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発達障害と“仕事のしづらさ”の関係を徹底解説!マルチタスクが苦手な理由とは?

この記事の内容
はじめに
「どうして自分だけ仕事が遅いのだろう…」
「またミスをしてしまった…」
社会人として働く中で、こんな思いを繰り返している方はいませんか?
職場で「遅い」「雑」「ミスが多い」といった評価を受け続けることは、大きなストレスとなり、自信を失う原因にもなります。
しかし、その背景には、本人のやる気や努力不足ではなく「発達特性」が関係している場合があります。
特にADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)の傾向がある人は、特定の環境や業務形態で“しづらさ”を強く感じやすい傾向があります。
本記事では、その原因をわかりやすく解説し、職場での対応策や環境選びのヒントをお届けします。
発達障害の人が職場でつまずきやすいポイントとは?

発達障害の特性は人によって異なりますが、職場環境や業務の進め方によって、特性が強く表れやすくなります。
ここでは、日常的によく見られる“しづらさ”の例と、ADHD型・ASD型それぞれの傾向、そして周囲からの誤解について詳しく見ていきましょう。
職場でよくある「しづらさ」の例
発達特性を持つ方が職場でつまずきやすいのは、次のような場面です。
- 指示を同時に複数受けると混乱する
上司からの指示、電話の着信、チャットでの依頼が同時に来ると、頭の中が情報であふれ、優先順位を判断できなくなることがあります。 - 電話対応と資料作成など、同時進行が苦手
マルチタスクが必要な業務では、片方の作業に集中するともう片方を忘れてしまったり、途中で作業手順を見失うことがあります。 - 予定変更や突発対応でパニックになる
事前に立てた計画が急に変わると、次に何をすべきか分からなくなり、気持ちの整理がつかないまま時間が過ぎてしまうことがあります。
これらは、脳の情報処理の特性によるものであり、単なる慣れや努力だけでは克服が難しいこともあります。
ADHDとASD、それぞれの苦手傾向の違い
発達障害と一口に言っても、その特性や苦手分野はタイプによって異なります。
- ADHD型の傾向:注意の切り替えが多すぎて集中が続かない
周囲の音や視覚的な情報に注意が向きやすく、作業に集中しづらい特徴があります。複数の仕事を同時に進めると、どれも中途半端になりやすい傾向があります。 - ASD型の傾向:予定外や不明確な指示に強いストレス
想定外の変更や、曖昧な表現の指示を受けると、不安や混乱が強まり、作業効率が低下することがあります。明確なルールや手順があると安心して作業できます。
周囲から誤解されやすいポイント
発達特性を理解していない職場では、次のような誤解が生まれがちです。
- 「やる気がない」と思われる
実際には全力で取り組んでいても、作業速度や正確さが周囲の基準と違うため、怠けていると誤解されることがあります。 - 「努力不足」や「怠けている」と見られがち
何度も同じミスを繰り返すと、「もっと頑張ればできるはず」と決めつけられ、本人の努力や背景が見過ごされることがあります。
こうした誤解が続くと、本人はさらに自信を失い、職場での居場所をなくしてしまう可能性もあります。
そのため、特性を正しく理解し、適切な配慮を得ることが重要です。
脳の特性から見る「マルチタスクの苦手さ」の正体

職場で「同時に複数の作業をこなす」ことは、多くの仕事で求められるスキルのひとつです。
しかし、発達障害(ADHD・ASDなど)の特性を持つ人は、このマルチタスクが特に負担となりやすい傾向があります。
その背景には、脳の情報処理の仕組みや感覚特性が深く関わっています。
ワーキングメモリの容量と情報処理の関係
ワーキングメモリとは、作業をしながら一時的に情報を保持・処理する能力のことです。
ADHDやASDの傾向がある人は、このワーキングメモリの容量が比較的少ないことが多く、次のような状況で困難を感じます。
