2025/08/11
  • カテゴリー
  • 困った時
  • 家族のサポート
  • 支援制度
  • 病気を理解
  • 統合失調症のサポート

「統合失調症の家族ができるサポート|接し方・支援制度・困ったときの対応」

はじめに:家族も疲弊しやすい統合失調症のサポート

統合失調症は、幻覚や妄想、思考の混乱、感情の平坦化など、多様な症状が現れる精神疾患です。日本では約100人に1人が発症するとされ、決して珍しい病気ではありません。しかし、症状は一見すると「怠けている」「変わった行動をしている」と誤解されやすく、周囲の理解が得られにくいこともあります。
特に家族やパートナーなど、日常的に接してサポートする立場の人は、長期的な支援による精神的・肉体的疲労、経済的負担を感じやすくなります。サポートする側のケアを怠ると、共倒れになってしまうケースも少なくありません。

そこで本記事では、「統合失調症の家族をどう支えるか」をテーマに、病気の正しい理解から接し方の工夫、利用できる支援制度、困ったときの対応までを、家族や支援者の視点で詳しく解説します。病気と向き合う第一歩は、「正しい知識を持つこと」です。ここから一緒に整理していきましょう。


病気を理解することが第一歩

統合失調症のサポートを始める際、最も大切なのは「病気を正しく理解すること」です。間違った先入観や偏見を持ったままだと、接し方が適切でなくなり、症状を悪化させる可能性もあります。

症状と行動の背景を知る

統合失調症の主な症状は、大きく以下の3つに分類されます。

  1. 陽性症状
    幻覚(多くは幻聴)や妄想など、実際には存在しないものを感じたり信じたりする症状です。これにより、本人が強い恐怖や不安を抱え、周囲に対して攻撃的な態度を取ることもあります。
  2. 陰性症状
    感情の起伏が乏しくなる、意欲が低下する、会話が減るなど、表情や行動が全体的に平坦になる症状です。「やる気がない」と誤解されやすいですが、病気による脳機能の変化が背景にあります。
  3. 認知機能障害
    記憶力や集中力、判断力が低下し、複雑な作業や同時進行のタスクが難しくなります。これにより、日常生活や仕事でのミスが増えることがあります。

これらの症状は、本人の意思や性格ではなく、脳の情報処理機能の変化によって起こることを理解することが大切です。症状の背景を知ることで、「なぜその行動をとるのか」が見え、感情的な対応を避けやすくなります。

また、統合失調症は症状の現れ方に波があり、急性期(症状が強く出る時期)→回復期→安定期を繰り返すことがあります。各時期に合わせた接し方を意識することが、長期的な支援のポイントです。

家族や支援者も安心して行動できるチェックリスト

統合失調症のある方を支える中で、「これでいいのかな?」と迷う場面は多くあります。そんな時に役立つのが、日常的に確認できるチェックリストです。
次の項目を参考に、無理のない範囲でサポートを続けましょう。

日常生活のサポート面

  • 本人の体調や気分の変化に気づけているか
  • 睡眠・食事・服薬の状況を無理なく確認できているか
  • 無理な予定や刺激の強い環境を避ける工夫ができているか

コミュニケーション面

  • 症状を否定せず、まずは話を聞く姿勢を保っているか
  • 指示や依頼は短く、わかりやすく伝えているか
  • 怒りや苛立ちを感じたときは、距離を取って冷静になれているか

支援制度・医療連携面

  • 主治医や支援機関と定期的に情報共有できているか
  • 利用できる福祉制度やサービスを把握しているか
  • 家族自身の相談先(家族会・カウンセリング)があるか

家族自身のセルフケア

  • 自分の休息時間や趣味の時間を確保できているか
  • 「自分だけで抱え込まない」意識を持てているか
  • 周囲にサポートを頼むことに罪悪感を感じていないか

ポイント:このチェックリストは、完璧にこなすためのものではなく、支える側が安心してサポートを続けるための指標です。少しずつ実践できることを増やしていきましょう。

家族ができる日常生活でのサポート方法

 病気の安定や再発予防には、服薬の継続生活リズムの安定が欠かせません。これらは本人だけで管理するのが難しい場合も多いため、家族や支援者の関わりが大きな助けになります。

服薬管理を無理なく続ける工夫

統合失調症の治療では、抗精神病薬の服用が症状の安定化と再発予防に重要です。しかし、薬の副作用や病識の欠如により、自己判断で服薬をやめてしまうケースも少なくありません。

家族ができる服薬サポートのポイントは以下の通りです。

  • 飲み忘れ防止の仕組みづくり
    ピルケースや曜日ごとの小分けケースを使うと、飲み忘れや二重服用を防ぎやすくなります。
  • 服薬時間を生活習慣に組み込む
    食後や就寝前など、習慣化しやすいタイミングとセットにすることで継続がしやすくなります。
  • 副作用や体調変化を記録する
    眠気や体重増加などの変化を簡単にメモし、診察時に医師へ共有すると、薬の調整がスムーズになります。
  • 「飲ませる」ではなく「一緒に確認する」姿勢
    指示的になりすぎると反発を招くことがあるため、あくまでサポート役として寄り添う姿勢を意識します。

服薬は「本人の意思」と「家族のサポート」が両輪です。無理に飲ませるよりも、本人が納得して続けられる環境づくりを心がけましょう。

生活リズムを整えるサポート(睡眠・食事・活動量)

