2025/02/19
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    狭心症・心臓病のある方の仕事の課題とは?働き続けるための対策と配慮ポイント

    朝、目覚めると胸に重い圧迫感を感じる。
    「また始まった」と思いながら、深呼吸をして痛みが和らぐのを待つ。
    出勤時間が迫っているにも関わらず、体は重く、動くのがつらい。

    そんな経験をしている方も多いのではないでしょうか。狭心症や心臓病と共に生きながら働くことは、見えない闘いの連続です。しかし、適切な知識と対策があれば、症状と上手に付き合いながら自分らしく働くことは可能です。

    狭心症とは

    狭心症はどんな病気?

    狭心症は心臓の筋肉(心筋)に十分な血液や酸素が行き渡らなくなることで起こる病気です。主な原因は、心臓に血液を送る冠動脈という血管が狭くなったり、一時的に詰まったりすることです。

    狭心症は一時的な症状であり、休憩したり薬を使ったりすると症状が治まることが多いのが特徴です。しかし、放置すると心筋梗塞(心臓発作)につながる危険性がある重大な病気です。

    狭心症の前兆や症状

    狭心症の主な症状には次のようなものがあります。

    • 胸の痛みや圧迫感:胸の中央やや左側に痛みや圧迫感を感じます
    • 息切れや動悸:少し動いただけで息が切れたり、心臓がドキドキすることがあります
    • 発汗や吐き気:冷や汗をかいたり、吐き気を感じたりすることもあります
    • 疲労感:原因不明の強い疲労感を感じることがあります

    これらの症状は通常、体を動かしたり、ストレスを感じたりしたときに起こりやすく、数分から15分程度で治まることが多いです。

    狭心症の検査や治療

    狭心症の診断には、次のような検査が行われます。

    1. 問診と身体検査
    2. 心電図検査
    3. 心臓超音波検査(エコー)
    4. 運動負荷試験
    5. 冠動脈CT検査や冠動脈造影検査

    治療方法としては主に次の3つの方法があります。

    1. 薬物治療:ニトログリセリンなどの薬で症状を和らげます
    2. カテーテル治療:細い管を血管に挿入して、狭くなった部分を広げます
    3. バイパス手術:狭くなった血管の代わりに、新しい血管の道を作ります

    治療法は症状の重さや全身の状態によって医師が判断します。定期的な通院と薬の服用が大切です。

    狭心症や心臓病と障害年金について

    障害年金とは

    障害年金は、病気やケガによって生活や仕事が制限されるようになった場合に、その生活を支えるために国から支給されるお金です。

    障害年金には主に3つの種類があります。

    1. 障害基礎年金:国民年金に加入している人が対象
    2. 障害厚生年金:会社員など厚生年金に加入している人が対象
    3. 障害手当金:障害の程度が比較的軽い場合に一時金として支給

    障害年金を受け取るには、障害認定基準に該当する必要があります。

    狭心症や心臓病で障害年金がもらえる条件

    狭心症や心臓病で障害年金を受け取るためには、以下のような条件があります。

    • 日常生活や労働に相当な制限があること
    • 初診日に年金制度に加入していること
    • 保険料の納付要件を満たしていること

    また、心臓疾患の場合、次のような等級判定がされます。

    • 1級:安静時でも心不全症状があり、日常生活がほとんどできない
    • 2級:軽い家事などの作業はできるが、普通の仕事はできない
    • 3級:心臓の機能低下により、一般的な労働に支障がある

    狭心症だけでは障害年金の対象になりにくい場合もありますが、日常生活への影響が大きい場合は認められることもあります。医師の詳しい診断書が重要になります。

    心臓病による仕事の制限と働く上でのハードル

    できない仕事がある

    心臓病を持つと、以下のように体に大きな負担がかかる仕事は避ける必要があります。

    • 重い荷物の持ち運びや力仕事
    • 高所作業や危険を伴う仕事
    • 寒暖差の激しい環境での仕事
    • 精神的ストレスが強い仕事
    • 不規則な勤務が必要な仕事

    体調が安定しないため長時間労働が難しい

    狭心症や心臓病の方は、体調の波があり、特に疲労が溜まると症状が出やすくなることがあります。そのため、長時間労働や残業が多い職場では働き続けることが難しい場合があります。

