2025/09/05
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知的障害者は事務職で働ける?企業が知っておくべき採用の実態と成功事例

はじめに

「知的障害者=事務職は難しい」というイメージを持つ企業担当者は少なくありません。臨機応変な対応や複雑な判断が求められるのではないか、コミュニケーションがスムーズにいかないのではないか、といった懸念が根強く存在します。
しかし実際には、得意分野や強みを活かすことで、知的障害のある方が事務職で安定的に活躍している事例は数多くあります。

この記事では、知的障害者の事務職での適性や採用の実態、企業側が感じやすい不安点、そして成功事例に基づく支援策について解説します。採用の可能性を広げるために、まずは「どのような仕事が適しているのか」「どのような配慮が必要なのか」を整理して理解することが重要です。


知的障害者と事務職の関係

事務職に求められる基本スキル

事務職と聞くと、幅広い業務をイメージする方も多いですが、実際に現場でよく求められるのは以下のような基本的なスキルです。

  • PC操作(Word・Excelの基本):定型フォーマットの入力や、簡単な表の作成など。
  • 書類整理・ファイリング:紙資料や電子データの管理。
  • データ入力・チェック作業:正確さと丁寧さが重視される業務。

これらは必ずしも高度な判断力を必要とする業務ではなく、ルールや手順が明確であることが多いのが特徴です。

知的障害者が得意とするケース

知的障害のある方には、事務職で強みを発揮できるケースがあります。

  • 反復作業やルールが明確な仕事に強みを発揮することが多い。例えば、決まった手順を繰り返すデータ入力やファイル整理は適性が高い場合があります。
  • PC操作が得意な人もいる。中には趣味としてExcelやタイピングを学び、正確でスピーディな入力を得意とする人も少なくありません。

つまり、「事務職全般が難しい」というのは誤解であり、仕事内容を適切に選べば戦力として十分に活躍できるのです。


企業が不安に感じやすいポイント

臨機応変な対応は難しいのでは?

「突発的な依頼やイレギュラー対応は任せられないのでは」と懸念する声があります。確かに、急な判断を伴う業務は難しいケースもあります。しかし、業務を細分化して役割を明確にすれば、安定して成果を出せることが多いです。

コミュニケーションが不足しがち?

知的障害のある方の中には、言葉での説明が苦手な人もいます。ただし、チャットやチェックリスト、視覚的なマニュアルを活用することで、円滑なやり取りが可能になります。職場の理解を高めれば、コミュニケーションの壁は大きな課題にはなりません。

教育に手間がかかるのでは?

初期段階では丁寧な指導が必要ですが、一度覚えた業務は繰り返し正確に実行できる人が多いのも特徴です。教育にかけた時間が、その後の安定したパフォーマンスとして戻ってくると考えると、投資として十分に価値があります。


成功事例から見る事務職での活躍

データ入力業務での成功例

近年はシステム化や自動入力が進んでいますが、顧客情報やアンケート結果、売上データの入力など、人の確認を必要とする業務は依然として存在します。ある企業では、決められたフォーマットへの入力を任せたところ、ミスが少なく正確性が評価されました。反復作業を得意とする特性が活かされた結果です。

スキャニング・電子化業務

ペーパーレス化が進んでいる一方で、契約書や請求書、医療記録など、原本保管が必要な書類を電子化する作業は今でも多くの企業で発生しています。こうした定型的なスキャニング業務を担当したケースでは、決まった手順を繰り返す作業が安定就労につながりました。

郵便物仕分け・社内文書整理

DXによって社内文書はクラウド化が進んでいますが、取引先から届く郵便物や紙の資料がゼロになることはまだありません。郵便物の分類や必要書類の整理といった業務は、視覚的・反復的な作業であり、集中して取り組むことができるため、職場での信頼につながりました。

企業が工夫した支援策

  • マニュアルを「文字+画像」で作成:視覚的に理解しやすくすることで習得が早まる。
  • チェックリストを常に活用:抜け漏れ防止と安心感につながる。
  • 定期的にフィードバックを行う:達成感を感じやすくし、モチベーションを維持できる。

事務職で働くために必要な支援・環境

教育体制の工夫

知的障害のある方が事務職で力を発揮するには、教育方法を工夫することが大切です。OJTのように「見て覚える」形式だけでは理解が難しいケースもあるため、マニュアル+反復練習が効果的です。文字と画像を組み合わせた手順書やチェックリストを用意することで、安心して業務を繰り返せます。
また、ジョブコーチや支援員の関与も有効です。専門的なサポートを受けながら業務を覚えていくことで、職場定着につながります。

業務切り出しの工夫

いきなり幅広い業務を任せるのではなく、簡単な業務から徐々に範囲を広げることがポイントです。最初はデータ入力やファイリングなどルールが明確な仕事から始め、慣れてきたら関連業務を追加する形が望ましいでしょう。
小さな成功体験を積み重ねることで自信が育ち、長期的な就労の安定につながります。


採用する企業が得られるメリット

定着率の高さ

知的障害のある方は、適性のある業務を任せられると長期的に安定して働く傾向があります。特に反復作業や定型業務に強みを持つため、離職率の低さが企業にとって大きなメリットとなります。

業務効率化への貢献

日常的に発生する単純・定型業務を任せることで、他の社員が本来の業務に集中でき、職場全体の効率化につながります。これは結果的に組織全体の生産性向上にも寄与します。

ダイバーシティ推進

知的障害のある社員を迎え入れることは、多様性を尊重する企業文化の醸成にも直結します。共に働く社員の理解が深まり、共生意識が育つことで、組織の健全性やチームの一体感が強まります。


まとめ

知的障害のある方でも、適性を見極めて業務を切り出し、教育体制や支援環境を整えれば、事務職での就労は十分に可能です。反復作業や定型業務を中心に、データ入力・文書整理・スキャニングといった仕事で安定した成果を出す事例は現在も存在しています。

さらに、発達障害の方と同様に「ルールが明確な業務に強みを発揮する」という共通点も見られるため、配置や指導方法を工夫することで長期的な定着が期待できます。

企業にとっては、単純業務を任せることで効率化が進み、他の社員がコア業務に集中できるというメリットも大きいです。また、多様な人材が協働することで職場の理解が深まり、ダイバーシティ推進にもつながります。

不安よりも「可能性」に目を向けてほしい――それが本記事を通じて企業に伝えたいメッセージです。知的障害者の採用は、単なる社会貢献ではなく、企業自身の成長戦略の一つとして位置づけられるでしょう。

投稿者プロフィール

八木 洋美
自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。
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