2025/08/16
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摂食障害とは?症状・原因・治療法・日常生活・仕事との関わりまで徹底解説

はじめに

摂食障害(Eating Disorder)は、日本だけでなく世界中で増加傾向にある精神疾患のひとつです。特に10代後半から20代の女性に多いとされますが、近年では男性や中高年層にも広がりを見せています。
しかしながら、摂食障害に対して「ただのわがまま」「痩せたいだけ」といった誤解が根強く存在します。そのため、当事者は症状を周囲に理解されにくく、孤立してしまうケースも少なくありません。

本記事では、摂食障害の定義・種類・原因をはじめ、治療法や日常生活での工夫、さらに仕事との関わり方まで幅広く解説します。正しい知識を持つことで、当事者や家族、職場の同僚などが適切に対応できるようになることを目的としています。


摂食障害とは

定義(WHO・DSM-5)

摂食障害は、「食行動に著しい異常が生じ、身体的・精神的健康に深刻な影響を与える疾患」と定義されます。世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD-11)や、アメリカ精神医学会の診断基準(DSM-5)において、主要な診断基準が明示されています。

たとえばDSM-5では、極端な食事制限や過食行為、それに伴う体重・体型への過度なこだわりが特徴とされています。これらは単なる「食の好み」や「ダイエット」ではなく、れっきとした精神疾患であり、早期発見・治療が重要です。


摂食障害の種類

摂食障害にはいくつかの代表的なタイプがあり、それぞれ症状や背景が異なります。以下に代表的な3つのタイプを紹介します。

神経性やせ症(拒食症:Anorexia Nervosa)

・極端に食事を制限し、体重が標準を大きく下回るまで痩せてしまう
・「太ることへの強い恐怖」があり、痩せていても自分を「太っている」と感じる「ボディイメージの歪み」が特徴
・月経の停止や栄養失調に伴う臓器障害など、生命に危険を及ぼす場合もある

具体例:大学受験を控えた女子学生が「少しでもスタイルを良く見せたい」という気持ちから食事制限を開始し、やがて数百kcalしか摂らない生活に。周囲から「痩せすぎ」と指摘されても「まだ太っている」と思い込み、体重が30kg台まで減少したケース。


神経性過食症(過食症:Bulimia Nervosa)

・短時間で大量に食べてしまう「過食エピソード」を繰り返す
・その後に「吐く(自己誘発嘔吐)」「下剤乱用」「過度な運動」などで体重増加を防ごうとする
・体重は標準範囲内のことも多く、周囲から気づかれにくい

具体例:社会人女性が仕事のストレスで夜中に大量の食べ物を買い込み、短時間で食べ尽くした後、強い罪悪感から嘔吐を繰り返す。翌日は「何も食べない」など、極端な食行動をとり体調を崩すケース。


過食性障害(BED:Binge Eating Disorder)

・神経性過食症と同様に過食エピソードを繰り返すが、嘔吐や下剤乱用など「代償行為」を行わない
・そのため体重増加につながりやすく、肥満や糖尿病などの合併症リスクが高い
・「自分でやめられない」という無力感から、うつ病や不安障害を併発することも多い

具体例:30代男性が休日ごとに大量の食べ物を一気に摂取してしまい、コントロールできない自分に落ち込み、徐々に外出や人付き合いを避けるようになったケース。


摂食障害の原因

摂食障害は「これが原因」と一言で説明できるものではなく、複数の要因が重なり合って発症します。主に以下の3つの観点から整理できます。

心理的要因(完璧主義・自己肯定感の低さ)

・「失敗してはいけない」という完璧主義傾向
・「自分には価値がない」と感じる低い自己評価
・ストレスの対処手段が「食べること」「食べないこと」に偏ってしまう
特に思春期の女性は自己像が不安定で、外見や成績へのプレッシャーが引き金になることが多いです。


社会的要因(痩身志向・SNSの影響)

・メディアやSNSによる「痩せていること=美しい」という価値観の押しつけ
・モデルやインフルエンサーの過度なダイエット情報の拡散
・学校や職場での容姿に関する言動(「少し太った?」「痩せたね」などの何気ない一言)が引き金になることも