    朝はなんとか出勤できても、夕方になると胸の痛みが強くなり、「あと少しで仕事が終わるのに」と思いながらも早退せざるを得ないことも少なくありません。周りの人には理解されづらいこの苦しさは、心臓病と共に生きる方にとって日常的な課題です。

    自分の病状を正確に把握する

    効果的に働くための第一歩は、自分の病状を正確に理解することです。

    • 主治医と相談して、自分の症状や治療状況を確認する
    • どのような状況で症状が悪化するのかを知る
    • 自分の体力や限界を把握する

    自分の状態を客観的に把握することで、無理なく働ける仕事を選ぶことができます。

    自分の病気に適した職種を選ぶ

    心臓病の種類や症状の程度によって、向いている仕事は異なります。

    • 定期的な休憩が取れる仕事
    • 自分のペースで進められる仕事
    • 通院しやすい勤務形態の仕事

    自分の体調管理を最優先に考えた職種選びが大切です。

    目に見えないため症状を理解してもらいにくい

    心臓病の難しさの一つは、外見からは病気や症状が見えにくいことです。「見た目は健康そうなのに」と言われ、つらさを理解してもらえないことがあります。

    このような状況を改善するためには、以下の点がポイントです。

    • 必要に応じて上司や同僚に病状を説明する
    • 産業医や人事部門と連携して適切な配慮を求める
    • 無理をせず、体調が悪い時は休むことも大切

    「胸の痛みで苦しくても、外からは元気に見えてしまうから、辛さを伝えるのが難しかった」という声もよく聞きます。適切なコミュニケーションを取ることが重要です。

    狭心症や心臓病の人に適した職種と働きやすい環境

    体への負担が少ないデスクワークがおすすめ

    心臓病を持つ方には、体への負担が少なく、自分のペースで休憩を取りながら働ける職種が向いています。

    おすすめの職種例:

    • 一般事務や経理などのデスクワーク
    • データ入力や書類整理の仕事
    • コールセンターや受付業務
    • 在宅ワークが可能な職種
    • プログラミングやウェブデザインなどのIT関連業務

    これらの仕事は体力的な負担が比較的少なく、スキルアップによって安定した収入を得られる可能性があります。

    仕事と治療を両立できる環境を事前に調べる

    就職や転職を考える際は、仕事と治療の両立ができる環境かどうかを事前に確認することが重要です。

    確認すべきポイント

    • 通院のための休暇が取りやすいか
    • テレワークや時短勤務などの柔軟な働き方が可能か
    • 職場に休憩スペースがあるか
    • 急に体調が悪くなった時の対応方法があるか

    障害に理解のある職場で働く

    心臓病への理解がある職場では、適切な配慮を受けながら安心して働くことができます。

    障害者雇用に積極的な企業や、健康経営に取り組んでいる企業は、病気や障害を持つ方への理解が深い傾向があります。企業のホームページや求人情報で、障害者雇用への取り組みや福利厚生について確認してみると良いでしょう。

    心臓障害者におすすめの求人例

    心臓障害を持つ方に向いている求人の例としては、以下がおすすめです。

    • 大手企業の障害者雇用枠の事務職
    • 在宅ワーク可能なカスタマーサポート
    • 公務員(地方自治体など)の一般事務
    • 図書館や公共施設の受付業務
    • IT企業のデータ入力やテスター業務

