2025/09/11
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障害者雇用における人事の役割とは?採用から定着までの業務フローを徹底解説

はじめに

日本では「障害者雇用促進法」に基づき、従業員数が一定以上の企業に障害者雇用率が義務付けられています。2024年現在、法定雇用率は2.5%ですが、2026年7月には2.7%へと引き上げられる予定です。
単に数値を達成することだけが目的ではなく、CSR(企業の社会的責任)やダイバーシティ経営の観点からも、障害者雇用は企業にとって重要なテーマとなっています。

その中心的な役割を担うのが「人事部門」です。採用の入口から定着・キャリア形成に至るまで、人事は制度設計と現場の橋渡しを行う存在です。

本記事では、障害者雇用における人事の役割を採用から定着までの流れに沿って整理し、実務に役立つポイントを徹底解説します。


障害者雇用における人事の役割の全体像

人事担当者は、求人募集から採用、配属、定着までを一貫して支える立場です。

  • 求人作成・募集活動では、障害者が安心して応募できる求人票を作成し、適切な媒体で発信します。
  • 採用プロセスでは、応募者の特性や配慮事項を理解し、ミスマッチを防ぐ面接を行います。
  • 配属・定着の段階では、現場との調整役として橋渡しを行い、必要に応じてフォローアップ面談を実施します。

人事は単なる「採用窓口」ではなく、制度と現場を理解して双方を調整する重要な立場にあるのです。


求人作成と募集活動

求人票に記載すべき内容

障害者雇用の求人票には、以下の点を明確に記載することが重要です。

  • 募集職種と具体的な業務内容
  • 必要とされるスキルや経験
  • 想定される配慮事項(例:通院配慮、勤務時間調整、在宅勤務の可否)

曖昧な表現はミスマッチを招きやすいため、「簡単な事務作業」ではなく「Excelを使ったデータ入力」など具体的に記載することが望まれます。応募者が安心してエントリーできるかどうかは、求人票の表現に大きく左右されます。

求人媒体の活用

障害者雇用の募集には、以下のような媒体が活用できます。

  • ハローワーク:公的な採用窓口。求人数・応募者数ともに多い。
  • 転職エージェント:障害者に特化したエージェントを活用すると、マッチングの質が高まる。
  • 求人サイト:障害者専用サイトも有効。
  • 自治体・特例子会社との連携:地域での雇用機会を広げる施策として活用可能。

書類選考と面接対応

書類選考のポイント

  • 経歴の空白期間は必ずしもマイナスではありません。治療やリハビリ、就労移行支援事業所での訓練期間などは「働く準備を整えてきた期間」と評価できます。
  • 資格取得や研修参加歴も重要な評価ポイントです。履歴書に現れない努力を見落とさない視点が求められます。

面接での確認事項

面接では病名そのものよりも「配慮事項」や「働き続けるための条件」を確認することが大切です。
質問例:

  • 「体調が不安定なとき、どのような配慮があれば働きやすいですか?」
  • 「これまでの職場で工夫してきたことは何ですか?」

こうした質問により、「できないこと」ではなく「できること」を引き出すことができます。

面接時の配慮

  • 時間配分はゆったりと設定し、余裕を持った進行を意識する。
  • 面接官自身も障害理解研修を受けておくことで、適切な質問や対応が可能になる。

採用決定から配属までの間にやること

採用が決まった後、実際に職場に配属されるまでの準備期間は非常に重要です。この段階の取り組みがスムーズな受け入れや長期定着につながります。人事担当者は次のような準備を進める必要があります。

職場環境の整備

  • 物理的なバリアフリー化
     段差を解消する、スロープを設置する、通路やトイレを広めに確保するといった基本的な環境整備を行います。これにより、出社初日から「安心して通勤・勤務できる」と感じてもらうことができます。
  • ITツールや補助具の導入
     視覚や聴覚などの障害特性に応じて、スクリーンリーダーや拡大読書器、音声入力ソフトなどの支援機器を事前に準備します。必要なアカウント設定やセキュリティ対策も含め、入社日からすぐに業務に取り掛かれるよう整えておくことが大切です。

配属先の調整

  • 適性に合わせた業務内容の切り出し
     フルタイムで幅広い業務を任せるのではなく、本人のスキルや体調に合わせて「まずはここから」というタスクを設定します。小さな成功体験を積み重ねることで、定着率が高まります。
  • 現場社員への障害理解研修
     配属前に現場社員へ「どのような特性があるか」「どんな配慮を想定しているか」を共有しておくと、初日から自然な受け入れが可能になります。研修は形式的な説明だけでなく、ケーススタディやロールプレイを取り入れると理解が深まりやすいです。

入社後のフォローアップ

採用から入社までは準備段階にすぎず、実際に働き始めてからのサポートこそが「定着」のカギを握ります。特に入社後の数か月は「孤立感」や「不安感」が強まりやすいため、人事が積極的に関わる必要があります。以下の取り組みを意識しましょう。

オンボーディング(初期定着支援)

  • 入社後1〜3か月が勝負
     この期間は新しい職場環境に慣れるための「定着の山場」です。体調や業務量に過度な負担がかからないよう、人事と現場が連携して支援することが求められます。
  • メンター制度の導入
     直属の上司とは別に、相談しやすい先輩社員をメンターとして配置します。「ちょっと聞きたいこと」を気軽に相談できる存在がいるだけで、不安の軽減につながります。
  • ジョブコーチの活用
     外部の専門家であるジョブコーチを活用することで、現場への橋渡しや本人の不安解消がスムーズに進みます。公的制度を利用できるケースもあるため、人事が情報収集しておくと有効です。

