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てんかんと仕事のすべて|症状・発作対応・向いている職種・企業の受け入れ状況

この記事の内容
はじめに
てんかんは、日本国内で約100万人が生活している比較的身近な神経疾患です。しかし「てんかん=働けない病気」という誤解は依然として根強く、就職や転職の場面で不安を抱える方も少なくありません。
近年、医療の進歩や社会の理解の広がりにより、発作のコントロールが可能な人も増えており、多くの方がさまざまな職種で活躍しています。企業側も「合理的配慮」の考え方が浸透し、障害者雇用枠や一般雇用枠の両方で働くケースが見られるようになりました。
本記事では、てんかんの基礎知識から、発作時の対応、向いている仕事や職場選びのポイントまで、2025年の最新情報をもとに解説します。
てんかんとは

定義と種類(全般発作・部分発作など)
てんかんは、脳の神経細胞が異常に興奮し、その結果として繰り返し発作が起こる病気です。発作の型は大きく「全般発作」と「部分発作(焦点発作)」に分けられます。
- 全般発作
脳全体で同時に異常な電気活動が起こり、意識障害や全身けいれんが伴うことがあります。代表的なのは「強直間代発作」で、突然意識を失い、全身が硬直した後にけいれんが起こります。 - 部分発作(焦点発作)
脳の一部で異常活動が起こるもので、症状は発作部位によって異なります。意識が保たれる場合(単純部分発作)と、意識が混濁する場合(複雑部分発作)があります。
有病率と発症年齢
日本では人口の約1%がてんかんを持つといわれています。発症年齢は幅広く、乳幼児期と高齢期に多く見られますが、成人以降に発症するケースも少なくありません。
発症後は適切な治療を継続すれば、発作が長期間抑えられる人も多く、安定して社会生活を送ることが可能です。
発作の種類と特徴
てんかん発作は、必ずしもけいれんを伴うわけではありません。数秒間「ぼーっとする」ような欠神発作や、手足の一部がぴくっと動くミオクロニー発作など、見た目では気づきにくい症状もあります。
そのため、本人や周囲が発作の型を理解しておくことは、職場での安全確保にもつながります。
発作の原因と予防

