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発達障害あるある|優先順位がつけられないときの工夫とは?

この記事の内容
はじめに

「やることが多すぎて、どれから手をつければいいのかわからない」――発達障害の特性を持つ方からよく聞かれる悩みのひとつが、「優先順位をつけられない」という困りごとです。
職場では、複数の仕事が一度に舞い込み、気づけば納期直前に焦って徹夜する。日常生活でも、掃除や買い物などの家事を同時並行で進めようとして、どれも中途半端に終わってしまう……。こうした経験は、決して珍しくありません。
本記事では、
- なぜ優先順位をつけられないのか(背景理解)
- 具体的にどのような工夫をすれば改善できるのか
を解説していきます。仕事や生活の中で少しでも混乱を減らし、自分らしく行動できるヒントにしていただければ幸いです。
なぜ優先順位がつけられないのか?(背景理解)
ASD(自閉スペクトラム症)の場合
ASDの特性を持つ人は、物事を「全体」として捉えるよりも、部分的・個別的に捉える傾向があります。そのため、複数のタスクがあるときに「全体の中でどれが一番大切か」を判断するのが難しく、すべての作業を並列に同じ重さで感じてしまうのです。
また、細部に強いこだわりを持つ傾向も見られます。例えば、報告書を作成するときに「フォントの統一」や「余白の調整」に過剰に時間を使いすぎてしまい、肝心の内容を書く時間が足りなくなるケースがあります。こうした状況は、本人にとって「やるべきことをしている」感覚でも、周囲からは「重要な作業を後回しにしている」と見えてしまうのです。
つまりASDでは、「優先度を考えるよりも、目の前の細部を整えることに集中してしまう」ことが、優先順位をつけにくくする大きな要因となります。
ADHD(注意欠如・多動症)の場合
ADHDの特性を持つ人は、「注意の切り替え」が苦手であり、目の前の刺激や興味を引く作業に強く惹かれてしまいます。重要度は低くても「今やりたい」「今面白そう」と感じたことを優先してしまい、本当にやるべきタスクを後回しにしてしまうのです。
また、「期限が遠いタスク」をイメージして行動に移すことが難しく、「まだ大丈夫」と先延ばししがちです。結果として、締切直前に慌てて作業を進めることになり、徹夜や焦りによるミスにつながることも少なくありません。
ADHDの人にとっては、「優先度よりも刺激の強さで行動が決まってしまう」ことが、タスク管理を難しくする大きなポイントです。
共通の困りごと
ASD・ADHDに共通しているのは、「すべてのタスクが同じように重要に見える」という点です。そのため、どれから手をつけてよいのかわからず、作業を先延ばしにしてしまうことがあります。
さらに、感情や体調、ストレスの影響を強く受けやすいという特徴もあります。昨日は「絶対にやらなければ」と思っていた仕事に、今日は全く手をつけられない――そんな波が生まれやすいのです。本人にとっては「やる気がない」のではなく、「脳の働き方の特性によって優先順位が安定しない」ということなのです。
職場でよくある「優先順位がつけられない」事例

- 同時に複数の依頼がきてパニックになる
上司や同僚から次々に依頼が舞い込み、どれから手をつけるべきかわからず混乱する。 - 締切直前まで取りかかれず徹夜する
「そろそろやらなきゃ」と思いながらも先延ばししてしまい、結果的にギリギリで対応する。 - 重要ではない作業に時間をかけすぎる
細部にこだわりすぎて、緊急度の高いタスクを後回しにする。 - 上司から「効率が悪い」と注意される
成果物が遅れたり、優先順位のずれでトラブルが発生したりして、職場での評価が下がってしまう。
こうした事例は、本人の努力不足ではなく「特性による困りごと」であることを理解することが大切です。
優先順位をつけるための工夫(実践テクニック)
タスクを「見える化」する
頭の中だけで管理しようとすると、混乱や抜け漏れにつながりやすいです。ToDoリストや付箋を使って書き出したり、アプリ(例:Trello、Notion)を活用したりして、タスクを視覚的に整理しましょう。見える化することで、客観的に状況を把握しやすくなります。
「緊急度」と「重要度」で仕分ける(アイゼンハワーマトリクス)
タスクを仕分けるシンプルな方法に、「緊急度」と「重要度」の2軸で分類する方法があります。
- 緊急かつ重要 → 今すぐ取りかかる
- 重要だが緊急でない → 計画的に進める
- 緊急だが重要でない → 他の人に依頼・短時間で処理
- どちらでもない → 後回し/削除
「すべてが同じに見えてしまう」状態を防ぎ、優先順位を客観的に決めやすくなります。
生活で使える工夫