    これらの職場は比較的勤務時間が安定しており、体調管理がしやすい環境が整っていることが多いです。

    狭心症や心臓病を持つ人の転職活動のポイント

    障害者雇用枠で求人を探す

    心臓疾患で身体障害者手帳を取得している場合は、障害者雇用枠での求人を探すことをおすすめします。障害者雇用枠では、以下のようなメリットがあります。

    • 勤務時間や業務内容に配慮がされやすい
    • 障害への理解がある環境で働ける
    • 法定雇用率達成のため安定した雇用が期待できる

    障害者雇用専門の求人サイトを利用すると、自分に合った求人を効率よく探すことができます。

    転職、就職のサポートを受ける

    障害者雇用専門の障害者ナビを利用する

    障害者雇用に特化した障害者ナビを利用すると、専門的なサポートを受けられます。

    障害者ナビのメリット

    • 障害に配慮した求人を紹介してもらえる
    • 履歴書や面接のアドバイスを受けられる
    • 企業と障害についての調整をしてもらえる

    「一人で求人を探していた時は全然うまくいかなかったけど、障害者ナビさんに相談してからは自分に合った仕事を紹介してもらえました」という声も多く聞かれます。

    就労移行支援やハローワークを利用する

    公的な就労支援サービスも積極的に活用しましょう。

    • ハローワークの専門窓口(障害者雇用担当)
    • 就労移行支援事業所でのトレーニングやサポート
    • 障害者職業センターでのカウンセリングや適性検査

    これらのサービスは無料で利用できることが多く、専門的な支援を受けながら就職活動を進められます。

    可能ならば企業の見学をする

    可能であれば、応募前や面接後に実際の職場を見学させてもらうことをおすすめします。見学時に確認したいポイントは以下の通りです。

    • 通勤経路や勤務場所の状況
    • 職場環境(休憩スペース、トイレの位置など)
    • 実際の業務内容や雰囲気

    職場環境を事前に確認することで、入社後のミスマッチを防ぐことができます。

    心臓病と上手に付き合いながら働くためのセルフケア

    日常生活での注意点

    心臓病と共に働き続けるためには、日常生活でのセルフケアも重要です。

    • 規則正しい生活リズムを保つ
    • 栄養バランスの良い食事を心がける
    • 適度な運動を医師と相談して行う
    • タバコやアルコールは控える
    • 十分な睡眠と休息を取る

    職場でのストレス管理

    心臓疾患がある方にとって、ストレスは症状を悪化させる大きな要因になります。職場でのストレス管理のポイントは以下の通りです。

    • 自分のペースを保ち、無理をしない
    • 定期的に小休憩を取る習慣をつける
    • ストレスを感じたら深呼吸などでリラックス
    • 自分の限界を知り、必要なら助けを求める

    自分の体調の変化に敏感になることが大切です。

    職場の同僚や上司とのコミュニケーション

    心臓病について職場でどのように伝えるかは難しい問題ですが、適切な配慮を受けるためには必要な場合があります。

    • 信頼できる上司や同僚には状況を説明する
    • 具体的にどのような配慮が必要かを伝える
    • 体調の変化があったら早めに相談する
    • 産業医や人事部門と連携する

    適切なコミュニケーションが働きやすい環境づくりにつながります。

    制度やサポートの活用

    障害者手帳の取得

    心臓疾患の程度によっては、身体障害者手帳を取得できる場合があります。

    • 心臓機能障害として1級から4級までの認定がある
    • 手帳があれば税金の控除や公共料金の割引などの福祉サービスを受けられる
    • 障害者雇用枠での就職や転職がしやすくなる

    まずは主治医に相談してみましょう。

    職場での合理的配慮

    障害者差別解消法により、企業は障害のある方に対して「合理的配慮」を提供する義務(民間企業は努力義務)があります。

    合理的配慮の例

    • 通院のための休暇や時間の確保
    • 業務内容や勤務時間の調整
    • 休憩スペースの確保
    • 近くに医療機関がある職場への配置

    まとめ

    狭心症や心臓病があっても、自分の症状や限界を正しく理解し、適切な職場環境を選ぶことで、無理なく働き続けることは可能です。

    自分の体調を最優先に考え、デスクワークなど体への負担が少ない仕事を選びましょう。障害者雇用枠の活用や専門の転職エージェントのサポートを受けることで、より自分に合った仕事を見つけやすくなります。

    また、必要に応じて障害者手帳を取得し、利用できる制度やサービスを活用することも大切です。職場では自分の状況を適切に伝え、必要な配慮を求めていきましょう。

    何より大切なのは、「無理をしないこと」です。自分の体と相談しながら、長く続けられる働き方を見つけていくことが、心臓病と共に生きる方の充実した職業生活につながります。

    一人で悩まず、医療機関や就労支援機関、家族や友人など、周囲のサポートを上手に活用しながら、自分らしい働き方を実現していきましょう。あなたの経験や能力は、どんな状況でも価値があります