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義足・義手の社員を迎える職場で知っておきたい配慮ポイント

この記事の内容
はじめに
近年、障害者雇用を推進する流れの中で、義足や義手を使用する社員を受け入れる企業が増えてきています。厚生労働省が定める法定雇用率の引き上げもあり、採用現場では「障害のある方を積極的に採用したい」という機運が高まっています。
しかしその一方で、
「どんな配慮が必要かわからない」
「現場で困ったときにどう対応すればいいのか不安」
と感じる人事担当者や現場責任者も少なくありません。
本記事では、義足・義手を使用する社員を迎える際に企業が知っておくべきポイントを、課題・配慮・実例・制度活用の観点から整理して解説します。単なる「特別扱い」ではなく、誰もが働きやすい職場づくりのヒントとしてお役立てください。
義足・義手の社員が直面しやすい課題

身体的な負担
義足や義手を利用する社員は、健常者と同じように働ける場面も数多くあります。しかし、その一方で、義肢特有の身体的な負担を抱えやすいという特徴があります。
- 長時間の歩行や立ち仕事
義足は歩行を可能にする一方で、残存肢に摩擦や圧迫がかかりやすく、時間が経つにつれて痛みや疲労が強くなることがあります。特に、ソケットと呼ばれる義足と体を接合する部分は皮膚トラブルが起こりやすく、炎症や傷が生じてしまうケースもあります。立ち仕事や長距離移動を伴う職場では、この負担が蓄積してパフォーマンスに影響することもあります。 - 重量物の持ち運び
義手を使用する場合は握力や保持力に限界があり、重い荷物を持ち続けるのは困難です。また義足の場合、バランスを崩しやすく、片手に重さが偏ると転倒リスクが高まります。職場によっては「他の社員と同じだけ運んでほしい」という無意識の期待がかかることもありますが、無理を重ねると身体に大きなリスクを伴います。 - 「やればできる」という誤解
見た目には普通に歩けたり作業できるように見えるため、周囲から「健常者と変わらない」と思われることも少なくありません。しかし、無理をしてしまうことで疲労やケガにつながり、長期的な就労継続を妨げる恐れがあります。業務配分では「見た目」ではなく「実際の負担」に着目することが重要です。
作業環境の課題
次に大きな壁となるのが職場環境です。設備や動線が義足・義手ユーザーに合っていないと、日常的に強いストレスやリスクを感じながら働くことになります。
- 段差や狭い通路
ちょっとした段差でも義足使用者にとっては大きな障害となります。転倒やバランス崩壊のリスクが常につきまとい、安心して移動できません。特に工場や倉庫などでは、通路の狭さや床面の凹凸が事故につながることがあります。 - 作業台や机の高さ
義手使用者は作業台が高すぎると腕が届きにくく、逆に低すぎると姿勢を崩して腰や肩に負担がかかります。義足の場合も、長時間同じ姿勢を維持するのが難しく、椅子や机の高さ調整が不十分だと疲労や痛みが増します。 - 小さな差が大きな影響に
机の数センチの高さ、通路の数十センチの幅といった些細な違いが、義足・義手ユーザーにとっては働きやすさや安全性を左右する大きな要因になります。環境の調整は、配慮の中でも効果が出やすい重要ポイントです。
心理的な課題
身体や環境への負担と同じくらい深刻なのが、心理的な課題です。
- 周囲の目線や誤解
「配慮されすぎて気まずい」「逆に何もしてもらえず孤立する」といった状況は、精神的なストレスになります。例えば、義足で立ち仕事をしているときに「大丈夫そうだから支援は不要だろう」と誤解される一方で、必要以上に特別扱いされると「自分は弱者扱いされている」と感じてしまうこともあります。 - 支援をお願いしづらい心理的ハードル
「迷惑をかけたくない」「頑張っていると思われたい」という気持ちから、必要な配慮を自分から言い出せない社員も多くいます。その結果、無理を重ねて体調を崩したり、職場に居づらさを感じて離職につながるケースも少なくありません。 - 自己肯定感への影響
周囲の理解が不十分だと「自分は戦力になれていないのではないか」と不安を抱え、自己肯定感の低下につながることもあります。心理的な課題は目に見えにくいからこそ、企業や同僚が意識的にサポートする姿勢が求められます。
職場で必要な配慮ポイント