家事の優先順位
家庭内のタスクも「優先順位がつけられない」悩みにつながりやすい部分です。例えば洗濯物は、たまってからまとめてやろうとすると時間も手間もかかります。「明日の服がなくなる前に洗う」といったルールを決めることで、先延ばしを防ぎやすくなります。
掃除や料理も、「完璧に仕上げる」ことを目指すより、最低限やるべきことを先に済ませることを意識すると、気持ちの負担が軽くなります。
買い物リストを優先度で分ける
買い物をするとき、「必要なものを思い出せない」「余計なものを買ってしまう」といった困りごとも起きがちです。そんなときは、リストを優先度ごとに分けるのがおすすめです。
- 絶対に必要(牛乳、米など)
- あった方が良い(日用品や嗜好品)
- 余裕があれば購入(お菓子や特売品)
こうして整理するだけで、買い物がスムーズになり、無駄な出費も減らせます。
休日の過ごし方も「重要度」で選ぶ
休日は自由度が高いため、何をして過ごすか迷ってしまうこともあります。優先度を意識して、「心身の休養」や「生活に必要な準備」を先に選び、その上で趣味や娯楽を取り入れるとバランスがとりやすくなります。
たとえば「午前中は病院に行く」「午後は趣味の時間」というように計画しておくと、後回しによる後悔が減り、安心感も高まります。
企業・職場でできるサポート
上司や同僚が優先順位を明確に伝える
発達障害のある社員にとって、あいまいで抽象的な指示は大きな混乱につながります。
「とりあえずこれをやって」ではなく、「まずはA、その次にB、最後にC」と順序を具体的に伝えることが重要です。さらに、期限や所要時間の目安を一緒に示すと、本人が見通しを立てやすくなります。
たとえば「今日中に終わらせる必要があるのはこの書類。その後に時間があればデータ整理を」といった伝え方をすると、優先度が明確になり、迷わず行動に移せます。小さな工夫ですが、本人にとっては安心感と作業効率の向上につながる大きな支援となります。
業務マニュアル・チェックリストの整備
タスクの流れや必要な手順をマニュアルやチェックリストとして「見える化」しておくことも有効です。
口頭での説明だけでは記憶が曖昧になりやすく、抜け漏れや混乱を招きます。そこで、作業手順を紙やデジタルツールで明文化しておけば、本人が自分のペースで確認しながら進められます。
また、チェックリストは「終わったら✓を入れる」仕組みにすると、達成感も得られます。小さな成功体験の積み重ねは、自己肯定感の向上にもつながり、結果的に仕事へのモチベーションを高めます。
相談できる環境をつくる
発達障害のある人は、「迷惑をかけるのでは」と不安になり、困っていても自分から相談できないことがあります。そのため、職場では「わからないときは聞いていいよ」と事前に伝えることが大切です。
さらに、相談のハードルを下げる工夫として、
- 定期的に短時間の面談やチェックインを設ける
- チャットやメモで気軽に質問できる仕組みを整える
- 「相談してくれてありがとう」とポジティブに受け止める雰囲気をつくる
といった取り組みも効果的です。こうした環境が整えば、社員は安心して業務に集中でき、結果的に離職率の低下やチーム全体の安定にもつながります。
まとめ
発達障害のある方が「優先順位をつけられない」と感じるのは、怠けや努力不足ではなく、脳の特性によるものです。ASDでは全体像をつかみにくく細部にこだわりすぎてしまう、ADHDでは注意の切り替えが難しく目の前の刺激に引っ張られてしまう、といった背景があります。その結果、すべてが同じ重要度に見えて混乱したり、感情やストレスによって優先度が変わってしまうことがあるのです。
しかし、これは改善できない問題ではありません。
- 見える化(ToDoリスト・付箋・アプリ)
- 仕分け(緊急度×重要度で分類)
- 分解(大きな仕事を小さなステップに)
- 相談(他人と優先度を確認する)
こうした工夫を取り入れることで、自分なりに順番を整理でき、作業への不安や焦りを軽減することができます。
また、職場や家族の理解とサポートも欠かせません。上司や同僚が「優先順位を明確に伝える」「チェックリストを整える」「相談しやすい雰囲気をつくる」などの工夫をすることで、本人だけでなく職場全体の効率や定着率の向上にもつながります。これは、組織にとっても大きなメリットです。最後にお伝えしたいのは――「一人で抱え込む必要はない」ということ。優先順位をつけるのが難しいと感じても、工夫や周囲の支援を取り入れながら、自分に合った働き方や暮らし方を築いていくことは十分に可能です。小さな改善が積み重なれば、大きな安心と自信に変わっていきます。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。