- 一度に処理できる情報量が少ない理由
指示を複数同時に受けると、最初の内容を覚えているうちに次の情報が入ってきて、前の情報が抜け落ちてしまうことがあります。 - 頭の中で作業を保持しながら別作業をする難しさ
例えば電話で話しながらメールを確認するような場面では、片方に集中するともう片方の情報を保持できず、ミスや聞き漏れが発生しやすくなります。
注意の切り替えと集中力の課題
ADHDやASDの人は、注意の向け方に「一点集中型」と「注意が散漫になる」という両極端な特性が見られることがあります。
- 一点集中型では、一つの作業に没頭しすぎて他のことに気づかない
- 注意が散漫になる場合は、周囲の刺激に意識が移り、作業が中断されやすい
さらに、集中から別作業へ切り替えるときには、脳が再び作業モードに入るまで時間とエネルギーを消耗します。これがマルチタスクの大きな負担になるのです。
感覚過敏・感覚鈍麻が影響する場合
発達障害の特性として感覚過敏や感覚鈍麻が見られることがあります。
特に感覚過敏の場合、職場環境の音・光・人の動きが強い刺激となり、作業効率を下げる要因になります。
- 周囲の音や光が気になる:コピー機の音、蛍光灯の明滅、人の会話などが気になり集中が途切れる
- 感覚刺激の負担がマルチタスクを妨げる:複数作業の同時進行に加え、感覚刺激への処理が脳のリソースを奪う
優先順位がつけられない/忘れ物が多い理由
マルチタスクの苦手さに加えて、タスクの優先順位づけや物忘れも職場での大きな課題になります。
これらの背景にも、脳の機能や時間認識の特性が関係しています。
脳の実行機能(エグゼクティブ・ファンクション)の弱さ
「実行機能」とは、目標を立て、計画を作り、順序立てて行動する能力のことです。
ADHDやASD傾向がある人は、この実行機能が弱くなりやすい傾向があります。
- タスク管理・順序立てが苦手な背景
頭の中でやるべきことを整理するのが難しく、作業の順序がバラバラになったり、途中で忘れてしまうことがあります。 - 計画の立て方が曖昧になる理由
作業時間の見積もりが不正確で、スケジュールが後ろ倒しになりやすいのも特徴です。
時間感覚のズレと「締め切り直前症候群」
特にADHD傾向のある人には、時間の流れを体感しづらいという特性があります。
- 時間管理の苦手さ:作業に没頭しているうちに予定時間を大幅に過ぎてしまう
- 締め切り直前症候群:期限が迫らないと行動に移せず、結果的に徹夜や納期遅れにつながる
この時間感覚のズレは、周囲から「計画性がない」と誤解されやすいポイントでもあります。
物忘れ・紛失の背景にある要因
- 記憶保持の短さと注意の分散
メモを取らずに記憶だけで進めようとすると、他の作業や刺激に注意が移る瞬間に情報が抜け落ちてしまいます。 - 置き場所を忘れる/記録を残さない習慣
書類や道具の場所を決めずに使うため、どこに置いたか分からなくなり、探す時間が増えてしまうこともあります。
「うまくやる工夫」は可能?支援の活用と環境調整
発達障害の特性は生まれ持ったもので、完全になくすことはできません。
しかし、作業環境の見直しやツールの活用、職場での配慮、外部支援サービスの利用によって、仕事のしづらさを大幅に軽減することは可能です。
ここでは、具体的な改善策を紹介します。
作業環境の見直し
まずは、日々の業務を行う物理的な環境を整えることから始めましょう。
- デスク上の整理整頓と物の配置ルール化
よく使う文房具や書類の位置を固定し、「使ったら元の場所に戻す」習慣を徹底します。探し物の時間を減らすだけでも、集中力が保ちやすくなります。 - ノイズキャンセリングイヤホンや照明調整の活用
周囲の雑音が気になる場合は、耳栓やノイズキャンセリングイヤホンを使用。
また、眩しさやチラつきが集中を妨げる場合は、照明の色や明るさを調整できるデスクライトも有効です。
タスク管理ツールとスケジュールの工夫
脳の特性上、頭の中だけでタスクを管理するのは難しいため、外部ツールへの依存を前提にした仕組みづくりが有効です。
- ToDoアプリ・リマインダーの活用例
