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障害者が大企業に就職するメリットと成功するための方法を徹底解説
この記事の内容
障害をお持ちの方が社会で自立し、安定した生活を築いていくためには、どのような企業を選ぶかが非常に重要なポイントになります。特に、大企業への就職は、経済的安定、手厚い福利厚生、キャリア形成の面で大きな魅力があります。
しかし、実際には「大企業に入りたいけれど、どんな準備をすればいいのか分からない」「そもそも障害者に門戸は開かれているのか」と不安を抱える方も少なくありません。
本記事では、まず障害者雇用の現状と統計データを整理し、そのうえで、大企業を目指す上で必要な知識と対策を詳しく解説していきます。
将来的に安定したキャリアを築きたいと考える方にとって、必ず役立つ内容となっています。
障害者雇用の概要と統計データ
障害者雇用を取り巻く環境は、法改正や社会情勢の変化によって年々進化しています。
特に近年では、民間企業における障害者雇用が加速度的に進展しており、採用機会も広がりを見せています。
障害別の障害者雇用人数
厚生労働省が発表した2024年時点の最新データでは、障害者雇用の内訳は以下のとおりです。
- 身体障害者:約36万人(前年比微増)
- 知的障害者:約13万人(前年比2%増)
- 精神障害者:約9万人(前年比5%増)
特に注目すべきは、精神障害者の雇用が大きく伸びている点です。
うつ病や発達障害、双極性障害など、これまで働くことが難しいとされてきた障害を持つ方々の就労支援が充実し、企業側も積極的に受け入れ態勢を整えつつあります。
この傾向は今後も続くと見られ、多様な障害特性に応じた仕事の選択肢がさらに広がることが期待されています。
障害者の法定雇用率
障害者の法定雇用率は、事業主にとって障害者雇用を推進する大きな動機づけとなっています。
- 民間企業:2.5%
- 国・地方公共団体:2.8%
- 教育委員会:2.7%
この法定雇用率を満たすため、特に規模の大きな企業では積極的な採用活動が行われています。
達成できない場合、納付金の支払い義務が生じるため、企業にとっても雇用は「社会的責任」だけでなく「経営課題」として位置づけられているのです。
また、2024年4月から、さらに雇用率が段階的に引き上げられる方針が示されており、障害者を積極採用する企業が増える見通しです。
企業規模別の障害者雇用状況と雇用率ランキング
企業規模が大きいほど、障害者雇用に対する取り組みが進んでいるというデータがあります。
- 従業員1000人以上の企業:障害者雇用率2.38%
- 従業員300〜999人の企業:障害者雇用率2.22%
- 従業員100〜299人の企業:障害者雇用率2.04%
この統計からもわかるように、特に大企業は障害者の受け入れに積極的であり、採用枠の数も多い傾向にあります。
また、業種別に見ると、情報通信業、金融・保険業、製造業などが障害者雇用に力を入れている業界として挙げられます。
さらに、厚生労働省が実施する「障害者雇用優良企業認定制度(もにす認定)」においても、大企業の認定例が増加しており、労働環境の整備、キャリア支援、合理的配慮の提供などが高く評価されています。
【具体的な大企業例】
- トヨタ自動車:障害者専用ラインを設けた生産体制
- 三菱UFJ銀行:多様な働き方支援プログラム
- リクルートグループ:障害者向けのダイバーシティ採用プロジェクト展開
- ソニー:知的障害者向けの職域拡大プログラム
これらの企業では、障害の有無にかかわらず個々の力を引き出すための支援体制が整備されており、安心して長期的に働き続けられる環境が整っています。
大企業が障害者雇用を推進する理由
障害を持つ方々の雇用を積極的に進める大企業が、年々増えています。
一見すると、企業の「善意」のようにも映るこの動き。しかし、そこには社会情勢の変化や経営上の戦略的な背景が密接に関係しています。
