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一般枠から障害者枠に変更する際の働き方の違いとは?メリット・注意点・押さえるべきポイントを解説

この記事の内容
就労の選択肢は、人生の状況や健康状態の変化に応じて変わることがあります。たとえば、一般枠で働いていた方が病気や障害を理由に、障害者雇用枠へ移行するケースも少なくありません。
しかし、「障害者雇用枠に変わると働き方はどう変わるのか」「待遇や支援体制はどのように違うのか」といった疑問や不安を抱える方も多いでしょう。
本記事では、一般雇用から障害者雇用に移行する際に知っておきたい基本情報や、押さえておくべきポイントについて詳しく解説していきます。
障害者雇用の概要と一般就労との違い
障害者雇用と一般就労は、採用基準、働き方、支援体制などにおいて大きな違いがあります。
それぞれの特徴を理解することが、最適な働き方を見つけるための第一歩となります。
障害者雇用の目的と対象者
障害者雇用の目的は、障害のある方が経済的に自立し、社会の一員として活躍できるよう支援することにあります。
「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)」に基づき、企業には一定割合以上の障害者を雇用する義務(法定雇用率)が課されています。
対象となるのは、以下の障害を持つ方です。
- 身体障害者(視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、内部障害など)
- 知的障害者
- 精神障害者(うつ病、統合失調症、発達障害など)
発達障害などで合理的配慮が必要と認められる場合も対象になることがあります
対象者は、原則として「身体障害者手帳」「療育手帳」「精神障害者保健福祉手帳」のいずれかを所持している必要があります。
この手帳を持つことで、障害者雇用枠での応募が可能となり、各種配慮や支援を受けやすくなります。
一方、一般就労では、障害の有無にかかわらず、応募者全員が同一基準で評価されます。
採用時や就労後に特別な配慮がなされることは基本的になく、あらゆる業務に対応できる柔軟性や即戦力が求められるのが特徴です。
障害者雇用の基本制度と法律
障害者雇用を支える根幹となる制度・法律についても理解しておきましょう。
1. 障害者雇用促進法
障害者雇用促進法は、1960年に制定された障害者雇用に関する中心的な法律です。
この法律により、企業や行政機関には法定雇用率(2024年時点では2.5%)を満たす義務が課されています。
達成できない場合、一定規模以上の企業には「障害者雇用納付金制度」が適用され、不足人数に応じた納付金が課される仕組みになっています。
また、企業は障害特性に応じた「合理的配慮」を提供する義務を負っています。
これは、障害者が不利益を被らないよう、職場環境や業務内容の調整などを行うことを指します。
2. 障害者雇用納付金制度
法定雇用率を達成できない企業に対して、不足人数に応じた納付金を支払わせる制度です。
一方で、法定雇用率を上回る雇用をしている企業には、助成金が支給されるインセンティブ制度も設けられています。
これにより、企業の障害者雇用への取り組みが促進されています。
3. 合理的配慮義務
障害者差別解消法の施行により、障害を理由とした不当な差別は禁止され、障害特性に応じた合理的配慮を行うことが義務付けられました。
たとえば、車椅子利用者のためにバリアフリーの職場環境を整備したり、精神障害を持つ社員に対して勤務時間を柔軟に設定するなど、個々のニーズに応じた対応が求められます。
一般枠から障害者枠に変えることってできるの?

