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心筋梗塞後も仕事はできる?職場復帰と働き方のポイントを徹底解説

この記事の内容
「心筋梗塞で入院したけど、また働けるのだろうか」「職場に迷惑をかけるのでは」
突然の発症と入院生活を経て、退院後の生活や仕事に不安を感じる方は多くいます。しかし、正しい知識と準備、そして職場の理解があれば、心筋梗塞を経験したあとでも十分に社会復帰は可能です。
本記事では、心筋梗塞の基本的な情報から、治療後の体との向き合い方、そして実際に働き方を見直すための具体的なポイントまでを、わかりやすく解説します。職場復帰を目指す方、ご家族、または企業の人事担当の方にも参考になる内容です。
心筋梗塞の基礎知識
心筋梗塞とは
心筋梗塞とは、心臓を栄養する「冠動脈」と呼ばれる血管が血栓などで詰まり、心筋(心臓の筋肉)に酸素や栄養が届かなくなることで、心筋が壊死する病気です。治療が遅れると命に関わる重大な疾患であり、日本においても毎年数万人が発症しているとされています。
心筋梗塞は「ある日突然」起こることが多く、健康に見える人でもリスクを抱えている可能性があるため、予防や早期発見が極めて重要です。
症状
典型的な心筋梗塞の症状には、次のようなものがあります。
- 胸の中央〜左側にかけての激しい圧迫感や締めつけ感
- 胸痛が15分以上続く(安静にしても改善しない)
- 左肩・背中・腕・首に広がる痛み
- 息切れ、冷や汗、吐き気、めまいなどを伴うことも
特に「痛みがない無痛性心筋梗塞」もあり、高齢者や糖尿病患者では自覚症状が乏しいこともあるため、定期的な検診の重要性が増しています。
原因
心筋梗塞の主な原因は、動脈硬化によって冠動脈の内壁にプラーク(脂質やコレステロールの塊)が蓄積し、それが破れて血栓ができ、血管を完全に塞ぐことです。これにより心筋に血液が届かなくなり、細胞が壊死します。
動脈硬化を引き起こすリスク因子としては、以下が挙げられます。
- 高血圧、高脂血症、糖尿病
- 喫煙、過度な飲酒、肥満
- 運動不足、ストレス、睡眠不足
- 遺伝的要因や加齢
これらのリスクは複合的に重なり合い、心筋梗塞の発症確率を高めます。
治療方法
心筋梗塞の治療は、発症直後の**救命処置(急性期治療)と、退院後の再発予防・生活改善(慢性期管理)**に分かれます。
- 急性期治療
・カテーテル治療(PCI)による血栓除去とステント留置
・血栓溶解薬の投与(状況による)
・酸素投与、ニトログリセリンの使用など対症療法 - 慢性期管理
・抗血小板薬、スタチン、β遮断薬などの継続服薬
・血圧・血糖・コレステロールのコントロール
・禁煙、食事制限(減塩・低脂肪)、定期的な運動
・心臓リハビリテーション(再発予防と体力回復のための運動療法)
治療後は、症状が落ち着いても生活習慣の改善と服薬管理を続けることが、再発を防ぐ鍵となります。
治療後の後遺症
心筋梗塞を経験した方の中には、後遺症に悩む方も少なくありません。代表的なものとして以下があります。
- 心機能の低下(心不全):疲れやすく、息切れを感じやすくなる
- 不整脈:心室細動や心房細動などが再発することも
- 心的外傷・不安感:再発への恐怖から精神的な不調を抱えるケースも
これらの後遺症と向き合いながらも、「できる範囲で働く」という選択は可能です。重要なのは、無理をせず、自分の体と相談しながら働き方を見直すことです。
心筋梗塞後の生活と復職準備

心筋梗塞を経験すると、退院後の生活や働き方について慎重に見直す必要があります。特に、「また働けるのか」「以前のように動けるのか」といった不安は、本人だけでなく家族や職場の同僚にも共通するものです。しかし、適切な生活管理と段階的な準備を重ねれば、心筋梗塞後であっても無理のない形で社会復帰を果たすことは十分に可能です。
ここでは、心筋梗塞後の生活で注意すべき点から、復職準備や働き方の工夫、支援制度の活用まで、実践的なポイントを解説します。
心筋梗塞後の生活での注意点
リハビリの継続と生活リズムの見直し
