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精神障害のある応募者にどう質問する?企業が面接で知っておきたい具体的な聞き方と配慮ポイント

この記事の内容
はじめに
障害者雇用の面接において、企業側が最も悩むのは「どこまで聞いてよいか」という点です。
曖昧な質問では必要な情報が得られず、逆に踏み込みすぎると「差別的だ」と受け取られるリスクもあります。
特に精神障害のある応募者に対しては、体調や働き方に配慮しながら、長期的に安心して働けるかどうかを見極める必要があります。
本記事では、企業の人事担当者や面接官に向けて、「どう質問すればよいか」を具体例つきで解説します。
面接で確認すべき大前提

病名を聞く必要はない
面接で「病名は何ですか?」と直接尋ねる必要はありません。
重要なのは病名そのものではなく、それが働き方にどう影響するかです。
例えば「うつ病だからできない」ではなく、「長時間集中が続くと疲れやすい」といった実務上の影響を確認することが大切です。
確認の軸は3つ
面接での質問は、次の3つの軸に沿って行うと整理しやすくなります。
- 業務遂行力:どのように働けるか
→ 採用の基本は「業務を遂行できるかどうか」です。精神障害のある方の場合も、得意・不得意や集中できる環境は人によって異なります。
「どの作業なら問題なく取り組めるか」「どの程度のペースで進められるか」を確認することで、ミスマッチを避け、適材適所の配置につなげられるのです。 - 体調管理:どんなときに調子を崩しやすいか
→ 精神障害のある方の多くは、体調に波があります。前もって「どんなときに不調が出やすいか」を把握しておくことで、急な欠勤やパフォーマンス低下を予防しやすくなるのです。
たとえば「連続勤務が続くと疲れやすい」「人混みで不安が強くなる」などを知っておけば、勤務シフトや業務内容を調整できます。 - 配慮事項:長く働くために必要な環境は何か
→ 「今この瞬間に働けるか」だけでなく、長期的に働き続けられる環境づくりこそが採用のゴールです。
具体的には「通院のための時間調整」「静かな作業スペース」「指示を文書で残す仕組み」などが挙げられます。これらを面接時に確認しておくことで、入社後の離職リスクを下げ、定着率を高める効果があります。
実際の面接での質問の工夫
働ける範囲を知る質問
- 「一日の業務で一番集中できる時間帯はいつですか?」
- 「同時に複数のタスクと、一つずつの作業、どちらが得意ですか?」
→ あくまで「できること」「得意な方法」を聞くことで、応募者も安心して答えやすくなります。
体調の波を確認する質問
- 「体調が悪いとき、職場でどうしてもらえると安心ですか?」
- 「休養が必要になる前に、どんなサインが出やすいですか?」
→ 実際の現場で役立つヒントを得やすい質問です。
配慮を探る質問
- 「これまでの職場で働きやすかった工夫やサポートは何ですか?」
- 「働き続けるために、会社にどんな仕組みがあると安心できますか?」
→ 過去の経験からヒントをもらうことで、現場で再現できる仕組みを検討できます。
具体例(良い質問 vs NG質問)
- 良い質問:「通院はどのくらいの頻度ですか?」
→ 出勤調整が必要かどうかを把握できる。 - NG質問:「毎日薬は飲んでいますか?体調に問題はないですか?」
→ プライベートな領域に踏み込みすぎてしまうため避けるべき。
ケース別・質問シナリオ例

