2025/08/29
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特例子会社はDX化できている?実態とスキルアップの現実を解説

はじめに

特例子会社は、障害者雇用促進法に基づいて設立される仕組みであり、企業が法定雇用率を満たすためだけでなく、多様な人材が活躍できる環境を整える上で重要な役割を担っています。
従来、特例子会社での仕事は「事務補助」「軽作業」「清掃」など比較的シンプルな業務が中心でした。しかし、近年のDX(デジタルトランスフォーメーション)の波は、こうした特例子会社の業務内容や役割にも変化を迫っています。

では、実際に特例子会社はDX化を進められているのでしょうか? また、障害のある社員がスキルアップやキャリア形成につなげられているのか? 本記事では、その実態と課題をわかりやすく解説します。


特例子会社の基本と現状

特例子会社の仕組みとは

特例子会社とは、親会社が障害者雇用を進めるために設立した子会社のことです。法律上の要件を満たすことで、そこで雇用している障害者数を親会社の雇用率に合算することができます。
この仕組みによって、企業は障害者が働きやすい環境を整え、専門的な配慮を行いやすくなります。例えばバリアフリー設備の導入や職場サポートスタッフの配置など、一般の職場では難しい工夫を柔軟に取り入れられる点が特徴です。

従来の業務内容(事務補助・軽作業・清掃など)

特例子会社で長年行われてきた業務は、主に以下のような補助的・定型的な作業が中心でした。

  • 郵便物の仕分けや発送業務
  • 書類のコピー・ファイリング
  • データ入力やチェック作業
  • 清掃や社内美化活動
  • 軽作業(製品の組み立て、梱包など)

これらの業務は再現性が高く、障害特性に応じた分担がしやすいという利点があります。しかし一方で「単調な作業に偏りがち」「スキルが蓄積しにくい」という課題も指摘されてきました。

DX化以前に指摘されていた課題

DXが進む以前から、特例子会社には以下のような問題が存在していました。

  • キャリア形成が難しい
    単純作業が中心であるため、長期的なキャリアアップにつながりにくい。
  • スキルの汎用性が低い
    他の職場で活かせるスキルを習得できないケースが多い。
  • 「隔離雇用」的な側面
    障害者が親会社や他の部署と交流する機会が少なく、企業全体の戦力として活かされにくい。

こうした課題は、DXの推進により改善の兆しがある一方、企業によって進捗には大きな差が見られます。


特例子会社はDX化できているのか?

進んでいる企業の事例

一部の先進的な企業では、特例子会社においてもDXを取り入れた業務改革が進んでいます。

  • データ入力からRPA操作への移行
    ルーティン業務を自動化するRPAツールの設定や運用を担当し、より高度な作業へと役割を拡大。
  • クラウドシステムの運用補助
    親会社が導入するクラウドシステムのデータ管理やユーザーサポートを担う。
  • Webアクセシビリティ検証
    障害当事者の視点を活かし、ウェブサイトやアプリの使いやすさをチェックする業務。

これらの事例では「障害者の強み」を活かしながら、企業にとっても価値のある仕事を任せることで、従業員のスキルアップやキャリア形成につながっています。

遅れている企業の現実

一方で、多くの特例子会社はまだDX化に追いつけていません。

  • 相変わらず単純作業や軽作業中心
  • ITツールをほとんど活用できていない
  • 親会社との連携不足で「別会社の隔離雇用」のまま

このような環境では、社員がスキルを伸ばす機会が乏しく、結果としてモチベーションや定着率にも悪影響を与えています。

なぜDX化が難しいのか

DXの重要性が叫ばれる中で、なぜ特例子会社はDX化が進まないのでしょうか。背景には以下の要因があります。

  • 業務切り出しの難しさ
    障害特性に合わせて「任せられるDX業務」をうまく設計できていない。
  • 教育体制・セキュリティの不足
    IT業務にはセキュリティ面の配慮や専門教育が不可欠だが、十分に整備されていない。
  • 親会社との連携不足
    DX業務を子会社に切り出す方針がなく、単純作業だけが残されてしまう。