【結論】一般枠から障害者枠への変更は可能です。ただし、手続きや社内規定の確認、労働条件の見直しが必要になります。
一般雇用枠で働き始めたものの、病気やけが、障害の発症により働き方を見直さざるを得なくなることは、誰にでも起こり得る現実です。
そんなとき、「今の職場を辞めるしかないのか」「一般枠から障害者枠に切り替えることはできるのか」と悩む方も少なくありません。
ここでは、現在の仕事を続けたい場合に焦点を当て、障害者枠への切り替えに関する考え方や流れを解説していきます。
現在の仕事を続ける場合
一般枠で採用された後に障害が発覚したり、病気の影響で働き方に制約が出てきた場合でも、「今の会社で働き続けたい」という思いは当然のことです。
この場合、いくつかの選択肢があります。
まず重要なのは、会社側としっかり相談の場を持つことです。
人事部門や上司に自らの状況を説明し、どのような配慮や支援が必要かを具体的に伝えることが、働き方を見直すための第一歩となります。
たとえば、通院のための勤務時間調整や、体力的負担を減らすための業務内容の見直しなど、合理的配慮を受けながら、一般枠のまま勤務を継続できるケースもあります。
しかし、障害の程度や企業の事情によっては、一般枠での継続が難しいと判断される場合もあります。
このようなときに選択肢となるのが、「障害者枠」への切り替えです。
障害者枠への切り替えが可能な場合もある
企業によっては、障害を持つ社員のために、障害者雇用枠を設けており、条件を満たせば枠を移行することが可能です。
切り替えにあたっては、以下のような手続きや条件が関わってきます。
1. 障害者手帳の取得
障害者枠での雇用に切り替えるためには、原則として「身体障害者手帳」「療育手帳」「精神障害者保健福祉手帳」いずれかの取得が必要です。
手帳があれば、法定雇用率の算定対象となり、企業側も公式に障害者雇用枠として扱うことができます。
ただし、申請から交付までに一定の期間がかかるため、早めの準備が重要です。
2. 社内制度の確認
企業によっては、一般枠から障害者枠へ移行するための社内規程や手続きを設けている場合があります。
たとえば、配置転換制度、雇用区分変更申請制度などがあり、これらを利用して雇用形態を見直すことが可能です。
人事担当者と相談し、自分の状況に合った選択肢を探ることがポイントです。
3. 労働条件の変更
障害者枠へ移行した場合、勤務時間や業務内容、給与体系が変更となる場合があります。
たとえば、時短勤務が認められたり、体力的負担の少ない業務へ配置転換されたりする一方で、給与水準が一般枠より下がるケースもあります。
移行後の労働条件について事前にしっかり確認し、納得したうえで進めることが大切です。
4. 就労継続支援との連携
状況によっては、外部の就労支援機関(例:地域障害者職業センター、就労移行支援事業所)と連携しながら、職場復帰や継続就労に向けた支援を受けることも有効です。
専門スタッフが第三者的な立場から、本人・企業双方の調整役を担ってくれるため、円滑な切り替えが期待できます。
転職して障害者枠で働く場合
一般雇用枠から障害者雇用枠への転職を検討するケースは年々増加しています。
理由はさまざまで、病気や障害の発症をきっかけに働き方を見直したい、無理のない環境でキャリアを築きたい、より自分に合った職場を探したいといった思いからです。
障害者雇用枠への転職は、新たな可能性を開くチャンスとなる一方で、思わぬミスマッチや、想像と異なる現実に直面することもあります。
ここでは、実際に転職を経験した事例を紹介しながら、障害者枠で働くことのリアルに迫っていきます。
【成功例】障害者枠への転職で年収アップ!安心できる環境へ
30代・男性・身体障害(下肢障害)
一般企業で営業職としてフルタイム勤務していたAさんは、事故により車椅子生活となりました。復職を目指しましたが、外回り中心の業務に支障が出ることが明らかだったため、転職を決意。
障害者雇用枠での事務職求人に絞って転職活動を開始しました。
Aさんは、障害者雇用専門の転職エージェントを利用し、自身の強みである営業経験とPCスキルを活かせる大手企業のバックオフィス職に内定。
転職先では、完全バリアフリーのオフィス環境、柔軟な勤務体系(時差出勤制度)、在宅勤務制度が整っており、身体的な負担を大きく減らすことができました。
さらに、前職では営業職のため成果主義が強く、収入が不安定だったのに対し、転職後は安定した月給制となり、年収は前職より約20%アップ。
体調管理に専念できる環境が整ったことで、プライベートの充実にもつながり、心身ともに安定した生活を手に入れることができました。
このように、障害者雇用枠への転職が、単なる「負担軽減」だけでなく、キャリアアップや収入向上につながるケースも少なくありません。
自分の経験やスキルをしっかり棚卸しし、適切な求人を選べば、障害者枠でも十分に充実した働き方が可能です。
【失敗例】焦りからのミスマッチ転職で体調悪化……
40代・女性・精神障害(うつ病)
長年一般枠で人事職に従事していたBさんは、うつ病を発症し、休職を経て退職。