退院後の生活は、治療の「継続期間」とも言えます。特に重要なのが心臓リハビリテーションの継続です。医療機関で行われるリハビリプログラムでは、有酸素運動や栄養指導、ストレス管理などを通じて、心機能の改善と生活の質向上を目指します。
また、自宅でも生活リズムを整えることが再発予防には欠かせません。起床・食事・睡眠時間を一定に保ち、疲れを感じたらすぐ休む習慣を身につけることが大切です。毎日軽い運動を続けることで、体力の回復を図ると同時に、仕事復帰への不安も和らいでいきます。
内服薬の管理と心臓への負担軽減
心筋梗塞の再発を防ぐためには、薬の正確な服用が非常に重要です。抗血小板薬、スタチン、β遮断薬など、複数の薬が処方されることが一般的であり、飲み忘れは致命的なリスクに直結します。服薬管理には、スマートフォンのリマインダー機能や専用アプリ、ピルケースの活用がおすすめです。
また、日常生活の中で心臓に無理をかけないことも意識しましょう。階段の昇降、急激な寒暖差、ストレスの多い環境などは、心拍数や血圧に影響を与えます。少しでも異変を感じたら休息を取り、無理を重ねない姿勢が重要です。
心筋梗塞後の仕事復帰のポイントとは?
仕事復帰の準備
復職を考える際には、主治医と相談して医学的な判断を仰ぐことが必須です。心機能がどの程度まで回復しているか、日常動作に問題がないかなどを総合的に見極めたうえで、「職場復帰しても安全かどうか」が判断されます。
併せて、体力や集中力の回復度を自分自身でも確認することが大切です。在宅での簡単なデスクワークや、通勤シミュレーションを試すことで、復職に対する心理的ハードルも下げることができます。
仕事復帰のタイミングと判断基準
仕事復帰のタイミングは個人差がありますが、退院から1〜3か月後が一般的な目安とされています。ただし、重要なのは「完全に元に戻る」ことではなく、「今の体調でも可能な働き方を模索する」ことです。
復職に向けては、週に数日の時短勤務から始めるなど、段階的な復帰を検討するのが現実的です。産業医のアドバイスや職場との面談を通じて、自分に合った勤務スケジュールを設定しましょう。
復職時の配慮
復職時には、職場の理解と配慮が欠かせません。
- 定期的な通院に配慮した勤務時間の調整
- 急な体調変化に対応できる柔軟な業務体制
- 作業負荷の少ない業務内容の調整
- 空調や作業環境の温度管理など、身体への負担軽減措置
これらの配慮は、産業医や人事担当者との連携により、あらかじめ整えておくことが可能です。本人だけで抱え込まず、職場との「共有と相談」が安心の鍵になります。
就労形態の工夫
心筋梗塞を経験された方にとって、働き方の選択肢を広げることが非常に有効です。たとえば:
- 在宅勤務:通勤による体力消耗を回避できる
- フレックスタイム制:朝の体調が不安定な場合でも出勤時間を調整可能
- 短時間勤務・週数日勤務:徐々に職場に慣れていくことができる
こうした柔軟な働き方を受け入れている企業を選ぶことで、長期的な安定就労が実現しやすくなります。また、業種を見直すことで、心身への負担が軽減される場合もあります。たとえば、体力を必要とする現場作業から、事務や在宅カスタマーサポートなどの内勤職への転換も選択肢です。
支援制度の活用
心筋梗塞の影響により、労働に一定の制限が生じた場合は、社会的な支援制度の活用も視野に入れましょう。
- 傷病手当金:休職中の生活を支える制度(健康保険加入者対象)
- 身体障害者手帳の取得:内部障害として等級認定されれば、税制優遇や交通機関割引などの支援を受けられます
- 障害者雇用枠の活用:配慮ある職場環境で再スタートが可能
- 就労移行支援・ナカポツセンターの利用:職業訓練や生活支援、職場定着支援まで幅広くサポート
公的機関や地域支援団体に相談すれば、自分に合った制度や支援策を紹介してもらうことができます。「働くことをあきらめない」ための選択肢があることを、ぜひ知っておいてください。
心筋梗塞患者に適した働き方

心筋梗塞を経験したあと、「再び働けるのか」「体に負担をかけずに社会と関わり続けられるのか」といった不安を感じる方は少なくありません。しかし、現代では多様な働き方や制度が整備されており、病気の再発リスクを抑えながら、安心して働き続けるための環境づくりが可能になっています。