うつ病のある応募者の場合
質問例
「集中が途切れたとき、どうリフレッシュしていますか?」
意図と活用方法
うつ病のある方は、疲労やストレスが蓄積すると集中力が落ちやすい傾向があります。
「軽いストレッチで気分転換する」「静かな環境に移動すると落ち着ける」といった回答から、休憩のタイミングや作業環境の工夫を考えられます。
会話イメージ
- 応募者:「午前中は集中できるんですが、午後は疲れやすいので小休憩があると助かります」
- 面接官:「なるほど、午後に短い休憩を挟む形でスケジュールを調整すれば働きやすそうですね」
→ こうした具体的なやり取りが、無理のない業務配分につながります。
不安障害のある応募者の場合
質問例
「出社や通勤で不安が強くなるとき、どんな配慮があれば働きやすいですか?」
意図と活用方法
不安障害のある方は、環境の変化や人混みで強いストレスを感じやすいことがあります。
回答からは、勤務形態の柔軟性(時差出勤・在宅勤務)やサポートの必要性を把握できます。
会話イメージ
- 応募者:「満員電車が苦手なので、ラッシュを避けられる出勤時間があると助かります」
- 面接官:「時差出勤の制度がありますので、朝少し遅めのスタートで調整できそうです」
→ 通勤がネックで採用を逃すのではなく、制度をどう活用できるかに視点を切り替えることが重要です。
発達障害(ASD/ADHD)の応募者の場合
質問例
「指示は口頭・メール・チェックリストなど、どの方法が一番わかりやすいですか?」
意図と活用方法
ASDやADHDのある方は、情報処理の特性によって「口頭だと忘れてしまう」「メールだと理解しやすい」など違いが出やすいです。
回答によって、指示の出し方やタスク管理方法を個別に調整できます。
会話イメージ
- 応募者:「口頭だけだと抜けやすいので、メールやチェックリストがあると助かります」
- 面接官:「了解しました。業務の依頼は文面で残すようにしますね」
→ 指示方法を工夫するだけで、認識の齟齬やミスを減らし、成果を出しやすくなるのがポイントです。
このように、ただ「質問する」だけでなく、回答をどう業務に反映させるかまでイメージすることが面接の価値を高めます。
面接後にすべきこと

記録を残す
面接で確認した配慮事項は、必ず書面やデータとして記録に残すことが大切です。
- 「言った・言わない」の防止
面接中のやり取りを口頭だけで済ませてしまうと、後から「そんな話はしていない」「伝えたはずだ」と認識のズレが生じやすくなります。記録を残すことでトラブルを未然に防げます。 - 社内での共有
面接担当者だけが把握している状態では、現場の上司や人事部門が正しく対応できません。配慮事項は人事システムや専用フォーマットにまとめて関係部署と共有しましょう。
例:- 「週1回の通院あり → この曜日は残業不可」
- 「口頭指示が苦手 → 業務依頼は必ずメールで残す」
- 「週1回の通院あり → この曜日は残業不可」
- 入社後の支援計画につなげる
記録は採用決定後の定着支援計画やOJTマニュアルにも直結します。採用段階から整理しておくことで、入社後にスムーズにフォローが始められます。 - 法的リスクの回避
障害者雇用は「合理的配慮」を求められる一方で、「配慮を約束していたのに実施されなかった」と訴えられるケースもあります。記録を残しておけば、企業側が適切に対応していたことを証明する材料にもなります。
ジョブコーチ・エージェントと情報を擦り合わせる
応募者が面接で伝えきれなかった部分を、支援機関のジョブコーチやエージェントから補足してもらうのも有効です。
- 応募者が「直接は言いにくい」ことを代弁してもらえる
- 面接時には触れられなかった課題や配慮事項を確認できる
- 第三者の客観的な視点が加わることで、企業も安心して対応できる
結果的に、応募者本人・企業・支援者の三者が同じ情報を持つことになり、入社後のミスマッチやトラブルを防ぐ効果が期待できます。
まとめ|質問は「働きやすさ」を引き出すために
精神障害のある応募者への面接では、「病名」や「過去の失敗経験」を深掘りする必要はありません。大切なのは、どんな環境なら力を発揮できるのかを企業が正しく理解することです。
- 確認の3軸(業務遂行力・体調管理・配慮事項)をもとに質問することで、面接の方向性がブレず、実務に直結する情報が得られます。
- 具体的な質問例を用いると、応募者も答えやすくなり、「自分を理解してもらえた」という安心感につながります。
- 記録を残し社内で共有することは、入社後のサポート体制を整え、トラブルを防ぐうえで欠かせません。ジョブコーチやエージェントと連携することで、本人だけでは言葉にしづらい配慮事項も把握できます。
面接は単なる採否を決める場ではなく、応募者と企業が一緒に「長く働ける形」を探す場です。
良い質問と適切な記録ができれば、企業にとっては定着率の向上、応募者にとっては安心して働ける環境づくりにつながります。つまり、面接の質問は「評価」ではなく「協働」の第一歩。
お互いの理解を深めるための時間と捉えることで、精神障害者雇用は企業の力を高める大きなチャンスになります。
投稿者プロフィール
- 自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。







