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そしゃく機能障害のある方が働く際の注意点とは?仕事選びと職場での配慮ポイントを解説

この記事の内容
食べる、話す、笑う。
これら日常の当たり前の動作を支える「そしゃく機能」。
しかしこの機能に障害があると、日常生活だけでなく、仕事においても思わぬハードルに直面することがあります。
そしゃく機能障害は目に見えにくい障害であるため、周囲の理解を得ることが難しく、また本人も配慮を求めにくいという課題を抱えがちです。
本記事では、そしゃく機能障害の基礎知識から、仕事をする上での注意点や対策について詳しく解説していきます。
そしゃく機能障害の基礎知識
そしゃく機能障害とは
そしゃく機能障害とは、口の中で食べ物を噛み砕き、飲み込むための運動機能が正常に行えない状態を指します。
「噛む」という行為は、単に食事を楽しむためだけでなく、栄養摂取、消化器系への負担軽減、さらには発声や表情の形成にも深く関わっています。
そのため、そしゃく機能に障害があると、単なる食事上の困難だけにとどまらず、生活の質全般に影響を及ぼす可能性があります。
原因
そしゃく機能障害の原因は多岐にわたります。
- 歯の欠損や不正咬合
虫歯や歯周病、事故などによる歯の喪失。 - 顎関節症
あごの関節や筋肉に異常が起こり、開口や咀嚼が困難に。 - 神経筋疾患
脳卒中後遺症、パーキンソン病、筋ジストロフィーなどによる筋力低下。 - 加齢による機能低下
高齢になるにつれて、筋力低下や感覚鈍麻が進み、咀嚼能力が落ちる。 - 口腔外科手術後
口腔がん手術や外傷による構造変化。
原因によって障害の程度や現れる症状も異なるため、正確な診断が重要です。
症状
そしゃく機能障害では、以下のような症状が見られることがあります。
- 食べ物をうまく噛み砕けない
- 食事中にむせる
- 飲み込みに時間がかかる
- 食事に異常な疲労感を感じる
- 顎や口周囲に痛みがある
- 発音が不明瞭になる
これらの症状は、食事時間の延長や食欲減退を引き起こし、さらには栄養不良や社会生活上の不安にもつながりやすくなります。
治療
そしゃく機能障害の治療は、原因に応じて多角的にアプローチされます。
- 歯科治療
義歯の作製・調整、インプラント治療、矯正治療などで機能回復を図ります。 - 顎関節治療
スプリント療法、理学療法、薬物療法による顎関節の機能改善。 - リハビリテーション
咀嚼筋のトレーニング、口腔周囲筋の運動療法。 - 栄養指導
摂取しやすい食事形態(刻み食、とろみ食など)の工夫。
重度の場合には、複数の専門職(歯科医師、言語聴覚士、作業療法士、栄養士など)がチームで支援を行うこともあります。
日常生活への影響
そしゃく機能障害は、見た目には分かりづらいため、周囲の無理解を招きやすい特徴があります。
それにより、本人も「我慢する」方向に走ってしまうことが少なくありません。
【主な影響】
- 食事の場での心理的負担
食べるペースが遅くなるため、外食や会食を避けるようになる。 - 会話への影響
発声が不明瞭になることで、自己表現に自信を持てなくなる。 - 栄養不足・体力低下
噛めない・食べられないことが栄養不足を招き、体力の低下を引き起こす。 - 自己肯定感の低下
「普通に食べられない」「話しづらい」という劣等感が積み重なり、自己評価の低下につながることも。
こうした影響は、仕事をする上でも少なからず課題となり得ます。
仕事をする上で気を付けるべきポイント
そしゃく機能障害がある場合、仕事においてもいくつかの工夫や配慮が必要です。
【1】勤務先への適切な情報開示
- 必要に応じて、そしゃく機能障害があること、具体的に配慮してほしい点(昼休憩時間の確保、柔軟なスケジュール対応など)を伝えましょう。
- 無理にすべてをオープンにする必要はありませんが、「困ったときに相談できる」体制を作っておくことが重要です。
【2】昼休憩時間の確保と調整
- 食事に時間がかかるため、通常より長めに昼休憩を取れるよう交渉するケースもあります。
- フレックスタイム制や、短時間勤務制度を活用できる場合もあるので、制度面を確認しておきましょう。
【3】リモートワークの活用
- 在宅勤務が可能な職種であれば、通勤負担を減らし、体調管理をしながら仕事が続けやすくなります。
- 自宅なら食事も自分のペースでとれるため、精神的負担も軽減できます。
【4】口腔ケアと体調管理の徹底
