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体幹機能障害者の仕事探し完全ガイド|就職のコツ・支援制度・おすすめ職種

この記事の内容
体幹機能障害のある方にとって、就労は大きな課題でありながらも、自分らしく生きるための重要な一歩です。
「どんな仕事ができるだろう」「周りの人に理解してもらえるだろうか」と不安を感じている方も多いかもしれません。
この記事では、体幹機能障害のある方が仕事を探す際の課題や対策、活用できる支援サービスについて詳しく解説します。あなたの「働きたい」という思いを応援する情報をお届けします。
体幹機能障害の基礎知識
体幹機能障害の定義と原因
体幹機能障害とは、体の中心部分(胸やお腹、背中など)の筋肉や神経に障害があり、姿勢を保つことや体のバランスをとることが難しい状態です。この障害は生まれつきのものから、病気や事故などによって後から発生するものまで様々です。
主な原因としては以下のようなものがあります。
- 脊髄損傷
- 脳性麻痺
- 筋ジストロフィー
- 脳血管障害(脳卒中など)
- 脊柱管狭窄症
- 関節リウマチ
- 交通事故などの外傷
- 二分脊椎
- ポリオ後症候群
- 脊髄小脳変性症
体幹機能障害の症状は人によって異なりますが、長時間の立位や座位の維持が困難、バランスを崩しやすい、疲れやすいなどの特徴があります。また、症状の程度も軽度から重度まで幅広く存在します。
体幹機能障害があると、日常生活のさまざまな場面で困難を感じることがあります。例えば、歩行時の不安定さ、階段の上り下りの難しさ、長時間同じ姿勢でいることの苦痛、公共交通機関の利用時の困難さなどです。こうした日常生活の困難さは、就労の場面でも影響することがあります。
身体障害者手帳における等級と基準
体幹機能障害は身体障害者手帳の対象となります。手帳の等級は障害の程度によって1級から7級まであり、数字が小さいほど障害の程度が重いことを示します。体幹機能障害の場合、主に次のような基準で等級が決まります。
- 1級: 体幹の機能障害により座位または起立位を保つことが困難なもの
- 2級: 体幹の機能障害により歩行が困難なもの
- 3級: 体幹の機能障害により歩行が家庭内での日常生活活動に制限を受けるもの
- 5級: 体幹の機能障害により社会での日常生活活動に制限を受けるもの
身体障害者手帳を取得するには、指定医師の診断書が必要です。手帳を持つことで、税金の控除や公共交通機関の割引、就労支援サービスの利用など、様々な支援を受けることができます。
手帳の申請は、お住まいの市区町村の障害福祉課で行うことができます。申請の流れは以下の通りです。
- 指定医師に診断書を作成してもらう
- 市区町村の窓口に必要書類を提出する
- 審査を経て手帳が交付される
手帳の等級によって受けられるサービスや支援の内容が異なるため、詳しくは地域の障害福祉課に相談してみることをおすすめします。
日常生活で利用可能な支援用具
体幹機能障害のある方の日常生活をサポートするために、様々な支援用具があります。これらの用具を上手に活用することで、日常生活の質を向上させるだけでなく、就労時の負担も軽減することができます。
代表的な支援用具
- 車椅子: 移動の負担を減らすための電動・手動の車椅子
- 杖やウォーカー: 歩行時のバランスをサポートする補助具
- 姿勢保持椅子: 長時間の座位をサポートする特殊な椅子
- コルセット: 体幹を安定させるための装具
- リフト・スロープ: 段差の移動をサポートする設備
- 自助具: 日常生活での動作を補助する道具
- クッション: 姿勢保持や褥瘡予防のための特殊なクッション
- 移乗ボード: 車椅子と他の場所への移動を補助する道具
- 電動ベッド: 姿勢調整が容易にできるベッド
- トイレ・入浴用の補助具: 排泄や入浴をサポートする道具
これらの支援用具は、障害者総合支援法に基づく「補装具費支給制度」や「日常生活用具給付等事業」を利用して購入費用の補助を受けられる場合があります。お住まいの地域の福祉課や障害福祉課に相談してみましょう。
支援用具の選定は、自分の障害特性や生活環境、仕事内容に合わせて行うことが大切です。リハビリテーションセンターや福祉用具専門店などで専門家のアドバイスを受けることもできます。
仕事における体幹機能障害者の課題と対策
仕事内容の制限と適切な職種選び