物理的環境の整備
まず取り組みやすいのは、職場の環境改善です。
- バリアフリー化:段差解消や通路幅の確保、バリアフリートイレの利用可能性を確認する。
- 作業スペースの高さや動線調整:机や作業台の高さを調整するだけで負担が軽減されます。
大掛かりな改修が難しい場合も、机の配置変更や段差解消スロープの設置といった“小さな工夫”で改善できる部分は多くあります。
勤務時間・働き方の柔軟性
身体への負担を軽減するため、働き方の柔軟性が大切です。
- 時差出勤や在宅勤務制度を活用することで、通勤時の混雑や長時間移動の負担を軽減できます。
- 休憩時間の確保も重要です。義足・義手は長時間使用すると疲労が蓄積しやすく、こまめな休憩で快適さを保てます。
業務内容の調整
配慮は「仕事を減らす」ことではなく、「得意を活かす」方向で行います。
- 身体的負担が少ない業務(PC入力やチェック作業)を中心に割り当てる
- 無理のない範囲での作業配分を行い、負担を分散する
適切に業務設計を行うことで、戦力化が可能になります。
安全管理
義足や義手を利用する社員には、安全面での配慮も不可欠です。
- 緊急時の対応ルールを明確にしておく(義足が外れた場合の避難経路や支援の方法など)
- 労災防止の工夫として、配置や作業内容を見直す
安全に安心して働ける仕組みづくりが、定着の基盤となります。
周囲の理解とコミュニケーション

同僚・上司に必要な知識共有
本人だけに負担をかけないためには、職場全体での理解が必要です。
- 義足・義手の仕組みや特性を学ぶ社内研修を行うと、誤解や不安が減ります。
- 声のかけ方のルール化(「手伝いましょうか?」と一言添えるなど)で、自然なコミュニケーションが促されます。
本人との対話の工夫
一番大切なのは、本人との信頼関係です。
- 「できること・できないこと」を本人に確認する姿勢を持つこと
- 必要なときに必要なサポートを行うスタンスを徹底すること
過剰なサポートは逆効果になることもあるため、「聞く姿勢」と「選択肢の提示」がカギです。
義足・義手の社員が活躍できる職場事例
製造業での活躍例
- 座り作業や反復作業に強みを発揮
- 義足でも安定して行える検査業務や組立業務で力を発揮
事務・オフィスワークの事例
- PC入力、資料作成、データ分析などで即戦力
- 周囲の配慮があれば長期的に安定就労が可能
小売・サービス業の事例
- 接客の工夫(立ち仕事時間の調整、カート利用、シフトの柔軟対応)により、顧客対応も十分可能
- 実際に販売員や受付スタッフとして活躍する事例も多い
活用できる制度と外部支援
障害者雇用枠の活用
企業には障害者雇用率の達成義務があります。義足・義手ユーザーを雇用することは、法定雇用率の達成と社会的責任の両面で意義があります。
ジョブコーチ支援
ジョブコーチは、本人と企業の間に立ち、働きやすい環境づくりをサポートする専門家です。現場での調整や定着支援を担ってくれるため、企業側の不安も軽減されます。
補装具費・医療制度のサポート
義足・義手は定期的なメンテナンスや修理が必要です。公的補助制度や医療保険を活用することで、社員が安心して長期的に働き続けられる環境を整えることができます。
まとめ
義足・義手を利用する社員を迎える際には、物理的な配慮と心理的な配慮の両輪が欠かせません。
段差や机の高さの調整といった「目に見える環境改善」に加え、声のかけ方や業務の任せ方など「人の関わり方」の配慮があってこそ、安心して力を発揮できる環境が整います。
大切なのは、配慮を「特別扱い」ととらえるのではなく、誰もが働きやすい仕組みづくりの一環と考えることです。義足・義手の社員にとって必要な配慮は、他の社員にとっても働きやすさの改善につながるケースが多くあります。例えば、バリアフリー化や休憩の取りやすさは、高齢社員や体調を崩しやすい社員にも恩恵があります。
また、採用前に「どんな配慮が必要か」「どんな働き方が可能か」を本人と率直に話し合うことで、誤解や不安を減らし、定着率を高めることができます。ジョブコーチや支援機関と連携する仕組みを整えておくと、企業側も安心して受け入れられます。
義足・義手ユーザーは、正しい理解と少しの工夫があれば、職場で確実に戦力として活躍できます。企業にとっても「多様な人材を受け入れられる体制」は、ダイバーシティ経営の実践であり、社会的な信頼の獲得にもつながります。これから義足・義手の社員を迎える企業担当者の方には、「できないこと」ではなく「できること」に焦点を当てる視点を持ち、前向きに雇用へ取り組んでいただきたいと思います。小さな一歩が、職場全体の成長と社会の包摂につながるのです。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。