- 定期的な口腔ケア(歯科受診、口腔リハビリ)を続け、症状の悪化を防ぎましょう。
- 栄養バランスの取れた食事、十分な睡眠、ストレス管理も重要です。
【5】無理をしない姿勢を持つ
- 他人と同じペースで無理に食事や会話を合わせる必要はありません。
- 体調に応じて柔軟に対応しながら、自分のペースを守ることが、長く働き続けるためには欠かせません。
そしゃく機能障害者の働きやすい職場環境

そしゃく機能障害を持つ方が職場で活躍するためには、本人の努力だけでなく、企業側の理解と配慮も不可欠です。
「目に見えにくい障害」だからこそ、適切な環境整備と周囲の心遣いが、働きやすさに大きく影響します。
ここでは、そしゃく機能障害者が安心して仕事に取り組める職場環境づくりのポイントを解説していきます。
医療器具の使用への理解と配慮
医療器具の使用とは
そしゃく機能障害のある方の中には、日常生活や仕事中に医療器具の使用が必要なケースがあります。
【主な例】
- 義歯(入れ歯・インプラント)
噛む機能を補助するために使用。 - 口腔内補助装置
顎の位置を安定させたり、筋肉の動きをサポートする装置。 - 食事用補助具
飲み込みを助けるとろみ剤や専用食器など。
これらの医療器具は、本人の生活の質を大きく支えている存在ですが、周囲の理解がなければ使いにくくなる場面も少なくありません。
職場で求められる配慮
【1】使用の自由を尊重する
- 義歯の着脱やメンテナンスが必要な場合もあります。
- 必要に応じて短時間離席を認めるなど、柔軟な対応を心がけましょう。
【2】食事環境への配慮
- 食堂や休憩室で周囲の目を過度に気にせずに済むよう、パーティション設置や個別席の配慮ができると理想的です。
- 必要な場合には「食事時間の延長」や「昼休憩の分散取得」なども検討しましょう。
【3】医療器具に関する啓発活動
- そしゃく機能障害を含め、見えにくい障害に対する基礎的な理解促進の研修を取り入れることで、自然なサポート体制を整えることができます。
器具の使用を「特別視しない」、それでいて「必要な支援はさりげなく提供する」――
そんなバランス感覚が、働きやすい職場作りには欠かせません。
職務配置と能力開発の調整
適切な職務配置とは
そしゃく機能障害があっても、個々人の能力や強みを生かした職務配置を行うことが、本人のモチベーションと成果に直結します。
【考慮すべきポイント】
- 体力や体調への負荷
長時間の立ち仕事、重労働、急な会食参加が求められる職務は慎重に検討しましょう。 - コミュニケーションスタイル
発話に影響がある場合は、チャットやメール中心の業務を選択するのも有効です。 - 休憩・リズム管理
定期的な休憩が取りやすい職場設計が望まれます。
例えば、事務職、IT関連職、クリエイティブ職、研究職などは、比較的「話す」「食事をする」頻度が業務に直結しないため、そしゃく機能障害を持つ方にも適しているケースが多いです。
能力開発の支援
障害の有無にかかわらず、キャリアアップの機会を平等に提供することも、重要な支援の一つです。
【推奨される取り組み】
- eラーニングの導入
在宅でも受講できるスキルアップ講座を整備。 - 自己啓発支援制度
資格取得費用の補助、外部研修への参加奨励。 - 目標管理面談の実施
個別に目標設定を行い、適切な成長機会を与える。
そしゃく機能障害があるからといって、成長の機会を制限するべきではありません。
個々の強みを伸ばす支援は、本人の自信につながり、企業全体の力を押し上げることにもつながります。
障害の開示と相談しやすい雰囲気づくり

障害の開示について
障害の内容や必要な配慮については、本人が開示するかどうかを選べるべきです。
強制するのではなく、「安心して話せる環境」が整っていることが前提となります。
【職場ができること】
- 障害に関する秘密保持を徹底する
- 面談機会を定期的に設ける
- 上司や同僚に対する障害理解研修を実施する
「何かあったらいつでも相談していい」
そんな雰囲気があるだけで、本人の心理的ハードルは大きく下がります。
相談しやすい雰囲気づくり
相談しやすい職場とは、「困ったときに、迷わず声を上げられる」職場です。
そのためには、日常的なコミュニケーションの積み重ねが欠かせません。
【実践例】
- 毎朝・毎週の短時間ミーティングで体調や業務状況を確認
- フィードバックを一方的ではなく双方向に行う
- 成果だけでなくプロセスもきちんと評価する
障害を「特別扱い」せず、「一緒に働く仲間の一人」として自然に支え合う関係性が、そしゃく機能障害者に限らず、すべての社員にとって働きやすい環境を生み出します。