再就職に向けて障害者雇用枠での転職を目指しましたが、「とにかく早く仕事に就きたい」という焦りから、支援機関のアドバイスを十分に活用せず、安易に内定を受けた企業に入社しました。
ところが、入社してみると、業務内容はルーチンワーク中心で、これまで培ってきたスキルを活かす機会がほとんどありませんでした。
さらに、障害への理解が社内で十分に浸透しておらず、上司や同僚からの無理解な対応にストレスを感じることが増えていきました。
Bさんは、次第に体調を崩し、わずか3か月で退職を余儀なくされました。
その後、キャリアカウンセリングを受けた際、「自分の障害特性を正しく伝えること」「職場環境や支援体制をしっかり確認すること」の重要性を痛感し、慎重に再就職活動を進めることにしました。
この事例からわかるように、障害者枠への転職では「自分に合った職場選び」が何より重要です。
単に「障害者雇用だから安心」というわけではなく、業務内容、企業文化、支援体制などを総合的に見極める目を持つことが必要不可欠です。
障害者雇用のメリットと課題

障害者雇用は、障害を持つ方が自分らしく働き、社会の一員として活躍できる場を広げるための重要な仕組みです。
一方で、メリットだけでなく、現実にはいくつかの課題も存在しています。
ここでは、障害者雇用をめぐる代表的なメリットと課題について整理し、理解を深めていきましょう。
障害者雇用のメリットとは
障害者雇用制度を活用することには、働く側にとってさまざまなメリットがあります。
ここでは代表的なメリットを二つ紹介します。
周囲の「合理的配慮」が得られる
障害者雇用において最も大きなメリットの一つが、「合理的配慮」を受けられる点です。
合理的配慮とは、障害のある方が他の従業員と同様に働けるように、企業が必要な措置を講じることを指します。
たとえば、
- 車椅子利用者のために段差のない職場環境を整える
- 聴覚障害のある社員に対して筆談やチャットツールを活用する
- 精神障害を持つ社員に対して勤務時間を柔軟に調整する
- 通院配慮として、半日単位の休暇取得を認める
など、障害特性に応じたきめ細やかな配慮が行われます。
これらの合理的配慮により、障害を理由に不利な状況に置かれることなく、能力を最大限に発揮できる環境が整えられます。
一般雇用枠では、こうした配慮は義務ではないため、障害者枠で働くことによって初めて得られる安心感や働きやすさを実感する方も多いのが特徴です。
不当な解雇を回避できる
障害者雇用では、障害を理由とする不当な解雇や不利益な取り扱いが、法的に厳しく制限されています。
これは「障害者差別解消法」や「労働契約法」などに基づいており、企業は障害を理由とした解雇、降格、配置転換などを正当な理由なく行うことが禁じられています。
万が一、障害に関連した理由で不利益な扱いを受けた場合でも、法的に争う手段があり、行政機関への相談や労働審判制度を利用することも可能です。
このように、障害者雇用では、一般雇用よりも働く側が保護されやすい環境が整っているため、安心して長期的なキャリア形成を目指すことができます。
特に、体調の波がある方にとって、理解のある職場で安定して働けることは非常に大きなメリットと言えるでしょう。
障害者雇用の課題とは
一方で、障害者雇用には解決すべき課題も少なからず存在します。
実際に障害者枠で働く方からは、制度があるだけでは十分とは言えない現状が指摘されています。
1. 業務内容の限定化
障害者雇用では、配慮が必要なことから業務内容が限定的になる傾向があります。
特に、単純作業やルーチンワーク中心の業務に配属されるケースが多く、スキルアップやキャリア形成が難しいと感じる人もいます。
専門性の高い仕事や責任あるポジションへの登用が進んでいない職場も多く、「成長の機会が少ない」「チャレンジできない」という不満が蓄積し、離職につながるケースもあります。
2. 周囲の理解不足
障害者雇用制度自体は浸透してきたものの、現場レベルでは障害に対する正しい理解が十分でないことも多いのが実情です。
たとえば、
- 障害内容に応じた配慮が形だけになってしまう
- 同僚や上司が無理解な態度を取る
- 本人の希望を十分にヒアリングせず、一方的に業務を決めてしまう
といった問題が報告されています。
周囲の無理解や配慮不足により、職場で孤立したり、精神的な負担が増大したりするケースも少なくありません。
障害者雇用を本当に機能させるためには、職場全体の継続的な障害理解研修や、支援体制の強化が不可欠です。
3. 賃金格差
障害者雇用枠では、一般雇用枠と比較して賃金水準が低く設定されている場合があります。
とくに、業務内容が限定されていることを理由に、最低賃金に近い水準での雇用となるケースも見られます。
これにより、「生活が安定しない」「正社員でも収入が少ない」といった声が上がることもあります。
賃金格差の問題は、障害者本人のモチベーションや、障害者雇用枠の魅力を低下させる要因にもなっています。
企業側には、職務内容だけでなく、本人の能力や成果を正当に評価し、賃金水準を見直す努力が求められています。
4. キャリアパスの不透明さ
障害者雇用枠で働く場合、将来的なキャリアパスが不透明なケースも少なくありません。
