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下肢障害があってもできる仕事と働きやすい職場環境

この記事の内容
足や脚の障害があっても、自分の能力や特性を活かして働きたいと考えている方は多いでしょう。下肢障害があると、移動や立ち仕事などに制限が生じることがありますが、適切な環境と職種選びによって、能力を十分に発揮できる仕事は数多くあります。
この記事では、下肢障害のある方が仕事を選ぶ際のポイントや、働きやすい環境、おすすめの職種、活用できる支援制度などを詳しく解説します。
下肢障害とは
下肢障害とは、足や脚などの下半身の機能に障害がある状態を指します。具体的には以下のようなものが含まれます
- 生まれつきの障害(先天性の障害)
- 事故や怪我による後天的な障害
- 病気による麻痺や機能低下
- 切断や欠損
- 関節の可動域制限
- 筋力低下
- 痛みを伴う障害
一口に「下肢障害」と言っても、その種類や程度は非常に幅広く、外見から判断できない障害も少なくありません。
たとえば、外見上は健常者と変わらなく見えても、長時間歩いたり立っていると痛みや麻痺が出るというケースもあります。
また、日によって症状が大きく変化する人や、加齢とともに症状が進行する方もいるため、「自分に合った働き方」を見つけることが、非常に重要なテーマとなります。
下肢障害のある方が仕事で抱える悩み
下肢障害のある方が仕事をする上で、どのような悩みや困難があるのかを見ていきましょう。
できる仕事の範囲に限りがある
下肢障害のある方の中には、「働ける職種が限られているのでは」と不安を感じる人も多いです。たとえば以下のような業務は、負担が大きくなる傾向があります。
- 長時間の立ち仕事
- 頻繁な移動が必要な仕事
- 階段の上り下りが多い仕事
- 不安定な場所での作業
- 重いものを運ぶ仕事
しかし、これらの制限があっても、デスクワークや専門的な技術を活かす仕事など、活躍できる分野は数多くあります。また、職場での適切な配慮や工夫によって、業務範囲を広げることも可能です。
周囲に引け目を感じる
職場では、障害に関連して周囲に対して引け目を感じることがあります。
周囲のサポートや業務免除に引け目を感じる
- 「自分だけ特別扱いされている」と感じてしまう
- 同僚に余計な仕事が回っていないか心配になる
- 「迷惑をかけているのでは」という気持ちが生じる
- 配慮を頼むことに遠慮してしまう
このような気持ちは自然なものですが、お互いの違いを認め合い、それぞれの強みを活かすことが、職場全体にとってプラスになります。必要な配慮を受けることで、あなたの能力を最大限に発揮できるのであれば、それは会社にとっても価値のあることです。
見た目でわかりにくい障害だと周囲の理解が得にくい
- 外見からは障害が分かりにくい場合、理解されづらいことがある
- 「本当に障害があるの?」と疑われることもある
- 日によって症状が変わる場合、特に理解されにくい
- 説明する労力が必要になる
見た目でわかりにくい障害の場合は、必要に応じて自分の状況を説明することが大切です。ただし、詳細を話す義務はありませんので、自分が話しやすい範囲で伝えればよいでしょう。
バリアフリー未対応で職場内での移動やトイレが困難
物理的なバリアは、下肢障害のある方にとって大きな課題です。
- 段差や階段が多い建物では移動が難しい
- エレベーターがない、または遠い場所にある
- 車いす対応のトイレがない
- 通路が狭く移動しにくい
- 休憩スペースが遠い
これらの問題は、事前の職場見学や面接時の確認が重要です。また、入社後も必要な改善要望を伝えることで、少しずつ環境が整っていくこともあります。
通勤の移動が大変
通勤時の移動は、下肢障害のある方にとって大きな負担となることがあります
- 混雑した電車やバスでの移動が困難
- 駅やバス停から職場までの距離が長い
- 雨や雪の日は特に移動が難しくなる
- 長時間の通勤で体力を消耗してしまう
- 遅延や突発的な交通障害で予定が立てにくい
通勤の負担を軽減するためには、在宅勤務の活用や時差出勤、通勤手当の支給など、企業の制度を活用することも考えられます。
異動やキャリアパスに制限がある
将来のキャリア形成に関する悩みもよく聞かれます。
- 全国転勤や海外赴任が難しい場合がある
- 現場作業が必須の部署への異動が難しい
- 営業職など外回りが多い職種へのキャリアチェンジが制限される
- 昇進に必要な経験が積めない可能性がある
このような制限がある場合でも、自分の強みを活かせる専門性を高めるなど、別の形でキャリアを伸ばす方法があります。また、最近では多様な働き方を認める企業も増えてきています。
下肢障害のある方が働きやすい職場環境

下肢障害のある方が快適に働くためには、どのような職場環境が適しているのでしょう
バリアフリー環境が整ったオフィス
職場が物理的に移動しやすい構造になっているかどうかは、非常に重要です。
