2025/08/28
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後天性障害と仕事探し|記憶障害・注意障害を抱える人の就活戦略

はじめに

交通事故や脳疾患、心筋梗塞や脳梗塞などの病気によって、後天的に障害を負う人は少なくありません。特に 記憶障害注意障害 は、外見からは分かりにくい一方で、日常生活や仕事探しに大きな影響を及ぼします。

「求人に応募しても長く続かないのではないか…」
「面接でうまく説明できない…」

このような不安を抱える方も多いでしょう。
本記事では、後天性障害による記憶障害・注意障害の特徴を整理し、就職活動で直面しやすい課題、そして乗り越えるための戦略を具体的に解説します。


後天性障害による記憶障害・注意障害とは?

記憶障害の特徴

後天性の脳損傷や高次脳機能障害では、以下のような記憶障害が起こりやすくなります。

  • 新しい情報を覚えにくい/すぐに忘れてしまう
    たとえば、上司から受けた指示を数分後に思い出せないことがあります。
  • 手順を思い出せず作業が滞る
    作業マニュアルを見ないと工程を進められないなど、業務の流れが断片的になりやすいのが特徴です。

このように「昨日できたことが今日できない」というギャップは、本人にとっても大きなストレスになります。

注意障害の特徴

注意障害は、集中力や注意のコントロールに影響します。

  • 集中が続かない
    会議や研修など長時間の場面では内容が頭に入らず、理解が浅くなるケースがあります。
  • 複数作業を並行するのが苦手
    電話対応をしながらパソコン入力をする、複数人からの依頼を同時に受けるなどの状況で混乱しやすい傾向があります。

これにより、効率が下がったり、ストレスが蓄積したりすることもあります。

仕事に影響しやすい場面の例

記憶障害・注意障害を抱える人が、特に困難を感じやすい場面は以下の通りです。

  • 業務指示を忘れる → 「もう一度説明してほしい」と伝えづらく、孤立感につながることもある
  • ミスや二度手間が増える → 作業途中で抜け漏れが起きやすい
  • 会議や研修で内容が定着しない → 新しいスキルや知識を習得するのに時間がかかる

これらは決して本人の努力不足ではなく、後天性障害に伴う特性です。理解してくれる職場環境や支援があれば、十分に力を発揮できます。


仕事探しで直面しやすい課題

求人票の条件と実際の仕事内容のギャップ

求人票には「簡単な事務作業」や「未経験者歓迎」と書かれていても、実際には複数の業務を同時に進めることが求められる場合があります。記憶障害や注意障害がある人にとって、こうしたギャップは就労定着の壁となります。

面接で自分の障害特性を説明する難しさ

「記憶力に課題があります」「集中が続きにくいです」と正直に伝えると、企業が不安を抱くケースがあります。しかし、まったく伝えないと入社後にトラブルになりやすい。バランスの取り方に悩む人が多いのも事実です。

短期間で離職しやすくなるリスク

仕事内容と自分の特性が合わない場合、入社しても数週間から数か月で離職してしまうケースが少なくありません。これが繰り返されると履歴書に空白が増え、就職活動がさらに難しくなるという悪循環に陥ることもあります。

企業側の懸念

企業の立場からすると、次のような懸念を持たれやすい傾向があります。

  • 「業務を覚えられるのか?」
  • 「事故やトラブルを起こすリスクはないか?」

こうした不安を和らげるには、障害の特性を補う工夫や支援制度の活用を具体的に示すことが効果的です。

就活戦略① 自己理解と強み・弱みの整理

自分にできること・苦手なことを書き出す

就職活動の第一歩は、自己理解 から始まります。後天性障害による記憶障害・注意障害は「何ができないのか」だけでなく、「どのようにすればできるのか」という視点で整理することが大切です。
紙やノートに以下のように書き出すと、強みと弱みが見えやすくなります。

  • 得意:単純作業の継続、整理整頓、手順書通りの作業
  • 苦手:長時間の会議、突発的な依頼、複数業務の同時進行

この作業を通して、自分に合う仕事や職場環境をイメージできるようになります。

得意分野を活かせる職種の把握

後天性障害があっても、活躍できる職種は数多く存在します。特に「ルーチンワーク」や「反復作業」が中心の職種は、安定して続けやすい傾向があります。
例としては、検品・仕分け作業や、マニュアルがしっかり整った事務補助などです。

障害特性を補うツール活用

「忘れやすい」「集中が続かない」といった課題は、ツールを使って補えます。

  • メモや手帳:指示を必ず書き留める
  • スマホアプリ:リマインダーで予定やタスクを通知
  • チェックリスト:完了した作業にチェックを入れる

このような工夫で「できないこと」を補い、安心して働ける環境を作れます。


就活戦略② 向いている仕事と避けた方がよい仕事

向いている仕事の例

記憶障害や注意障害を抱える人でも、特性を活かして安定して働ける仕事は多くあります。

  • 検品・仕分けなどの反復作業
  • マニュアル化された事務補助
  • 図書整理や軽作業(ラベル貼り・封入など)

