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摂食障害を悪化させないセルフケアと家族・周囲の支援方法

この記事の内容
はじめに
摂食障害(拒食症・過食症・過食嘔吐など)は、単に「食べ方の問題」ではなく、心と体の両方に影響を及ぼす病気です。体型や食事に対する強いこだわりがきっかけとなり、栄養不足や内臓機能の低下、うつ症状や不安障害といった精神的な不調を引き起こすこともあります。
そして、摂食障害は生活そのものと深くつながっています。
- 食事:日常的な行為がストレス要因になる
- 学校・職場:昼休みや会食が不安材料になりやすい
- 家庭:家族の対応や関わり方が回復に影響する
つまり、摂食障害を悪化させないためには、本人のセルフケアだけでなく、家族や周囲の理解と支援も欠かせません。この記事では、症状を悪化させやすい要因と、本人ができるセルフケアについて解説します。
症状を悪化させやすい要因

過度なダイエットや運動
摂食障害の背景には「体型をコントロールしたい」という強い気持ちがあります。そのため、極端なダイエットや運動に依存してしまうケースが多く見られます。
- 極端な食事制限:1日1食しか食べない、糖質や脂質を完全にカットする
- 過度な運動:数時間のランニングや過剰な筋トレを毎日繰り返す
これらは一時的に体重が減っても、体力低下や栄養バランスの崩壊、骨密度低下など深刻な健康被害につながります。さらに「もっと減らさなきゃ」という思考の悪循環に陥りやすく、症状が強まる要因になります。
具体例
- 学生がSNSで「痩せている友人」と比較し、断食を繰り返して低血糖で倒れる
- 社会人が「仕事で成功するために痩せなきゃ」と過度な運動をして疲労骨折
健康維持のためのダイエットや運動と、摂食障害に基づく過剰行為は紙一重ですが、その違いを意識することが重要です。
ストレスや孤立
摂食障害は心の病気でもあるため、精神的なストレスや孤立感が大きな悪化要因となります。
- 学校や職場での人間関係トラブル
- 将来や進路に関する強いプレッシャー
- 家族からの期待や「普通に食べなさい」という強要
これらのストレスを「食事のコントロール」で解消しようとする人もいます。過食や拒食は一時的に安心感を与えますが、後から自己嫌悪や体調不良を招き、症状が悪化してしまいます。
孤立感が症状を深める理由
- 「理解してもらえない」と感じることで相談を避け、問題を一人で抱え込む
- 孤独感が強まり、食事が「唯一の自己コントロール手段」になってしまう
家族・友人の誤解
周囲の何気ない言葉や態度も、摂食障害の悪化につながります。
- 「痩せたね、きれいになった」 → 痩せることが価値だと感じてしまう
- 「もっと食べなきゃダメだよ」 → 強制されていると感じ、反発や罪悪感が強まる
- 「意志が弱いから治らないんだ」 → 自己否定感を深め、症状を悪化させる
摂食障害は本人の意志だけでコントロールできるものではありません。誤解や偏見が、症状の長期化や再発の要因になることを理解しておく必要があります。
本人ができるセルフケア

食事記録・バランス意識
「食事をどう摂るか」に強いこだわりがあるため、客観的に食生活を見直すことが有効です。
- 食事記録:日記やアプリで写真を残すだけでもOK
- バランス重視:量ではなく、炭水化物・タンパク質・野菜を「一口でも摂る」ことから始める
- 小さな達成感を積み重ねる:「今日は水分をしっかり取れた」などの成功体験を意識
実践の工夫
- 完璧に記録しようとせず「できた日のみ」記録する
- 家族と一緒に「一日一つの栄養ポイント」を確認する
睡眠と運動習慣
生活リズムを整えることは、心身の安定につながります。摂食障害は「食べる・食べない」の問題だけでなく、自律神経やホルモンバランスの乱れとも深く関わっています。そのため、睡眠と適度な運動は回復の基盤といえます。
- 睡眠:毎日同じ時間に寝起きする
→ 睡眠不足はホルモン分泌(特に食欲に関わるグレリンやレプチン)に影響を与え、過食や拒食を悪化させることがわかっています。一定の睡眠リズムを維持することで、食欲や気分の安定に直結します。 - 運動:過度ではなく、軽いストレッチや散歩など「心地よい」と感じる程度にする