「やりたい仕事ができるだろうか」という不安を抱える方も多いでしょう。体幹機能障害のある方は、長時間の立ち仕事や重いものを持ち運ぶ作業など、身体的な負担が大きい仕事には制限がある場合があります。
体幹機能障害のある方が仕事を選ぶ際の主な課題と対策をご紹介します。
課題1: 長時間同じ姿勢でいることが難しい
- 対策: 定期的に姿勢を変えられる仕事、休憩を取りやすい職場環境を選ぶ
課題2: 移動や通勤が負担になる
- 対策: 在宅勤務可能な仕事、バリアフリー環境が整った職場を探す
課題3: 体力的な制限がある
- 対策: 自分のペースで働ける仕事、時短勤務が可能な企業を選ぶ
しかし、適切な環境と配慮があれば、多くの職種で活躍することが可能です。特に向いている職種としては以下のものがあります。
- デスクワーク中心の事務職
- ITエンジニアやプログラマー
- コールセンターやカスタマーサポート
- 在宅ワーク可能な職種(Webライター、データ入力など)
- 相談業務(障害者支援の経験を活かせる仕事)
- デザイナーやクリエイティブ職
- 経理・会計業務
- 翻訳・通訳
- テレワーク可能なコンサルタント業務
- 障害者職業生活相談員
仕事選びで大切なのは、自分の障害の特性を理解し、得意なことや興味のある分野を活かせる仕事を探すことです。また、企業側の理解や配慮も重要な要素となります。
就労支援機関やハローワークの障害者窓口では、自分に合った仕事を見つけるためのサポートを受けることができます。また、就労移行支援事業所などで職業評価を受けることで、自分の適性や能力を客観的に知ることもできます。
体調管理と環境を整える重要性
体幹機能障害のある方にとって、体調管理と適切な環境整備は仕事を続けていく上で非常に重要です。
体調管理のポイント
- 無理をしない休息時間の確保
- 定期的なストレッチや適度な運動
- 体調に合わせた勤務時間の調整
- 定期的な通院と医師の指示に従う
- 天候や気温の変化に対する備え
- 睡眠時間の確保と質の向上
- 栄養バランスの取れた食事
- ストレス管理とリラクゼーション
- 体調の変化に気づくためのセルフチェック
- 体調不良時の対応策を事前に考えておく
環境整備のポイント
- 疲れにくい姿勢で作業できる椅子や机
- 移動しやすいバリアフリー環境
- 必要な支援機器の導入
- 休憩スペースの確保
- 温度・湿度の調整
- 照明の明るさや位置の調整
- 作業効率を上げるための道具の配置
- 緊急時の連絡体制の整備
- 同僚や上司との情報共有
- リモートワーク環境の整備
自分に必要な配慮を明確に伝え、職場と一緒に環境を整えていくことが大切です。
また、障害者職業生活相談員や産業医などの専門家に相談することで、より適切な環境整備のアドバイスを受けることもできます。職場での合理的配慮の提供は法律でも定められているので、必要な配慮を遠慮なく伝えましょう。
コミュニケーションと周囲の理解
体幹機能障害は外見からわかりにくいことがあり、「見た目は普通なのに、なぜそれができないの?」という誤解を受けることもあります。このような状況を改善するためには、適切なコミュニケーションが重要です。
効果的なコミュニケーションのポイント
- 自分の障害について必要な範囲で説明する
- できることとできないことを明確に伝える
- 必要なサポートを具体的に伝える
- 定期的に上司や同僚とのコミュニケーションを取る
- 相手に合わせた伝え方を工夫する
- 専門用語を避け、わかりやすい言葉で説明する
- 状態が変わったときは早めに伝える
- 感謝の気持ちを伝えることも大切にする
- 職場の理解促進のための勉強会や研修の提案
- 問題が起きたときは早めに相談する
「初めは障害のことを伝えるのが怖かったですが、オープンにすることで周りの人が自然にサポートしてくれるようになりました」という声もあります。相互理解を深めることで、よりよい職場環境が作られていくことが多いです。
障害者職業生活相談員や就労支援機関のスタッフなど、第三者の協力を得て職場でのコミュニケーションを円滑にすることもできます。また、障害者差別解消法では、事業者に対して障害者への合理的配慮の提供が義務付けられているため、必要な配慮を求めることは権利として認められています。
体幹機能障害者に適した職場環境と配慮

柔軟な勤務形態
体幹機能障害のある方にとって、柔軟な勤務形態は非常に重要です。体調の波があるため、固定的な勤務時間だけでなく、状況に応じて働き方を調整できる環境が理想的です。
