- 細かい手作業が必要な業務
- 長時間にわたるPCのタイピングや書類作成
- 特定の姿勢を長時間続ける必要がある仕事
- 機械操作など両手の動作が必要な業務
これらの制限があっても、職場での適切な配慮や工夫によって、多くの仕事に取り組むことが可能です。例えば、特殊なキーボードやマウスを使用したり、音声入力ソフトを活用したりすることで、パソコン作業の効率を高めることができます。
作業効率と時間管理
上肢障害がある場合、同じ作業でも他の人より時間がかかることがあります。
- 書類への記入やタイピングに時間がかかる
- 疲れやすいためこまめに休憩を必要とする
- 痛みがある日は作業効率が下がる
このような場合、無理をせず自分のペースで働けるよう、時間管理の工夫が必要になります。例えば、優先順位を明確にして効率的に作業を進めたり、自分の体調に合わせて休憩を取りながら働いたりする方法があります。
通勤の負担
通勤時の混雑した電車やバスでは、つり革につかまることや、人混みの中で体のバランスを保つことが難しい場合があります。また、長時間の通勤は体力的な負担も大きくなります。
このような負担を軽減するために、次のような対策が考えられます
- ラッシュを避けた時間帯に通勤する
- 座れる可能性が高い路線や交通手段を選ぶ
- 自宅から近い職場を選ぶ
- 在宅勤務の可能性がある職場を検討する
上肢障害のある方に適した職場環境

働きやすい職場環境は、仕事の満足度や継続性に大きく影響します。上肢障害のある方が快適に働くためには、どのような環境が適しているのでしょうか。
バリアフリー設備が充実している
物理的なバリアフリー設備は、上肢障害がある方の働きやすさに直結します。
- 自動ドアや軽く開くドアなど開けやすいドア
- 使いやすい高さの作業台やデスク
- 調整可能な椅子や机
- 広めの通路や作業スペース
- アクセスしやすいコピー機やプリンター
これらの設備があることで、日常の業務がスムーズになり、体への負担も減らすことができます。
作業支援ツールを導入している
上肢障害のある方の作業をサポートするツールや機器を導入している職場は、働きやすさが格段に向上します。
代表的な支援ツールには次のようなものがあります:
- 音声入力ソフトウェア
- 特殊なキーボードやマウス(片手用、トラックボールなど)
- 書類ホルダーやブックスタンド
- 人間工学に基づいたデスク周りの機器
- ページめくり器や文書スキャナー
これらのツールは、個人で購入することもできますが、職場で導入されていれば労働者の経済的な負担なく使用できます。また、必要に応じて導入を相談できる柔軟な姿勢を持つ企業も働きやすいと言えるでしょう。
時短勤務やフレックスタイム制度がある
体調や体力に配慮した勤務形態は、長く安定して働き続けるために重要です。
- 時短勤務:一日の勤務時間を短くすることで、体への負担を減らす
- フレックスタイム:自分の体調が良い時間帯に働くことができる
- 分割勤務:休憩を長めに取りながら働くことができる
これらの柔軟な勤務形態があることで、無理なく安心して仕事を続けることができます。
在宅勤務の選択肢がある
在宅勤務は上肢障害のある方にとって、特に有益な働き方です。在宅勤務のメリットには次のようなものがあります。
- 通勤の負担がない
- 自分のペースで休憩を取りながら働ける
- 自分に合った環境を整えやすい
- 自宅のバリアフリー環境をそのまま活用できる
- 体調に合わせて柔軟に仕事時間を調整できる
コロナ禍以降、多くの企業がリモートワークを導入し、在宅勤務の選択肢が広がっています。完全在宅だけでなく、週に数日出社するハイブリッド型の勤務形態も増えています。
障害への正しい理解がある
職場の同僚や上司が障害に対する正しい理解を持っていることは、働きやすさの重要な要素です。
- 障害の特性や必要な配慮について理解がある
- 「できること」と「難しいこと」を適切に把握している
- 過度な気遣いや遠慮がなく、必要なときに自然にサポートができる
- 障害を理由に能力を過小評価したり、逆に特別扱いしたりしない
このような理解のある職場では、自分の能力を発揮しやすく、ストレスなく働くことができます。
オープンなコミュニケーション環境である
困ったときに相談しやすい環境や、必要な配慮を伝えやすい雰囲気は非常に大切です。
- 悩みや困りごとを相談できる上司や担当者がいる
- 必要な配慮を遠慮なく伝えられる雰囲気がある
- 定期的な面談などで状況を確認してくれる