そしゃく機能障害者に適した仕事

そしゃく機能障害を抱えていても、適切な職種や働き方を選ぶことで、安心して長期的に働き続けることが可能です。
ここでは、そしゃく機能障害者に適した仕事の種類や働き方の工夫について、具体的に解説していきます。
デスクワーク(事務系)
身体的負担が少なく、コミュニケーションもテキストベースで行えることが多いデスクワークは、そしゃく機能障害を持つ方にとって非常に相性の良い働き方です。
【代表的な職種例】
- 一般事務
データ入力、書類作成、ファイリング、電話応対など。 - 経理・財務補助
帳簿管理、伝票整理、経費精算業務。 - 人事・総務アシスタント
採用サポート、勤怠管理、備品管理。 - カスタマーサポート(メール・チャット対応中心)
テキスト中心のサポート業務なら、発話への負担も軽減可能。
デスクワークでは、食事や休憩も自分のペースで取りやすく、突然の体調変化にも比較的柔軟に対応できます。
また、発話に負担がかかる場合は、電話対応を最小限にした業務配置を希望することも可能です。
経験を活かせる業務
すでに職務経験や専門スキルを持っている場合、それを生かして働く選択肢も広がります。
【活かせるスキル例】
- ITスキル
プログラマー、エンジニア、Web制作、システム運用管理など。 - クリエイティブスキル
デザイナー、ライター、動画編集、イラスト制作。 - 語学スキル
翻訳、通訳、海外事務対応。
これらの職種では、基本的に業務の成果が重視されるため、そしゃく機能に関わる制約(食事、発話)とは関係なく評価されやすい環境が整っています。
また、在宅勤務が導入されている企業も多く、自分の生活リズムに合わせて働きやすい点も大きな魅力です。
フレックスタイムや在宅勤務の活用
近年、フレックスタイム制やリモートワークを導入する企業が増えており、そしゃく機能障害を持つ方にとっても働き方の自由度が高まりつつあります。
【フレックスタイム制のメリット】
- 出勤・退勤時間を柔軟に調整できる
- 体調の良い時間帯に集中して働ける
- 昼食や休憩も自分のペースで設定できる
【在宅勤務のメリット】
- 通勤による体力消耗を回避できる
- 自宅なら医療器具の使用や食事管理がしやすい
- ストレスフリーな環境で業務に集中できる
企業選びの際には、「フレックスタイム制導入」「リモートワーク可」などの条件を積極的にチェックし、自分に合った働き方を探していきましょう。
そしゃく機能障害者の就職活動

そしゃく機能障害を持つ方が就職活動を進めるうえで、押さえておきたいポイントを紹介します。
自分自身の特性を理解し、適切なアプローチをすることで、安心して働ける環境を見つけやすくなります。
障害特性の理解と自己アピール
まず大切なのは、自分自身の障害特性を正確に把握することです。
【自己理解のポイント】
- どのような場面で困難を感じるか
- どのような配慮があれば能力を発揮できるか
- 得意なこと、経験・スキル
自己理解を深めることで、企業側にも具体的に説明でき、相互理解が進みやすくなります。
また、障害に関する説明ばかりに終始せず、**「自分は何ができるか」**というポジティブなアピールも忘れないことが重要です。
企業は「できないこと」ではなく、「できること」「貢献できること」を知りたがっています。
企業の障害者雇用への取り組み確認
応募先企業の障害者雇用に対する姿勢を事前にチェックすることも大切です。
【確認ポイント】
- 障害者雇用枠の実績はあるか
- 社内に障害者相談窓口や支援担当者がいるか
- テレワークやフレックスタイム制が整備されているか
- 勤務中のサポート体制(例:休憩室設置、配慮面談制度など)
求人票や企業ホームページ、口コミサイト、場合によっては見学や説明会を活用して、実態をできる限り把握しておきましょう。
面接時に配慮事項を伝える
面接では、そしゃく機能障害についてどの程度伝えるかを事前に整理しておきましょう。
【面接で伝えるべき内容】
- 障害名と簡単な説明
- 業務に支障がある可能性のある点
- 必要な配慮(例:食事時間の確保、会議中の休憩タイミング)
- 自身の強み・これまでの実績
配慮事項は「お願いする」というより、「こうすればよりパフォーマンスを発揮できます」と前向きに伝えることがポイントです。
企業側も「どう対応すればいいか分からない」ことを不安に感じている場合が多いため、具体的に伝えることでお互いに安心して働き始めることができます。