ここでは、大企業がなぜ障害者雇用にこれほど力を入れているのか、その理由を具体的に解説していきます。
法定雇用率を満たすため
大企業が障害者雇用を推進する最大の理由の一つが、「法定雇用率の達成」です。
現在、民間企業には「従業員43.5人以上の企業は、2.5%以上の障害者を雇用する義務」が課せられています。
この基準を満たさない企業には、「障害者雇用納付金」と呼ばれるペナルティ(1人あたり月額5万円〜)が科せられる仕組みになっており、特に規模が大きい企業にとっては無視できないコスト負担になります。
また、近年では「障害者雇用促進法」が改正され、雇用率未達成企業に対する行政指導も強化されつつあります。
このため、多くの大企業では、法的リスクを回避し、企業価値を損なわないためにも、障害者雇用の推進が必須事項となっているのです。
さらに2024年4月から、法定雇用率はさらに段階的に引き上げられる予定であり、今後ますます障害者の採用ニーズは高まっていくと予想されています。
特に大手製造業、金融業、IT業界では、数百名単位で障害者の雇用計画を立てる企業も珍しくありません。
単なる「数合わせ」ではなく、雇用率達成を目指す中で、より本質的な働き方やサポート体制の整備が求められるようになっています。
社会的責任(CSR)の一環として
もう一つ、無視できないのが**CSR(企業の社会的責任)**の視点です。
今や企業は、利益を追求するだけでなく、環境保護、地域貢献、多様な人材活用といった社会課題への対応が求められています。
その中で、障害者雇用は非常に重要なテーマとなっており、「障害者を積極的に雇用している企業=社会貢献意識の高い企業」として評価される流れが定着しつつあります。
たとえば、大手企業の中には、
- CSR報告書に障害者雇用の実績や施策を詳しく記載
- ダイバーシティ&インクルージョン推進活動の一環として障害者インターンシップ制度を導入
- 障害者アスリート支援、パラスポーツのスポンサー活動
といった、外部への積極的な発信を行っているところも多く見られます。
また、これらの取り組みは単なるイメージアップだけではなく、株主、投資家、消費者からの信頼獲得にも直結しており、結果的に企業競争力を高めることにもつながっているのです。
特に上場企業やグローバル展開を視野に入れている企業では、CSRの一環としての障害者雇用推進は「必須課題」となりつつあります。
多様性の確保とイノベーションの促進
近年、大企業が障害者雇用に取り組むもう一つの大きな理由が、「ダイバーシティ(多様性)推進」と「イノベーション促進」です。
異なる背景、経験、視点を持った人材が集まることによって、組織内に新しい発想や価値観が生まれやすくなる——これは世界的に認められた事実です。
障害者も、その多様性の一翼を担う重要な存在として位置づけられています。
例えば、ある大手IT企業では、発達障害を持つエンジニアが独自の集中力や発想力を活かして新しいサービス開発に大きく貢献した事例もあります。
また、知的障害者や精神障害者が「チームの調整役」「場の空気を和らげる存在」として、間接的に生産性向上に貢献しているケースも少なくありません。
このように、障害者雇用は単なる「義務」ではなく、
- 新しい市場機会の創出
- 顧客理解の深化
- 働き方改革の推進
といった形で、企業の成長戦略と直結する存在になりつつあるのです。
さらに、近年ではパラリンピックを契機に「障害者=社会の一員」と捉える意識が広がり、社員同士の心理的安全性を高める効果も確認されています。
つまり、障害者雇用は結果的に「すべての社員が働きやすい職場環境づくり」にも寄与しているのです。
障害者にとって大企業就職のメリット
大企業への就職は、障害を持つ方々にとって非常に多くのメリットをもたらします。
特に障害者雇用枠を活用する場合、その利点は顕著です。
【障害者が大企業に就職するメリットまとめ】
項目 | 内容 |
給与水準 | 中小企業に比べて高い傾向 |
福利厚生 | 交通費全額支給、住宅手当、資格支援など充実 |
