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シェーグレン症候群の方に向いている仕事とは?就職・転職のコツと支援制度も解説
この記事の内容
この記事でわかること
- シェーグレン症候群の主な症状と仕事への影響
- 症状に合わせた仕事選びのポイント
- 就職・転職活動を成功させるためのコツ
- 活用できる就労支援機関とサービス一覧
- 障害者雇用・障害年金制度の活用方法
シェーグレン症候群は、自己免疫の異常によって体内の分泌腺が攻撃され、目や口の乾燥を中心とする多様な症状を引き起こす病気です。日常生活においてはもちろん、仕事においても症状が影響する場面が少なくありません。しかし、適切な治療と環境選びによって、シェーグレン症候群を抱えながらも自分らしく働き続けることは十分に可能です。
本記事では、シェーグレン症候群について正しく理解したうえで、どのような仕事が向いているのか、そして就職・転職活動をどのように進めればよいのかを詳しく解説します。
シェーグレン症候群とは
シェーグレン症候群の症状
シェーグレン症候群は、体内の免疫システムが異常をきたし、外分泌腺(特に唾液腺や涙腺)を標的として攻撃してしまう自己免疫疾患です。このため、体の様々な部位で乾燥症状が起こります。
【主な症状】
- ドライアイ(眼の乾燥)
目の乾き、異物感、かすみ目、充血、痛みが生じることがあります。長時間のパソコン作業や読書が困難になることもあります。 - ドライマウス(口腔乾燥症)
唾液分泌量が減少し、口が乾いて食事がしづらくなったり、会話中に喉が乾きやすくなる場合もあります。 - 全身倦怠感
原因不明の疲労感が慢性的に続くことがあり、集中力低下や作業能率の低下につながることもあります。 - 関節痛・筋肉痛
リウマチに似た関節のこわばりや痛みが現れることがあります。 - 皮膚や鼻、喉の乾燥
皮膚のかゆみや、鼻の乾燥による鼻血、喉の違和感も伴うことがあります。
これらの症状は個人差が大きく、軽度で日常生活にほとんど支障がない人もいれば、重度で仕事や生活全般に大きな影響を受ける人もいます。また、他の膠原病(全身性エリテマトーデスや関節リウマチ)と重複して発症することもあり、より複雑な管理が求められるケースもあります。
シェーグレン症候群の診察・治療法
シェーグレン症候群は、初期症状が緩やかで気づきにくいことも多いため、診断には専門医による慎重な評価が必要です。診断は以下のような検査に基づいて行われます。
【主な検査方法】
- 血液検査
自己抗体(抗SSA抗体、抗SSB抗体)の有無を調べます。 - 涙液分泌検査(シルマーテスト)
涙の分泌量を測定し、ドライアイの程度を評価します。 - 唾液分泌検査
口腔内の乾燥度合いをチェックします。 - 唇の小唾液腺生検
唇の裏側の小さな唾液腺の組織を採取し、炎症の有無を調べます。
【治療方法】
現時点では、シェーグレン症候群を完治させる治療法は存在しません。そのため、治療の目的は症状の緩和と合併症の予防にあります。
- 対症療法
ドライアイには人工涙液や点眼薬、ドライマウスには人工唾液や口腔保湿剤が使用されます。 - 免疫抑制療法
重症例や関節痛・筋肉痛が強い場合には、ステロイド剤や免疫抑制剤(ヒドロキシクロロキンなど)が使用されることがあります。 - 生活習慣の工夫
加湿器の使用、口腔ケアの徹底、無理のない運動など、日常生活でのセルフケアも重要な役割を果たします。
また、シェーグレン症候群では疲労感や集中力低下も問題となるため、治療だけでなく、生活リズムを整えることやストレスを回避する工夫も非常に大切です。定期的な通院と主治医との連携を続けながら、体調の変化に柔軟に対応していくことが求められます。
シェーグレン症候群が仕事に与える影響
シェーグレン症候群は、ドライアイやドライマウスをはじめとするさまざまな乾燥症状を引き起こし、時に全身倦怠感や関節痛といった症状も伴う自己免疫疾患です。これらの症状は日常生活に留まらず、職業生活にも大きな影響を与えることがあります。
まず、ドライアイによってパソコン作業や細かい作業が困難になることがあります。画面を見る時間が長くなると目の痛みやかすみが強くなり、作業効率が低下したり、頭痛や集中力低下を招くことも珍しくありません。
