2025/05/02
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    多発性筋炎・皮膚筋炎のある方に向いている仕事とは?就職・転職の方法と支援制度を解説

    この記事でわかること

    • 多発性筋炎・皮膚筋炎の主な症状と仕事への影響
    • 体調に合わせた向いている仕事と注意点
    • 障害者雇用や障害年金の活用方法
    • 就職・転職時に利用できる支援サービス
    • 働き続けるために大切な考え方

    多発性筋炎・皮膚筋炎は、体の筋肉に炎症が起きる自己免疫疾患の一種です。発症すると筋力低下や皮膚症状が現れ、日常生活だけでなく、仕事においても影響を及ぼすことがあります。しかし、医療の進歩と就労支援制度の整備により、体調に配慮しながら社会参加を続けることは十分可能です。
    本記事では、多発性筋炎・皮膚筋炎の基礎知識を整理したうえで、どのような仕事が向いているのか、またどのように就職・転職活動を進めていけばよいのかを詳しく解説します。病気を抱えながらも自分らしいキャリアを築くためのヒントとして、ぜひご活用ください。

    多発性筋炎・皮膚筋炎とは

    概要と症状

    多発性筋炎(Polymyositis)および皮膚筋炎(Dermatomyositis)は、筋肉の炎症を主とする自己免疫疾患です。両者の違いは、皮膚症状の有無にあります。皮膚筋炎では、筋炎に加えて特徴的な皮膚症状が現れますが、多発性筋炎では皮膚症状を伴わないケースが一般的です。

    【主な症状】

    • 筋力低下
      特に肩や股関節周囲の筋肉が弱くなり、腕を持ち上げる、椅子から立ち上がる、階段を上がるといった日常動作が困難になることがあります。
    • 筋肉痛
      筋力低下とともに、筋肉そのものに痛みを感じる場合もあります。
    • 皮膚症状(皮膚筋炎の場合)
      顔や手背、肘、膝などに赤紫色の発疹(ヘリオトロープ疹、ゴットロン徴候)が現れることがあります。これらは紫外線に当たることで悪化する傾向もあります。
    • 嚥下障害
      筋炎が咽頭筋に及ぶと、食べ物を飲み込む動作が困難になるケースもあります。
    • 全身症状
      発熱、倦怠感、体重減少など、全身にわたる不調を伴う場合も少なくありません。

    また、これらの筋炎は、間質性肺炎などの合併症を引き起こすこともあり、特に呼吸機能低下には注意が必要です。定期的な検査と早期の対応が求められます。

    治療法

    多発性筋炎・皮膚筋炎の治療は、炎症を抑え、筋力低下の進行を防ぐことを目的としています。治療法は個々の病態や重症度によって異なりますが、一般的なアプローチは以下のとおりです。

    • 副腎皮質ステロイド療法
      プレドニゾロンなどのステロイド薬を使用し、筋肉の炎症を抑えます。治療初期には高用量を投与し、効果を見ながら徐々に減量していきます。
    • 免疫抑制剤の併用
      ステロイドの副作用を抑えたり、効果が不十分な場合にはアザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)などが使用されます。
    • 生物学的製剤
      難治性の場合には、生物学的製剤(リツキシマブなど)による治療が検討されることもあります。
    • リハビリテーション
      筋力維持や回復を目的に、専門のリハビリテーションプログラムを行います。無理のない範囲での運動療法が重要です。
    • 合併症への対応
      間質性肺炎が併発している場合は、呼吸器専門医と連携しながら治療を進める必要があります。

    治療は長期にわたるケースが多く、体調に応じた無理のない生活設計が求められます。医師や医療スタッフとの密な連携を図りながら、適切な自己管理を行うことが、生活の質を維持するための鍵となります。

    多発性筋炎・皮膚筋炎が仕事に与える影響

    多発性筋炎・皮膚筋炎は、体の筋肉に炎症が生じる自己免疫疾患であり、発症すると筋力低下や倦怠感、皮膚症状といったさまざまな影響が現れます。これらの症状は、日常生活だけでなく、職業生活にも大きな制約をもたらすことがあります。

    特に影響が大きいのは、「筋力低下」による身体機能の制限です。腕や脚の筋肉が弱くなり、長時間の立ち仕事や重い物を運ぶ作業、階段昇降などが困難になることが多く、これまで問題なくできていた業務が続けられなくなるケースもあります。

