- お役立ち情報
- 障害者雇用
呼吸器機能障害と仕事の両立を目指す方へ|仕事探しのコツと就労支援サービスを詳しく解説

この記事の内容
息を吸うたびに胸が痛み、少し歩くだけで息切れがする日々。「これからどうやって生活していけばいいのだろう」「仕事は続けられるのだろうか」。そんな不安や悩みを抱えていませんか。
でも大丈夫です。呼吸器機能障害があっても、自分に合った環境で働くことは十分に可能です。この記事では、呼吸器機能障害を持つ方が仕事を探す際のポイントや、利用できる支援制度について詳しく解説します。
呼吸器機能障害とは
呼吸器機能障害とは、肺や気管支などの呼吸器に何らかの問題が生じ、呼吸機能が低下した状態を指します。息を吸ったり吐いたりする機能が弱くなり、日常生活に支障をきたすことがあります。
代表的な疾患と症状
呼吸器機能障害を引き起こす代表的な疾患には以下のようなものがあります。
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD):たばこの煙などの有害物質を長期間吸い続けることで、気道が狭くなり、肺の弾力性が失われる病気です。息切れや慢性的な咳、痰などの症状が現れます。
- 気管支喘息:気道が炎症を起こし、一時的に狭くなる病気です。ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音(喘鳴)や息苦しさが特徴です。
- 間質性肺炎:肺の間質(肺胞の周りの組織)に炎症が起こり、肺が硬くなる病気です。空気の取り込みが難しくなり、乾いた咳や息切れなどの症状が現れます。
- 肺結核の後遺症:肺結核の治療後に肺の組織が傷つき、呼吸機能が低下することがあります。
- 気管支拡張症:気管支が異常に拡張し、痰が溜まりやすくなる病気です。咳や痰、息切れなどの症状があります。
これらの疾患に共通する主な症状は以下の通りです。
- 息切れ:少し動いただけで息苦しくなります
- 慢性的な咳や痰:特に朝起きた時に多く見られます
- 疲れやすさ:体内に十分な酸素が行き渡らないため、疲労感を感じやすくなります
- チアノーゼ:酸素が不足すると、唇や爪が青紫色になることがあります
代表的な原因
呼吸器機能障害の主な原因には以下のようなものがあります。
- 喫煙:最も大きな原因とされているのがたばこの煙です。長期間の喫煙は、COPDなどの深刻な呼吸器疾患のリスクを高めます。
- 大気汚染:工場や自動車から排出される有害物質を長期間吸い続けることで、呼吸器に悪影響を及ぼします。
- 職業的な粉塵や化学物質への曝露:建設業、鉱業、製造業などの職場で、アスベストやシリカなどの粉塵を吸い込むことで肺が傷つくことがあります。
- 感染症:結核や重度の肺炎などの感染症が原因で、呼吸器に後遺症が残ることがあります。
- 遺伝的要因:α1-アンチトリプシン欠乏症などの遺伝的な疾患が原因となることもあります。
呼吸器機能障害の方が日常生活で注意すべきこと

呼吸器機能障害がある場合、日常生活でいくつかの点に注意することで、症状の悪化を防ぎ、より快適に過ごすことができます。
食事時
食事は生きる上で欠かせない活動ですが、呼吸器機能障害がある方は以下の点に注意しましょう:
- ゆっくり食べる:急いで食べると、呼吸と食事のタイミングが合わず、息苦しくなることがあります。一口ずつゆっくり噛んで食べましょう。
- 少量ずつ摂取する:一度にたくさん食べると、お腹が膨れて横隔膜を圧迫し、呼吸が苦しくなることがあります。少量ずつ、回数を分けて食べるのがおすすめです。
- 食後すぐに横にならない:食後すぐに横になると、胃の内容物が逆流して気道に入る可能性があります。食後は30分〜1時間ほど座った状態を保ちましょう。
- 栄養バランスに気をつける:免疫力を高めるためにも、バランスの良い食事を心がけましょう。特に、たんぱく質やビタミンCは重要です。
入浴時
入浴は体を清潔に保ち、リラックスするためにも大切ですが、以下の点に注意しましょう:
- 湯温は熱すぎないように:熱いお湯は体への負担が大きく、呼吸が苦しくなることがあります。38〜40度のぬるめのお湯を選びましょう。
