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内部障害のある方の就職・復職・転職活動のポイントと支援

この記事の内容
内部障害は見た目からはわかりにくいため、「見えない障害」とも呼ばれています。そのため、周囲の理解を得られにくいことがあり、就職活動や職場での生活に不安を感じる方も多いでしょう。
この記事では、内部障害のある方が就職・復職・転職活動をするときに知っておきたいポイントや、利用できる支援制度について詳しく解説します。自分に合った職場環境を見つけ、安心して働き続けるためのヒントになれば幸いです。
内部障害とは

内部障害とは、心臓や肺、腎臓など、からだの内部にある臓器の機能に障害がある状態を指します。外見からはわかりにくいことが多く、「見えない障害」とも言われています。
内部障害には、以下の7種類があります。
- 心臓機能障害
- 呼吸器機能障害
- 腎臓機能障害
- 膀胱・直腸機能障害
- 小腸機能障害
- HIV(ヒト免疫不全ウイルス)による免疫機能障害
- 肝臓機能障害
内部障害のある方は、疲れやすさや体調の波、定期的な通院や服薬の必要性など、さまざまな困難を抱えていることがあります。しかし、適切な配慮や環境があれば、能力を発揮して働くことができます。
内部障害のある方が就職時に確認すべきポイント
内部障害のある方が就職・転職活動をする際には、以下のポイントを確認しておくと安心です。
職場環境
内部障害のある方にとって、働きやすい職場環境は健康管理のために重要です。確認すべき主なポイントは以下の通りです。
- 通勤のしやすさ:通勤時間や経路は体力的に無理のないものか
- 休憩スペースの有無:具合が悪くなったときに横になれる場所はあるか
- トイレの数や場所:頻繁にトイレに行く必要がある場合、アクセスしやすいか
- 空調設備:室温調節ができるか(特に呼吸器や心臓の障害がある場合)
- 服薬やケアのスペース:必要な医療ケアを行える環境はあるか
- エレベーターの有無:階段の上り下りが困難な場合、移動手段は確保されているか
面接時や職場見学の機会に、これらのポイントを確認しておくとよいでしょう。
勤務時間
内部障害のある方は、体調管理のために柔軟な勤務時間が重要な場合があります。
- フレックスタイム制:通院や体調に合わせて出勤時間を調整できるか
- 時短勤務の可能性:フルタイム勤務が難しい場合、時短勤務は可能か
- テレワーク・在宅勤務:通勤の負担を減らせる在宅勤務の選択肢はあるか
- 休憩時間の柔軟さ:必要に応じて休憩を取ることは可能か
- 有給休暇の取得しやすさ:通院や体調不良時に休みやすい雰囲気か
これらの制度や環境があるかどうかは、企業の採用情報や面接時に確認するとよいでしょう。
業務内容の調整可否
内部障害の種類や程度によって、向いている業務内容や配慮が必要な点は異なります。
- 業務の柔軟な調整:体調や体力に合わせて業務内容の調整は可能か
- チーム内でのサポート体制:突発的な体調不良時にカバーし合える体制はあるか
- 重い物を持つ作業の有無:心臓や呼吸器の障害がある場合、負担の大きい作業はあるか
- 長時間のデスクワーク:同じ姿勢を続けることが難しい場合、適度に動ける業務か
- ストレスの少ない環境:過度なストレスが体調に影響する場合、働きやすい環境か
面接時に、自分の状況や配慮してほしい点を伝え、企業側の対応可能範囲を確認しておくことが大切です。
内部障害の種類と症状
内部障害には様々な種類があり、それぞれ症状や配慮が必要な点が異なります。ここでは7つの内部障害について、主な症状や仕事をする上で気をつけるべき点を解説します。
心臓機能障害
心臓機能障害は、先天性の心臓病や心筋梗塞、弁膜症などによって心臓の機能が低下した状態です。
主な症状
- 疲れやすさ
- 息切れ
- 動悸
- むくみ
- めまい
仕事をする上での注意点
- 過度な運動や重い物を持つ作業は避ける
- ストレスを感じすぎないよう配慮する
- 適度な休憩を取りながら働く
- 極端な温度変化のある環境は避ける
心臓機能障害のある方は、体力を消耗する作業や長時間の立ち仕事が難しい場合があります。デスクワークなど、自分のペースで取り組める仕事が向いていることが多いです。
呼吸器機能障害
呼吸器機能障害は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や気管支喘息、肺結核後遺症などによって、呼吸機能が低下した状態です。
主な症状
- 息切れ
- せき
- たん
- 呼吸困難
- 疲れやすさ
仕事をする上での注意点
- ホコリや化学物質、タバコの煙などを避ける
- 空気の質に配慮した環境で働く
- 感染症にかかりやすいため、感染対策に注意する
- 季節の変わり目や寒暖差に気をつける
呼吸器機能障害のある方は、空気環境の良い職場や、自分のペースで休憩を取りながら働ける環境が適しています。