障害者支援体制 | 配慮面談、専任担当者、相談窓口あり |
キャリア形成 | 昇給・昇格チャンスあり、異動制度も活用可能 |
安定性 | 倒産リスクが低く、長期就業が見込める |
ここでは、障害者が大企業に就職することで得られる具体的なメリットを掘り下げて解説します。
障害者雇用率が決まっており採用枠が多い
大企業では、「障害者法定雇用率」の達成が法律によって義務付けられています。
現行では、民間企業の雇用義務率は2.5%ですが、従業員規模が大きい企業ほど、当然ながら採用しなければならない障害者の人数も増加します。
例えば、従業員1000人規模の企業であれば、最低でも25人以上の障害者を雇用しなければなりません。
しかも、行政からの監査や世間の目も厳しく、法定雇用率を下回るとペナルティ(納付金)や企業イメージ低下につながるため、積極的に採用を進める必要があります。
さらに、大企業の多くは、
- 障害者専用の採用ページの設置
- 毎年一定数の障害者採用計画
- 障害者向けのインターンシップや会社説明会
などの施策を導入しており、「障害者を積極的に採りたい」という姿勢を強く打ち出しています。
中小企業と比較すると、募集されている職種のバリエーションも豊富であり、事務職だけでなく、ITエンジニア、経理、マーケティング補助、製造ライン管理など、個々の適性に応じた選択肢が広がります。
結果的に「自分に合った仕事に巡り合えるチャンス」が圧倒的に高いのです。
離職率が高いので、チャンスが巡ってきやすい
一見意外かもしれませんが、大企業の障害者雇用枠には**「離職率が高い」という現実も存在します。
しかし、これはネガティブな側面だけではありません。
障害を持つ方にとっては、「新たなチャンスが頻繁に巡ってくる」**というポジティブな意味合いも持っています。
離職が多い理由としては、
- 職務内容や職場環境とのミスマッチ
- 上司や同僚とのコミュニケーション不全
- 配慮不足によるストレス蓄積
- キャリアアップが難しいと感じる
などが挙げられます。
これらの問題を受け、企業側も徐々に障害者支援体制を強化している最中ですが、依然として離職するケースは少なくありません。
結果として、
- 毎年定期的に採用枠が空く
- 増員による追加採用も積極的
という状況が生まれています。
特に「経験者」「自己理解ができていて配慮事項を明確に伝えられる人材」には、企業側も積極的に声をかける傾向が強まっています。
「一度離職しても、また再チャレンジできる市場」が形成されつつあるのも、大企業ならではの特徴です。
就職活動においても、「即戦力」や「長期的な定着が見込める人材」として、比較的有利に立ち回ることが可能になります。
ライバルが少ない、かつ弱い
障害者雇用枠での大企業就職を目指す際、ライバルの層が思ったほど厚くない、というのも大きなメリットです。
まず、障害者雇用市場全体の傾向として、
- ハローワークや地元企業を希望する人が多く
- 大企業志望者は意外に少数派 という背景があります。
また、障害者手帳保持者の中には、
- そもそも就職活動を控える人
- スキルや経験に自信がない人
- 面接対策が不十分な人
も一定数存在するため、競争率は一般採用に比べてかなり低いのが実態です。
さらに、大企業側も「完璧な即戦力」を求めているわけではありません。
それよりも、
- 自己理解ができているか
- 配慮事項を適切に伝えられるか
- 長期的に安定して働く意欲があるか
といった、基本的なビジネスマナーや社会人基礎力を重視する傾向にあります。
つまり、過度に「スキル不足」を心配する必要はなく、
「素直さ」「安定感」「成長意欲」があれば、十分に採用対象となり得るのです。
さらに、障害者雇用に慣れている大企業では、
- 職務設計(ジョブマッチング)の柔軟さ
- 相談窓口やサポート担当の配置
- 配慮内容に応じた働き方の調整(短時間勤務やリモートワーク)
といった体制も整っているため、安心してスタートを切ることができます。
大企業で働く障害者の待遇と環境
