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家族が知っておきたい精神障害の理解とサポート法|接し方・支援制度・共倒れ防止の工夫

この記事の内容
はじめに
精神障害は、外見からは分かりにくいため、周囲から誤解されやすい特徴を持っています。家族として「どう声をかければいいのか」「支えたいけれど、何をすればいいのか分からない」と悩む場面も多いでしょう。
本人を支える立場である家族は、理解不足から不安や負担感を強く抱えてしまいがちです。しかし、精神障害について正しい知識を持ち、サポートの工夫を知ることで、家族自身の負担を軽減しながら、より良い関わり方が可能になります。
本記事では、精神障害の基礎知識から日常生活で起こりやすい困難、家族ができるサポートのポイントまでを解説します。特に「支える側が共倒れしないための工夫」も含めて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
精神障害とは?家族が知っておきたい基礎知識

精神障害の代表的な種類
精神障害にはさまざまな種類があります。まずは代表的なものを知っておくことが、家族としての理解の第一歩です。
うつ病
気分の落ち込みや意欲の低下が長く続く病気です。「怠けているのでは?」と誤解されやすいですが、脳の機能や神経伝達物質のバランスに関わる医学的な病気です。日常生活では、朝起きられない、食欲がない、楽しみを感じられないなどの症状が見られます。
統合失調症
幻覚や妄想といった症状が現れることが特徴です。周囲には理解しにくい体験を本人がしているため、誤解や孤立につながりやすい病気です。服薬によって症状をコントロールできる場合が多く、家族が服薬管理をサポートすることが重要です。
双極性障害
気分が大きく変動する病気で、躁状態(気分が高揚し活動的になる時期)と抑うつ状態を繰り返します。躁状態では多弁になったり浪費したりする一方で、抑うつ期には強い無気力に苦しむなど、日常生活への影響が大きいのが特徴です。
不安障害・パニック障害
強い不安や恐怖を感じる病気です。とくにパニック障害では、動悸や息苦しさ、めまいなどの身体症状が突然起こるため、外出や仕事が困難になることがあります。「気のせい」ではなく、医学的に認められた症状です。
なぜ「目に見えにくい障害」なのか
精神障害は、身体障害のように外見からは分かりにくいケースが多くあります。そのため、本人がつらさを訴えても「見た目は元気そうだから大丈夫だろう」と誤解されやすいのです。
この「見えにくさ」が、理解不足や偏見を生む大きな要因となっています。例えば、疲れやすい、集中できないといった症状は、周囲からは「やる気がない」と捉えられがちです。
発症のきっかけ(ストレス・環境・遺伝など)

精神障害の発症には複数の要因が関与するとされています。
- 強いストレス:仕事や学校でのプレッシャー、人間関係のトラブル、喪失体験など
- 生活環境の変化:転職、引っ越し、出産など大きなライフイベント
- 遺伝的要因:家族に同じ病気を持つ人がいる場合、発症リスクが高まるとされる
- 脳の機能的要因:神経伝達物質のバランス異常など
ただし「必ず遺伝する」「環境が悪いから発症する」という単純なものではなく、複数の要因が複雑に絡み合って発症します。
精神障害を持つ人の困りごとを理解する
精神障害を持つ人が直面する日常の困難を知ることは、家族が適切にサポートするための第一歩です。
症状による日常生活の困難
集中力・記憶力の低下
本人はやる気があっても、作業に集中できない、覚えられないといった困難が生じます。例えば、買い物リストを作っても実際に店で思い出せない、仕事の手順を忘れてしまうなどです。
感情コントロールの難しさ
小さなことでも過敏に反応してしまったり、急に落ち込むことがあります。これは本人の性格ではなく、病気の症状によるものです。家族は「なぜそんなことで?」と驚くかもしれませんが、責めずに受け止める姿勢が大切です。
人間関係や社会参加の難しさ
人と会うことが負担になり、孤立してしまうことがあります。学校や職場での誤解や偏見が原因で、不登校や休職につながる場合も少なくありません。