→ 運動には気分転換やストレス解消の効果があります。ただし「消費カロリー」を目的にしすぎると、逆に症状を悪化させることもあります。「体をほぐす」「リフレッシュする」といった感覚で取り入れることが大切です。 - 休養:疲れたら無理をせず休むことを「治療の一部」と考える
→ 休むことを「怠け」と捉えるのではなく、体調を整えるための大切なセルフケアとして受け入れることが重要です。
避けたい落とし穴
- 「動かないと太る」という不安から過度に運動し、体力を消耗してしまう
- 睡眠不足が続き、ストレスやイライラが強まって食行動に悪影響を与える
- 運動を「義務」として続けることで、食事との強迫的な結びつきが強まる
おすすめの工夫
- 夜寝る前のスマホ使用を控え、睡眠環境を整える(照明を落とす、寝室を静かにする)
- 運動は「楽しさ」を重視し、ウォーキング中に音楽やポッドキャストを聴くなど無理なく続けられる形にする
- 「疲れを感じたら休む日を作る」ことも計画に含め、休養を前向きに位置づける
不安時のリラクゼーション
不安や緊張を和らげる方法を持つことは、セルフケアの大切な一歩です。摂食障害は「食べる/食べない」に強い意識が集中しやすいため、意識を体や“今この瞬間”に戻す方法が特に有効とされています。
- 腹式呼吸:4秒で息を吸い、6秒で吐く
→ 自律神経のバランスを整え、副交感神経を優位にすることで「食べなきゃ」「やめなきゃ」という焦りを和らげます。 - グラウンディング:「見えるもの5つ」「触れられるもの4つ」…と五感を順番に意識して“今ここ”に集中する
→ 摂食障害の方は「食べてしまった後の罪悪感」や「食べないといけない不安」など、頭の中で思考が暴走しやすい傾向があります。グラウンディングはその思考を一時的に中断し、現実に注意を向け直すことで、過食衝動や自己否定のスパイラルを切る効果があります。 - 趣味や創作活動:音楽、絵、日記など「食べること以外の楽しみ」を持つ
→ 気分を切り替え、達成感や安心感を得ることで、食事コントロール以外にも「自分を肯定できる要素」が増えます。
具体的な場面例
- 会食前の不安 → 深呼吸を繰り返して、緊張を軽減してから臨む
- 過食衝動が出たとき → グラウンディングで注意をそらし、その後に趣味や軽い運動に切り替える
- 自己否定感が強まったとき → 日記に気持ちを書き出して、自分を客観的に見直す
家族や周囲にできるサポート
食事の声かけの仕方
摂食障害の方にとって、食事の時間は大きなストレスです。そこで、家族や友人の「声かけ」が大きな影響を与えます。
- 避けたい言葉
- 「もっと食べなさい」「残さず食べて」 → 強制感があり逆効果
- 「痩せたね」「太ったんじゃない?」 → 体型への言及は症状を悪化させやすい
- 「もっと食べなさい」「残さず食べて」 → 強制感があり逆効果
- 有効な声かけ例
- 「一緒に食べられて嬉しいよ」
- 「今日は少しでも食べられて良かったね」
- 「無理せず、自分のペースで大丈夫だよ」
- 「一緒に食べられて嬉しいよ」
本人が「監視されている」と感じない、安心できる雰囲気を意識することが大切です。
責めずに受け止める姿勢

摂食障害は「本人の意志が弱いから起こるもの」ではありません。にもかかわらず、家族が「また過食したの?」「どうして食べられないの?」と責めてしまうと、罪悪感や孤立感を強めてしまいます。
- 受け止めの姿勢
- 「つらかったね」
- 「一緒に解決方法を探そう」
- 「話したいときはいつでも聞くよ」
- 「つらかったね」
具体例
ある家族は、本人が食べられなかった日でも「今日は無理せず過ごせたね」と声をかけ、結果的に本人が安心して翌日少しずつ食事を取れるようになった、というケースがあります。
治療継続をサポートする方法
摂食障害の改善には 継続的な治療 が欠かせません。しかし「もう大丈夫だから通わなくてもいい」と自己判断で治療を中断するケースも少なくありません。
- 通院日を一緒にカレンダーに記録する
- 家族が付き添い、診察時に医師に質問をする
- 治療の進み具合を一緒に振り返り、本人の安心感を支える
こうしたサポートによって、本人が「一人で闘っていない」と感じやすくなります。
再発予防の工夫
トリガーの把握と回避
摂食障害は回復しても再発するケースが少なくありません。その理由は、症状を引き起こす「きっかけ(トリガー)」が日常生活の中に潜んでいるからです。本人と家族が一緒にトリガーを把握し、予防策を立てておくことが重要です。