ドライマウスの場合は、長時間の会話が必要な職種に支障をきたすことがあります。唾液分泌量が低下すると、話すたびに喉の渇きを感じるため、接客業や電話対応業務にストレスを感じる場面が増えるかもしれません。
また、全身倦怠感が強く現れる場合には、長時間労働や体力を要する仕事を続けるのが困難になる可能性もあります。特に立ち仕事や外回りの多い職種では、体力の消耗が激しくなり、体調を崩すリスクが高まるでしょう。
さらに、関節痛や筋肉痛といった症状が出る場合には、重い物を持ち上げる、長時間同じ姿勢で作業するなどの業務が負担となります。
このように、シェーグレン症候群は単なる乾燥症状に留まらず、身体全体にわたる不調を引き起こすため、働き方や職場環境の選択が極めて重要になります。無理をせず、症状と上手く付き合いながら働き続けるためには、自身の体調に合った仕事選びと、柔軟な環境整備が欠かせません。
シェーグレン症候群の人に向いている仕事と働きやすい環境
シェーグレン症候群を抱えながらも、無理なく長期的に働き続けるためには、仕事選びが非常に重要です。ポイントは、身体的負担が少なく、柔軟に休憩を取れる環境であること、そして過度な対人ストレスや長時間労働が求められないことです。ここでは、シェーグレン症候群の方におすすめの職種と、働きやすい環境の特徴をご紹介します。
シェーグレン症候群の人におすすめ職種
おすすめの職種①:事務職・バックオフィス業務
事務職は、座って行う作業が中心であり、身体への負担が少ないため、シェーグレン症候群の方に非常に適しています。データ入力、書類作成、経理、総務、人事など、幅広い業務がありますが、いずれも体力を過剰に消耗するリスクは比較的低めです。
【メリット】
- 空調管理の行き届いた室内環境で働ける
- 適度に休憩を取りながら作業できる
- 在宅勤務が可能な場合もあり、体調に応じた働き方ができる
【注意点】
- パソコン作業が中心となるため、ドライアイ対策(こまめな休憩、人工涙液の使用)が必須です。
おすすめの職種②:クリエイティブ職(ライター・デザイナーなど)
ライターやWebデザイナーといったクリエイティブ職も、シェーグレン症候群の方に向いている仕事の一つです。これらの職種では、成果物重視であり、労働時間や場所に縛られにくいため、自分のペースで働くことが可能です。
【メリット】
- 在宅勤務がしやすく、通勤による体力消耗を防げる
- 体調に合わせて作業時間を調整しやすい
- 他人とのコミュニケーション負担が比較的少ない
【注意点】
- 納期に追われるプロジェクト型の仕事では、無理をしがちなので、スケジュール管理が重要です。
おすすめの職種③:図書館司書・資料管理スタッフ
図書館司書や企業の資料管理スタッフは、比較的静かな環境で働くことができ、肉体的にも精神的にも負担が少ないため、シェーグレン症候群の方にとって理想的な職場といえます。
【メリット】
- 冷暖房完備の屋内で静かに作業ができる
- 体調に合わせて、ペースを保ちながら業務を遂行できる
- 接客対応があっても、短時間かつ軽いコミュニケーションで済むことが多い
【注意点】
- 図書整理や資料運搬の際に若干の体力を要することがあるため、自身の体調と相談しながら業務を選択する必要があります。
働きやすい環境のポイント
シェーグレン症候群の方が働きやすい職場環境には、以下のような特徴があります。
- 空調・加湿管理がしっかりしている職場
乾燥が悪化しないよう、適度な湿度管理がされていることが望ましいです。 - 短時間勤務や時差出勤が可能
体調に合わせて柔軟に働ける勤務体系が整っていると安心です。 - リモートワークに対応している企業
自宅での作業が認められていれば、通勤負担が減り、体力の温存が可能です。 - 病気への理解がある企業文化
急な体調不良や通院への配慮が受けられる環境は、安心して働き続けるために重要です。
無理をせず、体調と相談しながらキャリアを築いていくためには、仕事選びと同じくらい職場環境選びが重要なカギを握っています。
シェーグレン症候群の人の障害者雇用と障害年金
シェーグレン症候群は、目や口の乾燥をはじめ、全身の倦怠感、関節痛、内臓障害など多様な症状を引き起こす自己免疫疾患です。症状の程度には個人差が大きく、軽症であれば一般的な就労が可能ですが、重症化すると通常勤務が困難になるケースもあります。