- 長湯を避ける:長時間の入浴は体力を消耗します。5〜10分程度の短時間で済ませるのがよいでしょう。
- シャワーの活用:体調が優れない日は、湯船につからずシャワーだけにするのも一つの方法です。
- 入浴前後の温度差に注意:急激な温度変化は体に負担をかけます。脱衣所と浴室の温度差をなるべく小さくすることを心がけましょう。暖房器具の活用も検討してください。
- 酸素療法中の方は医師に相談:酸素療法を行っている方は、入浴中の酸素使用について医師の指示を仰ぎましょう。
身体障害者手帳と障害年金における呼吸器機能障害
呼吸器機能障害がある方は、身体障害者手帳や障害年金を受けられる可能性があります。これらの制度を利用することで、様々な支援やサービスを受けることができます。
身体障害者手帳の認定基準と等級
呼吸器機能障害の身体障害者手帳は、主に呼吸機能検査の結果に基づいて等級が決定されます。
1級:
- 常時人工呼吸器を使用している
- 安静時でも著しい呼吸困難があり、酸素療法を実施している場合でも、パルスオキシメーターで測定した動脈血酸素飽和度が90%以下
3級:
- パルスオキシメーターで測定した安静時の動脈血酸素飽和度が90%以下
- 常時酸素療法が必要
4級:
- 呼吸機能検査で1秒量が予測値の20%以下
- または動脈血O2分圧が50Torr以下で、家庭酸素療法が行われている
身体障害者手帳を取得すると、税金の控除や公共交通機関の運賃割引、各種手当の受給など、様々な支援を受けることができます。
障害年金の等級
障害年金は、病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に支給される年金です。呼吸器機能障害の場合、障害の程度によって以下のように分類されます。
1級:
- 日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
- 例:安静にしていても呼吸困難があり、酸素療法を実施しているにもかかわらず、動脈血酸素飽和度が低下している状態
2級:
- 日常生活が著しい制限を受けるか、または日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
- 例:軽い日常生活では呼吸困難はないが、階段の昇り降りなどで息切れがする状態
3級:
- 労働が制限を受けるか、または労働に制限を加えることを必要とする程度のもの
- 例:通常の労働では呼吸困難があるため、軽作業のみ可能な状態
障害年金を受給するためには、原則として初診日に公的年金に加入していることや、一定の保険料納付要件を満たしていることが必要です。申請には医師の診断書など必要書類がありますので、詳しくは年金事務所や社会保険労務士に相談するとよいでしょう。
呼吸器機能障害のある方が働く上で考慮すべきこと

呼吸器機能障害の方でも、自分の状態に合わせた働き方を探すことができます。
仕事で考慮すべきポイント
体力を消耗する肉体労働や残業を避ける
呼吸器機能障害がある方は、体力を大きく消耗する仕事や長時間労働は避けるべきです。以下のような仕事は注意が必要です。
- 重い荷物の持ち運びが必要な仕事
- 常に立ちっぱなしの仕事
- 粉塵や有害物質を扱う仕事
- 屋外での作業が多い仕事(特に寒冷期や大気汚染の激しい地域)
- 慢性的な残業が発生する仕事
代わりに、自分のペースで休憩を取りながら働ける仕事を選ぶことが大切です。在宅勤務や時短勤務など、柔軟な働き方ができる環境が理想的です。
職場環境のチェック
職場を選ぶ際は、以下のような環境をチェックしましょう。
- 空気の質:喫煙所の有無や換気システムの状況
- 温度管理:極端な暑さや寒さは呼吸器に負担をかけます
- アレルゲンの有無:ハウスダストやカビなどのアレルゲンが多い環境は避けましょう
- 通勤時間や方法:長時間の通勤や混雑した公共交通機関での通勤は体力を消耗します
- 休憩スペース:必要に応じて休憩できるスペースがあるか確認しましょう
面接時には、これらの点について確認することも大切です。ただし、障害について話すタイミングは慎重に選びましょう。
在宅勤務の検討
在宅勤務は、呼吸器機能障害のある方にとって理想的な働き方の一つです。在宅勤務のメリットには以下のようなものがあります。