具体例:高校生がSNSで人気モデルの細身スタイルに憧れ、短期間で体重を落とそうと無理なダイエットを実施。その後、食べすぎと嘔吐を繰り返す摂食障害に発展。


遺伝・生物学的要因

・家族に摂食障害やうつ病など精神疾患の既往がある場合、発症リスクが高いとされる
・脳内神経伝達物質(セロトニン・ドーパミンなど)の機能異常が関与している可能性
・ホルモンバランスの乱れや代謝の違いも影響

これらの要因が単独で働くのではなく、「心理的な脆さ」+「社会的なプレッシャー」+「生物学的な素因」が複雑に絡み合い、発症すると考えられています。

症状と特徴

摂食障害は、心の病気でありながら、身体にも深刻な影響を及ぼします。ここでは、主な症状を身体的・精神的・生活面に分けて整理します。

身体的症状

体重減少

神経性やせ症(拒食症)の場合、急激かつ極端な体重減少が見られます。BMIが著しく低下し、栄養失調に陥るケースも珍しくありません。
:高校生が過剰な食事制限を続け、体重が半年で10kg以上減少。体育の授業中に立ちくらみで倒れたことで異常に気づかれた。

月経停止

女性に多く見られる症状で、体脂肪率の低下によりホルモンバランスが崩れ、月経が停止します。これが長期間続くと骨粗しょう症や不妊のリスクも高まります。

胃腸障害

過食や嘔吐の繰り返しにより、胃の拡張、食道炎、胃潰瘍が生じることもあります。下剤乱用によって腸の機能が弱まり、慢性的な便秘や下痢に悩まされるケースもあります。


精神的症状

食へのこだわり

「太るのが怖い」という強迫的な思い込みから、食事のカロリーや成分に異常なほど敏感になります。食事の量や内容を細かく管理し、食事そのものがストレス源になることもあります。

不安

「食べたら太るのではないか」「コントロールできないのでは」といった不安が常に頭から離れません。これが睡眠障害や集中力低下につながります。

抑うつ

過食や嘔吐の後に強い罪悪感を抱き、「自分はダメだ」と思い込み、うつ病を併発する人も多くいます。摂食障害の背景には、このような精神的な問題が深く関わっています。


生活への影響

人間関係

食事を避けるために友人や家族との食事会に参加できず、人間関係が希薄になります。本人は「食べることに関わりたくない」と感じ、孤立感が強まります。

学業・仕事の困難

体力や集中力の低下により、学校生活や仕事に支障をきたします。
:社会人女性が、過食後の嘔吐による体調不良で欠勤を繰り返し、上司に理由を説明できずに退職を余儀なくされた。


診断と検査

摂食障害は、自己申告だけでなく医学的・心理的な評価を通して診断されます。

診断基準(DSM-5)

DSM-5では、以下のような基準で診断されます。
・体重の著しい低下
・体型に対する歪んだ認識
・過食や排出行動の繰り返し
これらの項目を複数満たす場合、摂食障害と診断されます。

身体検査(血液検査・心電図)

長期にわたる食行動異常は、血液成分の異常や心機能への影響を伴います。血液検査や心電図、骨密度測定などを通じて、身体へのダメージを確認します。
:拒食症の患者の血液検査で、カリウム値が低下し、不整脈のリスクが指摘された。

心理検査

食行動やボディイメージに関する質問紙(例:EDE-Q、EDIなど)を用いて心理状態を把握します。また、抑うつや不安障害の併発有無も重要な診断材料になります。


治療法

摂食障害の治療は「心と体の両方にアプローチすること」が基本です。長期的な支援が必要になるため、医療・家族・職場の協力が欠かせません。

心理療法

認知行動療法(CBT)

食や体型に関する「誤った思い込み」を修正し、バランスの取れた思考を育てる療法です。
:「炭水化物を食べると必ず太る」という思い込みに対し、「適量であればエネルギー源として必要」という考えを取り入れていく。

家族療法

特に思春期の患者には家族のサポートが重要です。家族療法では「過度に食事を管理しすぎない」「本人を責めない」など、支援の仕方を学びます。


薬物療法

摂食障害そのものを治す薬はありませんが、併発するうつ病や不安障害には抗うつ薬(SSRIなど)が有効とされます。過食症の場合、食欲や衝動を抑える薬が補助的に使われることもあります。