周囲に理解されにくい辛さ
「見た目には健康そうに見えるのに、なぜできないのか」と言われることは、本人にとって大きな苦痛です。家族としても「怠けていると思われるのでは」と不安を抱えがちです。こうした社会的な誤解が、本人と家族の双方を苦しめます。
偏見や誤解による孤立
精神障害に対する偏見は依然として根強くあります。「精神的に弱い」「自己管理ができていない」といった誤解が、本人を孤立させ、家族も周囲に相談できない状況に追い込みます。孤立は症状の悪化や再発にもつながるため、正しい理解と社会的なサポートが不可欠です。
家族ができるサポート法

日常生活での接し方
精神障害を抱える本人にとって、家族の接し方は大きな安心材料にもなれば、逆に負担になることもあります。日々の言葉や態度を工夫することが、安定した生活を支える鍵です。
「頑張れ」という言葉の危うさ
多くの人は励ましのつもりで「頑張れ」と声をかけます。しかし精神障害のある人にとっては、「もう十分頑張っているのに、さらに頑張らなければならない」とプレッシャーを感じてしまう場合があります。代わりに「一緒にゆっくりやっていこう」「今日は休んでも大丈夫だよ」といった言葉が安心感につながります。
安心感を与える声かけの工夫
本人が不安や落ち込みを口にしたとき、「そんなこと気にするな」ではなく、「そう感じているんだね」「つらい気持ちを話してくれてありがとう」と受け止める姿勢が大切です。肯定的に受け止めるだけで、本人は「理解してもらえた」と感じ、孤立感がやわらぎます。
本人のペースを尊重する
「今日は何もできなかった」と本人が落ち込むこともあります。そこで家族が「少しずつでいいよ」「昨日よりできたこともあるね」と声をかけることで、焦りを和らげられます。無理に外出や家事を勧めるよりも、本人のペースに合わせた支援が重要です。
危機的状況での対応
精神障害を持つ人が、時に自傷行為や希死念慮(死にたい気持ち)を訴えることがあります。これは家族にとって非常に不安な瞬間です。
自傷・希死念慮が見られるときの行動
- 安全の確保:刃物や薬など危険なものを本人から遠ざける
- 冷静な声かけ:「一人にしない」「一緒にいるから大丈夫」と安心させる
- 専門機関への連絡:すぐに救急要請や、精神保健福祉センター・自殺予防の電話相談につなげる
家族だけで抱え込まず、医療や専門機関の介入を早めに行うことが命を守る行動になります。
治療・通院のサポート
精神障害の治療は長期にわたることが多く、通院や服薬の継続が安定につながります。
- 通院同行:本人が医師に症状をうまく伝えられないとき、家族が一緒に行って補足すると診察がスムーズになります。
- 服薬管理:飲み忘れや過量服薬を防ぐために、ピルケースやアラームを使ってサポートすることも有効です。
ただし「管理しすぎて本人の自主性を奪う」ことは避け、あくまで補助的な関わりが望ましいです。
本人の「できること」を尊重する大切さ
家族はつい「助けてあげなければ」と考えがちですが、過度に手を出すと本人の自立心を損なうこともあります。例えば、買い物や洗濯など「本人ができること」は見守り、サポートは最小限に留めましょう。
「できることを尊重する」ことが、本人の回復意欲や自己肯定感を育む大切なポイントです。
家族が気をつけたい「共倒れ」
共依存のリスク
家族が過剰に支えようとすると「共依存」の状態に陥ることがあります。本人の問題行動をかばいすぎたり、家族が犠牲になり続けたりすると、結果的に本人の回復も遅れてしまうのです。
家族自身のストレスとケア不足
サポートに集中するあまり、家族自身の心身が疲弊してしまうケースも少なくありません。家族の不調が続けば「共倒れ」となり、本人を支えるどころか両者の生活が破綻しかねません。
家族ができるセルフケア
一人で抱え込まない
「家族だから自分が全部背負わなければ」と思う必要はありません。医師、支援機関、親族などに役割を分担してもらいましょう。
趣味や休養の時間を確保する
自分の好きなことをする時間を持つことは、決してわがままではありません。むしろ「家族が元気でいること」が、本人を支える最大の力になります。
カウンセリングや家族会の活用