統合失調症は、生活リズムが乱れることで症状が悪化しやすくなります。特に睡眠不足や昼夜逆転は、再発リスクを高める要因です。

家族ができる生活リズムサポートの例は次の通りです。

  • 睡眠:就寝・起床時間を一定にし、寝る前のスマホやカフェイン摂取を控える
  • 食事:栄養バランスの良い食事を一緒に摂る習慣をつくる(特に朝食を抜かない)
  • 活動量:散歩や軽い運動など、無理のない活動を取り入れる

また、生活リズムの改善は本人だけでなく家族にも良い影響を与えます。「一緒にやってみよう」というスタンスで取り組むことで、押し付け感がなくなり、継続しやすくなります。


統合失調症の家族への接し方の基本

日常のサポートと並行して、接し方も非常に重要です。
統合失調症の症状は、外から見ると理解しづらい行動や言動を伴うため、家族がどう受け止め、どう反応するかで本人の安心感は大きく変わります。

否定しない・急かさない接し方

幻覚や妄想などの症状が出ているとき、「そんなことはない」「早く治して」などと否定や急かしをすると、本人が孤立感や不信感を強めてしまいます。
代わりに次のような対応を心がけましょう。

  • 事実の是非を論じない
    「そんなことはない」と否定するより、「そう感じているんだね」と受け止める。
  • 急がせない
    話すスピードや行動が遅くても、無理にペースを上げさせない。
  • 安全確保を優先
    明らかに危険な行動に繋がる場合のみ、やさしく制止や誘導を行う。

このような接し方は、症状そのものを消すわけではありませんが、不安や混乱を和らげる効果があります。

安心感を与える会話と態度のコツ

家族が安心できる存在になるには、言葉遣いだけでなく態度や環境も大切です。

  • 落ち着いた声のトーンで話す
    大声や強い口調は緊張を高めるため、ゆったりとした口調を心がける。
  • 予測可能な行動をとる
    突然の予定変更や急な来客など、予期しない出来事は混乱を招きやすいので、事前に知らせる。
  • 安心できる環境づくり
    部屋の整理整頓や静かな空間など、外部刺激を減らす工夫をする。

家族が安心して過ごせる環境は、本人の症状安定にも直結します。

症状が悪化したときの対応

統合失調症は、安定期が続いていてもストレスや体調の変化などをきっかけに再発することがあります。急性期に入ると幻覚・妄想が強まったり、混乱して落ち着かなくなることもあります。こうしたとき、家族が慌ててしまうと適切な対応ができず、症状がさらに悪化する可能性があります。
そのため、「事前に動き方を決めておく」ことが何より大切です。

受診・緊急連絡先の事前確認

症状の悪化が見られたら、まずは主治医への連絡を優先します。
日頃から以下をメモしておくと、いざというときに迅速に対応できます。

  • 主治医・クリニックの電話番号と診察時間
  • 夜間・休日に対応してくれる精神科救急の連絡先
  • 保健所や地域包括支援センターなどの緊急相談窓口

本人の同意がある場合は、症状や服薬状況、直近の生活変化を簡潔にメモして医療機関に伝えると診察がスムーズです。

安全確保と周囲への協力依頼

急性期は、混乱や衝動的な行動が見られることがあります。危険な行動や自傷の恐れがある場合は、まず安全確保を優先しましょう。

  • 鋭利な物や危険物を手の届かない場所へ移動
  • できるだけ静かな部屋に移動させる
  • 可能であれば信頼できる家族や支援者に同席してもらう

また、状況によっては近隣や友人など周囲に協力をお願いすることも重要です。「恥ずかしい」と感じるかもしれませんが、安全と命を守ることが第一です。


利用できる支援制度と家族の負担軽減策

統合失調症の長期的なサポートは、家族の精神的・経済的負担が大きくなりがちです。負担を軽減するためには、公的な支援制度を最大限に活用することが欠かせません。

医療費助成・障害年金の活用

  • 自立支援医療制度
    精神科通院時の医療費(自己負担)が原則1割に軽減されます。薬代も対象です。
  • 障害年金
    働くことが難しい場合や収入が減った場合に、生活を支えるための公的年金が受給できます。障害等級や初診日要件があるため、事前に年金事務所や社労士に相談すると安心です。
  • その他の自治体独自制度
    精神障害者保健福祉手帳による税金の減免、交通費助成などがあります。地域によって内容が異なるため、市区町村の福祉課で確認しましょう。

家族会・相談機関での情報共有と心の支え

  • 家族会
    同じ立場の家族同士で経験や情報を共有できる場。孤立感の軽減や、具体的な対応方法のヒントが得られます。
  • 相談機関
    精神保健福祉センター、障害者就業・生活支援センターなどは、医療・福祉・就労まで幅広く相談可能です。

家族も「支えられる側」になっていいのです。専門機関や仲間からの支援を受けることで、長期的に無理のないサポートができます。


おわりに:家族も無理せず支援を続けるために

統合失調症のサポートは、長期戦になることが多く、家族の心身の負担も少なくありません。「自分だけでなんとかしなければ」という気持ちは立派ですが、孤立や疲弊につながります。大切なのは、一人で抱え込まず、制度・医療・地域の支援を組み合わせることです。
家族が元気でいることは、本人にとっても安心材料となります。支援を「義務」ではなく「共に歩む姿勢」として捉え、無理のない距離感で関わっていきましょう。

投稿者プロフィール

八木 洋美
自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。
  • バナー