障害者雇用を積極的に推進している大企業では、単に「雇用するだけ」でなく、働く環境や待遇面でも高い水準を維持しています。
ここでは、大企業で働く障害者が実際に得られる待遇や職場環境について、具体的に解説していきます。
給料が良い
大企業で働く最大のメリットの一つは、やはり給与水準の高さです。
中小企業に比べて売上規模や利益率が高いため、障害者雇用枠であっても、基本給自体が比較的高く設定されている傾向にあります。
また、大企業は賃金体系が明確に整備されており、
- 職能給や職務給に基づく安定した給与制度
- 毎年の昇給制度
- ボーナス支給(年2回以上)
が制度化されているケースが大半です。
特に、障害者雇用専用の給与テーブルが用意されているわけではなく、全従業員と同じ基準で昇給や賞与が決まる企業も多いため、長く働くことで着実に年収アップを目指すことができます。
中には、スタート時点で月給20万円以上、年収300万円超えを狙える求人も珍しくありません。
地方在住の方にとっては、非常に大きな経済的安定をもたらします。
障害者雇用に慣れている
大企業は、過去から積み上げた障害者雇用のノウハウを豊富に蓄積しています。
そのため、障害者雇用に対する社内の理解度が非常に高いことが特徴です。
具体的には、
- 障害の特性に応じた業務配分
- 配慮事項を事前にヒアリングして反映
- 定期的な面談によるフォロー体制
- 精神的負担を軽減する相談窓口の設置
など、働きやすさを重視した環境整備が進んでいます。
また、直属の上司や同僚への「障害理解研修」も一般化しており、職場内で孤立するリスクが小さいのも安心材料です。
「一人だけ浮いてしまう」「理解されずにストレスを抱える」といった不安が少ないため、長期就業しやすい土壌が整っています。
サポートや教育などの体制が整っている
大企業では、障害者に限らず、すべての従業員に対する教育・研修体制が充実しています。
例えば、
- 新入社員研修(ビジネスマナー・PCスキル)
- OJT(実務を通じた育成)
- 障害者専用のステップアップ研修
- 上司によるメンタリング制度
- 外部講師を招いたキャリア研修
など、多様な教育機会が提供されています。
特に、障害者に向けた配慮のあるプログラムも用意されている場合が多く、無理なくスキルアップを図ることが可能です。
実務を通じて少しずつ成長できる設計がなされているため、「仕事についていけるか不安」という方も安心してスタートできます。
さらに、社内には産業医や保健師、カウンセラーが常駐していることも多く、健康面やメンタル面でのサポートも万全です。
体調に不安がある場合も、遠慮なく相談できる環境が整っています。
キャリアアップの制度が豊富
大企業は、社員のキャリア形成を支援するための制度が非常に充実しています。
障害者雇用枠であっても、例外なくこれらの制度を利用できるケースが一般的です。
代表的なものとしては、
- 社内公募制度(希望職種への異動チャンス)
- キャリアチャレンジ制度(社内異動支援)
- 資格取得支援制度(受験料補助、合格祝い金)
- リーダー職・管理職への登用制度
- 社内留学や海外研修プログラム
などが挙げられます。
特に注目すべきは、**「障害者枠入社でもキャリアアップできる道が開かれている」**という点です。
一般枠との間に壁を設けず、実力と意欲次第で重要ポジションを目指すことも可能になっています。
自ら学び、挑戦を続ける意欲のある方にとって、大企業はまさに「可能性を広げる舞台」と言えるでしょう。
倒産しにくいという安心感がある
大企業は、安定した経営基盤を持っており、倒産リスクが極めて低いという点も大きな魅力です。
特に上場企業や大手グループ企業では、
- 売上高数千億円~数兆円規模
- 多角化経営によるリスク分散
- 資金調達力やブランド力の強さ
といった要素に支えられており、経済情勢の変動があっても極端なリストラや事業縮小に直面するリスクは少なくなっています。
これにより、障害を持つ方でも、
- 長期的に安定した雇用を得られる
