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時短よりフルタイムを希望する精神障害者へ|安定して働くための工夫と支援

この記事の内容
はじめに
精神障害のある方の多くは、体調の波や通院の都合から「時短勤務」や「在宅勤務」を選択するケースが少なくありません。柔軟な働き方は安心感につながりますが、その一方で「給与が減るのは不安」「フルタイムで社会参加したい」という声も根強く存在します。
近年は障害者雇用の拡大により選択肢が増えてきていますが、フルタイム勤務を目指すには工夫や企業側の配慮が欠かせません。
本記事では、フルタイム勤務を希望する精神障害者の方に向けて、働き方の現状、起こりやすい課題、そして安定して働くための視点を整理します。
精神障害と働き方の現状
時短勤務が選ばれやすい理由
精神障害がある方が「時短勤務」を選ぶ背景には、以下のような事情があります。
- 体調の波が大きい
精神障害は「調子の良い日」と「不調の日」の差が大きく、フルタイム勤務では負担が大きくなりがちです。 - 通院や服薬調整の必要がある
定期的に医療機関を受診する必要がある場合、長時間勤務は通院時間を確保しにくいという課題につながります。
これらの理由から、無理のない範囲で働ける「短時間勤務」「在宅勤務」が安心して選ばれやすいのです。
フルタイムを希望する人の実情

一方で、「時短勤務では物足りない」と感じ、フルタイム勤務を希望する方も多くいます。その理由には以下のようなものがあります。
- 経済的に安定したい
時短勤務は給与が低くなりやすく、生活費や将来の備えに不安を感じる人が少なくありません。 - キャリアを積みたい
フルタイムで働くことでスキルアップや昇進のチャンスを得たいと考える人も多いです。 - 社会参加の意欲
一般社員と同じように勤務することで「自分も社会の一員として活躍したい」という自己実現の思いが強いケースもあります。
このように、精神障害があっても「できればフルタイムで働きたい」というニーズは決して少なくないのです。
フルタイム希望は「自己理解」と深く関係している
フルタイム勤務を希望するからといって、「自分と向き合えていない」とは限りません。実際には大きく2つのタイプがあります。
- 自己理解が進んでいて希望しているケース
主治医の判断や過去の経験から「フルタイムでも働ける」と見通しを持ち、生活基盤やキャリア形成のために前向きに選ぶ人。 - 理想やプレッシャーで無理に希望しているケース
「短時間勤務だと評価されないのでは」「普通に働きたい」という気持ちが強く、体調や再発リスクを軽視してしまう人。
また、就職エージェントを活用している人にはフルタイム希望者が多い傾向があります。これは「収入や正社員雇用を得たい」という意欲の表れでもありますが、同時にエージェント側も「まずは短時間勤務から始め、段階的にフルタイムへ」という提案を行うケースが少なくありません。
大切なのは「本当に今の自分にフルタイムが合っているのか」を冷静に見極めることです。自己理解が進んでいれば、フルタイム勤務も安定したキャリアにつながりますが、そうでなければ逆に体調悪化や離職リスクを高めることになりかねません
フルタイム勤務で起こりやすい課題
体調の波とパフォーマンスの低下
フルタイム勤務は1日の労働時間が長くなるため、体調不良が業務に影響しやすくなります。集中力の低下や作業効率の悪化により、本人も「迷惑をかけてしまうのでは」と不安を抱きがちです。
長時間労働による疲労・ストレス
精神障害のある方にとって、長時間勤務は疲労の蓄積や再発リスクを高める要因になります。特に繁忙期や残業が多い職場では、体調を崩すきっかけになりやすいため注意が必要です。
周囲の理解不足による孤立
症状や体調の波を理解してもらえない場合、「サボっているのでは?」と誤解を招くこともあります。こうした職場の理解不足が孤立感を強め、働き続ける難しさにつながります。
通院やリカバリー時間の確保が難しい
フルタイム勤務では、診察やカウンセリングなどの時間を確保しにくくなるケースがあります。定期的な通院や休養が取れないと、体調悪化のリスクが高まります。
フルタイム勤務を可能にする工夫

セルフケアの徹底
精神障害を持ちながらフルタイム勤務を続けるためには、日常のセルフケアが基盤になります。
睡眠・食事・運動の安定化
- 睡眠リズムを整えることで、体調の波を最小限に抑えることができます。
- 栄養バランスの取れた食事は、心身のエネルギー維持に不可欠です。
- 軽い運動(ウォーキングやストレッチ)はストレス解消と生活リズムの安定につながります。
服薬管理を怠らない
服薬を自己判断で中断すると、症状の再発や悪化のリスクが一気に高まります。
「調子が良くなったから」「副作用が気になるから」といった理由で勝手に薬を減らしたりやめたりするのは非常に危険です。
- 通院を継続することの重要性
服薬と同じく、主治医との定期的な通院も欠かせません。診察を怠ると、体調の小さな変化を見逃しやすくなり、再発を防ぐチャンスを失ってしまいます。 - 管理を助ける工夫
服薬アプリやピルケースを活用して飲み忘れを防ぐほか、通院日をカレンダーやスマホでリマインド登録しておくと安心です。
➡ 「調子が良いときこそ、服薬と通院を続ける」ことが安定したフルタイム勤務を実現する大前提 になります。
ストレスマネジメント
フルタイム勤務では疲労やストレスが蓄積しやすいため、意識的にリフレッシュする習慣が必要です。
業務中の休憩の取り方
- 1〜2時間に1回は深呼吸や軽いストレッチを取り入れる
- 短時間でも「目を閉じる」「席を離れる」ことで集中力を回復させる
オン・オフを切り替える習慣
- 仕事後は音楽や趣味でリラックスする
- 就寝前はスマホを避け、心を落ち着かせるルーティンを持つ
働き方の工夫
「フルタイム勤務」といっても、必ずしも一律の働き方をする必要はありません。
朝の負担を軽減する工夫(時差出勤など)
- 朝の体調が不安定な場合、時差出勤やフレックス制度を活用する
- 混雑した通勤時間を避けることで、ストレスや疲労を減らせます
タスク管理・優先順位付け
- タスク管理ツールやToDoリストを活用して業務を「見える化」する
- 優先順位をつけ、余裕を持ったスケジュールで進めることで、焦りを防げます
企業に求められる配慮