    また、疲労感や倦怠感も強く現れることがあり、長時間勤務や高負荷な業務に耐えるのが難しくなる場合があります。仕事終わりには極度に疲れてしまい、プライベートの時間を確保できないほど消耗してしまうことも少なくありません。

    皮膚筋炎を伴う場合は、紫外線による皮膚症状の悪化にも注意が必要です。屋外での作業や、直射日光を浴びる環境での業務には大きな配慮が求められます。

    さらに、間質性肺炎などの合併症がある場合には、呼吸機能が低下するため、軽い運動や移動でさえ息切れを感じることもあります。これにより、外回りの営業職や頻繁な移動を伴う業務には大きな負担がかかるでしょう。

    症状には個人差があり、体調が安定している時期と悪化する時期(増悪期)が交互に訪れるため、体調の波に柔軟に対応できる働き方を選ぶことが重要になります。

    多発性筋炎・皮膚筋炎の人に向いている仕事

    多発性筋炎・皮膚筋炎を抱えながら働くためには、自身の体調や症状をよく理解し、無理のない範囲で取り組める仕事を選ぶことが大切です。ここでは、おすすめの職種例と、症状が悪化した場合の休職に関する選択肢について解説します。

    おすすめの職種例

    多発性筋炎・皮膚筋炎の方に適した仕事には、いくつかの共通する特徴があります。それは、「身体への負担が少ないこと」「自分のペースで作業できること」「体調に応じて勤務時間や場所を柔軟に調整できること」です。

    具体的な職種例を挙げると、以下のようなものが考えられます。

    • 事務職(一般事務・経理事務)
      デスクワーク中心で体への負担が比較的小さく、座ったままの作業が可能です。細かな作業や集中力を活かす仕事が向いています。
    • カスタマーサポート・コールセンター業務
      電話やメール対応がメインとなるため、重労働が避けられます。フルリモート勤務を導入している企業も多く、体調に合わせて働きやすい環境が整っています。
    • IT系職種(プログラマー・システムエンジニア・Webデザイナーなど)
      在宅勤務が可能なケースが多く、PCスキルを活かして自分のペースで仕事を進めることができます。
    • ライター・編集者・翻訳者
      クリエイティブな分野で、自宅での作業が可能な仕事です。体調に合わせて作業時間を調整できるため、無理なく継続しやすいです。
    • データ入力・事務補助作業
      単純作業ではありますが、身体的負担が少なく、集中力を発揮しやすい仕事です。時短勤務が可能な場合も多く、体調に合わせた働き方がしやすいです。

    これらの職種は、短時間勤務やフレックスタイム制度、在宅勤務を取り入れている企業が多いため、体調管理をしながら働く上で非常に相性が良いと言えるでしょう。

    症状による休職の選択肢

    多発性筋炎・皮膚筋炎は、寛解期と増悪期を繰り返す病気であり、時には長期間の療養が必要になることもあります。症状が悪化して通常勤務が難しくなった場合には、無理をせず休職を選択することも大切です。

    【休職に関するポイント】

    • 主治医の意見をもとに判断する
      体調悪化時には、主治医と相談し、就労継続の可否を客観的に判断してもらいましょう。医師の意見書があれば、企業側も休職の判断がしやすくなります。
    • 会社の休職制度を確認する
      就業規則に基づき、休職制度が利用できるか確認しましょう。傷病手当金の受給により、休職中も一定の収入を確保できる場合があります。
    • 復職支援制度の活用
      会社によっては、復職に向けたリハビリ勤務(短時間勤務からの段階復帰)や、復職支援プログラムを用意していることもあります。無理なく社会復帰するために、積極的に活用しましょう。
    • 障害者雇用枠への切り替えも選択肢に
      症状が長期化する場合、障害者手帳を取得し、障害者雇用枠での勤務に切り替えることも一つの方法です。これにより、合理的配慮を受けながら、継続的な就労を実現できる可能性が高まります。

    多発性筋炎・皮膚筋炎を抱えながら働くには、何よりも「無理をしない」「体調の変化に応じた柔軟な対応を心がける」ことが大切です。キャリアを中断することを恐れず、健康を最優先にした選択をすることで、長期的に安定した職業生活を送ることができるでしょう。

    多発性筋炎・皮膚筋炎の人の障害者雇用と障害年金

    多発性筋炎・皮膚筋炎は、筋力低下や筋肉の痛み、さらには全身倦怠感などを引き起こす自己免疫疾患です。病気の進行や症状の程度によって、働き方にさまざまな影響が出ることがあります。しかし、近年では障害者雇用枠での就労支援や、障害年金制度の利用を通じて、安定した職業生活を築く道が広がっています。ここでは、多発性筋炎・皮膚筋炎の方が利用できる障害者雇用制度と障害年金制度について、詳しく解説していきます。