ここでは、心筋梗塞を経験した方にとって無理のない働き方を実現するための3つの視点──「障害者雇用枠の活用」「在宅勤務やフレックスタイム制の導入」「ストレスマネジメントと休憩の確保」──を中心に、具体的な取り組みと実現手段を解説します。
障害者雇用枠の活用
心筋梗塞を発症し、日常生活や就労に何らかの制限が生じる場合、障害者雇用制度の活用を検討することが重要です。内部疾患(心疾患)は、身体障害者手帳の対象となることがあり、所定の等級を取得することで、法的に整備された障害者雇用枠を利用した就労が可能となります。
障害者雇用枠のメリット:
- 勤務時間、仕事内容に柔軟な配慮を受けやすい
- 医師の意見書をもとに、個別の就労支援計画を策定できる
- 再発防止の観点から休憩や通院への理解がある職場が多い
- 国の助成金制度を受けた企業が多く、支援体制が整っている
また、就労移行支援事業所や地域の就業・生活支援センターなどでは、障害者雇用を前提とした再就職のサポートも行っています。企業と本人の間を取り持ち、長期的な職場定着を支援してくれる体制があるため、安心して就労をスタートさせることができます。
在宅勤務やフレックスタイム制の導入
心筋梗塞を経験した方にとって、通勤や決まった時間の拘束が心臓への大きな負担になる場合があります。そこで注目されているのが、在宅勤務やフレックスタイム制といった柔軟な勤務形態です。
在宅勤務の利点:
- 通勤による体力の消耗やストレスを回避できる
- 体調に応じて業務の強度や休憩のタイミングを調整しやすい
- 自宅環境に最適な温湿度設定で心臓への負担を軽減
- 感染症など外的リスクの回避にも有効
自宅でできる仕事としては、事務業務、ライティング、カスタマーサポート、データ入力、経理補助などが挙げられます。これらは企業側も導入を進めている分野であり、求人も豊富です。
一方、フレックスタイム制を活用すれば、「朝の通勤ラッシュを避けて午前11時から勤務開始」「週2日は午後だけ勤務」など、自分の体調や生活スタイルに合わせた働き方が可能になります。心筋梗塞後の身体には、「予測可能な日常」と「柔軟な対応」の両立が必要不可欠です。
ストレスマネジメントと休憩の確保
心筋梗塞の原因の一つに精神的ストレスがあります。そして、再発のリスクを下げるうえでも、日常的なストレス管理は欠かせません。職場でのストレスを最小限に抑え、必要な休憩を確保できる環境を整えることが、働き続けるうえでの大きなカギになります。
実践すべきストレス管理の方法:
- 業務の優先順位を明確にし、タスクを詰め込みすぎない
- 昼休み以外にも「10〜15分の小休憩」を2回程度入れる
- メールや会議の対応時間を限定し、過度な緊張を避ける
- 心拍数や血圧を把握するアプリを活用し、自分の変化に気づく習慣を持つ
また、企業側でも産業医や産業保健師による定期面談やメンタルサポートを提供するところが増えています。こうしたサービスを活用することで、精神的な不安を早期に吐き出し、再発の引き金となる「見えない負荷」を軽減することができます。
さらに、職場内のコミュニケーションを円滑に保つこともストレス緩和に効果的です。報告や相談がしやすい風土、孤立を防ぐサポート体制など、「心理的安全性」が高い職場は、心筋梗塞後の再就労において理想的な環境といえるでしょう。
以上のように、心筋梗塞を経験した方が安心して働き続けるためには、病状や体力に応じた柔軟な就労環境の選択と、職場内外の支援の活用が極めて重要です。無理をせず、自分に合った働き方を見つけることで、長期的に安定した生活を築くことができます。
「もう働けない」と諦めるのではなく、「どのような工夫で長く働き続けられるか」に視点を変えることが大切です。それが、心筋梗塞からの真の回復への第一歩になるのです。
心筋梗塞後の社会復帰支援
心筋梗塞という大きな病を乗り越えた後、「また社会に戻って働けるのか」という不安は、多くの方に共通する悩みです。体力や気力が十分に戻っていないうちに、働くことを考えるのは精神的にも大きな負担になることがあります。しかし、現代の社会には、病気や障害を抱える方の「働きたい」という気持ちを支えるさまざまな支援制度が整いつつあります。