- 将来設計を立てやすい
- 心理的な安心感を持って働ける
といったメリットを享受できます。
家族がいる方や、これから結婚・出産を考えている方にとっても、大企業勤務は「生活の土台」をしっかり築ける大きな強みとなります。
大企業の障害者採用基準と働き方の特徴
障害者雇用においても、大企業は一定の基準や方針に基づき採用活動を行っています。
ここでは、大企業が障害者採用で重視するポイントや、働き方の特徴について詳しく見ていきます。
学歴フィルターの有無
一般的な新卒採用では「学歴フィルター」が存在することも珍しくありませんが、障害者雇用枠においては、学歴による制限は比較的緩やかです。
多くの大企業では、
- 高卒以上で応募可能
- 専門学校卒・短大卒・大学卒以上が望ましい
- 必須条件は設けず、ポテンシャルや適性重視
というスタンスを取っています。
ただし、職種によっては
- 技術系(IT、エンジニア、研究職)→大学・大学院卒を求めるケース
- 総合職や事務系(一般職)→学歴不問または高卒可
といった違いが出る場合もあります。
また、障害者雇用枠では、学歴よりも障害の状況や業務遂行能力の方が重視される傾向が強いため、
「学歴に自信がないから無理かも」と諦める必要はまったくありません。
面接や書類選考においても、
「これまでどのような環境で、どんな工夫をして働いてきたか」
「どんな配慮があればパフォーマンスを発揮できるか」
といった内容を丁寧に伝えることが何よりも重要視されます。
SPI・適性検査の有無
大企業では、障害者雇用枠であってもSPIや適性検査を実施するケースが増えています。
SPIとは、リクルートが提供する能力検査・性格検査で、
- 言語分野(国語力)
- 非言語分野(数学的思考)
- 性格適性(ストレス耐性、チームワーク傾向など)
を測るものです。
企業側としては、基礎的な読解力・計算力や職場適応力を客観的に把握するためにSPIを活用しています。
ただし、障害の特性(発達障害、学習障害、精神障害など)によっては、
- 制限時間の延長
- 配慮シートの提出
- 代替措置(SPI免除)
が認められるケースもあります。
また、最近ではSPIに代えて、
- 独自の簡易適性検査
- 面接中心の選考
を行う企業もあり、障害者本人の負担を軽減する配慮が進んでいます。
応募前に求人票や企業サイトで「選考フローにSPIがあるかどうか」をチェックし、
必要に応じて練習問題に取り組んでおくと安心です。
時短勤務の可否
大企業では、時短勤務(短時間正社員制度)が広く整備されています。
特に障害者雇用枠においては、
- 1日6時間勤務
- 週30時間勤務
- フレックス勤務
- リモートワーク併用
など、多様な働き方が認められているケースが増加中です。
時短勤務を選択できると、
- 体調に合わせて無理なく働ける
- 通院やリハビリと両立できる
- 徐々に勤務時間を延ばすステップアップも可能
といったメリットが得られます。
企業側も、**「働く時間」ではなく「成果」に着目する」**文化を強めつつあるため、
短時間勤務だから評価が下がる、昇進できないというリスクも以前より低下しています。
特に精神障害・内部障害・難病のある方にとっては、無理なく長期就業を目指せる重要な選択肢です。
なお、企業によっては**「入社時は時短、半年後にフルタイム切替」**を前提にしているところもあるので、事前に就業規則や契約内容をよく確認しましょう。
系列子会社・特例子会社の比較
大企業に応募する際、もう一つ押さえておきたいのが、
**「本体採用か系列子会社・特例子会社採用か」**という点です。
系列子会社
- 親会社から分社化されたグループ会社
- 規模は中堅~大企業レベル
- 本体と同様の福利厚生を受けられる場合が多い
- 仕事内容は事務・軽作業・アシスタント系が中心
【メリット】
・親会社の安定感を享受できる
・職場環境が整っている
・キャリアアップを目指しやすい
【注意点】
・本体採用に比べると、給与水準が若干低めのケースもある