そしゃく機能障害のある方が利用できる就職支援サービス
そしゃく機能障害を抱えながら社会で活躍したいと考えている方にとって、就職活動は不安がつきまとうものです。
「自分にできる仕事はあるのか」「働き続けられるだろうか」――そんな不安を解消し、前向きな一歩を踏み出すために、さまざまな就職支援サービスを活用することが重要です。
ここでは、そしゃく機能障害のある方が利用できる具体的な就職支援機関・サービスを詳しく紹介します。
自分に合ったサポートを見つけるための参考にしてください。
ハローワーク
ハローワーク(公共職業安定所)は、障害の有無に関係なくすべての求職者を対象とする就労支援機関ですが、障害者専用の窓口や支援メニューも用意されています。
【ハローワークの支援内容】
- 障害者専門相談員による個別サポート
そしゃく機能障害など、目に見えにくい障害についても、配慮事項を整理しながら就職活動をサポートしてくれます。 - 障害者求人の紹介
障害者雇用枠での求人を数多く取り扱っており、企業とのマッチングもサポート。 - 職場体験やトライアル雇用制度
一定期間試用的に勤務できる制度を活用し、職場との相性を確かめることも可能です。 - 職業訓練の紹介
PCスキルやビジネスマナーを学べる職業訓練校への案内も行っています。
【利用ポイント】
初めての就職・転職活動でも、気軽に相談できる窓口です。
まずは最寄りのハローワークに予約を取り、障害者専用窓口を訪れてみましょう。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、ハローワークと連携しながら、より専門的・個別的な支援を行う機関です。
【主な支援内容】
- 職業評価(アセスメント)
どのような仕事に適性があるか、作業体験や能力測定を通じて客観的に評価します。 - 職業準備支援
働くために必要なビジネスマナー、コミュニケーションスキルを磨く訓練。 - ジョブコーチ支援
就職後、職場にジョブコーチが同行し、仕事の手順や人間関係の構築をサポート。 - 職場適応援助
就職後も定着支援を継続し、長期雇用を目指します。
【利用ポイント】
「どんな仕事が向いているか分からない」「働き始める前にスキルを磨きたい」という方におすすめです。
就労移行支援事業所とも連携して支援が受けられます。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、障害者総合支援法に基づく福祉サービスの一環として提供される支援施設です。
一般就労を目指す障害者に、最大2年間、職業訓練や就労支援を行います。
【主な支援内容】
- PCスキルや事務作業トレーニング
Word、Excel、PowerPointなど、ビジネスに必要なスキルを学べます。 - 就職活動支援
履歴書・職務経歴書の作成指導、模擬面接、求人紹介、面接同行支援。 - 体調管理支援
自己管理能力を高め、安定した就労継続を目指します。 - 就職後の定着支援
就職後半年〜1年程度、定期的に面談や職場訪問を実施し、困りごとに対応。
【利用ポイント】
そしゃく機能障害に理解のあるスタッフが、本人のペースに合わせて就労準備をサポートしてくれます。
通所できる距離にある事業所を探して、見学や体験から始めるのもおすすめです。
障害者就業・生活支援センター
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【主な支援内容】
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住居確保、金銭管理、健康管理に関する助言。 - 定着支援
就職後も定期的に面談し、職場での課題を早期発見・解決。
【利用ポイント】
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まずは登録だけして情報収集から始めるのも一つの方法です。
まとめ
そしゃく機能障害を持っていても、働きたいという思いを支えてくれる支援サービスはたくさん存在しています。
- ハローワーク
- 地域障害者職業センター
- 就労移行支援事業所
- 障害者就業・生活支援センター
- 障害者ナビ
これらをうまく活用することで、不安を少しずつ解消しながら、自分に合った働き方を見つけることができます。
大切なのは、「一人で抱え込まないこと」。
あなたに合った支援先と一緒に、理想の未来に向かって一歩踏み出してみてください。