- よくあるトリガー例
- ストレスの強いイベント:試験や人間関係の衝突、職場での評価面談など
- 体重計や鏡による自己否定感:「数値が増えた」「見た目が気になる」と感じた瞬間に過度な制限や過食へつながりやすい
- 長時間の空腹や睡眠不足:生理的なストレスが「食べたい衝動」を強める
- 季節や環境の変化:夏の薄着、進学・就職などのライフイベント
- ストレスの強いイベント:試験や人間関係の衝突、職場での評価面談など
- 回避・対処の工夫
- 空腹を放置しない → 軽く食べられる補食を常備しておく(ナッツ・ゼリー飲料など)
- 体重計に頻繁に乗らない → 医師の指示に合わせて週1回など最小限にする
- 不安を感じやすい場面を記録する → 「こういう状況で不安が強まる」と気づくことで再発防止策が立てやすい
- 空腹を放置しない → 軽く食べられる補食を常備しておく(ナッツ・ゼリー飲料など)
セルフモニタリングの活用
症状が出やすいタイミングを「気分日記」「体調チェックリスト」にまとめると、トリガーを可視化できます。例えば「会議前は食欲が乱れやすい」とわかれば、事前に休憩や呼吸法で予防することが可能です。
ストレスマネジメント
ストレスは摂食障害を悪化させる最大の要因のひとつです。重要なのは「食べる/食べない」でストレスを解消するのではなく、別の手段を持つことです。
- 軽い運動:散歩やヨガは気分をリフレッシュさせ、過度な運動欲求の代替にもなります
- 趣味の時間:読書・絵・音楽・手芸など「没頭できる活動」で気持ちを切り替える
- 気持ちを日記に書き出す:言葉にすることで不安や怒りを客観視でき、食行動以外の解消法を得られる
- マインドフルネス瞑想:呼吸や体感覚に集中する練習は、過食衝動や自己否定のスパイラルを断ち切るのに役立つ
具体例
- 職場でストレスが高まったとき → トイレや会議室で深呼吸を行い、衝動的な食行動を防ぐ
- 休日に孤独感が強まったとき → 趣味のコミュニティに参加し、人とのつながりを感じる
- 不安やイライラが止まらないとき → 日記に「今日の気分」「きっかけ」「できたこと」を書き、自己評価を切り替える
社会参加・趣味の活用
摂食障害の人は「食事」に生活の多くを支配されがちですが、社会参加や趣味の活動を通じて「食べること以外の生きがい」を持つと回復が進みやすいです。
- ボランティアや地域活動に参加する
- 趣味のサークルやオンラインコミュニティに関わる
- 小さな仕事やアルバイトで成功体験を積む
「自分にはできることがある」という感覚が自己肯定感につながります。
専門機関・支援の利用
精神科・心療内科
摂食障害は心の病気であり、専門的な治療が必要です。薬物療法や心理療法を組み合わせることで改善が期待できます。
- 拒食症 → 栄養状態の改善を重視し、入院が必要な場合もある
- 過食症 → 認知行動療法や抗うつ薬で過食衝動を軽減するケースが多い
カウンセリング
臨床心理士や公認心理師によるカウンセリングは、本人の気持ちを整理し「食事以外の coping(対処法)」を育てる場になります。
地域や団体のサポートグループ
当事者や家族会に参加することで、「一人じゃない」という安心感を得られます。
- 同じ経験を持つ人の体験談を聞くことで希望を持てる
- 家族同士で支え合い、具体的な対応方法を学べる
まとめ
摂食障害の回復には、本人の努力だけでなく、家族や周囲の理解・支援が不可欠です。
- 家族や友人は「責めない声かけ」「安心できる環境づくり」で支える
- 本人は「トリガーの把握」「ストレス対処」「趣味や社会参加」で再発予防に取り組む
- 専門機関や支援団体を活用し、一人で抱え込まないことが大切
メッセージ
摂食障害に向き合っているあなたへ。
今は「食べること」「体型のこと」が頭から離れず苦しいかもしれません。しかし、あなたの価値は食べた量や体重の数値で決まるものではありません。
少しずつでも、自分のペースで生活を整え、支えてくれる人や制度を活用してください。周りの人と一緒に歩むことで、回復の道は必ず開けます。焦らなくて大丈夫。あなたの存在そのものが、すでに大切で価値のあるものなのです。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。