入院治療の必要性

体重が極端に低下し、生命の危険がある場合や、自宅での治療が困難な場合には入院治療が選択されます。入院では、栄養管理・点滴治療・心理療法を組み合わせて回復を目指します。
:体重が30kgを切った拒食症患者が緊急入院し、医師や管理栄養士のもとで段階的に食事量を増やすプログラムを実施したケース。

日常生活での工夫

摂食障害の回復には、医療的治療と並行して「日常生活の工夫」も大切です。小さな積み重ねが、症状の安定と再発防止につながります。

食事との付き合い方

・「一人で食べると不安が強まる」場合は、家族や友人と一緒に食卓を囲む
・「完璧に栄養バランスを整えよう」と考えるよりも、「少しずつ食べられるものを増やす」姿勢が重要
・管理栄養士と相談し、「これなら食べられる」というメニューを見つけていく

具体例:拒食症でサラダしか食べられなかった女性が、専門家のサポートでまずはスープやヨーグルトを追加。少しずつ食材を増やすことで安心感が芽生え、回復につながった。


ストレスマネジメント

・摂食障害は「食でストレスを処理する」傾向があるため、代替手段を身につけることが大切
・深呼吸やヨガ、アート活動、日記など「食べる以外の方法」で気持ちを整理
・十分な睡眠や適度な運動も、心の安定をサポート

:過食に悩んでいた男性が、夜の過食衝動を感じたときに「外を散歩する」「音楽を聴く」といった方法に切り替えることで衝動が和らいだ。


家族や友人のサポート

・「食べさせよう」とするよりも、「一緒に過ごす」ことが支えになる
・責めたり叱ったりするのではなく、「あなたの気持ちを理解したい」と伝える姿勢が大切
・孤立を防ぐために、食事以外の時間も一緒に楽しむ


仕事・学校との関わり

摂食障害は、学業や仕事の継続に大きな影響を与えることがあります。しかし、正しい配慮と支援を得ることで、学びや働くことを諦める必要はありません。

職場や学校での配慮

・体調に応じた勤務時間の調整(時短勤務・フレックス制)
・定期的な休憩や通院への理解
・「食事会」など強制的なイベント参加を避ける配慮


向いている職場環境

・過度な競争や長時間労働を避けられる環境
・一人作業とチーム作業のバランスが取れている仕事
・在宅勤務や柔軟な働き方ができる職種

:摂食障害を経験した人が、一般企業からリモートワーク中心のWeb制作会社に転職。通勤や食事会のストレスが減り、安定して働けるようになった。


復職・復学支援の方法

・産業医やスクールカウンセラーとの相談を通じて、段階的に復帰
・「午前中だけ登校・出勤」「週3日勤務」など、少しずつ負担を増やすステップが有効
・ジョブコーチや就労支援サービスを利用し、職場との橋渡しをしてもらう方法もある


利用できる支援制度

摂食障害は「精神疾患」として、公的制度を活用できる場合があります。制度を知ることで、経済的・生活的な不安を軽減できます。

障害者雇用枠

・摂食障害が長期にわたり仕事に影響している場合、障害者雇用枠を利用できることがあります
・配慮のある職場環境で働ける可能性が高まる


自立支援医療制度

・通院治療にかかる医療費の自己負担を軽減できる制度
・精神科・心療内科の外来治療が対象となり、経済的負担が減ることで継続治療が可能になる


精神障害者保健福祉手帳

・取得により、税制優遇や公共料金の割引が受けられる場合があります
・就労支援や福祉サービスの利用が広がるメリットも


まとめ 〜当事者へのメッセージ〜

摂食障害は「心の弱さ」ではなく、治療と支援を必要とする病気です。今は苦しくても、適切な治療と周囲の理解があれば、回復は十分に可能です。

「食べられない自分」「コントロールできない自分」を責める必要はありません。あなたの価値は体重や食事量では決まりません。

もし一人で抱えているなら、信頼できる人や専門機関に声をかけてみてください。小さな一歩が、確実に未来につながります。

回復の道は決して一直線ではなく、時に後退することもあります。それでも「あなたは一人ではない」ということを忘れないでください。支えてくれる人、利用できる制度、そして同じ経験を乗り越えてきた仲間が必ず存在します。

あなたの人生は「摂食障害」という一面だけで決まるものではありません。少しずつ、自分らしさを取り戻しながら歩んでいけることを心から願っています。

投稿者プロフィール

八木 洋美
自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。
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