服薬の重要性
てんかん治療の基本は抗てんかん薬の服用です。発作の頻度や種類に応じて薬の種類や量が調整されます。
服薬を自己判断で中断すると、再発作や重積状態(発作が止まらない危険な状態)を引き起こす可能性があるため、医師の指示を守ることが重要です。
発作誘発要因(睡眠不足、ストレス、アルコールなど)
発作を誘発する要因には以下のようなものがあります。
- 睡眠不足
脳の興奮性が高まり、発作リスクが上昇します。 - 強いストレス
精神的な負荷が神経活動に影響を与えます。 - アルコールや薬物
特に大量の飲酒や急な禁酒は発作を誘発することがあります。 - 発熱や体調不良
感染症や体調変化によって脳のバランスが崩れる場合があります。
予防のためには、生活リズムを整え、十分な休養と栄養を取ることが基本です。
仕事中に発作が起きたときの対応
職場の初期対応マニュアル
職場では、あらかじめ発作時の対応マニュアルを共有しておくことが望まれます。全般発作で意識を失った場合は、まず安全確保が最優先です。
- 倒れそうな場合は周囲の物をどける
- けいれん中は体を押さえつけない
- 嘔吐の危険があれば横向きにする
- 発作が5分以上続く場合や連続する場合は救急要請
周囲の人が取るべき行動(安全確保、救急要請の基準)
- 安全確保:机や椅子の角、機械など危険物から離す
- 呼吸の確認:呼吸が止まっていないかチェック
- 救急要請の判断:5分以上発作が続く、発作後に意識が戻らない、負傷している場合などは迷わず119番
発作後は本人が混乱していることがあるため、落ち着ける場所で休ませ、回復を確認してから業務復帰を検討します。
向いている職種・業務内容
安全性の高い事務・オフィスワーク
発作の可能性を考慮すると、危険物や高所作業がなく、落ち着いた環境で作業できる事務職はてんかんのある方に向いています。
具体的には、データ入力、経理補助、総務、人事、カスタマーサポートなどが該当します。
オフィスワークであれば、発作が起きた際も周囲がすぐに対応できる距離にいることが多く、安全確保がしやすいというメリットがあります。
軽作業・製造ライン(安全管理体制が整っている場合)
倉庫内でのピッキングや梱包作業、製造ラインでの部品組み立てなど、単純でルーチン性の高い軽作業も適しています。ただし、機械や刃物を扱う場合は安全装置や緊急停止ボタンの位置を把握し、発作時のリスクを最小限にする必要があります。
企業側に発作の特徴や予兆の有無を伝えておくことで、チーム全体で安全管理体制を構築できます。
IT・クリエイティブ職
プログラマーやWebデザイナー、ライター、動画編集などのIT系・クリエイティブ系職種は、自宅やオフィスなど比較的自由な環境で作業でき、体力的負担も少ないのが特徴です。
在宅勤務が可能な職種も多く、通勤による疲労や発作誘発要因の回避にもつながります。
避けたほうがよい職種
高所作業、運転業務、重機操作
てんかんのある方は、建設現場での高所作業、長距離トラック運転、フォークリフトやクレーン操作などは避けるべきです。発作が突然起きた場合、本人だけでなく周囲にも重大な事故を引き起こす危険があります。
運転免許の取得や更新にも一定の条件があり、医師の診断や発作の有無の記録が求められます。
夜勤や長時間労働が伴う職種
夜勤や不規則勤務は睡眠不足を招き、発作の誘発リスクを高めます。介護や看護、警備など夜間勤務が必須の職種は、医師の判断を受けたうえで慎重に検討しましょう。
長時間労働や納期に追われる職場もストレス要因となるため、勤務時間や業務量の調整が重要です。
企業が受け入れるためのポイント

採用前の正確な情報共有
企業が安心して採用判断を行うためには、応募時や面接時に発作の種類、頻度、服薬状況、必要な配慮を正直に伝えることが大切です。
「どのような場面で発作が起こる可能性があるか」「発作が起きた場合にどう対応してほしいか」を具体的に伝えると、企業側も業務内容や配置の調整がしやすくなります。
発作時の対応フロー整備
採用後は、発作時の対応マニュアルを社内に共有し、同僚や上司がすぐに行動できる体制を整えます。
例:
- 発作が起きたら安全な場所に移動
- 呼吸や意識を確認
- 必要に応じて救急要請
- 回復までの見守り
こうした対応フローは、職場の安心感を高めるだけでなく、本人の不安軽減にもつながります。
支援制度の活用
障害者雇用枠
てんかんは精神障害者保健福祉手帳の対象になる場合があり、この手帳を取得すると障害者雇用枠での応募が可能になります。
障害者雇用枠では、勤務時間や業務内容の調整、通院配慮などを受けやすいメリットがあります。
就労移行支援
就労移行支援事業所では、職業訓練や就職活動支援、職場実習を通じて、就職や職場定着をサポートします。発作時の対応練習や、企業への説明方法のアドバイスも受けられるため、初めての就職や転職でも安心です。
医療費助成
自治体によっては、自立支援医療制度などにより、通院や薬代の自己負担が軽減されます。
長期的な服薬が必要なてんかんにおいて、医療費助成の活用は経済的負担の軽減に直結します。
まとめ
てんかんがあっても、正しい知識と職場環境があれば幅広い業務に就くことが可能です。
重要なのは、
- 自分の発作の特徴やリスクを理解し、職場と共有すること
- 睡眠や服薬など日常生活での予防を徹底すること
- 支援制度を活用し、安心して働ける環境を整えること
社会の理解が広がる今、てんかんを理由にキャリアを諦める必要はありません。自分に合った職種と職場を選び、安心して長く働ける未来を築きましょう。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。