- 業務内容の変更や調整を柔軟に検討してくれる
こうしたオープンなコミュニケーション環境があれば、小さな問題が大きくなる前に解決でき、長く働き続けるための基盤となります。
上肢障害のある方におすすめの職種

上肢障害のある方に向いている職種は、障害の程度や個人の得意分野によって異なりますが、一般的におすすめの職種をご紹介します。
デスクワーク系職種
デスクワークは、立ち仕事や重いものを扱う仕事に比べて、上肢障害のある方に向いている場合が多いです。
一般事務職
一般事務の業務内容は多岐にわたりますが、適切な支援ツールを活用することで、多くの作業に対応できます。
- 書類の整理・保管
- データ入力(支援ツール使用)
- メール対応
- 電話対応
- スケジュール管理
特に大企業や公的機関では、障害者雇用の一環として事務職の求人が多く見られます。
経理・財務
数字やパソコンを使った作業が中心で、専門性を身につけることで長く働ける職種です。
- 伝票処理
- 帳簿記入
- 決算書類作成
- 給与計算
- 税務関連業務
会計ソフトの進化により、手作業が減り、パソコンでの入力が中心になっているため、支援ツールを使いながら効率的に働くことができます。
IT関連職種
IT分野は、技術の進歩によって障害に関わらず働きやすい環境が整いつつある分野です。
プログラマー・エンジニア
論理的思考力や問題解決能力を活かせる職種です。
- コーディング(音声入力ソフトなども活用可能)
- システム設計
- テスト・デバッグ
- 保守・運用
特にWeb開発やモバイルアプリ開発など、需要の高い分野では、リモートワークの機会も多くあります。
Webデザイナー
創造性を発揮できる職種で、デザインソフトの操作に慣れれば効率的に作業ができます。
- Webサイトのデザイン制作
- バナー・アイコンなどの作成
- レイアウト調整
- SNSの投稿作成
デザインソフトはショートカットキーを多用でき、さらに特殊なデバイスを使うことで操作性を向上させることができます。
コミュニケーション系職種
人とのコミュニケーションが中心の仕事も、上肢障害のある方に向いている場合があります。
コールセンタースタッフ
話すことや聞くことが中心の仕事で、手元の作業は比較的少ないです。
- 電話での問い合わせ対応
- 顧客情報の検索・確認
- クレーム対応
- 商品案内・サポート
ヘッドセットを使用することで両手が空き、必要に応じてパソコン操作ができます。また、在宅コールセンターの求人も増えています。人と話すことが得意な人は向いているでしょう。
カスタマーサポート
メールやチャットでの対応が中心で、自分のペースで返信できる場合もあります。
- メールでの問い合わせ対応
- チャットサポート
- FAQの作成・更新
- 顧客データの管理
テンプレートの活用や音声入力ソフトを使うことで、入力の負担を減らすことができます。
在宅ワーク適性の高い職種
通勤の負担がなく、自分のペースで働ける在宅ワークは、上肢障害のある方にとって魅力的な選択肢です。
データ入力・テープ起こし
比較的始めやすく、在宅でも多く募集されている職種です。
- 調査データの入力
- アンケート結果の集計
- 音声データの文字起こし
- 議事録作成
音声入力ソフトや特殊なキーボードを活用することで、入力の負担を軽減できます。また、納期さえ守れば、自分のペースで進められる仕事も多いです。
ライター・編集者
文章力や編集スキルを活かせる仕事で、専門性を身につけることでキャリアアップも可能です。
- Web記事の執筆
- 商品説明文の作成
- SNS投稿文の作成
- 校正・編集作業
音声入力ソフトを使って文章を作成したり、編集ツールのショートカットキーを活用したりすることで、効率的に仕事を進めることができます。
就職・転職成功のためのアプローチ
上肢障害のある方が就職や転職を成功させるためには、計画的なアプローチが重要です。
自己分析と職業適性の把握
まずは自分自身をよく知ることから始めましょう。
- 自分の障害の特性と日常生活での工夫
- 得意なこと、苦手なこと
- 興味のある分野
- 長所・短所
- これまでの経験やスキル
これらを整理することで、自分に合った仕事や職場環境が見えてきます。また、職業適性検査を受けることも有効です。ハローワークや就労支援機関では、障害者向けの職業適性検査を実施していることがあります。
スキルアップと資格取得
希望する職種に必要なスキルや資格を身につけることで、就職の可能性が広がります。