- 通勤による体力消耗がない
- 自分で環境(温度、湿度、空気清浄など)をコントロールできる
- 必要に応じて休憩を取ることができる
- 感染症のリスクを減らせる
在宅勤務が可能な職種を探すか、現在の勤務先で在宅勤務の可能性について相談してみるとよいでしょう。
職場で確認すべきこと
医療環境の確認
職場や職場周辺の医療環境も重要なチェックポイントです。
- 近くに呼吸器科のある病院があるか
- 緊急時の対応方法(救急車の手配方法など)
- 職場に保健室や医務室があるか
- 産業医との相談が可能か
これらの情報は、安心して働くために確認しておくとよいでしょう。
勤務時間のルール調整
呼吸器機能障害のある方は、体調に合わせた勤務時間の調整が必要な場合があります。
- フレックスタイム制度:通勤ラッシュを避けて出勤できる
- 時短勤務:フルタイムよりも短い時間で働く
- 在宅勤務との併用:週の一部はオフィス、一部は在宅で働く
- 休憩時間の調整:必要に応じて休憩が取れるよう調整する
これらの調整については、雇用契約前に確認しておくとよいでしょう。障害者雇用枠で採用される場合は、このような配慮が行われやすい傾向にあります。
仕事内容の確認と調整
採用前や採用後に、以下のような点について確認・調整することが大切です。
- 業務内容の詳細:体力的にきつい作業が含まれていないか
- 環境因子:粉塵や化学物質など、呼吸器に負担をかける要素がないか
- チーム内のサポート体制:体調不良時に助け合える環境か
- 合理的配慮の可能性:必要な配慮(例:座って作業できる環境、空気清浄機の設置など)について相談できるか
障害者雇用促進法では、事業主に「合理的配慮」の提供が義務付けられています。自分に必要な配慮について、具体的に伝えることが大切です。
呼吸器機能障害の方におすすめの職業
呼吸器機能障害のある方には、以下のような職業が向いている場合が多いです。
事務職
デスクワークを中心とした事務職は、体力的な負担が少なく、呼吸器機能障害のある方に適した職種の一つです。
メリット
- 座って作業ができる
- 環境が安定している(温度管理された室内)
- 体力的な負担が比較的少ない
必要なスキル
- パソコン操作スキル(Word、Excel、PowerPointなど)
- コミュニケーション能力
- 事務処理能力
データ入力
データ入力は、テンプレートに沿って情報を入力する仕事で、在宅ワークとしても広く提供されています。
メリット
- 在宅勤務が可能な職場も多く存在します
- 自分のペースで作業できることが多い
- 特別な専門知識が不要な場合が多い
必要なスキル
- タイピングスキル
- 正確性
- 集中力
コールセンターのオペレーター
電話での顧客対応を行うコールセンターの仕事も、座って行える仕事の一つです。ただし、会話が多いため、症状によっては負担になる場合があります。
メリット
- 座って作業ができる
- 体を大きく動かす必要がない
- リモートワークの可能性がある
必要なスキル
- コミュニケーション能力
- 問題解決能力
- ストレス耐性
ウェブデザイナー
Webサイトのデザインを行うウェブデザイナーは、クリエイティブな仕事をしたい方に向いています。
メリット
- リモートワークの可能性が高い
- 自分のペースで作業できることが多い
- クリエイティブな能力を発揮できる
必要なスキル
- デザインスキル
- HTML、CSSなどの知識
- グラフィックソフトの操作スキル
ライター・ブロガー
文章を書く仕事は、在宅でも行いやすく、自分のペースで進められる仕事の一つです。
メリット
- 在宅での勤務が可能
- 自分のスケジュールで働ける
- 特別な設備が不要
必要なスキル
- 文章力
- リサーチ能力
- 締め切りを守る自己管理能力
経理・会計
数字を扱う経理・会計の仕事も、デスクワークを中心としており、呼吸器機能障害のある方に向いています。
メリット
- 座って作業ができる
- 環境が安定している
- 専門性が高く、評価されやすい
必要なスキル
- 会計知識
- パソコンスキル(特に表計算ソフト)
- 正確性と注意力
呼吸器機能障害のある方が利用できる就労支援

