2025/08/16
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解離性障害のある人が働きやすい職種・避けたい仕事・職場での工夫

はじめに

解離性障害は、記憶や意識、感覚が一時的に分断されることによって、日常生活や仕事にさまざまな影響を及ぼす精神疾患です。
症状は人によって異なりますが、「働くことが難しいのではないか」と感じる方も少なくありません。しかし、適切な職種選びや職場環境の工夫によって、安定して働き続けることは十分可能です。
本記事では、解離性障害のある方が直面しやすい仕事上の課題、向いている職場環境、避けたい職種、そして具体的な工夫について解説します。


仕事で起こりやすい困りごと

記憶抜けによるミス

解離性障害では、業務中に記憶が部分的に抜け落ちることがあります。
⇒その理由は、強いストレスやトラウマ体験に直面した際に、脳が自動的に記憶や感情を切り離してしまう防衛反応にあります。脳の情報処理システムが一時的に遮断されることで、「その場の体験や出来事」が長期記憶に残らないのです。
そのため、本人にとっては「いつの間にか時間が飛んでいる」「行ったことを覚えていない」と感じる現象が起こります。

  • 例:会議での議事内容を全く覚えていない
  • 例:依頼された仕事を進めた記憶がなく、後日「やっていない」と指摘される

このような状況は本人にとっても精神的な負担が大きく、職場の信頼関係にも影響するため、記録の工夫や作業手順の見える化が必要です。


集中力・判断力の低下

発作や体調変化の前後では、集中力や判断力が低下することがあります。
⇒ここでいう「発作」とは、突然の意識の途切れ(解離発作)や離人感・現実感喪失が強まる状態を指します。症状が出ると「頭が真っ白になる」「自分の体を操作している感覚がなくなる」といった状態に陥り、注意力や判断力が一気に落ち込むのです。

  • 細かい確認作業でミスが増える
  • 同時進行の業務が難しくなる

このため、業務を一つずつ確実にこなせる職種や配置が望ましいです。


急な体調変化

離人感や現実感の喪失、急な倦怠感が生じる場合があり、作業を中断せざるを得ないこともあります。
こうした症状は予測できないことが多いため、職場で休憩を取りやすい環境や、在宅勤務などの柔軟な働き方があると安心です。


向いている職場環境

業務が明確でルーチン化されている

同じ作業を繰り返す業務は、手順を覚えてしまえば症状による影響を受けにくくなります。

  • 例:データ入力、商品の検品、棚卸し作業
  • 例:書類の仕分けや郵便物の発送準備
    チェックリストや手順書があると、記憶抜けがあってもスムーズに業務を再開できます。

静かで落ち着いた職場

騒音や頻繁な呼び出しは集中を妨げ、症状の誘発要因になることがあります。

  • 例:図書館、資料室、事務所の一角
  • 例:少人数のバックオフィス業務
    静かな環境は精神的な安定にもつながります。

柔軟な勤務形態

症状の波に対応できる柔軟な働き方ができる職場は、長期的な就労継続に有利です。

例:在宅ライティング、軽作業

  • 在宅ライティング:自宅で自分のペースで作業でき、発作や倦怠感時にも休憩を取りやすい
  • 軽作業:短時間勤務やシフト調整が可能な職場も多く、通院との両立がしやすい

避けたほうがよい職種

高ストレス・突発対応が多い職種

接客業やコールセンターなどは、予測不能な対応が求められ、精神的負担が大きくなります。特に急な人格交代や意識変容がある場合は業務遂行が難しくなることがあります。

長時間拘束される業務

工場の連続稼働ラインや長時間の接客業務など、休憩が取りにくい職場は体調悪化を招きやすいです。

危険を伴う作業

高所作業、重機操作、化学物質の取り扱いなどは、記憶抜けや発作時に重大な事故につながるリスクがあります。

職場での工夫

作業工程のマニュアル化

解離性障害による記憶抜けや集中力低下を補うためには、業務を手順化し、誰でも見てわかる状態にしておくことが重要です。

  • 写真や図解付きの手順書を作成
  • チェックリストを活用し、作業完了を可視化
    例:商品の梱包作業では「部材の確認 → 箱詰め → 封緘 → 送り状貼付」の手順を写真で貼り出すことで、途中で中断しても再開しやすくなります。

定期的な休憩

症状の波を予防するためには、集中が切れる前に短い休憩を取ることが有効です。

  • 1時間に5〜10分の小休憩を挟む
  • 休憩時間は静かな場所で過ごす
    例:事務作業でのパソコン使用は、50分作業+10分休憩のリズムを徹底すると負担軽減になります。

信頼できる同僚との連携

業務中に体調が急変した場合、サポートを頼める人が職場にいることは安心感につながります。

  • 日常的に業務進捗を共有
  • 万一の時の連絡フローを決めておく
    例:会議中に離人感が強くなった場合、同僚がメモを代わりに取り後で共有してくれる体制を作る。

セルフケア

グラウンディングの習慣化

グラウンディングは「今ここ」に意識を戻すためのセルフケア方法です。

  • 5-4-3-2-1法(見えるもの5つ、触れるもの4つ、聞こえる音3つ…を順に意識)
  • 深呼吸や冷水での手洗い
    これを習慣化することで、離人感や現実感消失が出た際に早めに対応できます。

発作時の対応マニュアル

発作や記憶抜けが起きたときの対応を事前に決めておくと、職場での混乱を最小限にできます。

  • 上司や同僚への連絡方法
  • 休養場所や帰宅の判断基準
  • 業務再開時の手順(どこから作業を再開するか)
    例:症状が強まった場合はすぐに席を離れ、休憩室で10分休み、その後業務日誌で再開ポイントを確認して復帰する。

ストレス管理

ストレスは症状悪化の大きな要因です。

  • 睡眠・食事・運動のリズムを整える
  • 趣味やリラクゼーションの時間を確保
    例:毎晩軽いストレッチと呼吸法を行い、就寝前はスマホを見ない習慣を作る。

支援制度

障害者雇用枠

障害者雇用枠では、必要な配慮を受けながら働ける制度が整っています。

  • 事前に配慮事項を企業と共有できる
  • 勤務時間や業務内容の調整が可能
    例:週4日勤務や短時間勤務を導入してもらうことで、体調を保ちながら働ける。

ジョブコーチ制度

ジョブコーチ(職場適応援助者)が職場に入り、当事者と企業双方をサポートする制度です。

  • 業務指導、職場内の調整、支援体制づくりを行う
  • 定期訪問や電話相談で継続的なフォロー
    例:作業手順の改善提案や、同僚への症状理解のためのミニ研修を行ってもらう。

まとめ

解離性障害があっても、適切な職場環境とサポート、そしてセルフケアがあれば長期就労は十分可能です。
症状があることで不安や迷いを感じることもありますが、

  • 業務手順の工夫
  • 信頼できる人間関係の構築
  • 公的制度の活用
    といった方法を組み合わせることで、安定した働き方を実現できます。

あなたの働き方には選択肢があります。
「無理をして周囲に合わせる」よりも、「自分に合った環境で能力を発揮する」ことを優先し、安心できる就労生活を目指しましょう。

投稿者プロフィール

八木 洋美
自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。
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