    障害者雇用での就労可能性

    障害者雇用制度とは、障害のある方が安定した職業生活を送るために、法律で定められた枠組みに基づき設けられた雇用制度です。一定規模以上の企業には、障害者を一定割合以上雇用する義務があり、障害者雇用枠での採用が積極的に行われています。

    多発性筋炎・皮膚筋炎の方も、症状に応じて障害者手帳(身体障害者手帳など)を取得することで、この障害者雇用制度を活用できる場合があります。障害者雇用枠で働くことの主なメリットは以下の通りです。

    • 合理的配慮を受けながら働ける
      勤務時間の短縮や通院のための休暇取得、業務負荷の調整など、体調に応じた配慮を受けられます。
    • 就労支援や定着支援を受けられる
      ジョブコーチ支援や産業医面談など、働き続けるためのサポート体制が整っている企業が多くあります。
    • 安心して体調管理と両立できる
      症状の波に応じて柔軟な働き方ができるため、無理をして健康を損なうリスクが減ります。

    また、ハローワークや障害者就業・生活支援センターなどの公的機関を通じて、障害特性に合った求人を紹介してもらえるため、ミスマッチを防ぎやすいのも特徴です。

    ただし、障害者雇用枠でも仕事内容は企業によって異なるため、面接時には自分の体調や制限事項をしっかり伝え、無理のない範囲で働ける環境かを確認することが重要です。

    障害年金受給事例

    多発性筋炎・皮膚筋炎により、就労や日常生活に支障が生じている場合、障害年金の受給が可能となることもあります。障害年金は、障害基礎年金障害厚生年金に分かれており、厚生年金に加入している間に初診日がある場合は、障害厚生年金の対象となります。

    障害年金の受給には、以下の要件を満たす必要があります。

    • 初診日に公的年金制度に加入していたこと
    • 保険料納付要件を満たしていること
    • 障害認定日において障害等級に該当すること

    ここでは、実際に障害年金を受給した2つのケースをご紹介します。

    障害厚生年金2級の認定ケース

    40代の男性は、多発性筋炎を発症し、筋力低下により日常生活の多くに介助を要する状態となりました。特に、上肢・下肢の筋力低下が著しく、歩行や立ち上がり、物を持つ動作にも支障が出ていました。仕事においても、フルタイム勤務は困難となり、短時間勤務への変更を余儀なくされていました。

    医師の診断書には、

    • 上肢・下肢の筋力著しい低下
    • 長距離歩行困難、階段昇降不可
    • 通院加療中、病状の進行リスクあり

    と明記され、障害等級2級に該当すると判断されました。その結果、障害厚生年金2級に認定され、年間およそ120万円の年金を受給できるようになりました。

    この年金受給により、生活費の一部を補填しながら、体調に合わせた働き方を選べるようになり、無理なく社会参加を続けることができています。

    障害厚生年金3級の認定ケース

    50代の女性は、皮膚筋炎を発症後、顔や手の紅斑と共に筋力低下が進行し、階段昇降や立ち仕事に困難を感じるようになりました。仕事は続けていたものの、業務の制限が必要になったため、障害年金の申請を行いました。

    診断書には、

    • 中等度の筋力低下(上肢・下肢)
    • 皮膚症状の悪化に伴う外出制限
    • 体調波による業務継続困難リスク

    が記載され、障害厚生年金3級に認定されました。月額約5万円程度の年金が支給されるようになり、通院や療養にかかる費用負担が軽減されました。

    このケースでは、年金受給により、勤務時間短縮や柔軟な勤務形態への変更交渉がスムーズに進み、結果的に無理なく就労を継続できる体制を整えることができました。

    多発性筋炎・皮膚筋炎の人が就職・転職で利用できる支援サービス

    多発性筋炎・皮膚筋炎を抱えながらの就職・転職活動は、体調管理や治療との両立を考えると、慎重な計画が必要です。しかし、近年では障害者雇用支援に特化したサービスが充実しており、自分に合った働き方を見つけるためのサポート体制が整っています。ここでは、混合性結合組織病や多発性筋炎・皮膚筋炎など、慢性疾患を抱える方が活用できる支援機関とその特徴について詳しく紹介します。

    ハローワーク(公共職業安定所)