スキルアップの現実

必要とされる新しいスキル

特例子会社においても、DXの進展により求められるスキルは大きく変化しています。従来の軽作業だけではなく、以下のようなデジタル業務に対応できる基礎力が重視され始めています。

  • PC基礎スキル(Word・Excel・Teamsなどの基本操作)
  • RPAツールの操作やクラウドサービスの運用補助
  • データチェックや簡単なプログラミング

これらは特別な専門職に限らず、障害の有無を問わず今後の労働市場で普遍的に必要とされるスキルでもあります。

スキルアップ支援を実施している特例子会社の取り組み

一部の企業では、特例子会社で働く社員のスキルアップに積極的な取り組みを始めています。

  • 社内研修や外部講座受講の導入
    会社が費用を負担し、障害者社員が継続的にPCスキルやITリテラシーを学べるようにしている。
  • 職業訓練校やエージェントとの連携
    外部機関と協力し、基礎教育から実務スキルまで幅広く習得できる仕組みを整備。

こうした取り組みにより、従業員は「作業者」から「専門補助スタッフ」へと成長する道が開けつつあります。

壁となる現実

しかし現状では、スキルアップの機会はまだ十分ではありません。

  • 研修機会の不足
    日常業務に追われ、体系的な学習機会が確保されていない。
  • 即戦力志向が根強い
    「採用=すぐに成果を出す」ことを前提にしている企業が多く、育成に時間をかけない。
  • DX化できているのは一部の大手のみ
    中小規模の特例子会社では教育投資が難しく、取り残されるケースが目立つ。

企業と働く側に求められること

企業に必要な取り組み

DX化の時代に特例子会社が真に成長するためには、単なる制度の活用にとどまらず、企業の姿勢そのものが問われます

  • 「即戦力」ではなく「育成型戦力化」
    特例子会社における障害者雇用は、すぐに成果を出す人材を確保する場ではありません。大切なのは、入社後に少しずつスキルを積み重ね、将来的に会社の成長を支える戦力へと育てていく視点です。研修やOJTを通じて「できることを広げていく仕組み」を整えることが、長期的な定着とキャリア形成につながります。
  • 障害特性に合ったデジタル業務の切り出し
    DX業務といっても、全員に同じ内容を求めるのは現実的ではありません。例えば、集中力が高い社員にはデータチェック、細かなルールに強い社員にはRPAのシナリオ設定、感覚的に操作が得意な社員にはアクセシビリティ検証といった形で、特性にマッチした業務を設計することが重要です。これにより社員は「得意分野で成果を出せる」という自信を持ち、モチベーションも高まります。
  • キャリアパスの整備
    特例子会社の中だけで完結するのではなく、培ったスキルを親会社や新規プロジェクトでも活かせる仕組みを整えることが望まれます。例えば、RPA運用補助を経験した社員が将来的に親会社のシステム部門で補助的な役割を担うなど、「成長のステップ」を用意することが本人のキャリアアップにつながり、企業にとっても投資効果の高い雇用になります

働く側に必要な準備

もちろん、企業の姿勢だけでなく、働く本人にも主体的な準備が求められます。

  • 最低限のPCスキル習得
    WordやExcelといった基本ツールの操作は、DX業務の入口として必須です。入力や表作成といった基礎からスタートし、関数やグラフの活用へとステップアップすることで、業務の幅が広がります。基本操作ができるだけで「任せられる業務の選択肢」が格段に増えるのです。
  • 在宅勤務に必要なオンラインスキル
    DX化に伴い、在宅勤務の機会も増えています。その際にはTeamsやZoom、Slackなどのオンラインツールをスムーズに使いこなす力が求められます。単に接続できるだけでなく、画面共有やチャットでの報告、ファイルのクラウド管理など、**「オンラインで一人前に仕事を回せるスキル」**が重要です。
  • 自ら学び続ける姿勢
    IT分野は日々進化しており、学びを止めてしまうとすぐに時代遅れになってしまいます。Eラーニングや資格試験を活用し、少しずつでも新しい知識を吸収することが大切です。ときには社外の研修やセミナーに挑戦することも、自信や人脈の広がりにつながります。「学び続ける意欲」そのものが最大のスキルだと言えるでしょう。

