2025/08/23
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脳性まひとは?原因・症状・リハビリ・日常生活への影響を徹底解説【2025年最新版】

この記事の内容

はじめに

脳性まひ(Cerebral Palsy, CP)は、小児期に最も多くみられる運動障害の一つです。医学やリハビリテーション、福祉制度の進歩によってサポート体制は充実してきましたが、依然として日常生活や就労には大きな影響を及ぼします。
本記事では、脳性まひの基本的な定義や原因、症状の特徴を整理し、さらにリハビリや日常生活での工夫についても解説します。正しい知識を持つことは、ご本人やご家族にとって安心につながり、支援を受けやすくする第一歩です。

脳性まひとは?基本的な理解

定義(脳の発達途中で起こる非進行性の運動障害)

脳性まひとは、胎児期から生後間もない時期にかけて脳に損傷が起こることで生じる、非進行性の運動障害を指します。
「非進行性」とは、脳の損傷自体が進行して悪化するものではないという意味です。ただし、運動障害の影響によって姿勢や関節に負担がかかり、二次的な問題が生じることがあります。

発症の時期(出生前・出産時・出生後早期)

脳性まひは、脳の発達が未熟な時期に起こります。主な発症のタイミングは以下の通りです。

  • 出生前:妊娠中の感染症、母体の合併症、胎児の脳への酸素供給不足など
  • 出産時:分娩の遅延、低酸素状態、仮死分娩など
  • 出生後早期:新生児期の脳出血や感染症、重度の黄疸 など

このように、発症要因は多岐にわたり、一つの原因だけでなく複数の要因が重なって発症するケースもあります。

非進行性だが二次障害(関節拘縮・筋緊張亢進)は起こりうる

脳性まひは進行性の病気ではありませんが、運動機能の障害により二次障害が生じる可能性があります。代表的なものとしては、

  • 関節拘縮(関節が硬く動きにくくなる)
  • 筋緊張亢進(筋肉が硬直し、姿勢や動作に影響する)
  • 骨格の変形(側弯症、股関節脱臼など)

があります。これらは成長とともに目立つことが多く、早期のリハビリや継続的なサポートが非常に重要です。

脳性まひの原因

出生前の原因(胎児期の脳の発達異常・感染症)

脳性まひの原因の多くは出生前(胎児期)に生じます。胎児の脳が発達する過程で異常が起こったり、母体の感染症(風疹、サイトメガロウイルスなど)が影響を与えたりするケースがあります。
また、母体の高血圧や糖尿病、胎盤の異常も脳性まひのリスク要因とされています。

周産期の原因(分娩時の低酸素・仮死)

出産時にトラブルが発生することも原因となります。代表的なのは分娩中の低酸素状態や仮死分娩です。
長時間の分娩や臍帯巻絡(へその緒が首に巻きつく)、吸引・鉗子分娩などで脳に十分な酸素が届かず、障害が残る場合があります。

出生後の原因(頭部外傷・脳炎など)

出生後早期に脳へダメージを与える要因もあります。新生児期・乳児期における頭部外傷、脳炎、髄膜炎、重度の黄疸などが代表的です。これらによって脳が損傷を受け、脳性まひにつながるケースがあります。


脳性まひの主な症状とタイプ

運動機能の障害

脳性まひの中心的な症状は運動機能の障害です。タイプによって特徴が異なります。

  • 痙直型:筋肉の緊張が強く、関節が硬くなる。歩行や姿勢に影響しやすい。
  • アテトーゼ型:手足や顔に不随意運動(コントロールできない動き)が出る。発声や食事にも影響。
  • 失調型:バランスがとりにくく、歩行時にふらつきが出やすい。
  • 混合型:複数のタイプが組み合わさって現れる。

随伴症状

運動障害に加えて、以下のような随伴症状を伴うこともあります。

  • 言語障害・嚥下障害(発話が難しい、飲み込みに時間がかかる)
  • 視覚・聴覚障害(弱視や難聴)
  • 知的障害やてんかんの併発

症状の組み合わせは人それぞれ異なり、生活のしづらさも個人差が大きいのが特徴です。


診断と治療の流れ

小児期の診断方法(運動発達の遅れ・MRI検査)

脳性まひは、多くの場合乳児期から小児期に診断されます。首すわりや寝返り、歩行の遅れなど発達段階での異常がきっかけとなります。
さらに、MRIやCTなどの画像検査で脳の損傷を確認することも診断の一助となります。

リハビリテーション(理学療法・作業療法・言語療法)

診断後は早期からリハビリを開始することが重要です。

  • 理学療法(PT):筋肉の緊張を緩和し、関節の可動域を保つ
  • 作業療法(OT):着替え・食事など日常動作の習得を支援
  • 言語療法(ST):発語や嚥下機能を改善

継続的なリハビリが生活の質を大きく左右します。

薬物治療や外科的治療

症状が強い場合には、薬や手術が行われることもあります。

  • 筋緊張抑制薬(バクロフェンなど)
  • ボツリヌス療法(筋肉の硬直を和らげる注射治療)
  • 整形外科手術(拘縮の改善、骨格矯正)

リハビリと併用することで、運動機能や生活動作の改善が期待されます。


日常生活への影響と工夫

移動(歩行・補助具・車いすの活用)

脳性まひの方は、症状の程度によって歩行能力に大きな差があります。自立歩行が可能な方も多くいますが、筋緊張や関節の硬さによって杖や装具を使ったり、車いすを活用したりするケースもあります。

特徴的な例として、つま先立ちで歩く「尖足歩行」がよく見られます。これは、ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)の緊張が強いために、かかとが地面につきにくくなることが原因です。
尖足歩行に対しては、理学療法や装具で対応する場合もありますが、必要に応じてアキレス腱延長手術が行われることもあります。ただし、手術を受けずに尖足歩行のまま生活している方も多く、それぞれの状況に合わせた支援が求められます。