スマホやPCのタスク管理アプリ(Googleカレンダー、Todoistなど)に、細かく予定や締め切りを登録します。通知機能をオンにしておくことで、作業の抜け漏れを防げます。 - 大きなタスクを小分けにして進める方法
「資料作成」のような漠然としたタスクは、- 情報収集
- アウトライン作成
- 原稿執筆
- 校正
のように細分化。小さな達成感を積み重ねることで、モチベーションも維持できます。
- 情報収集
職場でお願いできる配慮
周囲に配慮を求めることは、決して甘えではありません。
「働きやすさのための条件を共有すること」は、結果的に職場全体の生産性を上げることにもつながります。
- 指示は口頭+メモでお願いする
口頭だけだと聞き漏らしや誤解が生じやすいため、メールやチャットなど記録が残る形でもらえるよう依頼します。 - 優先順位を明確にしてもらう
「どれから取り掛かるべきか」を示してもらうだけで、混乱や時間のロスを防げます。 - 同時依頼を避けてもらう
複数の依頼が重なるとパニックになりやすいため、順番に依頼してもらうよう調整をお願いしましょう。
外部支援サービスの活用
職場の中だけで解決が難しい場合は、専門の支援機関を活用することが有効です。
- 就労移行支援事業所
働くためのスキルや体調管理の方法を学びながら、職場実習や就職活動をサポートしてくれます。 - 障害者就業・生活支援センター
就職前後の相談や職場定着支援を行っており、企業との間に立って調整をしてくれることもあります。 - ハローワーク障害者専門窓口
障害者雇用枠の求人紹介や、面接の事前練習、履歴書の添削なども行っています。
得意を活かせる職場の見つけ方
発達障害(ADHD・ASDなど)の特性は、苦手だけでなく強みにもつながります。
自分の得意分野を理解し、それを活かせる職場を選ぶことは、「仕事のしづらさ」を減らし、働きやすさを高める第一歩です。
発達障害の強みを知る
特性は環境次第で短所にも長所にもなります。自分の強みを客観的に把握することで、向いている仕事が見えやすくなります。
- 独創性:新しいアイデアや発想が得意で、企画や改善提案に強みを発揮
- 集中力:興味のある分野や得意分野に没頭できる
- 正確性:細かい作業やミスを減らす工夫が得意な場合もある
- 一人での作業やルーチンワークに強い場合:反復作業やマニュアル通りの業務で力を発揮することも
求人選びのチェックポイント
求人情報を見るときは、職場環境や業務の進め方が自分の特性に合っているかを確認しましょう。
- 突発対応の少ない職場か
突然の予定変更や緊急対応が少ない職場は、安定したパフォーマンスを発揮しやすい環境です。 - 物理的・精神的に落ち着ける環境か
静かな作業スペースや、必要に応じて休憩できる環境があるかを確認します。 - 指示系統が明確か
誰から指示を受け、どのように進めるかが明確であれば、混乱や誤解を減らせます。
障害者雇用枠を活用するメリット
発達障害のある方が働きやすさを確保するためには、障害者雇用枠を活用することも有効です。
- 面接で配慮事項を事前に伝えやすい
採用段階で、自分に必要な配慮や工夫を伝えられるため、入社後のギャップを減らせます。 - 職場定着支援が受けられる
定期的な面談や、外部支援員によるフォローがあり、長く安心して働き続けやすくなります。
おわりに:苦手は責めるものではなく、理解して工夫するもの

発達障害の特性による苦手さは、努力不足や怠けではありません。
大切なのは、自分の特性を理解し、それを職場や周囲と共有しながら働きやすさを作っていくことです。
- 完璧を目指すのではなく、環境ややり方を少しずつ調整する
- 苦手を減らすことよりも、得意を伸ばす働き方にシフトする
- 支援制度や職場の理解を得ながら、長く安定して働ける土台を築く
「自分に合った職場」は必ずあります。特性を知り、活かしながら、自分らしく働ける環境を一歩ずつ整えていきましょう。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。