人事による定期面談

  • 体調・業務量のチェック
     本人に「困っていることはありませんか?」と投げかけるだけでなく、具体的に「残業は負担になっていないか」「通勤に支障はないか」と聞くことが重要です。
  • 配慮事項の効果検証
     面接時や採用時に設定した配慮事項(例:時短勤務、休憩回数の調整)が実際に機能しているかを確認します。必要に応じて改善を行うことで「ちゃんと見てもらえている」という安心感が生まれます。

現場と人事の連携

  • トラブル発生時の迅速な調整
     業務の行き違いや人間関係のトラブルは早期離職につながりやすい部分です。現場だけに任せず、人事が第三者として介入することで冷静な解決が可能になります。
  • 定期的な情報共有
     現場社員・上司と人事が定期的に情報交換を行い、本人の状況を把握する体制を作ります。組織として支えているというメッセージを伝えることが大切です。

定着支援とキャリア形成

採用から数か月の定着支援を乗り越えた後も、人事の役割は終わりではありません。長期的に活躍してもらうためには「働きやすさ」だけでなく「働きがい」を提供することが必要です。人事は本人のキャリア形成を支える存在として、継続的な関わりを持つことが求められます。

長期的な定着に必要なこと

  • キャリア形成の機会を平等に与える
     障害の有無にかかわらず、昇進や異動、ジョブローテーションといった選択肢を提示することは「長く働きたい」と思える大きな要因となります。形式的に雇用を続けるだけでは、モチベーションが低下し、離職につながりかねません。
  • 成長を正しく評価する制度の整備
     「頑張っても評価されない」という状況は、誰にとっても働く意欲を失わせます。例えば勤怠の安定性、業務の正確性、協調性など、障害特性に応じた評価軸を導入することで、成果や努力を公平に評価できます。
  • “雇用率達成”から“活躍推進”への転換
     法定雇用率を満たすだけでなく、障害のある社員が成長を実感し、将来像を描ける仕組みを用意することが、長期定着につながります。これは結果的に、企業全体のダイバーシティ推進やブランド力の向上にもつながります。

人事が担うキャリア相談

  • 本人の希望に耳を傾ける
     「ずっと同じ業務を続けたい人」もいれば、「スキルを高めて新しい業務に挑戦したい人」もいます。人事は定期的にキャリア相談の場を設け、本人の希望を聞き取りながらキャリアビジョンを共に描いていくことが重要です。
  • 外部機関との連携
     社内だけで対応できない課題については、就労支援センターや専門エージェントなど外部機関と連携することで解決の幅が広がります。たとえば、スキル研修の提供や、体調悪化時の就労継続支援など、外部の専門性を活かすことで安心感を高められます。
  • 「継続就労」と「働きがい」の両立
     キャリア支援は単に「辞めさせない」ためのものではありません。「この会社で自分は成長できる」という手応えを持ってもらうことで、本人の働きがいや組織への貢献度が高まります。

企業事例と成功のポイント

成功事例1:採用前に配慮事項を細かく確認 → ミスマッチが減り定着率向上

ある企業では、障害者専門の転職エージェントを活用しました。エージェントが事前に応募者の特性や希望する配慮事項をヒアリングし、企業側に具体的な情報を提供。例えば「長時間の立ち仕事は困難」「通院のため週1回午後の時間調整が必要」といった条件を、面接前から人事が把握できていました。
その結果、採用後に「想定と違った」というミスマッチが減り、定着率が大幅に向上しました。エージェントは採用時だけでなく、入社後もフォローアップ面談を実施してくれたため、人事も安心して受け入れられた事例です。

成功事例2:配属前に現場社員への障害理解研修を実施 → 受け入れがスムーズに

別の企業では、配属前に現場社員へ障害理解研修を行いました。研修では「どんな配慮が必要か」「具体的にどう声をかけるとよいか」を事例ベースで学習。これにより、現場社員が不安を感じることなく自然に受け入れることができ、入社初日からチームに馴染むスピードが早まりました。

成功事例3:人事とジョブコーチが定期的に連携 → 長期勤務を実現

ある製造業の企業では、入社後にジョブコーチを派遣し、人事と月1回の定期連携を実施。本人が現場で困っている点をジョブコーチが把握し、人事と一緒に改善策を検討しました。例えば「作業台の高さを少し下げる」「休憩タイミングを増やす」といった小さな改善を積み重ねることで、働きやすさが格段にアップ。結果として、3年以上の長期勤務につながった事例です。


まとめ

障害者雇用を成功させるうえで、人事部門が果たす役割は極めて大きなものです。求人票の作成から採用、配属、入社後のフォロー、そしてキャリア形成まで──人事が一貫して関わり続けることで、雇用率の達成にとどまらず「定着と活躍」を実現できます。

特にポイントとなるのは以下の3つです。

  • 採用前の準備:求人票に配慮事項を明記し、エージェントや支援機関と連携してミスマッチを防ぐ。
  • 配属前後の連携:現場社員への障害理解研修や、ジョブコーチとの協働によって、安心して働ける環境を整える。
  • 入社後の伴走支援:定期面談やキャリア相談を通じて、本人が「ここで働き続けたい」と思える仕組みを築く。

これらを着実に積み重ねることで、障害者雇用は単なる義務対応ではなく、企業の成長戦略の一部となります。多様な人材が共に働き、力を発揮できる組織は、社会的評価を高めるだけでなく、従業員全体の働きがいやエンゲージメント向上にもつながります。

人事が「採用はゴールではなく、定着と活躍が本当のスタート」であることを常に意識し、全体をリードしていくこと。これこそが、これからの企業に求められるダイバーシティ経営の姿といえるでしょう。

投稿者プロフィール

八木 洋美
自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。
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