腎臓機能障害
腎臓機能障害は、腎炎や糖尿病性腎症などによって腎臓の機能が低下した状態です。人工透析を受けている方も多くいます。
主な症状
- むくみ
- 疲れやすさ
- 食事制限の必要性
- 貧血
- 透析治療による時間的制約
仕事をする上での注意点
- 透析治療のスケジュールに合わせた勤務時間の調整
- 水分制限がある場合は周囲の理解を得る
- 疲れやすいため、適度な休憩が必要
- 感染症にかかりやすいため、感染対策に注意する
腎臓機能障害のある方、特に透析治療を受けている方は、通院のスケジュールに合わせた勤務形態が可能な職場が望ましいでしょう。
膀胱、直腸機能障害
膀胱・直腸機能障害は、脊髄損傷や神経疾患などによって排泄機能がコントロールできなくなった状態です。ストーマ(人工肛門・人工膀胱)を使用している方もいます。
主な症状
- 排泄のコントロールが難しい
- 定期的なケアの必要性
- 失禁の可能性
- 皮膚トラブル
仕事をする上での注意点
- トイレに近い席や、トイレに行きやすい環境
- ストーマのケアを行うためのプライバシーが確保された場所
- 長時間の移動や外出が難しい場合がある
- 突発的なトラブルへの対応
膀胱・直腸機能障害のある方は、トイレへのアクセスがよく、必要時にケアができる環境が重要です。デスクワークやテレワークなど、自分でスケジュールを調整しやすい仕事が適している場合が多いです。
小腸機能障害
小腸機能障害は、クローン病や潰瘍性大腸炎、小腸切除後などによって、消化・吸収機能が低下した状態です。
主な症状
- 下痢や腹痛
- 栄養吸収の問題
- 体重減少
- 疲れやすさ
- 頻繁なトイレの必要性
仕事をする上での注意点
- 食事の時間や内容に配慮が必要
- トイレに行きやすい環境
- 体調の波があり、突発的な症状への対応
- ストレスで症状が悪化することがある
小腸機能障害のある方は、トイレへのアクセスがよく、食事の時間を柔軟に調整できる職場環境が望ましいでしょう。
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能障害
HIVによる免疫機能障害は、HIV感染によって免疫機能が低下した状態です。現在は有効な治療法があり、適切な治療を受けていれば健康な状態を保つことができます。
主な症状
- 疲れやすさ
- 感染症にかかりやすい
- 定期的な通院・服薬の必要性
- 副作用による体調の変化
仕事をする上での注意点
- 定期的な通院のための時間確保
- 過労やストレスを避ける
- 感染症への注意(特にインフルエンザや風邪の流行時期)
- 服薬のタイミングを守る
HIVによる免疫機能障害のある方は、定期的な通院と服薬が必要ですが、それ以外は通常の生活を送ることができます。通院に配慮のある職場環境が望ましいでしょう。
肝臓機能障害
肝臓機能障害は、B型・C型肝炎やアルコール性肝障害などによって、肝臓の機能が低下した状態です。
主な症状
- 疲れやすさ
- 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
- 腹水(おなかに水がたまる)
- 食欲不振
- むくみ
仕事をする上での注意点
- 過労を避け、適度な休息を取る
- アルコールを避ける
- 定期的な通院・検査の必要性
- 体力的に無理のない業務内容
肝臓機能障害のある方は、体力的な負担が少なく、適度に休息を取りながら働ける環境が適しています。
内部障害のある方が職場で配慮すべきこと

内部障害のある方が職場で快適に働き続けるためには、自分自身で配慮すべき点もあります。ここでは主なポイントを紹介します。
医療体制の確認
職場で働き始める前に、医療体制を確認しておくことが大切です。
- 職場近くの医療機関:緊急時に受診できる病院やクリニックを把握しておく
- 主治医との連携:働き始めることを主治医に伝え、アドバイスをもらう
- 常備薬の管理:必要な薬を職場に持参し、安全に保管できる場所を確保する
- 緊急連絡先の共有:緊急時に連絡すべき人(家族や主治医)の連絡先を、信頼できる同僚や上司と共有する
- 産業医との面談:可能であれば、会社の産業医に自分の状態を伝えておく
これらの準備をしておくことで、体調が急変した場合でも落ち着いて対応できます。
勤務時間に関する規定の把握
内部障害のある方は、通院や体調管理のために、勤務時間に関する規定を把握しておくことが重要です。
- 就業規則の確認:休暇制度や時短勤務、フレックスタイム制などの規定を確認する
- 障害者雇用枠での配慮:障害者雇用枠で働いている場合、どのような配慮が受けられるか確認する
- 病気休暇や通院休暇:通院のための特別休暇制度があるか確認する
- テレワークの規定:在宅勤務が可能な条件や手続きを把握する
- 残業に関する規定:残業が難しい場合、どのように調整するか事前に相談する
これらの規定を理解した上で、自分の状況に合わせた働き方を上司や人事部と相談するとよいでしょう。