    ハローワークは、全国に展開する公共の就職支援機関です。すべての求職者を対象にしていますが、障害のある方向けの専門的な支援窓口も設置されています。

    多発性筋炎・皮膚筋炎の方がハローワークを利用するメリットは以下のとおりです。

    • 障害特性に配慮した求人紹介
      障害者専用求人情報を提供しており、体力面や通院配慮を重視した職場を紹介してもらえます。
    • 職業相談・職業評価
      専門の相談員が個別に対応し、希望や体調に合わせた就職先探しをサポートします。
    • 職場実習制度
      実際の職場で一定期間働いてみることで、業務内容が自分に合っているか確認できます。
    • トライアル雇用制度
      一定期間試用雇用として働き、その後正式採用につなげる制度です。企業側もリスクを抑えられるため、採用されやすくなります。

    また、ハローワークには障害者就職面接会や企業説明会なども定期的に開催されており、直接企業とコンタクトを取る機会も得られます。

    地域障害者職業センター

    地域障害者職業センターは、障害のある方を対象に、より専門的な職業リハビリテーション支援を行っている機関です。多発性筋炎・皮膚筋炎による筋力低下や体力制限がある場合でも、職業生活を円滑に送るためのさまざまなサポートが用意されています。

    具体的な支援内容は以下の通りです。

    • 職業評価
      本人の能力や適性、健康状態を詳しく評価し、最適な仕事探しの方向性をアドバイスします。
    • リワーク支援
      一度離職した方が職場復帰を目指す際、段階的に働く練習をしながらスムーズな復職をサポートします。
    • ジョブコーチ支援
      就職後の職場定着をサポートする制度で、必要に応じて職場に訪問し、本人と企業双方に対して支援を行います。
    • 合理的配慮に関する助言
      就労時に必要な配慮(勤務時間短縮、業務内容調整など)について企業側に提案・調整を行う役割も担います。

    センター職員は障害に関する知識が豊富なため、安心して相談することができ、障害への理解がある企業へのマッチング支援も受けられます。

    就労移行支援事業所

    就労移行支援事業所は、障害のある方の一般企業への就労を支援する福祉サービスです。利用対象は原則18歳から65歳未満の方で、障害者手帳を持っていなくても、医師の意見書などにより利用できる場合もあります。

    就労移行支援事業所で受けられる主な支援内容は次の通りです。

    • ビジネスマナー研修
      ビジネスシーンにおける基本的な礼儀や作法を学ぶことができます。
    • PCスキル研修
      ワード、エクセル、パワーポイントといったソフトウェアスキルを習得する支援が行われます。
    • 模擬面接・履歴書作成支援
      就職活動に必要なスキルを実践的に身につけるサポートを受けられます。
    • 職場実習の機会提供
      提携企業での実習を通じて、就労イメージを具体化できます。
    • 就職後の定着支援
      就職後も最長3年間、定着に向けたフォローアップ支援が受けられます。

    多発性筋炎・皮膚筋炎の方にとっては、無理なく働くためのペースづくりや、症状に応じた個別対応が可能な点が大きな魅力です。自身の病状に合わせたスケジュールで、無理のないステップアップが図れます。

    障害者雇用に特化した転職サイト

    近年、障害者雇用に特化した転職支援サイトも急速に発展しており、体調や障害特性に合った求人を探す強力なツールとなっています。その中でも特におすすめなのが**「障害者ナビ」**です。

    障害者ナビでは、

    • 障害への理解がある企業の求人情報を掲載
    • 勤務条件(在宅勤務可、時短勤務可など)を絞り込める検索機能
    • 専任キャリアアドバイザーによる個別サポート
    • 書類作成・面接対策などの無料サポート

    といった手厚い支援が受けられます。多発性筋炎・皮膚筋炎の方にとっても、通院や体調管理に配慮した求人情報を簡単に見つけることができるため、負担の少ない転職活動が可能となります。

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    まとめ

    多発性筋炎・皮膚筋炎を抱えながらも、自分らしい働き方を見つけ、社会とのつながりを持ち続けることは十分に可能です。そのためには、自身の体調や希望に応じた就労支援サービスを賢く活用することが何より重要です。

    ハローワーク、地域障害者職業センター、就労移行支援事業所、障害者ナビ──それぞれが異なる強みを持っており、状況に応じて組み合わせて利用することもおすすめです。

    まずは一歩を踏み出して、自分に合った支援機関に相談してみましょう。焦らず、無理せず、あなたらしい未来を切り拓いていきましょう。