これらは手順が明確で予測しやすいため、安心して続けやすい職種です。

避けた方がよい仕事の例

一方で、以下のような職種は負担が大きくなる場合があります。

  • 突発対応が多い職種(営業・接客・コールセンターなど)
  • 危険を伴う作業(重機操作・工場ラインの危険業務など)

もちろん「絶対にできない」わけではありませんが、長期的な就労を考えるとリスクが高いため、慎重に検討する必要があります。

実際の事例紹介

  • 記憶障害がある人が「マニュアル完備の事務」で安定したケース
    書類整理やデータ入力を担当し、手順をマニュアルで確認しながら着実に仕事を続けられています。
  • 注意障害がある人が「農作業」で集中力を活かしたケース
    自然の中での作業は集中しやすく、決まった流れで行うため定着につながっています。

就活戦略③ 面接での伝え方

「できないこと」をそのまま伝えない工夫

面接では「弱み」をそのまま伝えるのではなく、補う方法とセットで伝える のがポイントです。
例:「口頭指示は忘れてしまうことがあるが、メモを取れば確実に対応できる」

配慮事項の具体的な提示

「タスクを紙で渡していただけると助かります」「指示を一度に複数ではなく順番にいただけると助かります」など、具体的な配慮事項 を伝えることで、企業側も対応を検討しやすくなります。

嘘をつかず、工夫や対策もセットで伝えることの重要性

「できるのにできないふり」をする必要はありませんし、「できないことを隠す」ことも逆効果です。正直に伝えつつ、工夫や対策を示すことで「一緒に働けるイメージ」を持ってもらえます。


就活戦略④ 支援制度の活用

障害者手帳を取得するメリット

高次脳機能障害などによる記憶障害・注意障害は、障害者手帳(身体・精神・療育のいずれか)の対象になることがあります。
手帳を取得すると、障害者雇用枠での応募・税制優遇・通院配慮 などのメリットがあります。

就労移行支援事業所

模擬職場での訓練や面接練習、企業実習の機会を提供してくれるため、ブランクがある人でも自信を取り戻せます。

ジョブコーチ制度

職場に同行して仕事の進め方を一緒に確認してくれる支援制度です。定着が不安な人にとって心強い存在です。

職業訓練校でスキルアップ

PCスキルや事務基礎を学べる職業訓練校を活用すれば、応募できる仕事の幅を広げられます。


就活戦略⑤ エージェント・支援機関の活用法

転職エージェントを通じて求人を探す利点

障害者専門の転職エージェントを利用すれば、配慮事項を企業に代わりに交渉してくれる ため、安心して就活を進められます。通勤条件や勤務時間についても調整できる場合があります。

ハローワークの専門援助部門

ハローワークには「障害者専門窓口」があり、専門職員が応募書類の添削や求人紹介、職場実習などをサポートしてくれます。

地域の障害者就労支援センター

各地域に設置されている就労支援センターでは、生活面から仕事探しまで総合的な相談が可能です。困ったときに気軽に頼れる存在として活用できます。

長く働くための職場工夫

チェックリスト・マニュアルの導入

記憶障害や注意障害がある人にとって、「見える化」された仕組み が安心につながります。
チェックリストを活用すれば、作業の抜け漏れを防ぎ、完了したタスクを確認できるので達成感も得られます。
また、業務手順をマニュアル化しておけば、何度でも確認できるため、同じ指示を繰り返し受けるストレスも減らせます。

作業を小分けにして進める工夫

一度に大きなタスクを任されると混乱してしまう場合でも、小さな工程に分けて進める ことで集中しやすくなります。
「10分だけ集中して作業し、5分休憩する」など、ペース配分を工夫することも効果的です。

定期的な面談や相談機会の活用

上司や支援員との定期的な面談は、安心して働き続けるための大切な仕組みです。
業務の進め方や困っていることを共有することで、無理のない範囲での調整が可能になります。
特に就労初期は、「定期的に話せる機会がある」 こと自体が大きな支えになります。

家族や支援者との連携

仕事は一人で抱え込むものではありません。家族や支援者と連携することで、日常生活の安定や職場での困りごとの早期解決につながります。
「最近疲れていないか?」「職場で困っていることはあるか?」といった声かけがあるだけでも、安心感が大きく変わります。


まとめ

後天性障害による記憶障害や注意障害は、就職活動や仕事を続けるうえで確かに大きなハードルになります。
しかし、自己理解を深めること、面接での伝え方を工夫すること、支援制度を活用すること ができれば、働き続ける道は必ず開けます。

障害があるからといって「働けない」と決めつける必要はありません。
大切なのは、 「自分に合った仕事」と「支援・工夫」を組み合わせること です。読者の皆さんへメッセージ:
👉 記憶障害・注意障害があっても、支援や環境を整えることで、自分らしい働き方につながっていきます。焦らず、自分に合った環境とサポートを見極めることで、安定した就労を実現できます。

投稿者プロフィール

八木 洋美
自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。
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