- スロープやエレベーターが設置されている
- 段差がない、または少ない設計
- 車いす対応のトイレがある
- 広めの通路や作業スペースがある
- 適切な高さの作業台やデスクが用意されている
- 休憩スペースが利用しやすい場所にある
- 駐車場から入口までのアクセスが良い
最近では、多くの企業が障害のある社員が働きやすいよう、オフィス環境の改善に取り組んでいます。また、新しいビルほどバリアフリー設計が徹底されていることが多いため、オフィスの立地も重要なポイントになります。
在宅勤務や時差出勤ができる
体調や移動手段によっては、毎日の通勤が大きな負担になることもあります。そのため、以下のような柔軟な勤務制度が整っている職場は非常に魅力的です。
- 在宅勤務制度:通勤の負担がなく、自宅の整った環境で働ける
- 時差出勤:ラッシュ時間を避けて出勤でき、混雑による負担が減る
- フレックスタイム制度:体調に合わせて勤務時間を調整できる
- サテライトオフィス:自宅近くのオフィスで働ける選択肢がある
- ハイブリッド勤務:出社と在宅を組み合わせた働き方ができる
コロナ禍以降、これらの柔軟な勤務形態を導入する企業が増えており、下肢障害のある方にとっても働きやすい環境が広がっています。
障害への正しい理解と配慮がある
制度や設備が整っていても、人間関係や社内文化が理解に乏しいと働きにくさは解消しません。
- 上司や同僚が障害について正しく理解している
- 必要な配慮を気兼ねなく相談できる雰囲気がある
- 過度に心配されたり特別扱いされたりしない
- 能力や適性を正当に評価してもらえる
- 困ったときに助け合える関係がある
- 定期的に状況を確認してくれる体制がある
このような職場環境があれば、安心して自分の能力を発揮し、長く働き続けることができます。面接時に会社の雰囲気や障害者雇用への取り組みについて質問してみると、働きやすさを事前に知る手がかりになります。
下肢障害のある方におすすめの仕事

下肢障害のある方に向いている仕事は数多くあります。ここでは、特におすすめの職種をご紹介します。
事務・経理職
デスクワークが中心で、移動が少ない事務職は、下肢障害のある方に適した職種の一つです。
- 一般事務:書類作成、データ入力、ファイリングなど
- 経理事務:伝票処理、帳簿記入、決算業務など
- 人事事務:給与計算、勤怠管理、社会保険関連業務など
- 営業事務:受発注管理、顧客対応、スケジュール管理など
事務職は幅広い業界で需要があり、パソコンスキルを身につけることで就職の可能性が広がります。また、簿記などの資格を取得すると、より専門性の高い業務に携わることができます。
ITエンジニア
技術力や論理的思考力を活かせるIT関連職種も、下肢障害のある方に適しています。
- プログラマー:システムやアプリケーションの開発
- システムエンジニア:システム設計や構築
- ネットワークエンジニア:通信ネットワークの設計や運用
- Webエンジニア:Webサイトやアプリケーションの開発
- データベースエンジニア:データベースの設計や管理
IT業界は在宅勤務の導入が進んでいる分野でもあり、通勤の負担を減らしながら専門性を活かして働くことができます。また、継続的に学習することでスキルアップやキャリアアップの可能性も広がります。
Webデザイナー
クリエイティブな能力を発揮できるWebデザイナーも、デスクワーク中心の職種です。
- Webサイトのデザイン
- バナーやアイコンなどの制作
- レイアウトやユーザビリティの設計
- コーディング(HTML、CSS)
- グラフィックデザイン
デザインスキルを磨くことで、フリーランスや在宅での仕事も視野に入れることができます。また、デザインツールの使い方を学べるオンライン講座も充実しているため、スキルアップしやすい環境があります。
コールセンター
電話やチャットでの対応が中心のコールセンター業務も、下肢障害のある方に向いている職種です。
- インバウンド業務:問い合わせ対応、予約受付など
- アウトバウンド業務:セールス、アンケート調査など
- テクニカルサポート:製品やサービスのサポート
- カスタマーサービス:クレーム対応、顧客フォローなど
コミュニケーション能力を活かせる仕事で、在宅コールセンターの求人も増えています。また、特定の商品知識やサービスに詳しくなることで、専門性を高めることもできます
ライター
文章力を活かせるライターの仕事も、場所を選ばず働ける職種です。
- Webライター:ウェブサイト用の記事作成
- コピーライター:広告やキャッチコピーの作成
- 編集者:雑誌や書籍の編集作業
- テクニカルライター:マニュアルや技術文書の作成
- シナリオライター:映像や広告のシナリオ作成
インターネットの普及により、オンラインで仕事を受注できる機会が増えています。自分の得意分野や興味のある分野で専門性を高めることで、より高単価の仕事を獲得することも可能です。
工場の機械作業
座って行える工場での機械操作も、下肢障害のある方の選択肢の一つです。