精神障害のある方がフルタイム勤務を安定して続けるためには、企業側の理解と配慮も欠かせません。
柔軟な勤務形態(フルタイムでも時差出勤・フレックス)
「フルタイム=一律の9時〜18時勤務」ではなく、個々の体調や通院に合わせた柔軟な勤務形態が重要です。
心理的安全性のある環境づくり
- 上司や同僚に「体調の波があること」を伝えやすい雰囲気
- ミスや遅れがあっても、建設的に解決できる文化
体調悪化時に相談しやすい体制
- 定期面談や相談窓口を設ける
- 症状が出たときに「一人で抱え込まなくてよい」と感じられる体制づくりが重要です
ジョブコーチや社内支援員の活用
ジョブコーチ制度や社内支援員を配置することで、業務調整やコミュニケーションのサポートが可能になり、定着率の向上につながります。
フルタイム勤務と収入の現実
時短勤務と給与の違い
時短勤務は勤務時間が短い分、給与が少なくなるのが現実です。生活費や将来の資金形成を考えると、不安を感じる人も多いです。
フルタイム勤務による収入安定のメリット
- 社会保険や年金の加入条件を満たしやすい
- 昇進やキャリアアップのチャンスが広がる
- 長期的に見れば「経済的な安心感」を得やすい
体調悪化による休職リスクも考慮する必要性
ただし、フルタイム勤務は負担も大きいため、無理をして働いた結果、休職→収入ゼロというリスクも存在します。
収入面のメリットだけでなく、「継続できる働き方かどうか」を見極めることが欠かせません。
支援制度の活用
フルタイム勤務を目指す精神障害者にとって、支援制度の活用は大きな助けとなります。
障害者雇用枠での働き方(法定雇用率に基づく安定採用)
企業には「障害者雇用率(法定雇用率)」が定められており、障害者を一定割合で雇用する義務があります。
この枠で採用されると、通院配慮や勤務調整などの合理的配慮を受けやすいのが特徴です。
ジョブコーチ制度
ジョブコーチ(職場適応援助者)が本人と企業の間に入り、業務の進め方・職場でのコミュニケーションをサポートしてくれます。
フルタイム勤務であっても、定着支援があることで安心して働き続けられる人は多いです。
自立支援医療による医療費軽減
精神科の通院や薬代は継続的な負担になりますが、自立支援医療制度を活用すれば医療費は原則1割負担に軽減されます。
「長く働くために治療を継続する」うえで欠かせない制度です。
障害年金・就労支援制度との併用
障害年金を受給しながら働くことも可能です。体調の波がある方は、年金+就労収入の両立を考えることで、安心して生活とキャリアを両立できます。
実際の事例紹介
フルタイム勤務で安定就労している事例
- 30代男性(双極性障害)
定期通院を継続し、勤務先のフレックス制度を活用。体調の波が小さくなり、5年以上フルタイムで安定勤務を継続中。
無理をして体調を崩した事例
- 20代女性(うつ病)
「短時間勤務は不安」とフルタイムを選択。しかし休養を取らず通院も中断してしまい、半年で体調が悪化し休職。再就職に時間を要した。
工夫と支援によって継続できた事例
- 40代男性(統合失調症)
ジョブコーチのサポートと企業の配慮を受け、タスクを分割して管理。セルフケアを徹底し、フルタイム勤務を3年継続できている。
まとめ|自分に合った「フルタイムの働き方」を見つけよう
精神障害があっても、フルタイム勤務は決して不可能ではありません。
ただし、安定して働き続けるためには次の3本柱が欠かせません。
- セルフケア:睡眠・服薬・通院を怠らず、自分の体調を整えること
- 企業の配慮:勤務形態の柔軟化、心理的安全性の確保、相談できる体制
- 支援制度の活用:障害者雇用枠、ジョブコーチ、自立支援医療、障害年金など
これらを組み合わせることで、無理なく長く働ける環境が整います。
メッセージ
「フルタイムで働きたい」という気持ちは、経済面だけでなく社会の一員として貢献したいという強い思いの表れでもあります。
しかし、大切なのは「無理をすること」ではなく、自分に合った働き方を見つけることです。
調子が良いときこそ、服薬や通院を続ける。
辛いときは、家族や支援機関、職場に相談する。
そうした積み重ねが、結果的に「長く働けるフルタイム就労」へとつながります。あなたに合った働き方は必ずあります。
一人で抱え込まず、支援や工夫を味方にしながら、安心して働ける未来をつくっていきましょう。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。








