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後天性障害と就活|高次脳機能障害を持ちながら働くためのポイントと支援制度

この記事の内容
はじめに

交通事故や脳出血・脳梗塞などの病気によって、突然「高次脳機能障害」を抱えることになる人は少なくありません。
この障害は外見からは分かりにくい一方で、記憶が続かない・作業手順を忘れてしまう・集中力が続かない といった特性があり、就職活動や職場での働き方に大きな影響を及ぼします。
特に、採用面接で自分の状況をうまく伝えられなかったり、就職しても業務に定着できずに短期間で辞めてしまうケースも少なくありません。
本記事では、高次脳機能障害を持ちながら就活を進める際の課題と解決のポイント、活用できる支援制度 についてわかりやすく解説します。
高次脳機能障害とは?
高次脳機能障害とは、脳外傷や脳血管障害の後遺症によって起こる認知機能や行動面の障害を指します。
見た目には分かりづらいことから「理解されにくい障害」ともいわれ、就労において大きな壁になることがあります。
代表的な症状
- 記憶障害:作業内容や予定をすぐに忘れてしまう
- 注意障害:集中が長く続かない、周囲の刺激に気を取られる
- 遂行機能障害:作業の手順を考えることや段取りが苦手
- 情緒面の変化:感情の起伏が激しく、イライラや落ち込みが出やすい
仕事に影響しやすい具体例
- 上司や同僚からの指示をすぐに忘れてしまう
- 複数の業務を並行して行うマルチタスクに対応できない
- 書類作成やデータ処理に時間がかかる
こうした症状は「能力不足」や「怠慢」と誤解されやすいため、職場での理解と配慮が不可欠です。
就活で直面しやすい課題
高次脳機能障害を持つ方は、就職活動の中で次のような壁に直面することが多いです。
面接での自己説明の難しさ
障害の特性を正確に説明することが難しく、採用担当者に「なぜ前職を辞めたのか」「どのような配慮が必要なのか」を伝えきれないことがあります。
求人票と実際の業務内容のギャップ
求人票には「一般事務」と書かれていても、実際にはマルチタスクや複雑な処理を求められることがあり、入社後に「想定と違う」と感じやすいのが特徴です。
転職回数が増えやすい背景
業務定着の難しさから、短期間で退職や転職を繰り返してしまうケースが少なくありません。そのため履歴書上の転職回数が多くなり、選考で不利になることもあります。
企業側が抱く不安
採用する側も「業務を覚えられるのか」「ミスや事故のリスクはないか」と不安を持つのは自然なことです。こうした不安を解消するためには、障害の特性を理解してもらい、合理的配慮をどうすれば取れるのかを一緒に考える姿勢 が重要です。
就活を進める上での工夫ポイント