- 製品の検査・検品
- 機械オペレーション
- 部品の組み立て
- 製品の梱包
- 品質管理
大手企業の工場では、障害者雇用を積極的に行っているところも多く、作業環境も整っていることが多いです。また、工場によっては送迎バスを用意しているところもあり、通勤の負担を軽減できる場合があります。
在宅でできる仕事
完全に在宅で働ける仕事も増えています。
- データ入力:各種データのPC入力
- テープ起こし:会議や講演の音声データを文字に起こす作業
- 翻訳:外国語から日本語へ、または日本語から外国語への翻訳
- イラスト制作:商用イラストや挿絵の作成
- ソーシャルメディア運営:企業のSNSアカウント管理
クラウドソーシングサイトを利用すれば、自分のスキルや状況に合わせて仕事を選ぶことができます。また、複数のクライアントと取引することで、収入の安定化を図ることも可能です。
下肢障害のある方が利用できる就職・就労支援

就職活動を進める上で活用できる支援制度や機関についてご紹介します。
ハローワーク
全国のハローワーク(公共職業安定所)には、障害者専門の窓口があります。障害者向けの求人情報の紹介や、就職支援セミナーなどが受けられます。
- 専門の職員による就職相談
- 障害者向けの求人情報の提供
- 職業紹介
- 障害者向け就職面接会の開催
- 各種助成金や支援制度の案内
まずはお近くのハローワークに相談してみましょう。
地域障害者職業センター
各都道府県にある地域障害者職業センターでは、より専門的な就労支援を受けることができます。
- 職業評価:適性や能力を客観的に把握
- 職業準備支援:職場で必要なスキルやコミュニケーション能力の訓練
- 職場適応支援(ジョブコーチ支援):職場に専門家が訪問してサポート
- リワーク支援:休職者の職場復帰支援
- 事業主支援:企業向けの助言や援助
専門家による詳細な評価やアドバイスを受けられるため、自分に合った仕事を見つける手がかりになります。
障害者就業・生活支援センター
就職だけでなく、生活面の相談や職場定着支援までサポートする機関です。
- 就職に関する相談・支援
- 就職後の職場定着支援
- 日常生活や地域生活に関する相談
- 関係機関との連携・調整
- 職場環境の調整に関する助言
一人ひとりに担当者がつき、継続的な支援を受けることができます。就職後も長く働き続けるためのサポートがあるのが特徴です。
就労移行支援事業所
職業訓練や企業実習を通じて、実践的なスキルと就職力を高める福祉サービスです。
- ビジネスマナーの習得
- パソコンスキルの訓練
- 職場でのコミュニケーション訓練
- 作業訓練
- 企業実習
- 就職活動支援
- 就職後のフォローアップ
通常2年間の利用期間があり、その間に就職を目指します。利用にあたっては、お住まいの市区町村の障害福祉課などで手続きが必要です。
障害者の就労に実績のある転職エージェント・求人サイト
障害者雇用に特化した転職エージェントや求人サイトを利用すると、一般の求人サイトでは見つけにくい好条件の求人に出会える可能性があります。
- 専門のキャリアアドバイザーによる相談
- 障害特性に配慮した求人紹介
- 面接対策や履歴書・職務経歴書の添削
- 企業との調整
- 入社後のフォローアップ
多くの転職エージェントは無料で利用できるため、積極的に活用しましょう。
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- 通勤に配慮のある企業(時差出勤可、駅近など)の紹介
- 専任のキャリアアドバイザーによる個別サポート
- 面接時の配慮事項の企業との調整
- 就職後のフォローアップ体制
登録は無料で、専門のアドバイザーがあなたの希望や状況に合った求人を紹介します。障害特性に配慮した職場環境や条件を重視した求人紹介を受けることができるため、安心して就職活動を進められます。
まとめ
下肢障害があっても、自分の能力や適性を活かせる仕事は数多くあります。デスクワークを中心とした事務職やIT関連職種、創造性を発揮できるデザイナーやライター、コミュニケーション能力を活かせるコールセンター業務など、選択肢は広がっています。
働きやすい環境を選ぶポイントとしては、バリアフリー設備の充実、柔軟な勤務形態、障害への理解がある企業文化などが重要です。また、ハローワークや障害者職業センター、就労移行支援事業所、障害者専門の転職エージェントなど、さまざまな支援機関を活用することで、自分に合った仕事を見つけやすくなります。
就職活動では、自分の強みや得意なことを明確にし、必要な配慮を適切に伝えることが大切です。また、障害のことだけでなく、自分の能力や意欲をしっかりとアピールしましょう。
障害は確かに制限をもたらすこともありますが、それを補う知恵や工夫、そして適切な環境があれば、十分に能力を発揮して活躍することができます。自分に合った仕事と職場環境を見つけ、充実したキャリアを築いていきましょう。