「朝は体が硬くて動きにくいので、少し遅めの出勤時間にしてもらっています。その代わり、体調の良い日は少し遅くまで働くなど、柔軟に対応しています」というように、自分の体調リズムに合わせた勤務形態を選べることが大切です。
効果的な勤務形態の例
- フレックスタイム制度: 出勤・退勤時間を自分で調整できる
- 時短勤務: 体力に合わせて勤務時間を短くする
- テレワーク・在宅勤務: 通勤の負担を減らせる
- 休憩時間の柔軟な取得: 体調に応じて休憩を取れる
- 障害の特性に配慮したシフト: 通院日や体調に合わせた勤務日の調整
- ジョブシェアリング: 複数人で一つの仕事を分担する
- 分割勤務: 一日の勤務時間を複数に分けて働く
- 隔日勤務: 体力回復のための休息日を確保する
- 季節に応じた勤務調整: 気候の影響を受けやすい場合の配慮
- リモートと出社の組み合わせ: 状況に応じて働く場所を選べる
企業側も柔軟な勤務形態を取り入れることで、従業員の能力を最大限に引き出せることを理解し始めています。
近年では「働き方改革」の流れもあり、多くの企業が柔軟な勤務形態を導入しています。就職活動や転職の際には、こうした制度の有無も重要なチェックポイントになります。
また、障害者雇用促進法に基づく「障害者雇用納付金制度」では、障害者を雇用する企業に対して様々な助成金があり、職場環境整備のための資金援助も受けられる場合があります。
バリアフリー設備
職場のバリアフリー環境は、体幹機能障害のある方が安心して働くための基本条件です。物理的な障壁が少ない環境であれば、能力を最大限に発揮することができます。
職場に必要なバリアフリー設備
- スロープや手すり: 段差を解消し、移動をサポート
- 広めのトイレ: 動きやすい空間の確保
- 自動ドア: 開閉の負担軽減
- エレベーター: 階段の負担軽減
- 調整可能なデスクと椅子: 最適な作業姿勢をサポート
- 休憩スペース: 横になれる場所の確保
- 滑りにくい床材: 転倒防止
- 通路の確保: 車椅子やウォーカーでの移動に配慮
- 駐車場の配慮: 障害者用駐車スペースの確保
- 災害時の避難経路: 緊急時の安全確保
必要な設備は人によって異なるため、個別のニーズを伝えることが大切です。
バリアフリー化は企業にとっても大きな投資になる場合がありますが、障害者雇用納付金制度に基づく「障害者作業施設設置等助成金」などの支援制度を活用することで、費用負担を軽減できることもあります。また、最近では「ユニバーサルデザイン」の考え方が広まり、誰もが使いやすい環境づくりが進んでいます。
就職活動の際には、可能であれば実際に職場を見学し、自分にとって働きやすい環境かどうかを確認することをおすすめします。また、入社後も必要に応じて環境改善の提案をしていくことが大切です。
サポート体制
職場での適切なサポート体制があることで、体幹機能障害のある方も安心して働くことができます。人的なサポートと制度的なサポートの両面が重要です。
効果的なサポート体制の例:
- ジョブコーチの活用: 職場での適応をサポートする専門家
- メンター制度: 職場の先輩社員による支援
- 定期的な面談: 上司との定期的な振り返りと調整
- 緊急時の対応マニュアル: 体調不良時の対応手順の明確化
- チーム内でのサポート体制: 同僚との協力関係の構築
- 障害者職業生活相談員の配置: 企業内の専門相談員
- 産業医との連携: 健康管理のサポート
- キャリアカウンセリング: 長期的なキャリア形成の支援
- 職場適応援助者(ナチュラルサポーター): 職場内で自然なサポートをする同僚
- テレワーク時のオンラインサポート体制: 在宅勤務時の支援
心理的な安全感を得られる環境も重要です。企業側も障害者雇用に関する研修を行うなど、受け入れ体制を整えることが求められています。
多くの企業では、障害者雇用の経験を積み重ねることで、サポート体制も充実してきています。特に障害者雇用率制度の対象となる従業員45.5人以上の企業では、法定雇用率(民間企業の場合2.3%)を達成するための取り組みが進んでいます。
就職活動の際には、企業のサポート体制についても積極的に質問し、自分に合った環境かどうかを確認することが大切です。また、就労後も定期的に状況を伝え、必要なサポートについて話し合うことで、より良い就労環境を作っていくことができます。