「今の職務を続けるだけで、昇進や異動のチャンスがない」と感じる障害者も多く、キャリア形成の意欲を失ってしまうこともあります。
企業側が障害者向けのキャリア支援制度や、段階的なスキルアップ支援策を整備することが、今後の大きな課題です。
障害者枠での就職活動のポイント

障害者雇用枠での就職活動は、一般の就職活動とは異なるポイントがいくつもあります。
より自分に合った職場を見つけるためには、求人の探し方や、利用できる支援サービスをしっかり活用することが重要です。
ここでは、障害者枠で働きたいと考える方に向けて、就職活動を成功させるための基本的な流れとポイントをわかりやすくご紹介します。
障害者雇用求人の探し方
障害者雇用求人を探す際には、一般的な求人サイトや企業ホームページだけでなく、障害者向けに特化した情報源を活用するのが効果的です。
たとえば、
- ハローワークの障害者専門窓口
- 地域障害者職業センター
- 障害者向け転職エージェント
- 障害者雇用に特化した求人サイト
などが挙げられます。
また、就労移行支援事業所を利用している場合は、事業所を通じて企業実習に参加したり、企業紹介を受けたりすることも可能です。
自分一人で探すのではなく、支援機関やエージェントをうまく活用しながら情報を集めることで、ミスマッチを防ぎ、安心して就職活動を進めることができます。
就職活動時に利用できる支援サービス
障害者雇用枠での就職活動では、各種支援サービスの活用が非常に重要です。
ここでは、代表的な支援機関やサービスをご紹介します。
ハローワーク
全国各地にあるハローワークには、障害者専門の相談窓口が設置されています。
専門職員が個別に対応してくれ、求人紹介だけでなく、履歴書・職務経歴書の添削、面接対策などもサポートしてもらえます。
また、障害者向けのトライアル雇用制度や、就職後の定着支援プログラムなども用意されており、初めて就職活動をする方にも心強い存在です。
さらに、障害の種類や程度に応じた配慮が必要な場合には、面接時に企業側への連絡調整を行ってもらえる場合もあります。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、障害特性に応じた専門的な就労支援を行う機関です。
職業リハビリテーションの一環として、職業評価(アセスメント)を受けることができ、自分の得意な業務や、働く上での注意点を客観的に把握することができます。
また、実際の職場実習を通じて職場適応訓練を行ったり、就職後にジョブコーチによる職場定着支援を受けたりすることも可能です。
特に長期間のブランクがある方や、初めて就職を目指す方にとっては心強いサポートとなります。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、一般企業への就労を目指す障害のある方に対して、就職準備訓練を提供する福祉サービスです。
サービス内容には、
- ビジネスマナー研修
- PCスキルや事務スキルの習得
- グループワークや対人スキルトレーニング
- 履歴書・職務経歴書作成支援
- 模擬面接や企業実習
などがあり、2年以内を目途に就職を目指します。
さらに、就職後も定着支援を行うため、職場に馴染むまで伴走型でサポートしてもらえる点が大きなメリットです。
障害者就業・生活支援センター
「障害者就業・生活支援センター」は、就業面だけでなく、生活面も含めた総合的な支援を行う施設です。
障害があることで日常生活に不安がある方でも、就職活動と生活支援をトータルで受けることができます。
たとえば、
- 通院や服薬の管理
- 金銭管理のサポート
- 生活リズムの安定支援
など、生活基盤を整えながら就職活動に取り組める環境を提供してくれます。
障害者雇用に強い求人サイト
最近では、障害者雇用に特化した求人サイトも充実しています。
これらのサイトでは、障害者向けのオープンポジションや、配慮事項が明記された求人情報が多く掲載されており、スムーズに求人検索が可能です。
たとえば、
- 在宅勤務が可能な求人
- 時短勤務・フレックスタイム制度がある求人
- 通院配慮ありの求人
など、自分の希望に合った働き方を探しやすくなっています。
さらに、求人サイトによっては、キャリアカウンセラーによる無料相談や、応募書類の添削サービス、模擬面接サポートなども提供しており、手厚いサポートを受けながら活動を進めることができます。
👉 障害者雇用特化型の求人サイト:障害者ナビはこちらからチェック!
ぜひ、自分に合った求人を見つけるために、こうした専用サイトを積極的に活用してみてください。
まとめ
障害者雇用枠での就職活動は、適切な情報収集と、支援サービスの上手な活用が成功のカギとなります。
一人で抱え込まず、ハローワークや地域障害者職業センター、就労移行支援事業所など、各種支援機関を活用しながら、自分に合った職場探しを進めていきましょう。
また、障害者ナビなど、専門のツールを使うことで、効率よく希望条件にマッチする企業を見つけることができます。
どんなに道が険しくても、あなたの未来には無限の可能性が広がっています。
自分自身を信じて、自分らしいキャリアを築いていきましょう!