2025/10/01
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「集中できない」は改善できる|今日からできる職場の環境調整と伝え方のコツ

はじめに|「診断名がない苦しさ」と働くこと

仕事中、「集中力が続かない」「ちょっとした騒音で気が散る」「疲れやすい」。

このような症状に悩んでいるけれど、診断名がないために、配慮を求めることに躊躇している方は少なくありません。しかし、あなたの苦しみは決して「甘え」ではありません。

この記事の結論は、合理的配慮は診断名ではなく、「困りごと」に対して企業が提供する支援であるということ。「診断書に代わる武器」を持つことで、働きやすい環境は実現できます。

この記事では、診断名なしで配慮を得る具体的な手順、「困りごと」を「貢献」に変える伝え方、そして会社に求めるべき環境調整の具体例を徹底解説します。


診断名なしで配慮を得るための「2つの武器」

武器1:客観的な「困りごとリスト」の作成

支援はあなたの感情論ではなく、客観的なデータから始まります。この「困りごとリスト」こそが、会社との対話で最も強力な武器となります。

  • 内容: 抽象的な「集中できない」ではなく、「いつ、どこで、何に困るか」という客観的なデータを記録します。
    • 記録例: 「月曜の午前中(時間)に、騒音下(環境)で、複数の指示(タスク)を受けた際、思考がフリーズ(症状)し、ミスにつながった」
  • このように具体的な状況を詳細に残すことで、あなたの苦しみが「環境のせい」であることを証明します。
  • 記録の目的: 感情論ではなく、配慮が「業務効率を上げるためのツール」であると企業に説明するための客観的なデータ(根拠)を集めることです。リストは、「配慮=業務改善」であると企業に納得してもらうための第一歩となります。

武器2:医師・産業医の「意見書」を活用する

診断名や手帳がない「グレーゾーン」の場合、専門家の「意見」があなたの要望を客観的な根拠に変える、最も重要な戦略です。

  • 内容: 診断書がなくても、精神科医や産業医に「業務遂行上、静かな環境での作業が望ましい」といった専門的な意見書(診断書ではない)を書いてもらう具体的なステップを解説します。
    この意見書は、あなたの「困りごとリスト」を医学的に裏付ける第三者の証明となります。
  • 専門家の役割: 特に産業医は中立な立場で、あなたの「困りごとリスト」に基づき、会社に「医学的な根拠」を示すことができます。「この社員の健康維持のため、〇〇の配慮は必須である」という意見を公式に出してもらうことで、会社との配慮交渉の強力な根拠となります。企業は産業医の意見を重く受け止めるため、あなたの要望が実現しやすくなります。

会社に響く「合理的配慮」の伝え方と交渉術

「できない」を「貢献」に変える言い換え術

配慮を求める際は、ネガティブな言葉を避け、「どうすればより貢献できるか」という前向きな提案に変えることが、交渉の成功率を高めます。

  • 伝えるべきこと: 配慮を求めることは、「より高いパフォーマンスを出すための条件」であり、会社の利益につながるという姿勢を伝えることが重要です。企業側は、配慮を「コスト」ではなく「投資」として捉えやすくなります。
  • NG例とOK例:
    • NG(能力の欠如に聞こえる): 「集中力がありません」「残業は一切できません」。
    • OK(配慮が生産性につながる): 「静かな環境であれば、誰よりも正確にデータ処理ができます」「定時で業務を完遂するため、タスクの優先順位付けを朝一番に行うようにします」。

会社との対話で妥協点を見つける

合理的配慮の話し合いは、一方的な要求ではなく、建設的な「すり合わせ」です。事前に準備をすることで、交渉をスムーズに進められます。

  • 優先順位付け: 譲れない配慮(例:静かな席)と、妥協できる配慮(例:フルリモートから週1出社へ)を事前に決めておくことで、話し合いがスムーズに進みます。すべてを実現しようとするのではなく、「これだけは必須」というラインを決めておきましょう。
  • 交渉の進め方: 人事担当者や産業医との面談の場を設けてもらい、建設的な話し合いで進めましょう。特に、産業医は医学的な根拠を示してくれるため、配慮の実現に向けた強力な味方になります。

今日からできる!具体的な「職場の環境調整」事例集

集中力を高める環境整備

  • 具体的な配慮: ノイズキャンセリングイヤホンの持ち込み、騒音や人の動きが少ない壁際の席への移動、業務中のBGM許可など。これらの配慮は、外部の刺激を遮断し、あなたの集中力を最大限に引き出すための具体的な解決策です。
  • 配慮の目的: ADHDの特性などで外部刺激に敏感な場合、この環境調整は「わがまま」ではなく、「高い集中力を発揮するための医学的な条件」となります。静かな環境を整えることで、定型業務やデータ処理などの正確性が飛躍的に向上します。

業務のミスを防ぐための調整

  • 具体的な配慮: 業務の指示を口頭ではなく、メールやチャットで「文字」として残してもらう。これは、記憶や聞き間違いによるミスを根本から防ぐための最も効果的な方法です。
  • 業務配分の工夫: マルチタスクを避け、一つの業務に集中できるような業務配分を上司と相談しましょう。複数のタスクを一度に振られるのではなく、タスクが完了するごとに次の指示をもらう「シングルタスク運用」にすることで、高い正確性を維持できます。

体力・体調管理のための配慮

  • 具体的な配慮: フレックスタイム制の活用(通勤ラッシュを避ける)、休憩時間を長く取れる配慮、在宅勤務の相談。これらの配慮は、長期的な安定就労を可能にする「セルフケア」の土台です。
  • 安定就労への影響: 通勤ラッシュを避けることで、出社時の疲労やストレスを軽減し、午前中から最大限のパフォーマンスを発揮できます。また、体調に合わせた柔軟な休憩は、症状の悪化を防ぐ「予防薬」としての役割を果たします。

まとめ|「集中できない」はあなたの強みに変わる

あなたの苦しみは「努力不足」や「甘え」ではありません。それは、あなたが「頑張りすぎている」という心身からのSOSです。

この苦しみを乗り越える鍵は、「困りごとリスト」という客観的なデータと、「伝え方の戦略」にあります。

  • 自己分析: 感情論ではなく、「いつ、どこで、何に困るか」を具体的に記録し、あなたの特性が「環境のせい」であることを証明しましょう。
  • 戦略的な相談: 診断名という「ラベル」がなくても、産業医などの専門家に相談し、あなたの「困りごとリスト」を医学的な根拠に変えてもらいましょう。そして、「集中できない」ではなく、「静かな環境であれば、誰よりも正確に業務をこなせる」と、貢献度とセットで会社に伝えてください。

あなたの「集中力」や「細部にこだわる力」は、適切な環境調整さえあれば、強力な武器に変わります。勇気を出して一歩踏み出し、あなたの特性に合った「職場の環境調整」を実現し、自分らしく働く未来を創りましょう。

投稿者プロフィール

八木 洋美
自身も障害を持ちながら働いてきた経験から、「もっと早く知っていればよかった」情報を多くの人に届けたいと考えています。制度や法律だけでなく、日々の仕事の工夫や心の持ち方など、リアルな視点で役立つ記事を執筆しています。
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