特例子会社の未来と期待される方向性

DX化による業務の高度化

これからの特例子会社は、従来の「軽作業を任せる場」から脱却し、企業のデジタル戦略を支える拠点として発展していく可能性があります。

  • AI・RPA業務の補助
    単純作業を自動化するRPAや、AIを活用したシステムは、導入後の運用やエラー検証が欠かせません。特例子会社の社員がこれらの補助業務を担うことで、親会社は効率的にDXを進めることができます。例えば「毎日のデータ入力をAIに任せ、その精度をチェックする」といった役割は、正確性や集中力を強みとする人材が大きく貢献できる分野です。
  • 在宅勤務支援の中核
    コロナ禍以降、在宅勤務は一般化しましたが、障害のある社員にとっては「在宅環境をどう整えるか」が新たな課題です。特例子会社がリモート環境の設定支援やオンラインツールのサポートを行うことで、障害者が安心して在宅勤務を継続できる基盤をつくれます。将来的には「在宅勤務の支援センター」としての役割を果たす特例子会社も増えていくでしょう。

障害者雇用の新しい形

DXは、障害者雇用の在り方そのものを大きく変えつつあります。

  • 「単純作業」から「専門補助」へ
    これまでの封筒封入や清掃といった仕事だけでなく、Webアクセシビリティの検証やクラウドシステムの運用補助など、「専門知識を活かした補助的役割」が広がっています。これにより、社員一人ひとりの強みや特性に合わせた業務設計が可能になり、仕事へのやりがいも飛躍的に高まります。
  • キャリアアップや自立につながる
    デジタルスキルを習得すれば、特例子会社の枠を超え、親会社や別部署でのキャリアに挑戦できる道が開けます。例えば「データ管理スキルを磨き、親会社のシステム部門に異動する」といった事例も現実的になりつつあります。これは本人の経済的自立や社会参加にも直結し、障害者雇用の新しい価値を生み出す動きです。

求職者へのメッセージ

「特例子会社=軽作業」というイメージは、確実に過去のものになりつつあります。これからは、DXの波をどう活かすかがキャリア形成の鍵です。

大切なのは、変化を恐れるのではなくチャンスととらえる姿勢です。WordやExcelの基礎から一歩ずつ学び、RPAやクラウドなど新しい分野に挑戦することで、確実に自分の可能性を広げられます。

特例子会社は「守られる場所」ではなく、「成長のステージ」へと進化しています。これから就職を考える方も、今働いている方も、自分に合ったスキルを着実に身につけることで、未来のキャリアを切り開くことができるでしょう。


まとめ

特例子会社のDX化は、企業によって進捗に大きな差があります。すでにRPAやクラウド業務を取り入れ、新しいキャリアの場を広げている企業がある一方、いまだに軽作業中心から抜け出せず「隔離雇用」の形にとどまっている企業も少なくありません。

しかし確実に言えるのは、DXは特例子会社にとって単なる流行ではなく、今後の存続と発展を左右する大きな潮流だということです。
デジタル業務の導入は、企業にとっては生産性や効率性を高める手段であり、障害のある社員にとってはスキルアップとキャリア形成を実現するチャンスでもあります。

また、企業側に「育成型戦力化」の姿勢があれば、特例子会社は親会社の一部門として真の意味で機能し、DX推進を支える存在になり得ます。反対に、この姿勢を欠けば、法定雇用率の達成という形式的な役割にとどまり、社員の成長も企業の競争力も停滞してしまうでしょう。

読者の皆さんへのメッセージはシンプルです。
「特例子会社=軽作業の場」という時代は終わりつつあります。これからは“育成とDX”をキーワードに、障害者雇用はより高度で社会に貢献できる形へと進化していきます。

これから就職・転職を考えている方も、すでに特例子会社で働いている方も、自分に合ったスキルを身につけて挑戦することが、未来のキャリアを切り開く力になります。そして企業にとっても、障害者を「コスト」ではなく「投資」としてとらえることで、DX時代を共に成長していく仲間を得られるのです。

投稿者プロフィール

八木 洋美
自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。
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