ここでは、心筋梗塞を経験された方が安心して社会復帰に向かえるよう、活用できる主な就労支援機関とサービスについてご紹介します。自分に合った働き方を見つける第一歩として、ぜひ参考にしてください。
ハローワーク
全国どこにでもある公共職業安定所、通称「ハローワーク」は、就職活動をサポートする基本の窓口です。なかでも障害者手帳をお持ちの方や、病気により就労に配慮が必要な方は、「専門援助窓口」での対応を受けることが可能です。
ハローワークで受けられる主な支援:
- 就労希望や制限を踏まえた職業相談
- 体調や通院に配慮した求人情報の提供
- 面接練習や履歴書の書き方サポート
- 職場実習の紹介、企業との調整
- 障害者トライアル雇用など各種制度の活用案内
心筋梗塞による身体的制限がある場合も、専門スタッフに相談することで、無理のない働き方を一緒に検討してもらえます。病気に対する配慮がある企業の紹介や、在宅勤務・短時間勤務が可能な職場の検索なども行えるため、安心して就労活動を始められます。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、職業リハビリテーションの観点から支援を提供する専門機関です。心筋梗塞のように、見た目にはわかりづらい内部疾患を抱えている方に対しても、丁寧な職業評価や職場調整の支援を行っています。
支援内容:
- 作業能力や体力の評価(職業評価)
- 医療機関との連携による職業リハビリの計画立案
- 企業訪問による職場適応支援
- 職場で必要な配慮の提案(例:休憩時間の調整、温度管理など)
たとえば、「デスクワークはできるが長時間はつらい」「午後は体調が崩れやすい」といった状態にも、具体的な対策を立ててくれるのが特長です。復職前のシミュレーションを通して、長く安定して働くための基盤を築くことができます。
障害者就業・生活支援センター(ナカポツセンター)
「ナカポツセンター」とも呼ばれるこの施設は、就業と生活の両面からサポートしてくれる地域の拠点です。病気によって日常生活にも不安がある方にとっては、非常に心強い支援先です。
特徴的なサポート:
- 就労前の生活支援(通院同行、生活リズムの調整)
- 家庭との連携や福祉サービスとのコーディネート
- 求人探しから面接同行、就職後の定着支援まで一貫対応
- 家族への相談支援や精神的ケア
心筋梗塞後の不安定な体調に対しても、ライフスタイル全体を見渡したうえで支援してくれるため、復職を「生活の一部」として無理なく組み込むことができます。
就労移行支援事業所
体調に合わせて段階的に就労準備を進めたい方には、「就労移行支援事業所」の利用が最適です。心筋梗塞のような内部疾患も支援対象であり、最大2年間、就労に向けた訓練を受けることができます。
主なプログラム:
- ビジネスマナー・PCスキル・事務処理の習得
- 模擬職場での作業練習や就業体験
- 企業実習を通じた業務適応訓練
- 就職活動の支援(応募書類作成、面接対策)
- 職場定着支援(就職後の相談対応)
週3日からの通所や、午前中のみの参加も可能なため、心身への負担を最小限に抑えながら社会復帰の準備ができます。定着支援がある点も、就職後の安心感につながります。
障害者雇用専門の求人サイト
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まとめ
心筋梗塞を経験したあとでも、「働きたい」「社会とつながっていたい」という気持ちを大切にしてほしい。その想いを支えてくれる制度や支援機関が、今は確実に整いつつあります。
- ハローワークでの専門的な職業相談
- 地域障害者職業センターでの職業評価と調整
- ナカポツセンターによる生活と就労の一体支援
- 就労移行支援事業所でのスキル訓練と自信回復
- 障害者専門求人サイトでのマッチング
これらを活用することで、自分の体調と向き合いながら、無理のない形での社会復帰を実現することができます。
社会に戻ることは、決して一人ではありません。心筋梗塞後の社会復帰には多くの支援制度が用意されています。まずは、相談から。勇気ある一歩を、今日から始めてみてください。