そのため、シェーグレン症候群を抱える方にとって、「障害者雇用枠」や「障害年金制度」の利用は、社会とのつながりを保ちながら無理なく生活を続けるうえで、非常に重要な支援策となります。ここでは、障害者雇用での働き方と、障害年金の受給事例について詳しく解説します。
シェーグレン症候群の人は障害者雇用で働ける
シェーグレン症候群の症状が重く、通常の労働条件では働き続けることが困難な場合、障害者雇用制度を活用することで、自分に合った働き方を選択できる可能性が広がります。
障害者雇用枠での就労を目指すには、一般的に「身体障害者手帳」や「指定難病患者証」が必要となります。シェーグレン症候群単体では、身体障害者手帳の取得要件を満たすのは難しいことが多いですが、重度のドライアイによる視覚障害や、内臓障害(腎機能障害、呼吸器障害など)が併発している場合には、対象となる可能性があります。
また、シェーグレン症候群は指定難病の一つであり、一定の重症度を満たす場合には「特定医療費受給者証」の交付対象となります。これを持っていれば、企業によっては障害者雇用枠での応募が可能となる場合もあります。
【障害者雇用のメリット】
- 合理的配慮を受けながら働ける
体調に応じた勤務時間短縮や休憩取得、業務内容の配慮などが制度的に保障されます。 - 長期的な就労支援が受けられる
ジョブコーチ支援や職場定着支援が用意されており、安定して働き続けるサポート体制が整っています。 - 医療との両立がしやすい
通院配慮や体調悪化時の休職制度が利用しやすく、治療との両立が可能になります。
障害者雇用は、単なる「制限された働き方」ではなく、シェーグレン症候群と向き合いながらキャリアを築くための柔軟な選択肢と捉えることが重要です。
シェーグレン症候群で障害年金を受け取れた事例
シェーグレン症候群により、労働能力や日常生活に著しい制限が生じた場合、障害年金の受給対象となることもあります。障害年金は、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類があり、初診日に国民年金加入中か厚生年金加入中かによって受給できる年金が異なります。
ここでは、実際に障害年金を受給できた2つの事例をご紹介します。
障害厚生年金3級に認められたケース(30代・女性)
30代の女性は、シェーグレン症候群により重度のドライアイ、ドライマウスに加え、全身倦怠感と間質性肺炎を合併していました。これにより、従来のフルタイム勤務が困難となり、短時間勤務への変更を余儀なくされました。
主治医による診断書では、
- 涙液分泌量の著しい低下
- 日常生活において頻繁な休憩を要する
- 労作時の呼吸困難(間質性肺炎による)
といった点が強調され、労働能力に相当の制限があることが認められました。
この結果、障害厚生年金3級に認定され、年間約60万円の年金を受給できることになりました。この年金により、短時間勤務による収入減少分を補いながら、生活の安定を図ることができています。
障害基礎年金2級と認められたケース(女性)
別の女性は、シェーグレン症候群に伴う重度の全身倦怠感、関節痛、及び皮膚の乾燥障害によって、家事や身の回りのことも一人で行うことが困難な状態に陥っていました。
診断書には、
- 極度の疲労により、日常生活全般に支障がある
- 食事、入浴、着替えなどに介助を要する場合がある
- 外出は医療機関への通院に限定されている
といった記載がなされ、生活能力の著しい制限が認められました。
これに基づき、障害基礎年金2級の認定を受け、月額約6万5000円、年間で約78万円の支給が決定しました。現在は家族のサポートを受けながら、療養に専念しています。
シェーグレン症候群の人が就職・転職で利用できる支援サービス
シェーグレン症候群は、目や口の乾燥、関節痛、全身倦怠感など、身体的・精神的にさまざまな負担をもたらす自己免疫疾患です。症状が軽度であれば一般就労が可能な場合もありますが、症状の程度や体調の波によっては、仕事探しや転職活動に不安を感じる方も多いでしょう。
そんなときに心強い味方となるのが、障害者雇用を支援する各種サービスです。ここでは、シェーグレン症候群の方が就職・転職で活用できる支援機関とサービスについて詳しくご紹介します。
ハローワーク(公共職業安定所)
ハローワークは、厚生労働省が運営する公共の職業紹介機関で、全国に設置されています。一般求職者向けのサービスだけでなく、障害や慢性疾患を持つ方に向けた専門的な支援窓口も用意されています。