このように、本人の体の状態や生活環境に合わせて**最適な移動手段(歩行補助具・車いす・手術や装具の利用)**を選ぶことが、自立度を高め生活の質を向上させる大切なポイントです。

食事・嚥下の工夫(やわらかい食事、補助具)

嚥下障害がある場合は、とろみをつけた食事ややわらかい食材を選ぶことが有効です。食事用スプーンや食器などの補助具も活用できます。

コミュニケーション支援(意思伝達装置・IT活用)

発語が難しい場合には、意思伝達装置やタブレット端末などのICT支援機器を利用することで、学校や職場でのコミュニケーションがスムーズになります。

学校生活・学習支援(合理的配慮の事例)

教育現場では、合理的配慮が求められています。たとえば、車いすでも通いやすい環境づくり、板書の代わりにタブレット使用、試験時間の延長などが行われています。

リハビリと継続支援の重要性

早期リハビリの効果

脳性まひは非進行性の障害ですが、成長に伴う二次障害(関節拘縮・変形など)が起こりやすいため、早期からのリハビリは非常に重要です。
乳幼児期からリハビリを始めることで、筋肉や関節の柔軟性を保ち、基本的な運動機能の発達を促進できます。特に「遊びの中で体を動かすリハビリ」は、本人のやる気や意欲にもつながります。

家庭でできる運動・ストレッチ

医療機関やリハビリ施設での支援に加え、家庭での運動やストレッチを継続することが大切です。
例えば、簡単なストレッチや関節の可動域を保つ体操、バランスボールを使った遊びなどは、自宅でも無理なく取り組めます。家族がサポートすることで、日常生活に自然にリハビリを取り入れられます。

社会参加を意識した訓練(スポーツ・趣味活動)

リハビリの目的は「できる動作を増やす」ことだけではありません。スポーツや趣味活動への参加を通じて、自己表現や社会参加の機会を広げることも大切です。車いすバスケットボールや水泳、音楽活動などは、心身の健康を保つだけでなく仲間との交流にもつながります。


脳性まひと就労の現実

できる仕事・難しい仕事の傾向

脳性まひの方が取り組める仕事は、症状の程度や得意分野によって大きく異なります
デスクワークやパソコン業務に適性を発揮する人もいれば、手先の器用さを生かした軽作業で活躍する人もいます。一方で、長時間の立ち仕事や重労働など、体への負担が大きい仕事は難しい場合があります。

職場で求められる配慮(移動・設備・勤務時間)

職場では、以下のような配慮が求められます。

  • 移動:バリアフリーのオフィスやエレベーターの整備
  • 設備:机や椅子の高さ調整、PC入力補助機器の導入
  • 勤務時間:体調に応じた時短勤務や休憩の確保

合理的配慮を取り入れることで、本人の力を十分に発揮できる環境をつくることが可能です。

障害者雇用での事務職・在宅ワークの増加

近年は障害者雇用枠での事務職や在宅ワークの機会が増えています。特にIT関連業務やデータ入力、Web制作などは、自宅環境を整えれば長期的に働きやすい職種です。テレワークの普及も追い風となり、就労の幅が広がっています。

実際の就労事例紹介

例えば、上肢の緊張が強く手作業が難しい方が、音声入力ソフトを活用して事務職で活躍している事例があります。また、在宅勤務でWebライターとして継続的に収入を得ている方もいます。本人の強みとテクノロジーの活用によって、多様な働き方が実現できています。


利用できる制度・支援サービス

身体障害者手帳と等級

脳性まひは身体障害者手帳の対象となり、障害の程度に応じて等級が認定されます。等級によって受けられる支援やサービスが異なるため、申請手続きを進めておくことが大切です。

医療費助成・自立支援医療

継続的なリハビリや薬物治療には医療費がかかります。自立支援医療制度を利用することで、リハビリや投薬の費用を軽減できます。また、指定難病医療費助成制度とは異なる仕組みである点も押さえておきましょう。

福祉用具・住宅改修補助制度

車いすや歩行補助具、意思伝達装置などの福祉用具は自治体の制度で給付・貸与が受けられる場合があります。さらに、自宅をバリアフリーに改修する際には住宅改修補助制度を活用できるケースも多く、安心して在宅生活を続けられるようになります。

就労移行支援・ジョブコーチ制度

働きたい方にとって有効なのが、就労移行支援事業所ジョブコーチ制度です。就労移行支援では職業訓練や企業実習を通じて就職をサポートし、ジョブコーチは就職後に職場定着を支援します。継続して働くための大きな支えとなります。


まとめ|脳性まひと共に生きるために

脳性まひは進行性の病気ではありませんが、運動機能や日常生活、就労に幅広い影響を与える障害です。
しかし、早期のリハビリと社会資源の活用によって自立度を高め、本人の力を十分に発揮することが可能です。

特に、尖足歩行や二次障害などは適切なリハビリや医療的サポートで改善が見込めますし、補助具やICTを取り入れることで生活の幅も広がります。さらに、学校や職場での合理的配慮があれば、学びや働く機会を確保しやすくなります。

家族・本人・企業・地域社会が協力し合うことで、脳性まひのある方も安心して学び、働き、社会参加できる環境が整っていきます。
大切なのは「障害があるからできない」ではなく、正しい知識と支援を活用して、その人らしい生活を実現することです。

脳性まひと共に生きる社会は、障害の有無に関わらず誰にとっても暮らしやすい社会につながります。

投稿者プロフィール

八木 洋美
自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。
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