専門家によるカウンセリングや、同じ立場の家族が集まる家族会に参加すると、「自分だけではない」と気づけます。孤独感が和らぎ、具体的な対処法も学べるため、積極的に活用しましょう。
利用できる支援制度とサービス
医療的サポート
精神障害の治療や回復には、専門的な医療機関のサポートが欠かせません。
- 精神科・心療内科
診断と治療の中心となる場所です。薬物療法やカウンセリングを受けることができます。家族が一緒に診察に同席することで、医師に症状を正しく伝えやすくなります。 - デイケア
医療機関に併設される通所型のリハビリサービスで、日中の活動や交流を通して社会復帰をサポートします。家族にとっても「安心して日中を任せられる場」となり、負担を軽減できます。
福祉制度
精神障害を持つ人と家族を支える制度は多数あります。
- 障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)
公共料金の割引や税制優遇を受けられる制度です。就労や生活支援を受ける際にも役立ちます。 - 自立支援医療制度
通院医療費が1割負担になる制度。長期的な治療を続けるうえで大きな支えとなります。 - 障害年金
働くことが難しい場合、生活の基盤を支えるために受給できる制度です。申請には診断書や生活状況の証明が必要になるため、早めの準備が大切です。
就労支援
働くことを希望する本人には、以下のような支援があります。
- 就労移行支援
企業で働くための訓練や職場体験ができる福祉サービス。生活リズムの安定からビジネスマナーまで幅広くサポートします。 - 障害者雇用枠
法定雇用率に基づき、企業が障害者を雇用するための枠です。配慮のある環境で就労できるため、安定した勤務が期待できます。 - ジョブコーチ制度
職場に支援員が入り、本人と企業双方をサポートする制度。現場での課題解決に役立ち、就労継続につながります。
家族向け支援
支える側の家族自身もサポートを受けられます。
- 家族会
同じ立場の家族同士が情報共有や交流を行える場。「自分だけではない」と思えるだけでも心強い支えになります。 - 自治体の相談窓口
精神保健福祉センターや市区町村の障害福祉課などで相談が可能です。制度の申請方法や地域のサービス情報を得られます。 - 民間団体のサポート
NPOや支援団体によるピアサポート、電話相談、オンラインコミュニティなど、選択肢は広がっています。
事例紹介|家族のサポートで変わったケース
うつ病のある家族を支えた事例
ある家庭では、うつ病で休職した息子を家族が「無理に励まさない」方針で支えました。「頑張れ」ではなく「今日は一緒にテレビを見よう」と小さな日常を共有することで、本人の安心感が回復につながり、半年後には職場復帰を果たしました。
統合失調症の再発防止につながった家族の関わり方
統合失調症を持つ娘に対し、母親が服薬管理をサポート。さらに発症のサイン(夜眠れなくなる、落ち着きがなくなる)を早期にキャッチし、医師に相談しました。その結果、重い再発を防ぐことができました。
双極性障害のある人が就労継続できたケース
双極性障害を持つ夫は、躁状態では無理な行動に走りがちでした。妻が一緒に症状日記をつけ、体調の波を見える化したことで、職場に柔軟な勤務を相談できるように。結果的に仕事を続けながら安定した生活が送れるようになりました。
まとめ|家族へのメッセージ
精神障害は「本人の努力不足」や「性格の弱さ」ではなく、医学的に認められた病気です。まずは正しく理解することが、家族にできる最大の支援です。
また、家族がすべてを背負う必要はありません。福祉制度や支援機関を積極的に利用してよいのです。支援を使うことは「甘え」ではなく「適切な対応」です。
そして、「支える」だけではなく「一緒に生きていく」という視点を大切にしてください。本人の回復の道のりは長くても、家族が寄り添いながら生活を共にすることで、確かな力になります。最後に忘れてほしくないのは、家族自身も無理をしないことです。趣味や休養の時間を取り、心身の健康を守りながら支えていくことが、長期的に見て最も大切なサポートの形です。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。