【ハローワークで受けられる支援】
- 障害者専用窓口での相談
体調や障害特性に配慮した求人紹介、キャリア相談を受けることができます。 - 職業紹介
短時間勤務、リモートワーク対応など、柔軟な働き方が可能な求人を提案してもらえます。 - トライアル雇用制度
一定期間お試し雇用として働き、双方が納得したうえで本採用に進める仕組みがあり、ミスマッチを防ぐことができます。 - 職場定着支援
就職後も、継続的にフォローアップを受けられるため、体調変化や環境の変化にも安心して対応できます。
ハローワークは無料で利用できるうえ、就職支援から職場定着までワンストップでサポートしてもらえるため、初めて就職活動をする方にもおすすめです。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、より専門的な職業リハビリテーションを提供する公的機関です。身体障害、精神障害、発達障害、内部障害など、さまざまな障害特性に応じた支援が受けられます。
【地域障害者職業センターの主な支援内容】
- 職業評価(アセスメント)
本人の体力、集中力、適性を詳細に評価し、どのような働き方が望ましいかをアドバイスしてもらえます。 - リワーク支援
体調を崩して離職した後、再び社会復帰を目指すための段階的なサポートを受けられます。 - ジョブコーチ支援
就職先企業にジョブコーチが訪問し、働きやすい職場環境づくりを支援してくれます。 - 合理的配慮に関する助言
通院配慮や勤務時間短縮など、職場に必要な合理的配慮について専門的な助言を提供してくれます。
専門知識を持った支援員が対応してくれるため、より細やかで実践的な支援を受けたい方には、地域障害者職業センターの利用がおすすめです。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、障害や難病を抱える方を対象に、一般企業への就職を目指すための訓練や支援を行う福祉サービスです。医師の意見書があれば、障害者手帳を持っていない場合でも利用できるケースがあります。
【就労移行支援事業所で受けられる支援】
- ビジネスマナー・PCスキル研修
社会人に必要な基本スキルや、事務職に役立つパソコンスキルを学ぶことができます。 - 模擬面接・履歴書作成支援
実践的な就活対策を受けられ、自信を持って就職活動に臨めるようになります。 - 職場体験実習
実際の企業で一定期間働き、業務内容や職場環境を体感できる機会があります。 - 就職後の定着支援
就職後も最長3年間、体調や職場環境の変化に対応できるようサポートしてもらえます。
就労移行支援事業所では、一人ひとりの体調や希望に応じた個別支援計画が作成されるため、無理のないペースで就職を目指すことができます。
障害者雇用に特化した転職サイト
最近では、障害者雇用に特化した転職サイトも充実しており、シェーグレン症候群のような慢性疾患を抱える方にも使いやすいサービスが増えています。なかでもおすすめなのが、障害者ナビです。
【障害者ナビの特徴】
- 障害配慮情報付きの求人多数
通院配慮、時短勤務、リモートワーク可能など、具体的な配慮内容が明記された求人が掲載されています。 - キャリアアドバイザーによる個別支援
障害特性に理解のある専門アドバイザーが、履歴書添削、面接対策、キャリア相談まで手厚くサポートしてくれます。 - 企業とのマッチングサポート
本人の希望と企業の配慮内容をマッチングさせることで、働きやすい職場に出会う確率が高まります。 - リモートワーク求人も豊富
体調に合わせて在宅勤務ができる求人も多数取り扱っており、通勤負担を軽減したい方にも最適です。
【障害者ナビはこちら】
「無理せず、自分らしく働きたい」そんなあなたを全力で応援します。
まとめ
シェーグレン症候群を抱えながら就職・転職を目指すことは、決して簡単ではありません。しかし、正しい支援を受ければ、自分に合った働き方を見つけ、長く安定して働き続けることは十分に可能です。
ハローワーク、地域障害者職業センター、就労移行支援事業所、障害者ナビ──それぞれの支援機関が提供するサービスを上手に活用しながら、自分らしい働き方を見つけていきましょう。
焦らず、無理せず、一歩ずつ。支援の力を借りながら、理想のキャリアを築いていきましょう。