「どうすれば自分に合った仕事が見つかるのだろう」と悩んでいた時、地域の就労支援センターを訪れたことで、私の就職活動は大きく前進しました。専門のスタッフが私の状態を理解した上で、適切なアドバイスやサポートをしてくれたおかげで、今の仕事に出会うことができたのです。
呼吸器機能障害のある方が仕事を探す際には、以下のような就労支援サービスを利用することができます。
ハローワーク
ハローワーク(公共職業安定所)には、障害者専門の窓口が設けられています。専門の職員が、障害特性に合わせた職業相談や職業紹介を行ってくれます。
提供されるサービス
- 障害者向けの求人情報の提供
- 職業相談
- 職業紹介
- 就職後のフォローアップ
全国各地にあるハローワークで、無料でサービスを受けることができます。障害者手帳を持っている方は、障害者専門窓口を利用することをおすすめします。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、障害のある方の就職や職場定着を支援する専門機関です。各都道府県に1か所ずつ設置されています。
提供されるサービス
- 職業評価:あなたの能力や適性を評価し、適した職業を探すサポート
- 職業準備支援:就職に必要なスキルや知識を身につけるためのトレーニング
- ジョブコーチ支援:就職後、職場に専門家が訪問して支援する制度
- 事業主への助言・支援:雇用主に対する障害者雇用のアドバイスや支援
特に、呼吸器機能障害の特性に合わせた職業評価や職場環境の調整に関するアドバイスは、とても参考になるでしょう。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、就労面と生活面の両方から障害者をサポートする機関です。全国に約330か所設置されています。
提供されるサービス
- 就労支援:求職活動のサポート、職場開拓、就職後のフォローアップ
- 生活支援:日常生活や地域生活に関する相談支援
- 関係機関との連絡調整:医療機関や福祉サービス事業所などとの連携
障害者手帳の有無に関わらず利用できるのが特徴です。呼吸器機能障害による体調の波に合わせた働き方について相談することもできます。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、一般企業への就職を目指す障害者に対して、就労に必要なスキルの訓練や就職活動のサポートを行う福祉サービスです。
提供されるサービス
- ビジネスマナーや職場でのコミュニケーション訓練
- パソコンスキルなどの職業訓練
- 実習や体験就労の機会提供
- 就職活動のサポート
- 就職後のフォローアップ(最大6か月)
利用するには、障害福祉サービス受給者証が必要です。市区町村の障害福祉課などで申請できます。呼吸器機能障害のある方にとっては、無理なく通える場所にあるかどうかも重要なポイントです。
障害者雇用専門の求人サイト
一般的な求人サイトとは別に、障害者雇用に特化した求人サイトも存在します。これらのサイトでは、障害に配慮した職場環境や勤務条件が整備された求人情報を見つけることができます。
代表的なサイト
- 障害者ナビ
- 障害者専門求人サイト「アットジーナ」
- 「dodaチャレンジ」
これらのサイトでは、在宅勤務可能な求人や時短勤務可能な求人など、呼吸器機能障害のある方に適した求人を探しやすくなっています。
まとめ
呼吸器機能障害があっても、自分の症状や体調に合った仕事を見つけることは十分に可能です。自分の体調や呼吸の状態を第一に考え、無理のない範囲で働くことが何よりも大切です。
就職活動では、専門の支援機関を積極的に活用することをおすすめします。ハローワークの障害者窓口や障害者就業・生活支援センターなどでは、あなたの状態に合わせたアドバイスや求人情報を提供してくれます。
職場選びでは、通勤の負担が少ないことや働く環境が呼吸器に優しいことを重視しましょう。可能であれば、在宅勤務や時短勤務など、柔軟な働き方ができる職場を選ぶとよいでしょう。
最後に、あなたの体調や症状は日によって変わることを認識し、周囲の理解を得ながら働くことが長く働き続けるコツです。無理をせず、自分のペースで取り組みましょう。