業務内容の相談と調整
内部障害の種類や程度によって、苦手な業務や配慮が必要な点は異なります。自分の状況を適切に伝え、業務内容の調整を相談することが大切です。
- 自分の状態の説明:障害の内容や配慮が必要な点を、必要な範囲で説明する
- 得意・不得意の共有:体力的に厳しい業務や、逆に得意な分野を伝える
- 代替案の提案:「これはできないが、こうすればできる」という具体的な提案をする
- 定期的な振り返り:業務内容が適切かどうか、定期的に上司と話し合う機会を持つ
- 周囲への伝え方:同僚にどの程度自分の状況を伝えるか、上司と相談する
コミュニケーションを大切にし、お互いに理解し合いながら働ける環境を整えていくことが重要です。
内部障害のある方のための就労支援制度
内部障害のある方が就職・転職活動をする際には、さまざまな支援制度や機関を活用することができます。ここでは主な支援制度について紹介します。
公共職業安定所(ハローワーク)
ハローワークには、障害のある方の就職を専門に支援する「専門援助部門」があります。
提供サービス
- 障害者向けの求人情報の提供
- 職業相談・職業紹介
- 職業訓練の案内
- 就職後の職場定着支援
- 各種助成金制度の案内
全国のハローワークに設置されている専門援助部門では、障害の特性に配慮した就職支援を受けることができます。まずは最寄りのハローワークに相談してみるとよいでしょう。
地域の障害者職業センター
障害者職業センターは、障害のある方の就労に関する専門的な支援を行う機関です。
提供サービス
- 職業評価:どのような仕事が向いているかを専門的に評価
- 職業準備支援:就労に必要な基本的なスキルや知識の習得支援
- ジョブコーチ支援:職場に訪問し、仕事のやり方や職場での対人関係のサポート
- 事業主に対する支援:障害のある方を雇用する企業への助言やサポート
全国に設置されており、ハローワークと連携して支援を行っています。より専門的な支援が必要な場合は、ハローワークを通じて紹介してもらうこともできます。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、就労面と生活面の両方から障害のある方を支援する機関です。
提供サービス
- 就労支援:就職活動のサポートから職場定着までの一貫した支援
- 生活支援:日常生活や金銭管理などの相談対応
- 企業開拓:障害特性に配慮した職場の開拓
- 関係機関との連携:医療・福祉・教育などの関係機関と連携した支援
内部障害のある方にとっては、医療機関との連携や生活面での相談ができることが大きなメリットです。全国各地に設置されており、住んでいる地域のセンターを利用することができます。
就労移行支援事業所の活用
就労移行支援事業所は、一般企業への就職を目指す障害のある方に、就労に必要なトレーニングや支援を行う福祉サービスです。
提供サービス
- 就労スキルの訓練:パソコン操作やビジネスマナーなど、実践的なスキルの習得
- 職場体験:実際の職場に近い環境での作業訓練
- 就職活動のサポート:履歴書の書き方や面接対策など
- 就職後のフォロー:就職後も一定期間、職場定着に向けた支援
利用期間は原則として2年間で、障害福祉サービスの一つとして位置付けられています。利用するには、お住まいの市区町村で「障害福祉サービス受給者証」の発行を受ける必要があります。
専門のエージェントサービス・求人サイトの利用
内部障害のある方の就職・転職をサポートする専門のエージェントサービスや求人サイトも増えています。
提供サービス
- 専門のキャリアアドバイザーによる相談
- 障害特性に配慮した求人情報の提供
- 応募書類の作成サポート
- 面接対策
- 就職後のフォローアップ
障害者ナビは業界トップクラスの求人数を誇る障害者専門求人サイトです
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特徴
- 業界トップクラスの求人数
- 内部障害に配慮した職場環境の求人
- フレックスタイム制や時短勤務など、柔軟な働き方ができる求人
- テレワーク可能な求人
- 通院に配慮がある企業の求人
登録は無料で、専門のアドバイザーによる相談も受けられます。自分に合った仕事を探す際の選択肢の一つとして、ぜひ活用してみてください。
まとめ
内部障害のある方の就職・復職・転職活動には、いくつかの課題や不安があるかもしれませんが、適切な環境と支援があれば、能力を発揮して働くことができます。
内部障害は見た目ではわかりにくいため、周囲の理解を得るのに苦労することもあるかもしれません。しかし、適切なコミュニケーションと環境調整によって、働きやすい環境を作ることができます。
自分に合った仕事や職場を見つけるためには、焦らず、自分のペースで就職活動を進めることが大切です。必要に応じて専門機関のサポートを受けながら、自分らしく働ける場所を探していきましょう。