特例子会社
- 障害者の雇用促進を目的に設立された子会社
- 障害特性に応じた配慮が非常に手厚い
- 業務内容は事務サポート、製造補助、データ入力、清掃、発送業務など幅広い
- 職場全体が障害に理解のある雰囲気
【メリット】
・無理なく安心して働ける
・支援スタッフ常駐で相談しやすい
・短時間勤務や体調不良時の対応に柔軟
【注意点】
・キャリアアップや賃金向上を重視する人には物足りない場合も
・単純作業が中心でスキルアップ機会が限られるケースもある
障害者向けの大企業求人の探し方
大企業への就職を目指す障害者の方にとって、求人情報の集め方は転職成功に直結します。
ここでは、ハローワークと障害者向け転職サイトを活用する方法について、詳しく解説します。
ハローワーク(注意点あり)
まず、最も身近な就職支援機関として知られるのがハローワーク(公共職業安定所)です。
ハローワークには、
- 障害者専用の窓口(専門援助部門)
- 職業相談員(障害者担当のキャリアコンサルタント)
が設置されており、障害の状況や希望に合わせた求人紹介を受けることが可能です。
特に毎年6月1日時点の障害者雇用状況報告をもとに、
- 障害者を積極採用している企業リスト
- 障害者雇用率の高い企業の情報
も提供してくれるため、大企業へのアプローチも可能です。
しかし、注意点もあります。
ハローワーク活用時の注意点
- 大企業の「本体」求人は少なく、系列会社・子会社の求人が多い傾向
- 掲載情報が最新ではない場合がある
- 企業とのマッチング精度は担当者の力量に左右される
- 一般枠求人と混在しており、情報が見つけにくい場合も
また、ハローワーク経由の場合、
「企業側も比較的受け身で、応募者主導のアプローチが求められる」
という特徴もあります。
そのため、ハローワーク単独での就職活動はやや効率が悪くなるリスクもあると考えた方が良いでしょう。
障害者雇用に特化した転職サイトを利用する
一方、近年利用が拡大しているのが、障害者雇用に特化した転職サイトの活用です。
これらの専門サイトは、ハローワークにはない強みを持っています。
大企業の求人が多い
障害者向け転職サイトでは、積極的に障害者を採用したいと考える大手企業が多数登録しています。
例えば、
- 金融、保険、商社、製薬、メーカー、IT企業
- 官公庁関連、インフラ企業(電力・ガス・鉄道)
など、社会的信用の高い企業の求人も豊富です。
また、**「特例子会社経由ではない、本体採用求人」**も一定数存在します。
そのため、
- 安定した収入を得たい
- キャリアアップを目指したい
- 大企業での長期雇用を希望している
という方には非常に適した選択肢となります。
転職活動に必要な作業を代行してくれる場合がある
障害者向け転職サイトの多くは、
- 履歴書・職務経歴書の添削
- 面接日程調整
- 条件交渉
- 企業への推薦・プッシュ
など、転職活動に伴う煩雑な作業をサポートしてくれます。
とくに、体力や精神面に不安を抱える方にとって、
一人で全てのやり取りをこなす負担が軽減されることは大きなメリットです。
また、専門のキャリアアドバイザーがつき、
- 自分に合った企業選び
- 業務内容のすり合わせ
- 必要な合理的配慮の整理
なども支援してくれるため、内定獲得率が高まりやすいという特徴もあります。
会社の内情を教えてくれる
転職サイトを通じて応募する場合、企業の内情や現場のリアルな雰囲気を事前に知ることができる場合があります。
例えば、
- 実際に働いている障害者の人数や状況
- 配属部署の雰囲気やサポート体制
- 残業の実態
- 上司や同僚の理解度
など、公式サイトや求人票だけでは見えない情報を教えてもらえることが多いです。
これは、
- 「入社後にミスマッチで早期離職」
- 「思っていた配慮が受けられなかった」
といったリスクを大幅に減らすために非常に重要です。
企業にあなたをアピールしてくれる
通常の応募では「書類選考を突破できない」という不安がつきまといますが、
