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発達障害あるある|雑談・会話が苦手で孤立してしまうときの対策

この記事の内容
はじめに
発達障害(ASD・ADHD)を持つ人の多くが直面するのが、「雑談や会話が苦手で孤立してしまう」という課題です。
職場・学校・地域など、人間関係が生まれるあらゆる場面で、雑談は信頼関係づくりの入口として大きな役割を果たします。しかし、発達障害の特性がある人にとっては、この“何気ないやり取り”が大きなハードルとなり、孤立感や誤解を招くことがあります。
本記事では、なぜ発達障害のある人が雑談や会話を苦手と感じやすいのか、その背景を解説しながら、孤立を防ぐための具体的な工夫や周囲にできる配慮について紹介します。
発達障害の人が雑談や会話を苦手とする理由

ASD(自閉スペクトラム症)の場合
ASDの特性を持つ人は、暗黙のルールや場の空気を読むことが難しいケースが多いです。そのため、会話の切り替えが苦手で「一方的に話し続ける」あるいは「黙り込んでしまう」といった誤解を受けることがあります。
例えば、興味のある分野について熱心に話しすぎて「会話のキャッチボールができない」と見なされることもあります。
ADHD(注意欠如・多動症)の場合
ADHDの特性がある人は、相手の話を遮ってしまうことや、集中力の波によって会話が続かないといった傾向が見られます。
本人に悪意はなくても「落ち着きがない」「人の話を聞いていない」と誤解されることがあり、人間関係に影響することも少なくありません。
その他の背景
- 感覚過敏:休憩室など雑談の場が騒がしいと、音や人の動きで疲れてしまう。
- 認知の違い:「雑談は意味がない」と感じ、必要性を理解しにくい。
このように、雑談が苦手なのは「性格」ではなく「特性」によるものだと言えます。
雑談・会話が苦手だと起きやすい問題
職場での孤立
雑談やちょっとした会話は、職場で人間関係を築くための潤滑油です。
しかし発達障害のある人にとっては、この「何気ないやり取り」が難しく、関係構築がうまくいかないことがあります。結果として「協調性がない」と誤解され、周囲から距離を置かれるケースも少なくありません。
例えば、休憩時間に同僚同士が趣味や家庭の話題で盛り上がっている中で、一人だけ会話に入れず疎外感を抱くことがあります。やがて飲み会やランチ会などの非公式な交流にも誘われにくくなり、ますます孤立感が強まってしまうのです。
評価への影響
雑談や会話は業務そのものとは直接関係ないように思えますが、多くの職場では「コミュニケーション力」として評価の一部に組み込まれています。
そのため雑談が苦手な人は「人間関係を築けない=仕事にも支障がある」と誤解されやすく、昇進や新しい業務を任せてもらえるチャンスを逃すことがあります。
例えば、「あの人は真面目に働いているけど無口だから、顧客対応は難しいだろう」と判断され、接客や営業の機会から外されてしまうこともあります。本人の能力とは無関係に評価が下がってしまうのは、大きな問題です。
メンタル面への影響
雑談が苦手で孤立してしまうと、本人の心にも大きな負担がかかります。
「自分だけが仲間に入れない」「努力しても分かってもらえない」という感覚が強まると、孤立感や疎外感が深まり、やがてうつ病や不安障害といった二次障害につながることがあります。
さらに、雑談ができないことを「努力不足」や「社会性の欠如」と決めつけられると、自尊心が傷つき「自分はダメな人間だ」と感じてしまうことも少なくありません。こうした悪循環は、仕事だけでなく私生活にも影響し、長期的に大きなストレス要因となっていきます。
孤立を防ぐための対策(本人編)

会話のきっかけを作る工夫
雑談が苦手な人にとって、一番のハードルは「最初の一言」です。
あらかじめ「天気」「仕事の進捗」「共通の話題」など、無難で使いやすい定番フレーズをいくつか準備しておくと安心です。
- 「今日は冷えますね、通勤大変じゃなかったですか?」
- 「この前の会議の資料、わかりやすかったですね」
- 「週末はどこか行かれましたか?」
といった短い一言から会話を始めれば、自然に話が広がります。
また、無理に自分から話題を振らなくても、「聞き役」になることも有効です。相手の話にうなずいたり、相槌を打ったり、「それはどういうことですか?」と質問するだけで、会話は続きやすくなります。話すことにエネルギーを使わずとも、相手との距離感を縮めることができます。
雑談が苦手な場面を限定する
すべての雑談に参加する必要はありません。特に休憩時間や飲み会など、会話が中心になる場では疲れやすいため、自分のリフレッシュを優先する選択も大切です。
たとえば、
- 休憩時間は読書や音楽を聴いてリラックスする
- 週1回だけランチに参加し、それ以外は一人で過ごす
- 大人数の飲み会は避け、少人数の会にだけ顔を出す
といった工夫で「無理をしない」ことが、結果的に人間関係を長く続けるコツになります。雑談をすべて断るのではなく、**「参加する場面を選ぶ」**というスタンスが現実的です。
自分の特性を伝える
自分が雑談に苦手意識を持っていることを、勇気を出して伝えるのも有効です。
「雑談は少し苦手ですが、仕事には前向きです」と一言添えるだけで、相手の理解を得やすくなります。
さらに、必要に応じて具体的な配慮をお願いすることもできます。
- 「大人数の飲み会は疲れてしまうので、業務連絡はチャットでいただけると助かります」
- 「にぎやかな場所では聞き取りにくいので、静かな場所で話してもらえるとありがたいです」
こうした伝え方をすることで、相手も「無理に雑談に巻き込まなくていいんだ」と安心し、本人も過度なストレスを抱えずにすみます。
孤立を防ぐための対策(職場・周囲編)