高次脳機能障害があっても、工夫次第で働き続けることは十分可能です。ここでは就職活動を進めるうえで役立つ工夫のポイントを整理します。
自己理解を深める
まず大切なのは、自分の得意・不得意をしっかり把握することです。
- 例:反復作業や決まった手順を繰り返す作業は得意
- 例:突発的な対応や複雑な判断を伴う業務は苦手
このように整理しておくことで、応募する職種や企業を選ぶ際の判断基準になります。
配慮事項の整理
就活では「自分にどのような配慮があれば働きやすいか」を具体的に伝えることが重要です。
- 指示は口頭よりも 文書やチェックリストで伝えてもらえると助かる
- 業務手順を 写真付きマニュアル にしてもらえると覚えやすい
このような要望は「合理的配慮」として企業に伝えることが可能です。
ツールの活用
近年は、スマホやPCのツールを活用することで弱点を補うことができます。
- スケジュール管理アプリの アラーム通知
- メモアプリや付箋 によるタスク管理
- 写真やイラスト入りマニュアル で視覚的に覚える
「ツールを活用すれば問題なく業務を進められる」と示せれば、企業側の安心感も高まります。
応募時に伝えるべきこと
障害の特性を伝えるときは、「できないこと」だけを並べるのではなく、工夫すればできること として説明するのがポイントです。
- NG例:「記憶力が弱いので業務が覚えられません」
- OK例:「記憶力に弱さはありますが、メモやマニュアルを使えば安定して業務を進められます」
ポジティブな表現にすることで、採用担当者に前向きな印象を与えられます。
向いている仕事・避けた方がよい仕事
症状の特性を踏まえると、向いている仕事と避けた方がよい仕事の傾向があります。
向いている仕事
- 反復作業:製品の検品・軽作業・簡単なデータ入力など
- マニュアル化されている業務:定められた手順を繰り返す仕事
- 視覚的サポートが活用できる職種:写真や図で理解できる業務(簡単な事務補助やバックオフィス業務など)
これらは特性を活かしやすく、安定して働けるケースが多いです。
避けた方がよい仕事
- 臨機応変な対応が多い仕事:営業職や接客業など、瞬時の判断や柔軟な対応が求められる職種
- 安全リスクが高い仕事:重機操作・高所作業など、注意力や判断力の低下が事故につながる可能性がある業務
無理に苦手な分野に挑戦するよりも、自分の特性に合った仕事を選ぶことが長く働くための近道です。
支援制度を活用する
高次脳機能障害を持ちながら就活を進めるうえで、各種支援制度を活用することは大きな力 になります。ひとりで抱え込まず、制度や専門機関を利用することで、就職後の定着率も高まります。
障害者手帳と雇用枠
高次脳機能障害は、症状の内容や程度によって 身体障害者手帳 や 精神障害者保健福祉手帳 の対象となる場合があります。
- 身体障害者手帳:脳梗塞や事故などで脳を損傷し、手足の麻痺や言語障害、視覚・聴覚障害といった身体機能の障害が残った場合に交付されることがあります。
- 精神障害者保健福祉手帳:記憶障害・注意障害・遂行機能障害・感情コントロールの難しさなど、認知面や精神面の特性が日常生活や就労に影響している場合に対象となります。
- (参考)療育手帳 は先天的な知的障害が対象であり、後天性の高次脳機能障害は含まれません。
手帳を取得すれば「障害者雇用枠」での応募が可能になり、合理的配慮を受けやすくなるため、就職活動の選択肢が広がります。まずは主治医に相談し、地域の障害福祉課で申請可否を確認してみましょう。
就労移行支援
就労移行支援事業所では、模擬職場体験やビジネスマナー研修、パソコン講座などを通じてスキルを磨けます。就職後の定着支援も受けられるため、「働きたいけれど自信がない」という方に有効です。
ジョブコーチ制度
ジョブコーチ(職場適応援助者)が職場に同行し、業務のやり方や人間関係の築き方をサポートしてくれる仕組みです。採用した企業にとっても「安心して任せられる」と感じてもらいやすくなります。
職業訓練校・リワークプログラム
公共職業訓練校やリワークプログラムを利用すれば、PCスキルや事務スキルの基礎を学び直すことができます。特に事務職やバックオフィス業務を目指す場合には大きな武器になります。
事例紹介|高次脳機能障害を持ちながら働く人たち
実際に、多くの方が工夫をしながら職場で活躍しています。
- 記憶障害があるが、チェックリストを徹底活用して軽作業を継続しているケース
- マニュアルを利用しながら事務補助業務に定着したケース
- 農作業や清掃といった仕事で、環境を工夫して働き続けているケース
「できないから働けない」ではなく、「工夫をすればできることがある」という実例が、就活の希望につながります。
企業に伝える工夫

就活を成功させるためには、採用担当者に安心感を持ってもらうことが大切です。
面接での伝え方
「できないこと」だけを伝えるのではなく、
→ 「サポートがあればできる」 と前向きに言い換えましょう。
配慮を具体的に提示
「1日のタスクを紙にまとめてほしい」「業務手順をマニュアル化してほしい」など、具体的な配慮事項 を示すことで、企業も受け入れやすくなります。
実習やトライアル雇用の活用
短期間の実習やトライアル雇用を通じて、「実際に働く姿」を企業に見てもらえることは大きなメリット です。履歴書や面接だけでは伝えにくい強みや工夫が、実際の勤務を通じて自然に伝わります。
- 本人にとってのメリット
・自分の特性に合った仕事かどうかを、無理なく確認できる
・就職前に職場の雰囲気を体験できるので、不安を軽減できる
・働きながら必要な配慮や工夫を整理できる - 企業にとってのメリット
・業務への適応度や作業スピードを事前に確認できる
・どんなサポートが必要かを把握でき、受け入れ準備が整う
・実際の勤務姿を見て「安心して採用できる」と判断しやすい
特に高次脳機能障害は外見から分かりにくい特性が多いため、実習やトライアルを経ることで、ミスマッチを防ぎ長期定着につながる 可能性が高まります。
まとめ
高次脳機能障害は、記憶障害や注意障害などによって就活や仕事に大きな壁をもたらすことがあります。
しかし、自己理解を深める工夫・配慮事項の整理・ツールの活用 を組み合わせ、さらに 就労移行支援・ジョブコーチ制度・職業訓練校 といった支援制度を上手に活用することで、安定した就労は十分可能です。
大切なのは「受け入れてもらう立場」になるのではなく、「どうすれば自分の力を発揮できるか」を企業と一緒に考える姿勢 です。最後に、このコラムを読んでいるあなたへ。
就活に悩み、不安を感じることもあると思いますが、一人で抱え込む必要はありません。支援機関や制度を活用し、工夫を積み重ねながら、自分に合った職場を見つけてください。あなたの経験や努力は必ず社会で必要とされています。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。