障害者専門の転職サイト経由では、キャリアアドバイザーがあなたを直接企業に推薦してくれます。
推薦状が添付されることで、
- 面接確約(書類選考なし)
- 配慮事項への事前理解
- スムーズな選考プロセス
が実現しやすくなります。
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特に、障害内容に応じた伝え方や、企業側に伝えるべき配慮事項などをプロがサポートしてくれるため、
自分一人ではうまくアピールできない方にも強力な後押しになります。
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障害者の賃金の実態
障害者雇用が進展する中で、「実際の給料水準はどうなっているのか」という疑問を抱く方も多いでしょう。
ここでは、最新の統計データをもとに、障害者の賃金実態を詳しく解説していきます。
週所定労働時間別平均賃金
障害者の賃金は、週に働く時間によって大きく異なります。
週30時間以上働く場合
フルタイムに近い勤務形態に該当し、賃金水準も比較的高めです。
- 身体障害者:月額平均 約21万6,000円
- 知的障害者:月額平均 約15万8,000円
- 精神障害者:月額平均 約16万6,000円
なお、一般労働者の平均月給は約31万円であるため、
障害者の賃金は概ね一般労働者の5〜7割程度にとどまっている現状が見て取れます。
週20〜30時間未満働く場合
短時間勤務に該当するこの層では、さらに賃金水準が下がります。
- 身体障害者:月額平均 約11万5,000円
- 知的障害者:月額平均 約8万5,000円
- 精神障害者:月額平均 約9万2,000円
フルタイムに比べれば労働時間が短いものの、
月収10万円前後であるため、単独で生活するには難しい水準といえます。
週20時間未満働く場合
この勤務形態では、月5万〜8万円前後の収入に留まることが多く、
年収換算で100万円未満となるケースも少なくありません。
このため、障害年金の併用や家族支援が不可欠になる場合も多いのが実情です。
障害別の平均賃金と年収
障害種別によっても、平均賃金には差があります。
身体障害者
- 平均月給:約21万6,000円
- 平均年収:約260万円
身体障害者は、デスクワークなど比較的安定した業務に従事できる機会が多いため、
障害者全体の中でも収入水準は高めです。
知的障害者
- 平均月給:約15万8,000円
- 平均年収:約190万円
知的障害者は、単純作業中心の業務に携わるケースが多く、
給与水準も比較的低くなりやすい傾向があります。
精神障害者
- 平均月給:約16万6,000円
- 平均年収:約200万円
精神障害者は、近年雇用が急増していますが、
体調の変動や就労継続の難しさから、短時間勤務が多く、
その結果として年収もやや低めになる傾向にあります。
発達障害者
公式統計は限られていますが、精神障害者に近い水準とされ、
特に得意分野(IT、クリエイティブ領域)でスキルを発揮できる場合は
一般労働者に匹敵する収入を得るケースも存在します。
しかし一方で、苦手分野では適応が難しく、短期離職を繰り返す例もあり、
平均すると年収水準は低めとなる傾向です。
まとめ
障害者の賃金水準は、
- 労働時間の長さ
- 障害の種別
- 雇用形態(正規・非正規) に大きく左右されます。
特に短時間勤務や非正規雇用の比率が高いことから、
障害者全体の平均年収は、一般労働者よりも低くなりがちな現状があります。
また、障害の種類や程度によっても就ける職種・業務内容に違いが生じるため、
それがさらに賃金格差を生む要因となっています。
将来的に障害者の年収を向上させるには、
- 働きやすい職場環境の整備
- 正規雇用の推進
- 本人のスキルアップ支援
など、多方面からの取り組みが必要です。
障害があっても、安心して働き続けられる社会を築くためには、
制度整備だけでなく、雇用する企業側の意識改革と、
働く本人が自らキャリアを積み上げていく努力も重要だと言えるでしょう。