- パソコンスキル(Word、Excel、PowerPointなど)
- 専門的な資格(簿記、ITパスポート、Webデザイン技能検定など)
- 語学力(英語、中国語など)
- コミュニケーションスキル
障害者向けの職業訓練校や就労移行支援事業所では、これらのスキルを学ぶ機会があります。また、オンライン講座や通信教育も活用できます。
障害開示のタイミングと方法
障害をいつ、どのように伝えるかは、就職活動の重要なポイントです。
一般的には、次のタイミングで障害について伝えることが多いです
- 応募時:障害者雇用枠で応募する場合
- 面接時:面接での配慮が必要な場合
- 内定後:具体的な配慮事項を相談する場合
また、障害を伝える際のポイントは以下の通りです。
- 困ることと必要な配慮を具体的に伝える
- できることを明確に示す
- 過去の工夫や対処法も伝える
- 前向きな姿勢で伝える
障害の開示は義務ではありませんが、働き始めてから必要な配慮を得るためには、適切なタイミングでの開示が役立つことが多いです。
上肢障害のある方向けの就労支援サービス
就職活動や職場定着のために利用できる支援サービスは多くあります。積極的に活用しましょう。
公的機関によるサポート
税金で運営されている公的な支援機関は無料で利用できます。
ハローワーク
全国各地にある公共職業安定所(ハローワーク)には、障害者専門の窓口があります。
- 障害者向けの求人紹介
- 職業相談
- 職業紹介
- 各種制度の案内
- 職場適応指導
特に「障害者就労支援ナビゲーター」は、障害のある方の就職をサポートする専門スタッフなので、相談してみるとよいでしょう。
地域障害者職業センター
全国の主要都市にある障害者職業センターでは、次のようなサービスを提供しています。
- 職業評価…どんな仕事が向いているか調べる
- 職業準備支援…働くために必要なトレーニング
- ジョブコーチ支援…職場に専門家が出向いてサポート
- 事業主支援…企業向けのアドバイス
専門的な支援が必要な場合は、目的に応じて相談してみてください。
障害者就業・生活支援センター
就職だけでなく、生活面も含めた総合的な支援を行う機関です。
- 就職に向けた準備支援
- 就職後の職場定着支援
- 生活面の相談
- 関係機関との連携
一人ひとりに担当者がつき、継続的な支援を受けられるのが特徴です。
民間サービスの活用
民間の支援サービスも数多くあり、より専門的なサポートを受けられることがあります。
就労移行支援事業所
障害者総合支援法に基づく福祉サービスで、一定の自己負担はありますが、充実したプログラムを受けられます。
- ビジネスマナーの習得
- パソコンスキルの訓練
- コミュニケーション訓練
- 模擬面接
- 企業実習
- 就職後の定着支援
通常2年間の利用期間があり、その間に就職を目指します。
障害者雇用専門の求人サイト
障害者雇用に特化した求人サイトでは、障害に配慮した職場環境や条件が明示されていることが多いです。
- 障害者ナビ
- クローバーナビ
- ゆめワーク
- dodaチャレンジ
これらのサイトでは、障害のある方向けの求人情報が豊富に掲載されています。
障害者ナビは業界トップクラスのサポート力を誇る求人サイトです
障害者ナビは、上肢障害を含むさまざまな障害のある方の就職をサポートする求人サイトです。以下のような特徴があります。
- 専任のキャリアアドバイザーによる個別サポート
- 障害特性に配慮した職場環境の情報提供
- 面接対策や履歴書添削サービス
- 就職後のフォローアップ体制
- バリアフリー環境が整った企業の求人紹介
登録は無料で、希望や条件に合った求人を紹介してもらえます。就職活動の強い味方になるでしょう。
まとめ
上肢障害のある方が仕事を選ぶ際には、自分の障害特性を理解し、適切な職場環境や支援ツールを活用することが大切です。
デスクワークやIT関連職種、コミュニケーション系職種、在宅ワークなど、上肢障害のある方に向いている職種は多くあります。
また、バリアフリー設備や柔軟な勤務形態、障害への理解がある職場を選ぶことで、長く安心して働き続けることができるでしょう。
就職・転職を成功させるためには、自己分析やスキルアップ、適切な障害開示が重要です。
ハローワークや障害者職業センターなどの公的支援機関、就労移行支援事業所や障害者雇用専門の求人サイトなどの民間サービスを積極的に活用しましょう。
あなたの強みを活かせる仕事や職場は必ずあります。焦らず、じっくりと自分に合った仕事を探していきましょう。