就職・転職に活用できる支援サービス

公的機関による就労支援
ハローワーク
ハローワーク(公共職業安定所)には、障害のある方の就職を専門にサポートする「専門援助部門」があります。
- 障害者向け求人情報の提供
- 職業相談員による個別相談
- 職業紹介のサービス
- トライアル雇用(試行雇用)の斡旋
- 各種助成金に関する情報提供
ハローワークは全国にあり、無料で利用できます。まずは最寄りのハローワークに行って、専門援助部門の窓口で相談することをおすすめします。
地域障害者職業センター
全国の主要都市にある「地域障害者職業センター」では、より専門的なサポートを受けられます。
- 職業評価:自分の適性や能力を客観的に評価
- 職業準備支援:仕事に必要な基礎的な知識・スキルの習得支援
- ジョブコーチ支援:職場に専門家が出向いて直接サポート
- 事業主への助言:雇用管理や職場環境整備についての助言
職業センターでは、体幹機能障害の特性を踏まえた専門的なアドバイスを受けることができます。自分に合った仕事や働き方を見つける上で、大きな助けになるでしょう。
障害者就業・生活支援センター
「障害者就業・生活支援センター」は、仕事だけでなく生活面も含めた総合的な支援を行っています。
- 就職に向けた相談や支援
- 職場定着のためのサポート
- 生活面での相談(住居、年金、医療など)
- 企業と障害者のマッチング
- 継続的な支援(就職後も長期的にサポート)
就職と生活の両面から支援を受けられるのが特徴で、長期的な伴走者として頼りになります。全国に約340カ所あり、お住まいの地域のセンターを利用できます。
就労移行支援事業所
「就労移行支援事業所」は、一般企業への就職を目指す障害のある方をサポートする福祉サービスです。
- 就労に必要なスキルの訓練
- ビジネスマナーや対人スキルの習得
- 職場体験や実習の機会提供
- 就職活動のサポート
- 就職後の定着支援(約6か月間)
通常2年間の利用期間があり、その間に就職に必要な準備を整えていきます。体幹機能障害に配慮した訓練プログラムを提供している事業所もあります。障害福祉サービスの利用申請が必要で、市区町村の窓口で手続きします。
障害者雇用に強い転職エージェント・求人サイト
民間の就職支援サービスも充実しています。
- 専門の転職エージェント:障害者雇用に特化した転職エージェントがあります
- 障害者向け求人サイト:障害のある方向けの求人を集めたサイトが多数あります
- 合同企業説明会:障害者雇用を行う企業が集まる説明会が定期的に開催されています
これらのサービスは、企業側の障害者雇用ニーズを熟知しているため、マッチングの精度が高い傾向があります。無料で利用できるサービスも多いので、積極的に活用するとよいでしょう。
障害者ナビには体幹機能障害の方におすすめの求人が多数ございます
「障害者ナビ」は、障害のある方の就職をサポートする専門の求人サイトです。体幹機能障害のある方に配慮した職場環境を提供する企業の求人も多数掲載されています。
同サイトでは、以下のような求人を検索できます。
- 在宅勤務可能な求人
- 時短勤務に対応した求人
- バリアフリー環境が整った職場の求人
- フレックスタイム制を導入している企業の求人
また、専門のアドバイザーに相談しながら求人を探すこともできるため、自分に合った仕事を見つけやすいでしょう。
登録は無料で、プロフィール登録をすると企業からのスカウトを受けることも可能です。体幹機能障害のある方の就職実績も豊富なので、ぜひチェックしてみてください。
まとめ
体幹機能障害があっても、適切な環境と支援があれば、能力を発揮して働くことができます。大切なのは自分の障害特性を理解し必要な配慮を明確にすること、そして自分の強みや興味を活かせる仕事を探すことです。
ハローワークや就労支援機関などの専門的なサポートを積極的に活用しながら、体調管理と環境整備を意識することも欠かせません。また、職場とのコミュニケーションを大切にすることで、より良い就労環境を築いていくことができるでしょう。
就労は一人で進めるものではありません。周囲のサポートを上手に活用しながら、自分らしく働ける環境を見つけていきましょう。障害があることで制限されることもありますが、その分だけ創意工夫や新たな可能性も生まれます。
体幹機能障害があっても、あなたの能力や個性を活かせる場所は必ずあります。諦めずに、自分に合った働き方を見つけてください。