企業・上司ができること
まず大切なのは、雑談への参加を強制しない文化づくりです。
「みんなでランチに行くのが当たり前」「雑談で盛り上がれないと協調性がない」といった雰囲気があると、発達障害のある社員は強いプレッシャーを感じてしまいます。自由に選択できる雰囲気をつくることで、無理に合わせるストレスを軽減できます。
さらに、コミュニケーション能力と成果を分けて評価する仕組みも重要です。
雑談が得意かどうかと、仕事の成果は本来別の問題です。たとえば「雑談が苦手でも、資料作成や分析力に優れている社員」を正しく評価できる制度を整えることで、多様な人材が安心して力を発揮できる職場になります。
実際に、面談や評価シートの中で「業務遂行能力」と「人間関係構築力」を明確に分けてチェックする仕組みを導入している企業も増えています。こうした取り組みは、社員全体のモチベーション維持にもつながります。
同僚ができること
同僚一人ひとりの意識も欠かせません。
「話さないから無口な人」と一方的にラベルを貼るのではなく、仕事上のやり取りをきっかけに信頼関係を築くことが大切です。
例えば、
- 「この資料どう思いますか?」と意見を求める
- 「この部分だけ手伝ってもらえますか?」と役割を共有する
- 感謝の言葉を伝える
といったシンプルなやり取りからでも、人間関係は自然と育まれていきます。雑談が苦手でも「仕事を通じた交流」なら得意な人も多く、その延長線上で信頼感が生まれるのです。
ジョブコーチ・支援者の役割
孤立を防ぐためには、外部の支援を取り入れることも効果的です。
ジョブコーチや支援者は、本人に対して会話スキルを練習するサポートを提供できます。たとえば「挨拶の仕方」や「会話の切り返し」など、具体的なロールプレイを通じて自信を持たせることができます。
同時に、ジョブコーチは職場に対して特性理解を伝える仲介役にもなります。
「この社員は雑談よりも業務の話から入る方が会話しやすい」といった情報を上司や同僚に伝えることで、双方が無理なく関わるきっかけをつくります。
こうした第三者が入ることで、本人も「理解してもらえている」という安心感を得られ、職場側も「どう対応すればいいのか」という不安を減らすことができます。結果的に、双方にとって働きやすい環境が実現します。
実際に効果があった工夫・事例
事例① 雑談の代わりにチャットで交流
口頭の雑談は苦手でも、チャットなら安心してやり取りできるケースがあります。
事例② 休憩時間は読書しつつ、声をかけられたら応じる
自分の時間を優先しつつ、相手のアプローチには応える方法で、無理なく関係を維持できます。
事例③ 上司が「業務の話題から入る」工夫
業務の話から始めることで、本人も会話に入りやすくなり、自然と雑談に発展していきます。
まとめ
発達障害のある人が雑談や会話を苦手とするのは、性格の問題ではなく特性によるものです。
そのため、孤立してしまうことは「本人の努力不足」ではなく、しばしば周囲の理解不足や環境のミスマッチから起こっています。
雑談や会話が得意でなくても、工夫やサポート次第で人間関係を築くことは十分可能です。本人は「定番フレーズを準備する」「聞き役に回る」「参加する場を選ぶ」「特性をオープンに伝える」といった方法で無理なく関わることができます。一方で職場や周囲は、「雑談を強制しない文化」「成果と会話を切り分けた評価」「仕事を通じた信頼づくり」を意識することで、安心して働ける環境を整えられます。さらにジョブコーチなど外部の支援を取り入れれば、双方の理解を深める大きな助けとなります。
つまり、「雑談が苦手だから孤立する」のではなく、お互いに歩み寄る工夫と仕組みづくりで孤立は防げるのです。
読者へのメッセージとして強調したいのは、無理に雑談上手を目指さなくてもいいということ。大切なのは、自分に合ったコミュニケーションスタイルを見つけ、それを周囲と共有することです。そして周囲もまた、「雑談の得意・不得意」で人を判断するのではなく、その人が持つ力や成果を正しく評価していく姿勢が求められます。
雑談や会話に不安を感じている方も、安心してください。小さな工夫と理解の積み重ねで、孤立感を減らし、自分らしく安心して働ける環境を築くことは必ずできます。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。







